理系学生の就職活動について・入社予定先業種別分析
今回のコラムでは、「2018年卒の理系学生の就職活動」について「入社予定先の業種ごとの特徴」を比較・分析していきます。学生の就職活動を業種別に見ていくことで、「企業の採用活動の業種別の動向」も明らかにできればと思います。
インターンシップ参加から入社予定先決定までの流れを追うため、分析対象として、2018年卒マイナビ学生就職モニター調査
に3月から6月まで連続して回答した学生のデータを用います(対象となる理系学生の人数:652名)。入社予定先企業の情報は、6月までに入社予定先が決まった学生については、6月調査のデータを、7月に入社予定先が決まった学生については、7月調査のデータを用います。比較対象(=理系全体)には、各設問の調査月に回答した理系学生全体の結果数値を用います。
●建設(建設・設備工事、住宅・インテリア)
製造
○食品・農林・水産
○繊維・化学(繊維・化学・ゴム・ガラス・セラミック)
○薬品・化粧品
○機械・プラント
○電子・電気機器
○自動車・輸送用機器
●それ以外の製造(アパレル・服飾関連、鉄鋼・金属・鉱業、精密・医療機器、 印刷・事務機器・日用品、スポーツ・玩具・ゲーム製品、その他メーカー)
●ソフトウエア・通信(ソフトウエア・情報処理・ネット関連、ゲームソフト、通信)
●インフラ(鉄道・航空、陸運・海運・物流、電力・ガス・エネルギー)
サービス
○医療・調剤薬局
●それ以外のサービス(不動産、給食・フードサービス、ホテル・旅行、介護・福祉サービス、 アミューズメント・レジャー、コンサルティング・調査、人材サービス(派遣・紹介)、 教育、エステ・理美容・フィットネス、冠婚葬祭、その他サービス)
●その他(総合商社、専門商社、百貨店・スーパー・コンビニ、専門店、 銀行・証券、クレジット・信販・リース・その他金融、生保・損保、 放送・新聞・出版、広告・芸能、官公庁・公社・団体)
インターンシップ参加割合(=1社参加~4社以上参加の合計)が高いのは「食品・農林・水産(81.4%)」「それ以外のサービス(80.0%)」「自動車・輸送用機器(78.6%)」に入社予定先の学生でした。一方、不参加の割合が高いのは「繊維・化学(41.5%)」「機械・プラント(40.0%)」「それ以外の製造(39.6%)」に入社予定の学生でした。 多くの企業のインターンシップに参加した学生の割合が特に高かったのは「医療・調剤薬局(3社:19.2%、4社以上:36.5%)」「その他(3社:17.5%、4社以上:36.8%)」でした。「医療・調剤薬局」に入社予定の学生は、当初からこの業種を志望する割合が高いことから、業種を絞って多くの企業のインターンシップに参加したと考えられます。一方「その他」の業種に入社予定の学生は、当初からさまざまな企業のインターンシップに参加し、自分に適した仕事がどういうものか見極めようとしたのかもしれません。その結果、文系就職に相当するような「その他」の業種の企業に入社を決めるに至った、という想像ができそうです。
入社予定先業種で見たとき、最も特徴的なのは「医療・調剤薬局」です。平均5.0社と多くの企業のインターンシップに参加した後、エントリーは平均11.2社と理系全体の3分の1程度で、それ以降の活動量も明らかに理系全体より少なくなっています。それにもかかわらず内々定社数は理系全体並みの1.6社でした。複数の企業でインターンシップを経験した後、志望業種の中で志望企業を絞り込んで活動する傾向にあるようです。なお、「建設」に入社予定の学生も理系全体に比べ活動量が少なくなっています。 一方、活動量が多いのは入社予定先業種が「食品・農林・水産」と「薬品・化粧品」です。おそらく多くの同業の企業に対し、エントリーし、セミナーに参加し、面接受験をしていたのではないかと思われます。結果、内々定社数も理系全体よりやや高い値となっています。 「自動車・輸送用機器」に入社予定の学生は、エントリーやセミナーへの参加社数は比較的少ないのですが、OB・OG訪問が平均9.5人と突出して多く、1社につき2人以上のOB・OGやリクルーターに会っている場合もあるのではと考えられます。
ここでも最も特徴的なのは、入社予定先業種が「医療・調剤薬局」の学生で、就職活動を開始する前から入社したいと思っていた割合は5.8%と比較的低いのですが、インターンシップで36.5%、合同企業説明会で19.2%と、就職活動開始前後のタイミングで入社したいと強く思った割合がかなり高くなっています。他にインターンシップ参加時に入社したいと思った割合が高いのは「インフラ(19.0%)」「電子・電気機器(19.0%)」でした。 インターンシップ参加以前の「就職活動を開始する前から」入社したいと強く思っていた割合が高いのは「機械・プラント(27.5%)」「自動車・輸送用機器(26.2%)」でした。一方、「食品・農林・水産」と「薬品・化粧品」はセミナーや面接のタイミングで入社したいと強く思う学生の割合が高くなっています。企業側から見れば、セミナーや面接で自社の魅力を伝えることで、入社したいと思わせることに成功した割合が比較的高かったと言えそうです。
理系全体の1位である「企業経営が安定している」以外が最も選択されている業種で、より強く特徴が表れています。「技術力がある」が最も高い割合となっている業種が「機械・プラント(57.5%)」「電子・電気機器(53.4%)」「自動車・輸送用機器(42.9%)」「それ以外の製造(49.1%)」と4つあり、これらの業種は理系学生にとって技術力が大きな企業選択基準となっていることが分かります。それ以外の業種で最も選択された理由を追っていくと、「インフラ」は「社会貢献度が高い(38.1%)」、「医療・調剤薬局」は「福利厚生が充実している(48.1%)」、「それ以外のサービス」は「社員の人間関係が良い(36.0%)」、「薬品・化粧品」は「自分が成長できる環境がある(34.4%)」と、それぞれに明確な特徴が表れました。
入社予定先に対する満足度は総体的に高く、真ん中にあたる「どちらとも言えない」以下の満足度を選択したのは理系全体の11.0%にすぎないため、ここでは最も高い満足度を表す「十分満足している」を選択した割合で比較します。十分満足している割合が最も高いのは「機会・プラント(80.0%)」で、次が「自動車・輸送用機器(71.4%)」でした。一方、低いのは「ソフトウエア・通信(55.4%)」「食品・農林・水産(55.8%)」「医療・調剤薬局(55.8%)」などですが、いずれも半数以上が「十分満足」と回答しています。
ここまで見てきたとおり、理系学生の就職活動は、最終的に入社予定となる企業の業種によって大きく違っていました。同様の分析は文系学生についても可能なので、機会を改めて実践してみたいと思います。
- 人材採用・育成 更新日:2017/12/04
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