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今、求められるDX人材の育成方法・コツは?体制の整備についても解説

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DXは今や時代の潮流になっています。DXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応しデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること。それとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指しますが、問題はそれを担う人材が不足していることです。

外部のベンダー企業にITを丸投げしていては、「デジタルとビジネスを結び付けて新たなビジネスシステムを創り出す」というDXの目標を達成することはできません。外部に依頼・委託するだけでなく、自社で人材を育成する必要が生まれたわけです。

この記事ではDX人材はどのように育てるべきか、その方法について解説します。

DX人材とは何なのか

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは「デジタル技術を活用して、時代に合った、より付加価値の高い製品・サービスを与えられるビジネスモデルを作ること、変容していくこと」を意味します。そのためには、デジタルとビジネスに関する知識・スキルが必要です。

それらの例を挙げると「オンライン展示会」「サブスクリプション」「オウンドメディアマーケティング」「デジタルツイン」「マーケティングオートメーション」「CRM(Customer Relationship Management)」「ERP(Enterprise Resource Planning)」「SFA(Sales Force Automation)」など、数多くあります。

これらを理解して使いこなし、新たなビジネスに結びつけ、デジタルシステムを構築できるのがDX人材です。

DX人材が求められる背景と現状

DXは、今や業種を問わず普遍的なビジネス活動になってきています。DXが成功するか否かは、それを担う人材にかかっているため、デジタル技術に精通した人材が求められます。

しかし、ICTやIoT、AIなどの急速な進展に伴いデジタル系人材への需要が高まり、IT業界は構造的な人手不足となっています。『IT人材需給に関する調査』(経済産業省、2019年)によると2025年には36万人、2030年には45万人のIT人材が不足するとの結果が出ています。

システム開発を外部に発注しているユーザー企業が、開発を内製化しようとしても、デジタル系人材を採用するのは、需要の高まりや技術の高度化、フリーランスなど働き方の多様化によって非常に難しくなっているのが現状です。デジタル技術に加えてビジネス知識も兼ね備えたDX人材となると、さらに求人倍率は高くなります。

育成するにあたっての課題

DX人材とは何なのか、自社でどう活躍してもらうかが分かっていないと育成はできません。まずは、DXの目的が明確化されていないとDX推進のための組織も、必要な人材もそのための教育計画も定まらないのです。

まず、経営戦略の中にDXを位置づけ、その戦略を実現するための組織と人材を導き出します。次に目標とするDX人材のスキルを設定しましょう。そして、自社の人材の棚卸しをし、DXに適した資質を持つ人材、つまり教育によって能力を高められる人材を選び、育成・教育計画を立案します。

人材の選び方について、参考になるものがあります。独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)の『これからの人材のスキル変革を考える ~DX時代を迎えて~』(2019年)によると、10社の企業にインタビューした結果、DXに向いているのは、「言われたことを実施するのではなく、自らポジティブに色々なことに 取り組んでくれるマインドセットを持っている」人材です。

社内公募で、このような人材をDXにチャレンジさせるのも一つの方法でしょう。注意すべきは、いくら能力・スキルのある候補者を選んだとしても、「言われたことだけやっている」人はDXに向いていないということです。

DX人材を育成するメリット

先に述べたように、デジタルとビジネスに関する知識・スキル理解して使いこなし、新たなビジネスに結びつけ、デジタルシステムを構築できるのがDX人材です。自社で人材を育成する一番のメリットは、自社ビジネスに即したシステムを構築できることです。外部のITベンダーに任せた場合、どうしても自社の経営体制やビジネス内容との齟齬が出てしまいます。

それと関連することですが、システム開発についてベンダー企業との煩雑なやり取りをしなくて済むことも挙げられます。またシステムが完成した後の修正や変更にも柔軟に対応可能です。

ITやデジタル技術において、経費面でも技術面でもベンダー企業と対等なやり取りができることも、大きなメリットといえるでしょう。過大な経費の発生を防げますし、得られた技術やノウハウを自社に蓄積できることは金銭以上の財産になります。

