最高のチームが勝つ:リーダーのための5つの規律
さまざまな世代の従業員が、それぞれ異なる価値観やニーズを持っています。リーダーはその違いに敏感になることが大切です。
例えばミレニアル世代は、ブーマー世代やX世代に比べて自律性を求めず、企業活動の中でのコラボレーションや評価の向上を望む傾向があります。このような違いは、若い従業員とその上司や年配の従業員との間に摩擦を起こす原因となり得ます。
しかし、チームのなかに世代の違うメンバーがいることは、お互いを理解できれば武器になります。そこで、特にリーダーにとっては、自分よりも若い世代について理解することが欠かせません。
ミレニアル世代と年上世代、お互いに嫌いなところ
本書にはSociety for Human Resource Management (SHRM)という機関が、アンケート調査で違う世代に感じるネガティブな要素を調べた面白い調査結果が紹介されています。
ミレニアル世代が思う年上世代の嫌なところトップ3
- 変化に抵抗する
- 私の努力を認めてくれない
- 自分の考え方を押し付けて従わせようとする
年上世代が思うミレニアル世代の嫌なところトップ3
- 労働倫理の欠落
- 態度や言動がカジュアル
- 服装が職場に適切でない
年上世代は、ミレニアル世代のカジュアルな態度や服装に不信感を抱いているようです。もし、ミレニアル世代が年上の世代に認められたいと思ったら、その世代がイメージするような服装や態度を戦略的に取り入れるといいのかもしれません。
では、リーダーや年上世代の同僚がミレニアル世代と上手くやっていくには何が必要でしょうか。若い世代のモチベーションを上げ、ほかの世代との調和を取るために、例えば次のようなアイデアがあります。
表彰のセレモニーを設ける
朝礼や会議の前の短い時間を使って、企業活動に貢献した従業員を表彰します。
組織やチームの課題に対する透明性を維持する
現在起きている問題やチームのパフォーマンスに関する上層部の認識など、どんなことでもチームメンバーと共有し透明性を高めます。そうすることで若いメンバーは自分がチームの一員であり貴重な存在であると感じることができるはずです。
仕事に関連するトレーニングとキャリア開発を促進する
実践的な経験を通した現場での訓練、メンター制度やコーチング、専門分野に関する研修など、十分なトレーニングと専門的な能力開発の機会を提供します。
チームメンバーに「なぜ」彼らの仕事が必要なのか気づかせる
なぜ自分がその仕事に取り組むのか、メンバー一人ひとりがその理由に気づけるようにします。例えば、自分の仕事の意義に気づいた高齢のメンバーは、若いメンバーを指導する時間を費やし、世代間の交流が促進されるでしょう。「なぜ」に気づくことで、ほかのメンバーとの関わり方も変わってきます。
2 一人ひとりの個性を管理する
著者は、キャリア開発の欠如が、従業員の主な退職理由になっていると主張します。リーダーが一人ひとりの個性を大切にし、キャリア開発に焦点を当てることで従業員が組織に留まり、継続して勤務してもらうことができます。コスト面からも、退職者を出すよりもキャリア開発に力を入れるべきといえるでしょう。
キャリア開発の方法として「ジョブ・スカルプティング」によって個々の才能や実行力に合わせて、役割やチーム内での地位を調整することが提案されています。例えばチームメンバー一人ひとりに次のような質問を投げかけ、その人の才能を生かせる方法を考えます。
- 仕事の中で楽しみに思える活動を書き出してください
- このような活動があなたを精力的にさせるのはなぜですか?
- 仕事の中でイライラする活動を書き出してください
- このような活動の何が、あなたのやる気を奪いますか?
