働き盛りの5人に1人がまもなく直面 「ダブルケア」を企業はどう支えるべきか、法改正も含めて考えよう
「育児と仕事の両立」「介護と仕事の両立」は常に人事の課題です。
しかし少子高齢化が進むにつれ、さらに厳しい現実が始まりつつあります。
「育児と介護と仕事」の3つを同時にこなさなければならない人たちが30代〜50代の社会人の中で増えているのです。
「ダブルケア」と呼ばれる社会問題です。
育児も介護も、片方だけでじゅうぶん負担がかかるものです。社員がその両方を抱えるとなったとき、離職を防ぐために企業としてどう支えれば良いのでしょうか。
「ダブルケア」の実態
ソニー生命の調査によると、大学生以下の子どもを持つ30歳〜59歳の男女(16,926名)のうち、「数年後にダブルケアに直面する見込みがある」と答えた人の割合は下のようになっています。
「別居の家族等」が介護をしている人の割合は、11.8%にのぼっています。
つまり介護をしている人の11.8%は、介護のために別居している家族などのところに通っているということになります。
自宅が近距離であっても、ではその間子供はどうするのかという問題もありますし、地方から都市部へ就職している場合は2拠点生活を強いられることもあります。時間、費用ともに大きな負担になることは間違いありません。
こうした「遠距離介護」は、介護の知られざる一面かもしれませんが、直面している、いずれしそうな人は多いことでしょう。
離職を防ぐためには、企業としてもさまざまな方法を考えなければなりません。
改正育児・介護休業法が来年4月から施行
また、ことし5月31日に育児・介護休業法が公布されました。令和7年4月1日から段階的に施行されていきます。
まずは法改正のポイントをみていきましょう。
今回の改正の大きな柱は下の3つです*1。
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では、具体的に会社は何をしなければならないのでしょうか。
育児への対応*2
最初に、育児についてです。
企業は以下の対策から2つ以上の方法を選んで導入し、労働者はその中から一つを選んで利用するようにできるというものです。
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残業免除の対象も拡大され、これまでは「3歳に満たない子を養育する労働者」でしたが、「小学校就学前の子を養育する労働者」に変わります。
また、育児のためのテレワークの導入が努力義務化されます。3歳未満の子どもを養育する労働者が対象です。
このほか、子どもの病気などに伴う看護休暇に「感染症に伴う学校閉鎖」「入園(入学)式、卒園式」が追加され、かつ対象がこれまでは「小学校就学の時期に達するまで」の子どもを持つ親が対象だったものが、「小学校3年生修了まで」に延長されます。
そして、企業として知っておかなければならないのはこのポイントです。
育児休暇等の取得状況を公表することが義務付けられます。おもに男性労働者に関するもので、下のいずれかの数字を公表しなければなりません。
これは、企業規模を問わず注意しなければなりません。
特に一番最後の項目です。雇用期間が6か月未満の労働者についても、介護休暇の対象から除外しないような努力が求められます。
改正法遵守以外に企業ができることはあるか
さて、法改正もそうですがそれ以上に、ダブルケアによる離職が30代〜40代という、企業の中で中心的な役割を果たす世代に多いことは注意しなければならないでしょう。
「ダブルケアラー」になる日、終わる日は読めない
なお、前出のソニー生命の調査によれば、ダブルケアへの備えを「行っていない・行っていなかった」ダブルケアラーは31%にのぼっています*3。
育児はともかく、介護については「いつ始まるかわからない」という事情もあります。
例えばそれまで元気だった高齢者が、骨折をきっかけに急に寝たきりになってしまう、という話はよくあることです。
認知症などの病気が少しずつ進行していることがわかればまだ先の予測はできるかもしれませんが、そうもいかないのが介護です。しかも、いつ終わるかもわかりません。
本人たちでさえ準備や心構えがないことが起きる、と考えると、まずは従業員が悩む前に、企業側からダブルケアの問題について積極周知しておくことが大事です。 相談窓口や担当者を設置する必要もあるでしょう。
その場合、担当者は本人に代わって行政窓口に相談して知識を得た上で、行政へと繋ぐサポートができればなお良いと考えます。
市役所などに問い合わせたり足を運んだりすることすら、当事者によっては大きな負担になってしまうからです。
多くの自治体は地域で包括的にダブルケアラーをサポートする仕組みを持っていますので、それについて紹介できる存在が必要です。
今の時代では属人性を排除し、働き盛りが休みやすい空気を
また、これは企業経営のどの側面からも言えることですが、「属人的な業務=特定の人にしかできない業務の排除」を基本体制として作っておくことです。
「いま自分がやめたら周囲に迷惑をかけてしまう」という気持ちをいかに軽くするかは非常に重要だと筆者は考えます。
いざとなったら誰に代役を務めてもらえるかといったシミュレーションをしておき、本人にもそれを伝えておく必要があります。
属人性というのは昔ならば「責任感」という意味で従業員を鼓舞するものだ、と考えられたことでしょうが、それによって組織が硬直しているようでは従業員は長続きしません。
むしろ日頃から「親御さんは元気ですか?」といった声かけを適宜してみることも必要ではないでしょうか。
自分からは積極的に言いにくくても、上司や人事担当者からそのような問いかけがあれば答えやすいものです。
育児や介護に関することを言い出せない空気を払拭しておくのです。
何かあったらどのようなサポートができるかも事前に周知しておき「安心して休める」風土作りが離職防止のためには何よりも有効でしょう。
いくら表向きの制度を整えても、利用されなければ意味がありません。
法律への対応、世間体といったものだけ制度を設けても利用しにくい雰囲気や環境があれば、簡単に離職につながってしまうことを管理者は知っておかなければなりません。
- 経営・組織づくり 更新日:2024/11/05
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