DX人材の具体的な育成方法

DXに意欲的に取り組む人材を集めるための有効な方法として、社内公募が挙げられます。IPAの『デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書』(2021年)によると、会社による選抜よりも、公募による選抜のほうが成果が上がっています。その際に、現在の勤務状況、経験、スキル、DXに対する本人の意欲・目標などを確認することが必要です。また、選抜方法、採用基準など公募のルールも決めておきます。

公募で人材が集まりそうにない場合は、選抜規定を作成し、それに従って教育対象者を選びます。そしてDXにおける業務について説明し、理解と納得を得た上で、育成を始めます。

育成の目的を明確にする

まず、DXで何をするかを決め、それに合わせて人材を育成します。目標が決まらないと必要な人材も決まりません。

人材像を明確にする

目標とする人材について、必要な知識、スキル、能力とそのレベルを明確にします。

能力把握・適性を見極める

既存社員の中から育成対象者を「DXに向いているかどうか」「現在の能力・スキル」「必要とされる能力・スキル」などを勘案して選定します。育成対象者については、業務に関連する資格があることも判断材料になりますが、併せてDX人材としての資質、能力、知識を人材アセスメントツールやスキルチェックツールなどで診断することが望ましいでしょう。できれば、計数化し「見える化」できると良いです。目標とする人材像に向けて、足りない能力を教育で補うようにしましょう。

IPAの『デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書』(2021年)によると、DXで成果が出ていない企業では、「育成の目的」「人材像の明確化」「能力把握」がおろそかになっているという結果が出ています。まずは、これらの点をしっかり押さえておきましょう。

また、同じくIPAの『DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査』(2020年)には、「DX適性因子(仮説)」として、以下の6項目が挙げられていますので、参考にしてください。

  • 不確実な未来への創造力
  • 臨機応変/柔軟な対応力
  • 社外や異種の巻き込み力
  • 失敗した時の姿勢/思考
  • モチベーション/意味づけする力
  • いざという時の自身の突破力

育成プログラムを作成する

自己学習から座学での一斉教育で知識を身に付け、ワークショップでのグループ活動でアイデアを出す訓練をし、実践型教育で演習を行い、OJTで実務に生かしていく、という一連の流れを体系的に組み立てます。

上記の育成プログラムには、次の2つの段階があります。

  • 能力・適性のある少人数の人材をプロジェクトメンバーに選んで育成し、徐々に育成対象を拡大していく。
  • 最終的には社員全体を育成対象とし、能力・スキルの底上げを図る中で、個々の社員のDXへの適性や能力を見極めた上で、プロジェクトメンバーを増やしていく。

DXで成果を挙げるためには、全体の底上げが欠かせません。

DX人材育成のポイント

教育プログラムを運営していく上でのポイントは、以下のとおりです。

PDCAサイクルを回す

DXに関するスキルは、すぐに身に付けられるものではないため、長期的な視点で育成します。 DXの目標設定→人材育成計画の策定→育成・教育→評価→修正 というPDCAサイクルを回します。

モチベーションアップを図る

次のような方法で、DXにチャレンジした社員のモチベーションを高めるとともに、全社員にDXへの意識づけを図ります。

人事評価

各メンバーに自己目標を設定させます。各自それぞれのペースで成長できるよう、メンバーのレベルに合った少しだけ難しいゴールにすることがポイントです。何ができるようになると昇給するのかということと、業務目標の達成が賞与に反映されることを明示することで、やる気を引き出します。金銭的な評価のほかに、フレックスタイムやテレワークなどの柔軟な勤務体系、新たなスキルを獲得するための教育制度、獲得したスキルを活かせる案件の提示など、処遇面での改善も必要です。

なお、DX人材専用の人事評価を制定し、その評価基準に沿ってキャリアを積み上げて昇進していくように制度改革することも、DX人材を育てていく上で必要になってくるでしょう。その際には、社員が主体的に業務を選択できる制度の整備も求められます。

