2020年卒学生が入りたいと思う会社は?~[安定]から考える、学生の就職意識~
「企業選択のポイント」は、就職する企業を選択する場合、よいと思う理由を最大2つまで選択してもらう設問なのですが、2020年卒の結果を見ると、「安定している会社」(39.6%、前年比6.6pt増)がトップで、2位に「自分のやりたいこと(職種)ができる会社」(35.7%、前年比2.4pt減)、次に「給料の良い会社」(19.0%、前年比3.6pt増)、「これから伸びそうな会社(13.0%、前年比0.7pt増)が続いています。
「自分のやりたいこと(職種)ができる会社」は、2001年卒以降ずっとトップであったのですが、今回初めて「安定している会社」がトップになりました。(図1) 技術革新やAI、働き方改革など、働くことについての環境変化が大きい現在、学生は企業にどのような安定を求めているのでしょうか。
「安定している会社」の割合は2014年卒から上昇傾向にあります。一般的には、「安定している会社」のイメージは「大手企業」と結び付けやすいと思います。
図1において棒グラフは学生の大手志向(絶対大手がよい+やりたいことができるのであれば大手企業がよい)の経年変化を表していますが、実際、「安定している会社」は、リーマンショック直後の2010年卒を除き、大手志向が高まるとその割合も上昇する傾向が見られていて、2019年卒までは「安定している会社」は「大手」という意識と関係していることがわかります。
ところが、2020年卒では大手志向が1.8ptほど割合が下がったにもかかわらず、「安定している会社」は6.6ptと大きく上昇しています。学生の「安定している会社」への意識に何らかの変化が起こり、「安定」の捉え方が複雑になっているようにも感じます。
企業選択のポイントを二つ選択する際、「安定している企業」を選んだ学生が、もう一つ何を選択したのかを見ることで、2020年卒の学生における「安定」の捉え方をイメージできるかもしれません。
2020年卒において「安定している会社」を選択した学生が選んだもう一つのポイントとして、最多だったのは「給料の良い会社」(22.0%)で、「自分のやりたい仕事ができる(職種)会社」(20.9%)が続いています。「安定している会社」を選択した学生に限定した場合でも「自分のやりたい仕事ができる(職種)会社」が長年トップにあったのですが、「給料の良い会社」は年々上昇し2020年卒で初めて順位が入れ替わりました。さらに見ると、「これから伸びそうな会社」(10.5%)が3位、「休日休暇の多い会社」(10.2%)が4位に入り、いずれも2017年頃から割合が増加しています。
注目したのは、「これから伸びそうな会社」の割合が上位にあることです。
この「これから伸びそう」(「成長性がある」)を選ぶ割合の増加が、2020年卒全体で見たときの企業選択のポイントにおいて、大手志向の割合は下がっても、「安定している会社」の割合が上昇したことに関連がありそうです。
そこで、近年同様売り手市場であったリーマンショック直前で、大手志向の割合が2020年卒(52.7%)とほぼ同じ2009年卒(52.9%)と2020年卒を比較して検証してみます。(図3)
2009年卒と比べて上昇率も順位も高いのは、1位の「給料の良い会社」(22.0%、13.4pt増)、3位「これから伸びそう」(10.5% 6.4pt増)、4位「休日・休暇が多い」(10.2%、5.2.pt増)です。
上位に来ている項目は、大手企業でのイメージが強い「待遇面の良さ」などの条件についての項目が多いのですが、2009年卒に9位であった「これから伸びそうな会社」が3位へとジャンプアップしているところに注目すると、同じ大手志向の割合が高い状況でも、2009年卒では「安定している会社」は「条件が整っている」→「大手企業」に多いというイメージを持っていたのに対し、2020年卒では「安定している企業」は「条件が整っている」かつ「これから伸びそう」→「大手企業」ばかりではないに変化していると考えらます。
とすれば、2020年卒において、大手志向の割合が下がったにもかかわらず、「安定している会社」の割合が上昇していることも説明がつくのではないでしょうか。
前述のように2020年卒学生の入りたい会社としての「安定している会社」は、「条件面が整っている」だけでなく、「成長性が感じられる」も含んでいるということが考えられます。この理由を推察するに、調査時点で、好景気は続いているものの、消費税増税や2020年卒秋以降の景気に対する不安、AI普及後の職業の変化などが話題となる中、学生は先行きの不透明感から、現在の「安定」が将来の「安定」を必ずしも保障するものではないと捉え、大手企業でなくとも、「これから伸びそうな会社」は、「将来もなくならない会社」と認識し、これもまた、「安定している会社」としてイメージするようになったのかもしれません。
成長性を見込めることで、将来も安定していて、条件面も良いという会社に「入社したいというのが、学生の本音なのかもしれません。さらに「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」であれば、なお良しというところでしょうか。
大手中小、ベンチャーに限らず、将来性、成長性につながる戦略を語り見せていくことは、学生に安心感を与え、入社したいと考える選択をするポイントの一つになりそうです。
今後も、2021年卒、2022年卒の学生の就職意識の変化にも注目していきたいと思います。
- 人材採用・育成 更新日:2019/07/01
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