経営と人材をつなげるビジネスメディア

MENU CLOSE
0 tn_keiei_t00_management_210524 column_management

世界のクロサワは仕切りも世界レベル。一流映画監督に学ぶ現場マネジメント術

/images/detail/thumbnail.jpg 1

円滑な組織運営をするために、マネジメントは必要不可欠な要素です。経営の資源は「ヒト」「モノ」「カネ」。映画製作にも同じことが言えます。

限られた人材や機材、予算の中で傑作を生み出し続ける映画監督たち。小説家などとは違い、映画は一人では作ることはできません。チームワークが必要な映画作りの現場にもかかわらず、黒澤明やスタンリー・キューブリックといった巨匠は、俳優やスタッフに対して想像を絶するような高い要求を出し続けました。

多大なプレッシャーをスタッフに与えながらも傑作を生み出すことができた秘訣は、才能やカリスマ性だけでなく、現場をマネジメントする力があったからこそ。そんな一流の映画監督が持っている現場をマネジメントする力に迫ります。

傑作になるか、駄作にもなるかは手腕次第。映画監督の仕事

映画監督は、映画における最高責任者です。作品が成功するかどうかは監督の腕次第と言っても過言ではありません。

俳優はもちろん、カメラマン、音声、照明、美術、衣装、編集など多くのスタッフと連携して1本の映画を作り上げます。監督は、企画の段階から製作に参加することもあり、俳優への演技指導やカメラワーク、細かな演出、撮影終了後の編集など、仕事は多岐に渡り、映画が完成するまでは体力的にも精神的にも疲労度の高い仕事です。

映画監督は各分野のプロフェッショナル達の意見を上手く取り入れ、作品を最善の方向に進めていかなければなりません。映画を完成させるために、スタッフ達と激しくぶつかりながら映画を製作する映画監督。
俳優や現場スタッフに高いハードルを課しながらも傑作を生み出し続けるには、どのようなことを意識して撮影に臨んでいるのでしょうか。

一切の妥協なし! 黒澤明が現場で行ったスタッフの能力を引き出すマネジメント術

多くの映画監督に影響を与えた「世界のクロサワ」こと黒澤明監督。1990年に日本人初のアカデミー賞栄誉賞を受賞。『羅生門』『七人の侍』『生きる』などの作品は、極限までこだわり抜いて作られました。

「完璧主義」といえる位の徹底したこだわりを持つ黒澤明。その“こだわり”を実現するためにも、俳優や撮影スタッフをマネージメントし、最高のパフォーマンスを発揮させていました。

主演俳優を何時間も拘束する独自の演出

映画で最も重要なのは、俳優の演出です。黒澤明の場合、俳優達には高度な演技を求めていたことで有名です。

新人の俳優に「武士の歩き方じゃない」と言い放ち、歩くだけのカットを何度も撮影し直し、主演俳優を何時間も待たせたというほど、小さなカットでも妥協はしませんでした。
新人だけでなく、主演の役者達には役になりきるまで長期のリハーサルを重ねました。当時の映画製作の現場としては役者を長時間の拘束することは異例だったようです。

気に入らなければ撮影を中止するほどの強いこだわり

俳優の演技だけでなく、そのこだわりは美術面や撮影にも及びました。三船敏郎に撮影で本物の矢を射って「東映の伝説」と呼ばれたり、撮影の邪魔だからと民家の2階を壊したり、天候が回復するまで撮影を中止するなどのエピソードが残っているほど。

破天荒にしか見えない撮影風景ですが、世界初の試みも多数行っています。例えば、土砂降りを表現するために、雨に墨汁を混ぜる。複数台のカメラを同時に使って1シーンを撮影するなど、「良い映画を作りたい」という黒澤明の強いこだわりの結果と言えるでしょう。

黒澤明が行った全スタッフにマインドを共有する方法

演技や美術にこだわることで、黒澤明が頭の中で描いている“映画の完成形”は実現していきました。黒澤明は、“映画の完成形”をスタッフ全員と共有するために、1日の撮影が終わった後も俳優やスタッフ達と車座になって食事をしながら、作品の意図や自身の映画哲学を語たることで、映画に関わる全ての人とマインドを共有したといいます。
これは、「どのような作品になるのか」「そのために何をすればいいのか」「どういうことを理解すればいいのか」を伝えることは、チームをゴールまで導くには必要不可欠だったのです。

多くの俳優、撮影スタッフに指示されてきた黒澤明。映画に関わる全ての人を的確にマネジメントしてきたからこそ、映画史に残る名監督になったと言えます。

人事部門がすべきことは、映画監督から学べ!

俳優や撮影スタッフは、会社で言う所の人材です。彼らの能力を最大限に引き出すには、個々の特徴や能力を見極める必要もありますが、大事なのはゴールを的確に設定して、マインドをスタッフ全員と共有し、マネジメントしなければいけません。

従来のように、人事部は社員の能力を基にして「最適な人事をする」という受け身で行う仕事がメインでした。しかし、近年の人事マネージメントは経営や戦略と密接に関わる必要があります。
会社の戦略や計画を実行に移すために、長期計画を中期的な計画に落とし込み、人材を確保し、各プロジェクトやチームへ采配するなどを人事担当が行う場面も増えています。

経営戦略も世の中の流れに沿って変えていかなければいけません。黒澤明も世相や技術の革新に合わせて作風を変えながらも高い評価を得てきました。

経営環境の変化を察知し、それを現場で活かして行くことも人事の仕事です。時代の流ればかりを捉えていては、会社のビジョンやミッションとかけ離れてしまい、現場の指揮が下がってしまうこともあります。
ですが、的確なマネジメントをすることで、厳しい要求をしたとしても成果が現れることは黒澤明が証明してきました。

社員全員に高い成果を求めながらも、会社を時代に合わせて収益を伸ばし続ける組織にするためにも、映画監督が現場で行っているマネジメントに学ぶことは多くあります。

黒澤明が行っていた“世界レベルの仕切り”こそ、人事部門に携わる人間に求められている能力なのではないでしょうか。

      • 経営・組織づくり 更新日:2016/04/22
      • いま注目のテーマ

      • タグ

      RECOMMENDED

      • ログイン

        ログインすると、採用に便利な資料をご覧いただけます。

        ログイン
      • 新規会員登録

        会員登録がまだの方はこちら。

        新規会員登録

      関連記事