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女性のキャリア形成の「壁」、女性特有の健康課題を改善できる方法とは?

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女性が自身の成長やキャリア形成を念頭に、高い目標を持って働くことが当たり前になった今。しかし健康に不安や課題を抱え、その当たり前を実現できない女性もまだ多くいます。「女性のヘルスケアとキャリア形成」をどう両立させていけばよいのでしょうか? 産婦人科専門医・生殖医療専門医の金田歩美先生(王子金田レディース・ペインクリニック院長)に、キャリア女性が夢をあきらめないために選択できる様々な対策を伺いました。

1:多くの女性の本音は「キャリアを手放さず、ずっと働き続けたい」

まずは働く女性がどんな健康課題を持ち、どのような対策をとっているのかを見てみましょう。「企業と従業員の健康課題への認識に関する調査」(株式会社マイナビ※1)によると、PMSや更年期障害など女性特有の健康課題に悩んでいる人が全体の41.8%に上っています。また女性特有の健康課題が原因で何かをあきらめた経験を持つ人は21.4%。約5人に1人が自分の本意ではない選択をしています。対策としては「婦人科を受診」が最も多くて20.2%。一方で「何もしていない」が63.7%と圧倒的に多く、不調を抱えながらも医療機関にまったくアクセスできていない現状が見えてきます。
「働く未婚女性の理想のライフキャリアと悩みに関する調査」(株式会社マイナビ※2)によると、未婚女性の結婚後の理想の働き方は「共働き」が7割以上。
実際にこれからの社会を支えていく上で女性は重要な担い手になりますが、健康面の理由から仕事をあきらめざるを得ない状況は、本人だけでなく社会全体にとっても損失になります。では、どんな対策が有効なのでしょうか? ここからは金田先生と一緒に考えていきます。

2:年代別で見た女性特有の健康課題。最大の壁は“古い思い込み?”

Q:実際に女性特有の健康課題が原因で、キャリアをあきらめたという患者さんはいますか?

金田先生: はい、おられます。更年期障害によってうつの症状が出て、離職してしまう患者さんは決して少なくありません。これは更年期離職と言って最近問題になっているものです。キャリア女性に限らず、先の読めない現在は多くの人にとってストレスが大きく、うつ症状を訴える人は多いです。更年期の治療としてホルモン補充療法があり、これは治療を受けた8割の方で効果が得られると報告があります。これによって症状が改善し復職される方もいらっしゃいます。また「今まで婦人科で診てもらったことがない。貧血がひどくてつらい」という40代の女性が来院され、大きな子宮筋腫が見つかったことも。その方は相談し手術による治療を選択しました。

Q:20代・30代の女性はどのような相談が多いですか?

金田先生: 20代からPMSの症状を訴える方が増えてきます。20代後半から30代にかけて生理痛の相談が増えてきます。痛さのあまり通勤電車を途中で降りる人や、救急車で何度も運ばれたため痛みを少しでもやわらげたいと切実な悩みを持って来院される方もいます。やっとの思いで休暇を取った患者さんを診察したら、子宮内膜症の一種であるチョコレート嚢胞が見つかったことも。しかし対策はあります。PMSや生理痛は、低用量ピルやその他のホルモン剤によって排卵を抑えることで治療となり、生理不順にも効果的です。ほかにも月経量が多い人には合成黄体ホルモンを子宮内に直接放出する「ミレーナ」という子宮内器具を使う選択肢も。月経困難症や過多月経の方は保険適用です。

Q:エストロゲン補充、低用量ピル、ミレーナなど、症状に応じてつらさや痛みを軽減させる手段はあるわけですね。

金田先生: はい。ぜひ伝えたいのが、生理中でも気にせず医療機関を受診してほしいこと。婦人科の受診は生理中は避けたほうが良いというのは単なる思い込みです。誤った思い込みを正しい情報へアップデートすることも大切です。生理痛に悩む娘に対して、ピルはなんとなく体に悪そうと吹き込んでしまう母親もいます。その逆で母親は勧めるのに、娘が不正確な情報によって頑なに拒むことも。最新の正しい情報を得るという意味でも、クリニックへのアクセスがもっと簡単にできるといいですね。

Q:先生は生殖医療専門医でもあり、不妊の相談も多いですか?

金田先生: 多いですね。不妊の原因は様々ですが、最近は若い方で特に多嚢胞性卵巣症候群の患者さんが目立ちます。「排卵しにくい体質」のような病気です。根本的な治療法はまだ確立されていませんが、やはり婦人科に気兼ねなく足を運んで、自分の体を知っておくことが大切です。

3:企業ができるサポートとは? 鍵になるのは健康課題を持つ女性だけでなく、全社員のヘルスケア

Q:あらためて女性特有の様々な健康課題を知りましたが、それに対して企業や組織はどんなサポートができるのでしょうか?

金田先生: 例えば休暇や時間単位の有給を取りやすい環境を作ることで、医療機関にかかりやすくなります。生理痛が重い日はテレワークで仕事ができるのなら、通勤時のつらさを削減でき、効率的に業務を進めることも可能でしょう。受診のための休暇制度、テレワークの自由化、時間休の整備、柔軟な勤務体系は、「企業と従業員の健康課題への認識に関する調査」(株式会社マイナビ※1)でも、従業員が企業に求める制度として取り上げられていますね。

Q:先生ご自身も医師としてのキャリア形成と自身のヘルスケア、子育てを同時進行してこられたわけですが、今振り返って大変だったことは?