資格取得奨励制度

情報処理技術者試験、情報処理安全確保支援士試験など、業務に関連した資格を取得した社員に奨励金を支給します。

このほかにも、DXに成果を挙げた社員の表彰やプロジェクトの事例紹介のイベントなども有効です。

教育の方法と過程

主な教育の方法と、その過程を紹介します。<参考:『DX人材の育て方』(岸和良 他, 翔泳社, 2022)>

自己学習

関連書籍やeラーニングでの学習、勉強会への参加などがあります。資格試験を目指すなどの目標を設定すればより効果的です。個人任せにしないで、会社側も金銭面、時間面で支援したほうが成果に結びつきます。

座学

多数の人間に一斉に教えるため効率はいいものの、受け身の学習になりがちなので教育効果が上がらない場合もあります。最近はオンライン学習が主流になっており、隙間時間で視聴できる動画も多いので、より効果的に学習できる環境が整ってきています。

ワークショップ

5人程度のグループに分かれて共通の課題について話し合い、その結果をグループごとに発表します。DX人材の育成に適した教育方法といえるでしょう。能動的で他者からの刺激もあるので、学習効果が高まります。ケーススタディから自社業務への適応まで、アイデア創出のトレーニングを行います。オンラインでも可能です。

実践型教育

実務の前に仮想のプロジェクトでDXを実践的に教育します。実際のプロセスに沿って演習するので、実務能力が効果的に身に付けられます。

OJT

最終的にはOJTで実務能力を育成します。これまでに学んだ知識・スキルを実際に生かすことができるようにチームリーダーなどの教育担当者が指導します。

DX人材に必要な能力の育成方法

DX人材に必要な能力は、以下の3つに大別できます。能力面から見た育成方法は次のとおりです。参考:『DXいちばん最初に読む本』(神谷俊彦 編著, アニモ出版, 2021)>

ITスキル

データを分析し、システムをデザイン・開発する力です。外部での研修や資格取得の奨励などでスキルを高めます。

ビジネスデザインスキル

新しいビジネスを創り出す力です。ビジネスの発想力と、それをデジタルスキルによって実現する能力が求められます。プロジェクトメンバーを組織してOJTで教育します。

プロジェクトマネジメントスキル

プロジェクトの目的を明確にし、それを社内に説明するとともに、社外の企業や専門家と連携してプロジェクトを進める力です。企画力・調整力・説明能力(コミュニケーション能力)・推進力などが必要になります。社内に育成できる人材がいない場合は、外部の専門家に依頼してOJTで教育してもらいましょう。

ITスキルとプロジェクトマネジメントスキルは、外部の人材に教育してもらうことも効果的です。商工会議所、中小企業庁などの公的機関には、ITコーディネーターなどの専門家を派遣してくれる制度があります。

一方、ビジネスデザインスキルについては、自社の業務を把握していることが前提となるため、内部人材である該当者がプロジェクトを組み、DX戦略を企画立案することが原則です。

スキルのレベルと適性によって業務を決める

上記スキルを1人で全て兼ね備えるのは難しいので、プロジェクトチーム全体でカバーするようにします。メンバーのスキルのレベルによって担当業務を決めるのが望ましいですが、当初のレベルが低くても能力と適性があり、教育でスキルを飛躍的に伸ばせる場合もあります。実践型教育の段階でレベルの見極めができるので、その後のOJTで業務の振り分けをするのがよいでしょう。

DX人材育成のための体制を整備する

人材育成は個人ではなく組織的に、一部ではなく全社的に行います。そのためには、社内体制の整備が欠かせません。

新たなスキルを身に付けるリスキル、知識をアップデートするリカレント教育などのプログラムを設け、全社的にDXの体制を整備します。経済産業省や厚生労働省などの管轄機関が行っている教育プラットフォームも利用するとよいでしょう。経済産業省の「マナビDX」 や巣ごもりDXステップ講座情報ナビ 、厚生労働省の「ハロートレーニング」などがあります。

