インターンシップのキャリア教育効果の検証
日本経済団体連合会は2017年4月10日に、2019年卒以降の「採用選考に関する指針」を発表しました。スケジュールは18年卒同様、広報活動開始が3月、選考活動開始が6月と示されました。また、インターンシップに関して「採用選考に関する指針の手引き」の中で、これまで大学側の単位認定に必要な「5日間以上」を日数要件としていましたが、企業がより柔軟かつ多様なプログラムを実施できるよう、最低日数要件が削除されました。但し、インターンシップ本来の趣旨を損なわないよう、教育的効果が乏しく、企業の広報活動や、その後の選考活動につながるような1日限りのプログラムは実施しないことも明記されています。そこで教育的効果はどのように測るのか、そもそもインターンシップにキャリア教育的な効果は存在するのかといった視点で分析した結果をご報告します。
キャリア教育の効果を測る方法はいくつかありますが、今回は法政大学キャリアデザイン学部が(キャリアガイダンス等の)キャリア相談実習の効果を測定する為に開発した「キャリア意識の発達に関する効果測定テスト(Career Action-Vision Test)」(以後CAVTと表記)の質問項目を使って検証しました。このテストはキャリア教育の成果を「 アクション(Action)」と「ヴィジョン(Vision)」という2つの側面から捉えます。「アクション」は、将来に向けて、どのくらい熱心に積極的に行動を行っているかを測定する項目群です。学外の活動やスキルの獲得、幅広い人脈の構築など、いろいろな活動を含みます。「ヴィジョン」は、将来に向けたヴィジョンや夢、やりたいことなどを、どのくらい明確にしているか、また、それに向けて準備しているかを測定する項目群です。この2つの項目群が相談実習の実施前後で上昇していれば、効果が認められる事になります。設問はそれぞれ6項目ずつ、計12項目で構成されていますが、今回はこれに「業界知識」と「職種知識」を仕事理解群の2項目として追加し、計14項目で検証しました。設問の選択肢は以下の通りです。。
「CAVTの質問項目」出所:『大学生の学びとキャリア―入学前から卒業後までの継続調査の分析』(法政大学出版局)より。
検証は弊社で実施している「マイナビ大学生広報活動前の活動調査」で行いました。調査概要は以下の通りです。 ■調査期間:2017年2月6日(月)~2月23日(木) ■調査方法:2月6日時点のマイナビ2018全会員にWEB DMを配信。WEBアンケートフォームで回収。 ■有効回答数3,996名[内訳:文系男子670名、理系男子764名、文系女子1,702名、理系女子860名] 本来であればインターンシップ参加前と後に同調査を実施して効果検証すべきなのですが、既に企業のインターンシップ開催期間はピークを超えていることから、1度の調査で分析できる手法を選択しました。分析は、以前もインターンシップ調査の分析をお願いした拓殖大学佐藤一磨准教授に依頼し、以下2点について検証していただきました。 1)「学生がインターンシップに参加することによる学習効果は存在するのか?」 2)「インターンシップの期間によって学習効果に違いが存在するのか?」 検証にあたっては「マイナビ大学生広報活動前の活動調査」の設問に沿って、以下を前提条件としてサンプルを限定し、コントロール変数を加味した分析を行っていただきました。これらの前提条件を踏まえた上で、インターンシップに参加している学生の方が未参加の学生よりCAVTが有意な結果が出ていると認められれば、キャリア教育に対する効果が認められることになります。
統計的な文言やデータの読み方の説明は省きますが、少なくとも企業様が実施されているインターンシップは、学生が自分の将来に向けて行動を起こしたり、自分のキャリアを考える機会として効果があることが検証できました。今回の検証は、「インターンシップは未参加ながら、就職活動以外の事前準備を行った経験を持つ学生」と「インターンシップ参加者」における比較ですので、全く準備経験のない学生と比較した場合、より明確な差が生まれる結果になるのではないかと推察されます。続いて、インターンシップに参加した学生に限定し、参加した期間がCAVTに及ぼす影響を検証してみました。 こちらも先に結論を申しますと「インターンシップの実施期間が延びるほど学習効果が高まるということではない」という結果が出ました
数字を見るとアクション項目群は期間が長くなるほど値も上昇するのですが、ビジョン項目群や仕事理解項目群(業界理解・職種理解)は必ずしも比例する関係にありません。結果、「期間が延びるほど学習効果が高まるわけではない」ことになります。 但し、この結果を持って短期間のインターンシップの方が良いということをお伝えしたいのではありません。まずアクション項目群が上昇しているので、学生が自分の将来に向けて行動を起こす効果は認められます。また、しっかりとした仕事理解に繋げる為には一定の時間を要するプログラムも必要です。例えば、正社員との交流機会や、実際のシミュレーション体験等、学生が仕事を理解する機会として、しっかりとしたプログラムを検討していただければと思います。 今回はCAVTを利用して分析を試みましたが、採用担当者視点で考えると、業界や職種に対する興味関心が高まったか、将来働いてみたい企業として認知されたか、など異なる基準でインターンシップの効果を判断するケースもあると思います。こちらは採用担当者向けのセミナー等で「参加企業への印象が良い方向に変化し、その企業で働きたい」と認識した要因を探る分析結果等をご報告しております。詳細は営業までお問合せください。 まずはこの結果を基に、19年卒以降のインターンシップをご検討いただく際の参考にしていただければと思います。
- 人材採用・育成 更新日:2017/04/25
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