金田先生: 私も不妊治療を受けていた一人です。自分の職場で治療を受けられたので日程調整や移動の負担はありませんでしたが、やっと授かって出産した後が大変でした。復帰後はクリニックで勤務をしていましたが、急な発熱やお迎えで何度も欠勤となり、他の先生方に外来のフォローをしていただきました。とても良い職場で感謝の気持でいっぱいですが、当時は申し訳ない気持ちと罪悪感、体調が悪く泣く我が子を置いて仕事に行く申し訳無さで葛藤していました。

Q:自分の出産で同僚の負担を増やしたという罪悪感で2人目はちょっと…という人もいるかもしれません。

金田先生: 企業や組織に期待したいのは、仕事と育児を両立する女性社員がうしろめたい気持ちにならないためにも、働く人が平等に公平感を持って働ける取り組みです。負担が増えた社員の給与を上げれば済む話ではありません。その社員も休暇は欲しいですし、自身のヘルスケアを大切にしたいわけですから。不満や不公平感を内面に抱えた社員は離職の可能性も高くなります。ストレスチェック制度が義務化され時間が経ちましたが、働き方に関する面談などを今以上に設けてもよいかもしれません。女性だけでなく男性社員の声もぜひ聞いてもらいたいです。

Q:男性のヘルスケアについては、最近、男性更年期障害をよく聞くようになりました。

金田先生: 男性更年期障害はLOH症候群とも呼ばれ、男性ホルモン(テストステロン)の減少で起こる症状です。疲労感、勃起不全、気分の落ち込みや怒りやすくなるなど症状は様々です。女性は更年期を境に女性ホルモンが徐々に減少し閉経する頃にはほぼ0に近くなります。男性の場合は男性ホルモンが女性ほど劇的な変化はないものの20歳代をピークに少しずつ低下しはじめます。そのためうつ病なのか、身体機能の衰えなのか、更年期障害なのか見極めが難しいです。仮に男性更年期障害ならホルモン補充法や症状を改善するための対処策はあります。

4:つらさに慣れる必要はない! 気軽に相談ができるツールを持っておく

Q:先生のお話を伺って、女性特有の健康課題を解決するための企業サポートがまだたくさんあることを知りました。

金田先生: 何はともあれ、女性も男性も気軽に医師に相談できる場所や方法があると、様々な選択肢・対応策を持てます。会社で次のような心配をしている男性社員はいませんか? 「女性社員がつらそうにしているけど、女性特有の症状かもしれないし、どうやって声をかければよいのだろう…」。気軽に医師に相談し、治療でつらさをやわらげることができれば、本人も気持ちよく仕事ができますし、下手に空気を読みあう必要もありません。キャリア形成という点でも、「重要なコンペが生理と重なってしまう…憂うつだ」そんな心の重りを軽くできます。そして、企業側のHR担当者は従業員の声をしっかり汲み取り、健康課題を抱える人が気軽に相談できる環境や制度を用意してほしいです。「この会社は女性が長い視野でキャリア形成できる」その声はこれからの時代においてさらに価値を増すはずです。


マイナビでは、女性が気軽に健康課題を相談できるサービス「welltowa」をご提供しています。ご興味があればお気軽にお問合せ・ご相談ください。
https://saponet.mynavi.jp/pickup/welltowa/

<welltowa とは?>

セルフケアを自走できる従業員を増やし、未病予防に繋げ、定着率向上をサポートします。

  • 【オンラインで婦人科医とつながり、女性の健康課題を「理解・発見・解決」へと導く女性健康サービス】
    組織診断レポートから、企業のHR担当者がつかみにくい、女性特有の悩みなどを「見える化」。自社の女性たちが抱える状態を知ることで、女性活躍のための本質的な制度構築にも活かしていただけます。

  • 【いつでもだれでも、気軽に専門家に悩みを相談できる健康相談サービス】
    従業員は心や身体の悩みを専門家にLINEで相談ができ、HR担当者は定期レポートから企業全体の状況を把握可能。


【データ引用元】

※1 株式会社マイナビ「働く未婚女性の理想のライフキャリアと悩みに関する調査」
調査時期 : 2023年9月8日(金)~9月12日(火)
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2024/02/mynavi-welltowa-research230313.pdf

※2 株式会社マイナビ「 企業と従業員の健康課題への認識に関する調査 」
調査時期 :2023 年 3 月13日(月)~2023 年 3 月14日(火)
https://career-research.mynavi.jp/report/20230929_60522/

  • Person 金田 歩美
    金田 歩美

    金田 歩美 王子金田レディース・ペインクリニック院長

    山形大学医学部卒業後、山形大学医学部附属病院・リプロダクションクリニック東京などを経て、王子金田レディース・ペインクリニックを設立。院長として多くの女性の診療に従事するかたわら、各メディアにおいても更年期・PMS・不妊治療などの情報を発信している。

  • 労務・制度 更新日:2024/03/28
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