【会員限定】「学生が選ぶインターンシップアワード」大賞受賞企業に聞く効果の上がるインターンシッププログラムの作り方
この記事は、2020年9月8日・9日に開催された人事向けオンラインイベント「JAPAN HRTV 2020 ~これからの『人材採用』と『組織』を考える2Days~」にてお送りした講座の内容を基に作成されています。
ここ数年、企業・学生双方からのインターンシップへのニーズは高まり続けている一方、プログラムの作成・フォローなど受け入れ側である企業の負担は大きく、業界・企業理解に効果的なプログラムを提供したくてもなかなかかなえられないという問題もあります。
このような課題を解決する一助として行われているのが、「学生が選ぶインターンシップアワード」です。
その第3回目となった今年は、全国より361法人482プログラムが参加し、生和コーポレーション株式会社が大賞を受賞しました。
実際にどのようなインターンシップを行い、参加学生の満足度を高めているのでしょうか。マイナビ主催のオンラインイベント「JAPAN HRTV 2020」では、大賞企業の生和コーポレーションより人事部の横川翔さんに登壇していただき、お話を伺いました。今回はその様子をレポートしていきます。
「学生が選ぶインターンシップアワード」とは?
学生の職業観かん養および社会的・職業的自立に貢献したインターンシッププログラムを表彰し、学生にとって良い効果をもたらすプログラムの傾向などを社会に伝えることで、インターンシッププログラムの質的向上および実施企業数の増加を実現し、学生と企業のより精度の高いマッチングの促進を目的とした取り組みです。
「学生が選ぶインターンシップアワード」では、インターンシップが学生にもたらす効果として次の5つを挙げています。
1 キャリアの焦点化
興味のある業界・企業・仕事内容のイメージが明確になり、やりたい事が分かってきた
2 キャリアの展望化
これまで知らなかった業界・企業・仕事内容を知り、興味の範囲が広がった
3 人的ネットワークの認知
就職活動をうまく進めるために、周囲の人々との関係性をうまく構築していこうと考えるようになった
4 就労意欲
就職活動をうまく進めるために、周囲の人々との関係性をうまく構築していこうと考えるようになった
5 自己理解
自分の強みや弱み・足りない能力を把握することができた
「弊社は、賃貸マンションの建設業を中心とした土地活用事業を行っている総合建設業です。日本に建設会社は50万社ありますが、その中で建築関係の学生が就活中に接触するのは5社から10社といわれています。つまり、説明会にも来てもらえないことがほとんどなのです」
そのような状況の中、他社にはない魅力づくりのために行ったのが、「10日間の成長型インターンシップ」だといいます。
「一般的な会社だと1dayのものがはやっていると思いますが、会社や仕事について学ぶことはできても、たった1日では自分について深掘りすることができない現状があります。そこで当社では、他社と差別化するために10日間のインターンシップを行いました。自分を深く掘り下げ、学んでいただきたいという思いから、経済産業省が提唱している『社会人基礎力』を参考にプログラムを作成しています」
では実際に、10日間でどのようなプログラムを行っているのでしょうか。
「参加していただくのは建築学科の学生なので、職業体験でコンペ用の作品を作ってもらいます。優秀作品は実際に建設の可能性もあるといううたい文句を掲げ、学生たちの挑戦意欲をかき立てるような内容にしています。また、お客さまの話を実際に聞き、コンセプトから形にして設計をするようなリアルな実務に近く、学生が授業では経験したことのないプログラムも準備しています」
インターンシップの参加人数は30人程度。学生一人ひとりをしっかりと個別にフォローできるよう、必ず1チーム3~4人になるように構成し、チームごとにメンターの社員を2人付けているそうです。横川さんはこれまでに3回のインターンシップを実施した結果、「個別フォロー」に重点を置くことが学生の満足度につながると分析しています。
「初年度はボリューム満点のプログラムを行い、満足度は高かったのですが、学生の成長にムラが出てしまいました。2年目は学生に目標や目的を聞いて、そこに注力してもらいましたが、フォローが行き届かず消化不良に。そこで3年目の昨年は、個別フォローを重視した結果、学生の成長支援につながるプログラムとなりました」
「学生は目標管理シートに日々の行動目標を記入し、毎朝自分で設定した目的と目標の確認、夜に振り返りと翌日にやることを設定します。学生自身が目標達成度に○を付けていけば自信になりますし、△が付くことがあっても明日やることが分かるようになる。メンターのフォローも入ることで、しっかりと前を向いてプログラムに参加できるような環境をつくっています。
とはいえ、学生は○を書きたがります(笑)。正直に記入しないと成長支援につながらないので、『目標を書き直したり追加していく人ほどしっかりと自分の目標に向き合ってるんだよ』と伝えることで、有効に毎日の振り返りの時間をつくってもらうようにしています」
さらに横川さんは、学生の本音を聞くためには社員と学生の距離を近づけていくことも必要だと考え、学生から社員に歩み寄っていける環境づくりにも注力しています。
「出身や所属、学年、役職のような『属性』ではなく『好きなもの』を書き出してもらう、自己紹介シートを準備しました。属性の話は、『あ、それ知っています』『そうですか』で終わってしまう。これでは共感・盛り上がりのある会話のきっかけにならないんです。でも、好きなものなら『私もそれが好きなんですよね』と共感が生まれ、お互いに歩み寄ることができ、学生の本音を聞きやすい環境をつくることができました」
社員の協力はいかにして得る?