- あなたのキャリアで3つの望みが叶うとしたら、何を希望しますか
このような簡単な質問でも、メンバーが仕事のどのような活動にモチベーションを感じるのかを知ることができます。
3 生産性を加速させる
迅速かつ効率的に仕事ができるチームを持つことは、リーダーの夢です。そのためには、「一日も早く新入社員をチームに馴染ませる」というスキルを身につける必要があります。リーダーが上手に新入社員をチームに溶け込ませることができれば、チーム全体の雰囲気も良くなり、なかなか進まないオンボーディングに時間を浪費することもありません。
著者は、生産性を高めるためのもう一つのポイントとして、「チームメンバーができるだけ頻繁にほかのメンバーと接触することが、チームの成功と高い相関性を持つ」というMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究結果も挙げています。
本書では、新入社員とチーム全体を迅速に統合するために、「セキュリティ」、「コンテキスト」、「所属」の3つのプロセスを踏むことが推奨されています。
セキュリティ(不安を取り除く)
まず、組織の文化に合う人を採用することが大切です。そして入社前にオリエンテーションをおこない、新入社員の不安を取り除きます。チームの行動規範を明確に伝え、新入社員がチームの一員としてふさわしい行動をとれるようにしておきましょう。
新しい環境は、新入社員だけでなく受け入れるチームメンバーにとっても不安がつきものです。あらかじめ、ほかのメンバーと新入社員のことについて話し合い、不安な点は解決し、サポートを依頼しておきましょう。新入社員の初出勤の日が良い体験になるよう準備をします。
コンテキスト(背景や状況を伝える)
文化が「組織やチームとしてのあり方・行動様式」だとすれば、コンテキストは「私たちを取り巻く世界の中で、私たちがどのような存在であるか」ということです。
新入社員に、業界での自社の位置や直面している課題について正直に伝えます。そして仕事を始める前にその職種のステークホルダー(利害関係がある人たち)は誰で、何を達成すれば成功とみなされるのかを説明します。そのような情報を先に知っておけば、入社後どのように行動すればいいか悩む必要がなくなります。
所属(チームの一員であることを伝える)
生産性を向上させる3つ目のポイントは、新入社員が同僚と強固な関係を築けるよう手助けをすることです。そのためには、社会貢献活動やスポーツなど、何か社外で活動する機会を作るといいでしょう。
ほかのチームメンバーとコラボレーションする必要がある仕事に割り当てることも有効です。新入社員もチームの一員であることが感じられるようにし、チーム全員が仲良くなれるようにします。
4 何にでも挑戦する
何にでも挑戦できるイノベーティブなチームにするためには、調和だけが評価されるのではなく、活発な議論が奨励されなければなりません。素晴らしいチームには必ず「過激」な人が1人はいるものだ、と著者は述べています。
そのためには、まずリーダーが変わること。議論するときのルールを作り、みんなが順番にリーダーになって議論を進められるような機会を与えます。議論をするときには上下関係にこだわらず何でも率直に話せる環境が大切です。
そのほか、リスクを取って失敗することを許容すること、チーム内でのゴールを厳格に決めること、すべての情報に透明性を持たせチーム全体で共有することなども意識します。
議論するときのルール
議論するときのルールをつくる際には、以下のようなことを取り入れるといいでしょう。
- お互いをリスペクトする
- 反論する前に意見を注意深く聞き、理解できなければ説明を求める
- 事実とデータを提示する準備をしてから議論をする
- 誰かが勝つための競争に参加しているわけではないと覚えておく(議論とは最もよいアイデアを発見し、啓発され、学ぶ機会である)
- チームが共同で決断を下した後は、自分の意見とは違っていても全員でサポートする
5 いつも顧客を忘れないこと
この本で最後に取り上げられているリーダーのための規律は、いつも顧客を忘れないことです。社内の取り組みに夢中になりすぎると、それを何のためにやっているのか忘れてしまうことがあります。どのチームにいても努力の焦点は顧客に向いていなければなりません。
顧客に満足してもらえるようにニーズを探り、ほかの分野の部署と連携することが必要です。そうすれば仕事の目的がはっきりし、従業員エンゲージメントも向上します。
そのためには、チームメンバーがステークホルダーとつながりを持てるようにします。具体的には、自分たちが関わっている製品のユーザー(顧客)と実際に会う機会をつくるのです。自社製品のユーザーがいる場所にチームメンバーを連れだすか、メンバーが多すぎる場合には、ユーザーを会社に呼んでもいいでしょう。顧客に会って生の声を聞くことで、顧客のニーズをより親身に考えられるようになります。
このように、優れたチームリーダーはチームメンバーが顧客に対する理解を深めるためのサポートをします。
リーダーシップの改善は従業員に大きな影響を与える
リーダーが5つの規律を守ることには必ず報いがあると著者は述べます。ギャラップ社の調査では、管理職の行動が、従業員の日々の仕事に対する熱意の変動に影響することがわかっています。
また、スタンフォード大学やユタ大学の研究でもリーダーシップスキルによって従業員のエンゲージメントが変わってくるという結果が出ています。従業員のエンゲージメント向上には、まず強いリーダーシップが必要なのです。
【参考:本書の世代区分】
- ブーマー世代: 1946年から1964年生まれ
- X世代: 1965年から1984年生まれ
- ミレニアル世代: 1985年から2004年生まれ
- Z世代: 2005年以降生まれ
The Best Team Wins: The New Science of High Performance
著者 Adrian Gostick, Chester Elton
出版社 Simon & Schuster (初版2018/02/13)
ISBN-10 : 1501179861
ISBN-13 : 978-1501179860
- 人材採用・育成 更新日:2022/03/02
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