23年卒学生が語る「良いインターンシップ」「残念なインターンシップ」とは?
― 今日はお集まりいただいてありがとうございます。まず、皆さんの就職活動のスケジュールと、その中でどのように自身のキャリア観をつくってきたのかをお伺いしたいと思います。
まずはDさん。2年生の3月と、かなり早い時期に内定を獲得されていますが、その時点でIT業界を志望していましたか?
Dさん: 就活イベントに参加したことがきっかけで、特別選考ルートにご招待いただき、大手IT系企業から内定をいただいたんですが、実を言うとその時点では自分のキャリアを考えていたわけではありませんでした。
イベントに参加した目的も知識を得たい、就活の準備をしたいという思いの方が強かったですね。
実際、その後の就活につながる自己分析や企業選びの視点を養うという意味ではとてもいい機会になりました。最終的に、内定をいただいた企業には入社しませんでしたが……。
― それはなぜですか?
Dさん: 就活イベントの内容が悪かったとか、選考で悪いイメージを抱いたとかネガティブな理由ではなくて、それをきっかけに自分の進みたい道やキャリア観が見えてきて、それが合致していなかったというだけですね。
Aさん: 実は私も、素晴らしいと感じたインターンシップを開催した企業が結果的に志望企業でなくなった経験があります。
夏に参加した企業のインターンシップは本当に素晴らしかったのですが、それだけに自分の中にあった「本当に大切にしたい就活の軸」を見つけることができ、結果として志望企業ではなくなった、という理由です。
私は地方の出身ということもあり、日本の小さな町をもっと盛り上げたい、地方創生に関わる仕事がしたいと思うようになったんです。あのインターンシップには本当に感謝しています。
― インターンシップに参加した企業と、その後の第1志望の企業が変わったということですね。
Cさん: 私も同じような経験があります。就活の初期に多く参加したベンチャー系のインターンシップは現場感がリアルに感じられて面白く、実際の仕事を見ていても裁量権の大きさやスピード感は魅力的だったのですが、どうしても事業自体がニッチで狭く感じてしまい……。同時に志望していたエンタメ系企業が第1志望に変わりました。
― インターンシップや就活イベントによってキャリア観がはっきりし、結果として志望企業が変わるということはよくあるのですね。企業にとっては頭が痛いかもしれませんが、インターンシップが持つ本来の目的を達成しているとも言えるように思います。ありがとうございます。
― 仕事の雰囲気を肌で感じられたということですね。他の皆さんはどうでしょうか。
Aさん: 私の場合、他の参加学生が優秀で、切磋琢磨(せっさたくま)できた経験がとても良い印象として残っています。
夏季インターンシップだけで30社以上参加していたのですが、参加する軸として2つありました。ひとつは「会社の雰囲気を知ることができるか」、そしてもうひとつが「インターンシップを通じて自分自身が成長できるか」です。
中でも印象に残っているのは1週間以上かかる長期プログラムで、実際に地方自治体の職員の皆さんとディスカッションしながら地方創生プログラムを考えていく、という内容のものです。一緒に参加した学生のレベルが高く、成長環境として最高でしたね。
― 先ほども話に登場しましたが、それでもその企業を志望されなかったんですよね? 地方創生という希望分野にも通じていると思いますが……。
Aさん: はい、インターンシップも魅力的でしたし、確かに地方創生事業を行っている企業ではあるのですが、さまざまな部門を持つ大企業だけに他の部署に配属されてしまったらどうしよう……と。その心配があり、志望からは外れてしまいました。
― なるほど、ありがとうございます。まずは会社や社員の雰囲気が分かること、仕事の現場を体感できること、そして成長環境があること。この3点が「良いインターンシップ」と評価されるポイントのようですね。
逆に、インターンシップでがっかりした経験もおありかと思います。皆さん、いかがでしょうか。
Cさん: はい。若手の方がミスをしたときに、それまでニコニコしていた上司の顔色がサッと変わったのを見てしまい……、それが現実なんだろうと思いますが、やっぱり少し嫌でしたね。
Bさん: 大手メーカーのインターンシップに参加した時には、実際にお話をした社員の方が技術について詳しくないということが分かり、落胆しました。技術そのものはパートナー企業やベンダーが持っていて、それを管理するという仕事の本質が見えてしまいましたね。志望度が大きく下がりました。
Aさん: 私は、WEBインターンシップでブレイクアウトルーム(※)からメインルームに戻った際、学生に見られていないと思っているからか社員同士の会話がトゲトゲしく、一気に志望度が下がったという経験があります。
人事は「企業の顔」だと思うので、印象が良くて当たり前で、少しでも悪いとこちらからの評価が下がってしまいます。
※ブレイクアウトルーム:オンライン会議システムの機能のひとつで、全参加者が発言・視聴することのできるメインルームに対し、限られたメンバーだけで話すことのできる空間のこと。グループワークなどで用いられる。
― どれも、社風や社員の雰囲気を見るというインターンシップの目的が完全に裏目に出ている例ですね……。
Dさん: あとは、私はフィードバックをいただけないと、すごく残念な印象が残ってしまいます。自分自身の成長を目的としてインターンシップに参加しているので、フィードバックがないとインターンシップそのものに「意味がない」と感じますね。
Cさん: 私も、課題だけ渡されて後は放置されてしまったインターンシップを経験して、どうすればいいのか分からず消化不良でした……。学生の対応力を見ようというつもりなのかもしれませんが、質問しやすい時間や環境は用意してもらいたかったですね。
― インターンシップの最後に行われるフィードバックも重要ですが、進行中に細かく社員からアドバイスやフォローがあることも同じくらい重要、ということですね。
― では続いて、WEBと対面でインターンシップの充実度がどう変わるのかをお伺いしたいと思います。WEBのメリットはどのようなものですか?