なお、厚労省では「中小企業等におけるDX人材育成の総合的な推進」として、生産性向上人材育成支援センター(全国87か所)に「中小企業等人材育成支援窓口」を設置し、中小企業等からの「デジタル対応に係る人材育成の悩み」に対応しています。また、同センターにDX人材育成推進員を配置(全国100人)して、中小企業等がDXに対応するための人材育成を総合的に推進していますので、指導を仰いではいかがでしょうか。

全社DXの組織・教育体制を整える

全社的に教育体制を整えるひとつの例として「DX推進室」などの部署を設け、人材の育成とプロジェクトの推進を主導します。プロジェクトメンバーの育成が進んできたら、DXを推進するデジタルリーダーを任命するなど、社内全体にDX教育の体制を整えることが望ましいあり方です。

「全社」ですから、経営層も含まれます。他社のDX事例や最新技術情報を収集し、定期的に勉強会を開くなど、トップが範を示さなければなりません。IPAの『デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書』(2021年)によると、全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる企業ほど、成果を出しています。

社員が身に付けるべきデジタルリテラシーを示す

経済産業省の「デジタルスキル標準」などを指針として、DXの知識・スキルにつき「①全社員が身に付けるべき基礎的なもの」「②DXを推進する専門的なもの」を示します。

また、デジタルリテラシー協議会が提唱している『De-Lite』には、IT・ソフトウェアや数理・データサイエンス、AI・ディープラーニングなどについて、デジタルリテラシー範囲と推奨資格試験が示されているので、参考にするといいでしょう。

リスキリングとリカレント教育

指針で示された知識・スキルの習得を、リスキリングやリカレント教育に結びつけます。特に、既存のIT人材をリスキリングして、先端(データサイエンスやAI等)IT人材とすることが重要です。

教育の効果を上げるために、①マインドセットで学習のモチベーションを高め、②何を学ぶかの学習対象と③それをどう学ぶかの学習方法を決め、最後に④テストや検定などで評価します。

リスキリングやリカレント教育については、先述した経済産業省の「マナビDX」 や、厚生労働省の「ハロートレーニング」のほかにも、支援施策として厚労省が教育訓練給付金や人材開発支援助成金など、経産省が資格試験などを実施しています。また、民間でも多数の講座や学習コンテンツが提供されていますので、利用することをお勧めします。

育成方法の事例(住友生命)

ここで、実際の育成事例として、住友生命が行っている教育プログラムを紹介します。<参考:『DX人材の育て方』(岸和良 他, 翔泳社, 2022)>

マインドセット研修

マインドセットとは仕事に関する意識や考え方、ポリシーのことです。DXとは何かを理解させるためのカリキュラムで、1日コースの研修をします。講義とグループワークを組み合わせ「DXの基礎用語」「ビジネスモデルの変革」「事例研究」を学んだあと、「新たなビジネスモデル」を考え、理解を深めていきます。

ビジネス発想力研修

プラットフォームやネットワーク効果などの「ビジネスの仕掛け」を学び、自社にどのように生かせるかを考えます。ワークショップでアイデアを出し合い、実践型研修で解決テーマを提示して実務に近づけます。

育成すべき職種

DXには、IPAが、DX推進人材の種類として定義した以下の6職種があります。

  • プロデューサー(DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材)
  • ビジネスデザイナー(DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材)
  • アーキテクト(DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材)
  • データサイエンティスト/AIエンジニア(DXやデジタル技術、データ解析に精通した人材)
  • UXデザイナー(DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材)
  • エンジニア/プログラマー(デジタルシステムの実装やインフラ構築を担う人材)

これら各職種に共通して必要とされる能力は「データをビジネスに活用する能力」「システム開発などデジタルを活用する能力」「ビジネスモデルを創り出す能力」です。これに加えて、「ビジネス発想力」「プロジェクトマネジメント力」「社内調整力」など、実務に必要とされる能力があります。

