【話すのが苦手でも大丈夫】新卒採用でも「1on1」が重要! 採用担当者が知っておくべきノウハウ
採用手法と学生志向の多様化で注目される「1on1」
— 業務の現場や中途採用の「カジュアル面談」として1on1が行われるのは一般的になってきましたが、新卒採用でもその重要性が増している理由は何でしょうか?
曽和さん: はい。社会環境の変化による「採用経路・採用手法の多様化」が主な理由と言えるでしょう。
これまで、日本企業は同質性の高い組織をつくり上げることを是として採用活動を行ってきました。似た人材を年に一度、大量に採用して事業運営することで、企業としての同質性を保ち、安定した経営を実現しようという考えです。
しかし、変化の激しい現代社会において、「同質性」は企業の弱みとなり得ます。多様性を持った人材を獲得し、組織に新たな価値観を導入することが求められる時代になりました。
そのような背景から、長年多くの企業で採られてきた「一括大量採用」の手法が存在感を失い、代わりに新卒採用でもスカウト型の手法が採られることが多くなったり、学生の志向に合わせて地域別採用や職種別採用などの個別採用が行われるようになったり、といった変化が生まれています。
こうした採用手法では、学生の志向に合わせて企業側が柔軟に情報提供を行う必要があるため、「1対多数」の企業説明会よりも、「1on1」で個別に丁寧な情報提供をする方が理にかなっているのです。
「1on1」は工数が心配?
— 背景は理解できましたが、採用担当者側の工数は大きくなりそうですね……。
曽和さん: そういったイメージがあることは分かりますが、私の経験では(1on1をした方が)採用効率はむしろ高くなっているとも考えられます。理由は3つです。
1つ目は、先ほども少しお話ししたように、学生の志向に合わせた柔軟な情報提供が必要になってきているからです。
今の学生たちは「Z世代」とも言われますが、実際には世代論でくくることができるほど各人の志向は単一的ではありません。
企業のビジョンを重視する学生、文化や働き方を重視する学生、福利厚生を重視する学生など、実に多様な価値観を持って就活に臨んでいます。
そのような学生たちを一堂に集めて一律の内容を伝える企業説明会では、結局、大部分の学生にとっては、「その企業を志望する理由」をつくり上げるだけの情報提供はできないのです。
そのため、従来の企業説明会に比べて1on1の採用効率は高いと言えます。
2つ目は、採用市場の売り手有利(学生有利)の状況が進む中、学生の活動量が低下しているからです。
10年ほど前なら学生一人で100社以上にエントリーするのも当たり前という状況でしたが、今の学生は30社以下であることがほとんどです。
それだけエントリーが少ないということは、採用活動の中で会える学生の数が限られるということでもありますので、一人ひとりの志望度を上げていくことが重要になります。
その点から、1on1でしっかり学生と向き合って、志望度向上に必要な情報をきめ細かく提供することの意味が大きくなっているのです。
そして3つ目の理由が、動画配信などを活用すれば、個別の志向を持つ学生たちに事前の情報提供がある程度は可能であることです。
1on1で一人ひとりの学生にイチから情報提供をしていては、やはり時間がかかりすぎるでしょう。 有用なのは、採用経路別、採用職種別、志向別など、学生のタイプごとに説明動画を事前に用意しておくことです。それらを通じて基礎的な情報は知ってもらった上で1on1に臨んでもらうことで、志望度向上のための情報提供に徹することができます。
結果として採用できる可能性が高まるため、採用効率が高くなると言えるのです。
話すのが苦手でも大丈夫! 新卒採用担当者の1on1ハウツー
— 新卒採用において1on1の重要性が増していることがよく理解できました。しかし、実際に面と向かって学生と話すことに自信がないという方も多いのではないかと思います。
曽和さん: はい。ではここから、具体的な1on1の進め方について解説します。ポイントは以下の4つです。
1on1のハウツー
- 時間を3つに区切って対話する
- 学生の「意思決定タイプ」を見極める
- 事前情報はできるだけ収集
- 学生からの「見え方」に注意
それぞれ解説していきましょう。
1.時間を3つに区切って対話する
曽和さん: ただ「学生と話さなくては」と思っているだけでは、限られた時間を有効に使うのは難しいでしょう。
そこで、時間を3つに(60分なら20分ごとに)区切って考えましょう。