Dさん: やっぱり、時間管理が楽だということはありますね。工夫すれば1日に複数のインターンシップを受けることもできますし、交通費もかかりませんし。
― そうですよね。ただ、事前に書いていただいたアンケートを見ると、メリットとして特に挙げていただいているのはそれらの点だけでした。
Cさん: そうですね、対面は確かに時間的な拘束がデメリットになると思いますが、逆に言うとそれ以外は対面ならではの良さはあると思います。私の場合、エンタメ系企業の長期インターンシップでオフィス内に席を用意していただき、完全に実務型の経験をしました。やはり、社内の雰囲気を強く感じることができて良かったですね。
Bさん: そうそう、「空気感」みたいなものは、やっぱり対面の強みですね。私も学部生時代に参加した時、プログラム内では接することのない社員の方とも会えるのは良かったですね。廊下でトイレを探している時に声を掛けてくださったり。すごく印象が良かったです。
あと、実際にオフィスに伺うと「会社帰りにこの辺りでお酒を飲んだりするのかな」とか、そんな想像ができて自分が働く姿が本当にリアルに感じられました。
― そういった、インターンシップの本編以外で得られる情報というのは対面でしか得られませんね。
― では最後にお伺いします。皆さんは有名大学に在学中で、内定先や志望企業も大手企業が中心です。しかし、皆さんのような学生と出会いたいと思われている中小企業もいます。どういう工夫があれば、中小企業のインターンシップにも参加したいと思いますか?
Aさん: 1年生、2年生の早いうちから参加できるプログラムがあるといいのではないでしょうか。就職活動全体が早期化しているので、焦っている学生は多いと思います。早期に学生がキャリアを考えるきっかけにもなりますし、競合も少ないのでいいのではないでしょうか。
Bさん: あとは、中小企業だと、やはりヒューマンリソースが足りずにインターンシップが開催できなかったり、十分なプログラムが組めなかったりということがあると思うので、私が参加したコンサルティング会社のインターンシップのように、ワンデーの濃密なプログラムを実施するのがいいと思います。
実際、その企業も少数精鋭なので人数は少ないのですが、すごく満足度の高い内容でした。
Cさん: 私の場合、自分自身の経験からも「現場」に近いことをアピールするのは有効なんじゃないかと思います。グループワークのようなプログラムは人数も準備も必要ですが、現場を体験するタイプだとあまり手間がかからないように思うので。私自身、エンタメ系中小企業のインターンシップがまさにそれで、他では得られない貴重な体験だったと思います。
Dさん: 「インターンシップで出会う社員さんと入社後は一緒に働けますよ」とアピールするのがいいと思います。大企業だと、人数が多すぎて入社後に一緒に仕事する方と会えるとは限りませんから。
あと、とあるサービス系中小企業はWEBインターンシップでしたが、デリバリーサービスで各自に食事を用意してくれて、それを食べながら同じグループの学生と話したりしました。社員さんとの距離感も近く感じられ、すごく快適で楽しかったです。
こういった工夫も、小回りの利く中小企業ならではかな、と思います。
― 皆さん、今日は貴重なお話をありがとうございました!
- 人材採用・育成 更新日:2022/05/25
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