高度プロフェッショナル制度とは?具体的にどのような職種なのか解説
そのままでは分かりにくいですので、もう少し具体的に検討していきましょう。まずは、どのような業務が対象となるのでしょうか。対象となる業務は、労働基準法第41条の2第1項第1号に定められています。「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)」(労働基準法第41条の2第1項第1号)とある通り、具体的な職種については厚生労働省令で定められています。
厚生労働省が定めている要件のポイントを抜粋して解説します。まず、使用者から具体的な指示を受けて行う業務は対象外です。次に、具体的な対象業務としては、金融工学の知識を用いた金融商品の開発業務や、資産運用、有価証券市場における価値等の分析、評価又は投資に関する助言、技術・研究開発など5種類の業務が挙げられています。
ホワイトカラーとは、企業の管理部門などで働く人のことを指します。ホワイトカラーエグゼプションとは、ホワイトカラー労働者が仕事の時間ではなく成果について賃金を定めるという決まりのことをいいます。というのも、ホワイトカラー労働者は、肉体労働ではなく頭脳労働がメインであるため、時間に応じて給料を払うよりも成果に応じて給料を払う方が実態に合っている面があるのです。
ホワイトカラーエグゼプションは、時間の経過が必ずしも生産量に直結しない働き方です。他方で、ブルーカラー労働者は、製造業などの現業系労働者を意味します。ブルーカラー労働者の場合は、時間が経過するごとに生産量も上がるという仕組みがあり、労働時間で成果を把握しやすいという特徴があります。
裁量労働制は、みなし残業制度とも呼ばれ、労働時間を固定する代わりに残業をしても残業代が出ないという働き方です。例えば8時間に労働時間を固定して、裁量労働制を採るとすると、7時間で仕事が終わって帰っても8時間働いたことになりその分の給料をもらえることになります。一方で、10時間かかってしまったとしても8時間分働いたとみなされます。成果をベースにしたホワイトカラーエグゼプションとは異なる概念です。
今回ご紹介している高度プロフェッショナル制度は、ホワイトカラーエグゼプションに近い制度と言えます。
出勤、退勤時間が自由である代わりに、深夜労働の割増賃金はつきません。短時間で成果が出せれば効率の良い働き方になるのですが、成果を出せない場合は時間が延びてしまう可能性があり、効率が悪くなります。常に成果を出し続けるというのも現実的に難しいでしょう。高度プロフェッショナル制度を導入する際には、特に成果を出せない場合について、結果としてサービス残業が増えるのではないかという点がかなり議論されました。
企業側が設定した成果目標が高すぎる場合や、金融市場の動き方が悪かった場合など、本人の努力や能力では成果を上げにくい環境は十分あり得ます。これらの点について、あらかじめ十分な対策を立てておかないと、かえって従業員のモチベーションを削いでしまう可能性があります。
高度プロフェッショナル制度は、メリット・デメリットのはっきりしている働き方であり議論の的になってきました。賛否が対立するなかでもこの制度が導入された目的は、欧米諸国にあるホワイトカラーエグゼプションという選択肢を日本にも導入し、長時間労働が常態化している現状を変えていこうというものです。あくまでも選択肢の一つ、と考えれば導入しやすいかもしれません。
職種を絞ったうえで、労使委員会の決議と、労働者本人の同意を必須にしたことで、本人が希望すれば高度プロフェッショナル制度を適用できるという仕組みになっています。本人が同意しないのに、高度プロフェッショナル制度が適用されてしまうということはありません。ちなみに、労使委員会の決議には有効期間があり、再度決議をすれば引き続き高度プロフェッショナル制度を適用できます。
いずれにせよ、導入の際には労使間で十分な話し合いをすることが必要です。
可能です。
労働基準法第41条の2第1項第7号には、対象労働者の同意の撤回について定められています。本人同意を撤回したからといって、不利益に扱ってはいけません。本人同意が撤回された時点で、高度プロフェッショナル制度の法律上の効果は発生しなくなります。
そもそも、制度として有効期間があるものなので、いったん高度プロフェッショナル制度を適用したからといってずっと適用されるわけでありません。有効期間が満了すれば、再度決議をし、労働者本人の同意を得るという流れになっています。途中で、労働者本人が再度の同意をしないということももちろんありえます。労働者の同意の撤回はできますが、使用者から一方的に撤回することはできません。
- 労務・制度 更新日:2020/09/01
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