最初の20分では「関係構築」を意識します。
面談担当者の自己紹介と雑談から始めて、学生がその後に気兼ねなく質問ができる環境を整えましょう。
その際に重要なのが「自己開示」です。自分の入社理由や、就活のことを話してみると共通の話題になるので話しやすいですね。
焦って学生の志向を読み解こうとするのではなく、まずは話しやすい友好な関係性を築くことを意識してください。
次の20分では「学生からヒアリング」をします。
就活を進める上で不安に思っていること、自社に対する疑問、知りたい情報、会社選びのポイントなどを聞いていきます。
前の20分で関係構築ができていることが前提ですが、ここでも自己開示(私もそうだった / 私は就活生時代にこう考えていた)を交えながら、親身になって話を聞いていきます。
そして最後の20分で「情報提供」です。
前の20分で得られた学生の不安や疑問に対し、真摯(しんし)に答えていきます。自社の情報を伝えるのはもちろん、より友好な関係を築くために学生の就活全体に役立つような情報提供もしていくといいでしょう。
そのようにすることで、「親身に話を聞いてくれた」「成長を助けてくれた」と感じ、結果として志望度が向上することがあります。
2.学生の「意思決定タイプ」を見極める
曽和さん: 1on1は、学生から不安や疑問を引き出し、適切な情報を提供して志望度を上げてもらうための場です。
その際、学生の「意思決定タイプ」に合わせて情報提供のスタイルを変化させることができると、さらに効率が高まります。
意思決定スタイルは、意思決定までに必要な「情報収集量」と「時間(決断の早さ)」の掛け合わせで定義することができ、どのタイプに属するかは1on1での学生の振る舞いを見ることで予測できます。
- 情報収集量が多く・決断が遅い「統合型」(エンジニア・学者タイプ)
1on1での学生の振る舞い:質問が多く、自分の意見を述べる際もこちらの意見を伺いながら慎重に話す
適した情報提供スタイル:じっくりと時間をかけて学生の疑問や不安に答え、納得感を持ってもらえるように努めましょう。 - 情報収集量が多く・決断が早い「論理型」(コンサルタントタイプ)
1on1での学生の振る舞い:論理的な言葉遣いや具体的な数字を多用する話し方で、質問が多い
適した情報提供スタイル:具体的なデータや数値を示しながら論理的に話すと効果的です。 - 情報収集量が少なく・決断が早い「決断型」(経営者タイプ)
1on1での学生の振る舞い:質問が少なく、自分の考えや意見を積極的に話す
適した情報提供スタイル:学生本人の意思決定を尊重しながら背中を押すようなコミュニケーションを取ることで、志望度の向上が見込めます。 - 情報収集量が少なく・決断が遅い「柔軟型」(クリエイティブタイプ)
1on1での振る舞い:感情的な言葉遣いや抽象的な表現が多く、質問が少ない
適した情報提供スタイル:共感を示しながら、学生の気持ちを言語化してあげましょう。丁寧にコミュニケーションを取ることが重要です。
3.事前情報はできるだけ収集
曽和さん: まず、基本としてエントリーシートなど、手に入る事前情報には全て目を通して、意思決定タイプを予測しておいたり、求めていそうな情報を集めたりしておきましょう。その方が、1on1の時間をより有効に活用できます。
4.学生からの「見え方」に注意
曽和さん: 学生は、相手の年齢や立場に関係なく、「大人」と対峙することにある程度の緊張を感じます。そのことを前提に、自分の見た目や話し方を客観的に見るようにしてください。
基本は「笑顔」です。大人になると、ついついしかめ面が出てしまいがちなので、特に注意しましょう。しかめ面の大人と相対した状態で、疑問や質問を素直に話せる学生はいません。
また、意識して柔らかく優しく話す努力も必要です。学生と企業とはあくまでも対等な立場なので、少なくとも上から目線に聞こえない話し方を意識してください。
1on1できめ細かな情報提供をしながら志望度向上を
記事の冒頭にもあったように、今の採用市場は売り手(学生)優位の環境です。企業が「選ばれる」時代であることを意識して、学生の志向や考え方を尊重した情報提供をすることが採用成功への近道となります。トークに自信がない……という方も、この記事を参考にしてぜひ1on1にチャレンジしてみてください!
- 人材採用・育成 更新日:2024/11/06
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-