外国人材を積極的に採用するべき理由とは? その準備とメリットについて聞いてみました
【プロフィール】
九門 大士 (くもん・たかし)
亜細亜大学アジア研究所教授。東京大学公共政策大学院非常勤講師。東京大学公共政策大学院で外国人留学生向けに英語で「日本産業論」を教える。主な研究分野は、留学生の就職と企業の外国人材の活用、中国・アジアでの人材育成・キャリア開発など。慶應義塾大学法学部卒業、米ミシガン大学公共政策大学院修了。ジェトロ(日本貿易振興機構)にて中国・アジアにおける人材マネジメント・企業動向のリサーチなどを担当。中国・清華大学経済管理学院にて1年間の研修。東京大学工学部特任研究員、亜細亜大学国際関係学部特任教授などを経て、現職に就く。主な著書に『アジアで働く』(英治出版)、『中国進出企業の人材活用と人事戦略』(ジェトロ=共著)など多数。
九門先生: 日本のものづくりをはじめとするさまざまな技術に関心を持っている留学生は多いですね。ある有名国公立大学の理系で学んでいたインドネシア人の留学生は、母国で家具工場を経営する祖父から「日本のものづくりはすごい」と聞いて日本に留学し、日本企業の工場見学までして大手メーカーに就職しました。また、あるシンガポール人留学生は、日本ではまだまだ世界に発信されていない技術が眠っているので、それを海外に輸出していきたいと話していました。
日本企業にはグローバル企業が多いという印象を持つ外国人材も多いので、国際的な業務に関わることも視野に入れて、技術を含め自らのスキルや専門性を高め活かしたいと考えている人は多いですね。
九門先生: 受け入れる側に緊張感があるのは当然です。「ランチに誘ってもいいのかな」とか「どんな仕事を頼めばいいのかな」と、つい及び腰になってしまいますよね。それを解消するため、人事部からの働き掛けで受け入れ部署の現場に理解を促すことは必要だと思います。
出身の国や地域によって文化は大きく違いますし、一人ひとりを見てもさまざまです。例えば、入社する外国人材がベジタリアンだとわかっていれば、歓迎会の会場を焼き鳥屋ではなくインド料理屋にすることができますよね。
こういった細かなところから、受け入れ部署にレクチャーを行って理解してもらうことが大切です。
そして何より、出身国にとらわれすぎず、一人の人間、一人のビジネスパーソンとして理解することですね。
九門先生: 日本以外の国で育ち、学び、そして日本に興味を持って留学してきた外国人材は、当然ながら日本人社員とは全く違うバックグラウンドを持っているので、採用にあたっても、一緒に仕事をするにあたっても、ある意味で「摩擦」を感じることもあるかもしれません。
しかし、その摩擦は刺激でもあり、凝り固まった企業文化、これまで不文律的に行われてきた慣習を見直すいい機会にもなります。また、摩擦を乗り越えていくなかで他国の文化から持ち込まれる新しい考え方は、新しいビジネスなどイノベーションを生み出す力も与えてくれるでしょう。
日本が外国人材の獲得に積極的になっている理由として、減っていく労働人口の補てんや、グローバル市場での優位性獲得といった点が挙げられることが多いのですが、私はそれだけではないと思っています。
外国人材が持つ一人ひとりの異なる才能を生かすことは、自社のイノベーション力や競争力の向上につながるはずです。日本企業の良さを理解している上に、文化的に全く違うバックグラウンドを持つ外国人材と仕事をすることで得られるメリットは、大きいと思いますよ。逆に、日本人の補填として日本人と同じような外国人材を求めてしまうと、コロナ禍が収束しても優秀な外国人材は日本企業に来なくなってしまうのではという危機感を持っています。今こそ、ポストコロナを見据えて外国人材のように異なる才能を生かしていく組織のあり方を考える時ではないでしょうか。
日本はいま、労働人口の減少が避けられない状況にあります。その環境下でもグローバル市場で戦うために、国際感覚のある外国人材の採用を… というのは、わかりやすい一方で規模が大きすぎて足元を見失ってしまいそうです。
目線をぐっと落として、自社のメリットという視点から外国人材の採用を考えると、とてもわかりやすくなりますね。
凝り固まった企業文化の変革や、新たなビジネス創出のための起爆剤と考えれば、わかりやすい以上に、自然と外国人材一人ひとりをビジネスパーソンとして迎えるために必要なことが見えてくるでしょう。
今回、取材にご協力いただいた九門先生の新刊「日本を愛する外国人がなぜ日本企業で活躍できないのか? 外国人エリート留学生の知られざる本音」が2020年9月29日に発売されます。
外国人エリート留学生の本音から、外国人材を生かす先進企業の事例、そしてポストコロナ時代の日本企業の働き方や組織のあるべき姿まで、採用だけでなくこの国でビジネスをする上でのヒントが詰まった1冊。今回の記事で外国人材の活用に興味を持った読者の方は、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。
<書籍情報>
書名:日本を愛する外国人がなぜ日本企業で活躍できないのか? 外国人エリート留学生の知られざる本音
著者:九門 大士
定価:1980円(税込)
発行日:2020年9月29日
出版社:株式会社 日経BP
URL: https://www.amazon.co.jp/dp/4296107070/
- 人材採用・育成 更新日:2020/09/14
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