1チームに必ず2人のメンター社員を付けるとのことでしたが、受講者からは「社員がインターンシップに協力的でなく、参加のお願いをするのが大変」という悩みの声も上がりました。横川さんは、どのようにして社員を巻き込んでいるのでしょうか。
「最初は指導力のあるエース社員に参加を頼んでも、『忙しいから無理』と断られたりしていました。そこで、実績の数字データを用意して、採用においてインターンシップがどれだけ大切かということを役員や現場責任者にプレゼンして参加協力を仰ぎました。実際に参加してくれた社員は指導に対しての自信も付きますし、今後どんな取り組みをしていったらいいかと課題を見つけてきてくれた社員もいました。来年もやりたいと積極的な反応を見せてくれた方もいます」
さらに受講者からは、「ここまで作り込んでいるプログラムだと、さらに社員教育まで発展させたりしている?」との質問も。
「そこはかなり力を入れています。インターンシップを終えた後に新人社員研修、新人の振り返り、職種別、管理職、リーダーシップ研修を通して、インターンシップでの気付きを全て反映しています。また、実際に活躍している社員が、入社後に課題に感じているところをインターンシップに入れ込んだりもしています」
社員研修とインターンシップを一体化することで、協力してくれる社員も参加しやすくなるだけでなく、社員の成長にもつながり、相乗効果が期待できますね。
さらに横川さんは、学生へのフィードバックも非常に大切だと考えています。メンター2人と人事1人、さらに同じチームの学生2人からもフィードバックをしてもらう手厚さにより、お世辞ではなく本当に自分の良い部分なんだと信じてもらい、自信につながる環境をつくっているそうです。
「参加した学生からいただく感想で共通しているのが、準備の良さや丁寧さについてです。プログラムの設計が丁寧、社員さんが優しかった、細かいところまで気を配ってくれた、など。また、アワード受賞後に大学の先生方からも、フィードバック、フォローの丁寧さが一番学生に響いたところだと評価していただけました」
さらに、受講者からの「1日のインターンシップでもフィードバックは必要?」との質問にも「日数は関係なく、個人個人を丁寧にフィードバックすることが大切」と回答。フィードバックの大切さを現場で感じた横川さんだからこその言葉でした。
コロナ禍により、今年の生和コーポレーションのインターンシップはオンラインで開催中とのこと。リアルで実施するとさまざまなシーンで社員と学生の間にコミュニケーションが起こり満足度につながっていましたが、オンライン化はコミュニケーション不足や、学生が飽きてしまうことも考えられます。どのような工夫をしているのでしょうか。
「メインのプログラムとは別に、飽きたタイミング、学生が物足りないなと感じたとき用にグループワークを30種用意しています。飽きがきたら意欲を上げるプログラム・グループ内の学生同士を仲良くするプログラム・苦手を克服するプログラムなど、さまざまです」
学生の様子を見ながらグループワークを投入することで、オンライン化でも学生の満足度や意識を高める工夫に、受講者からは「参考にしたい!」と、感嘆の声が上がりました。また、コロナ対策をしっかりとした上で、2~3日の現場体験ができるプログラムも行っているそうです。
「インターンシップの開発は大変だし運用も骨が折れますが、学生は満足度の高いインターンシップを非常に求めています。現場で学生を見ても、力を発揮できる環境を求めているなと感じます。なので、ぜひどんどんインターンシップを開発して、学生が成長してから就職してくる、そんなサイクルを当たり前につくれるようになると、インターンシップ開発も面白いのではないかと考えています」
今回のセミナーで、インターンシップとは学生の成長のため、学生の立場になって考え、丁寧につくり込んでいくことがとても大切だと感じました。その努力は結果的に自社にとっても良い影響を生み出していくでしょう。横川さんのお話をプログラム作りの参考にしていただき、来年のインターンシップアワードにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
- 人材採用・育成 更新日:2020/10/23
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