住友生命では、上記6職種を次のように分類した上で育成しています。

①上流DX4人材(プロデューサー、ビジネスデザイナー、アーキテクト<業務>、UXデザイナー)

ビジネスの仕掛けが分かる人材です。

座学型研修は少なくして、自己学習、ワークショップ、実践型演習、OJTを連動させて行います。自己学習で学んだことをワークショップで話し合い、ワークショップでは事例研究など「調べたこと」を、実践型演習では実際の社会課題の解決について「考えたこと」をグループで発表します。この段階で、ビジネスアイデアを企画書にまとめます。

②データ分析人材(データサイエンティスト) 

データを分析するデータサイエンス人材、ビジネスを発想するデータビジネス人材、システムを開発するデータエンジニアリング人材に分けられます。この3つのスキルを兼ね備えていなくても、主にそれぞれの能力を持つ人材を育成するのが現実的です。

データサイエンス人材には統計・数学・プログラミングなどの知識や経験のあることが望まれます。その上で、社内だけでなく社外のeラーニングで自主学習したり、ワークショップや実践型研修に参加させたりします。

データビジネス人材は、ビジネス部門での実務経験や専門知識を有することが前提になります。その上で、データやAIでできることについての知識やデータ分析プロジェクトの企画・推進方法などの実務を学びます。

データエンジニアリング人材は、既存システムのスキルを有する担当者をリスキリングする形で育成します。eラーニングや教育ベンダーのプログラム受講などで知識・スキル獲得を目指しましょう。

③システム開発人材(アーキテクト<インフラ>、 エンジニア/プログラマー)

システムを開発する専門的な人材です。

既存システムを開発・保守してきた人材をリスキリングします。本やeラーニングなどで自己学習し、DXが目指すシステムと既存システムの違いを座学で研修します。その上で、実践型演習ではチームメンバー同士で学び合うことにより学習効果を高めます。

以上、いずれの人材育成においても、最終的にはOJTによって実務能力を身に付けさせます。

OJTのポイント

OJTでは、次のことを押さえておく必要があります。

知識・スキルを実務に生かす

足りない知識やスキルを把握し、それを教育によって身に付け、OJTでその知識を使って実務に生かしていけるようにします。

チーム運営の方法を学ぶ

仕事のルールを決め、無駄な時間をなくし、リーダーが方針を決めて組織的に動けるようにします。

オープンイノベーションを活用する

社内だけの教育では、DXに求められる「ビジネスモデルの変革」には限界があります。「オープンイノベーション」とは、社内にない知識、スキルを社外に求める方法です。社外の人と意見交換をすることで、新しいアイデアが生まれるようになります。また、勉強会やセミナー、SNSなどで社外の人脈を作ることも望ましいです。社外で学んだことをOJTに生かすようにしましょう。

まとめ/DX人材育成のコツ

DX人材育成のコツは、会社と社員に合った方法で行うことです。

自社での教育が難しければ、最初は教育ベンダーを利用する方法もありです。それによって育成した人材を講師にして、自社に合わせたDX人材育成プログラムを作成・実施し、PDCAサイクルを回していきましょう。

また、全ての人材の育成が難しければ、DX人材に必要なスキルの中で、内製化するスキルと外部に委託するスキルを分けるのもいいでしょう。自社に合った方法を無理のないやり方でするのが現実的です。

DXはビジネスモデルの変革を目指すものですが、自社の状況を鑑みて、そこまで目指せる状況にないなら、レベルを低くして業務のIT化から始めてもいいでしょう。それに合った人材を育成するということなら、敷居も低くなります。IPAの「デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書」(2021年)でも、ビジネスモデルの変革まで成し遂げたのは3割弱です。それで満足していいわけではありませんが、人材育成には時間がかかることを覚悟しておくべきでしょう。

また、育成しようとする人材が、DXに向いているか否か、性格や資質、能力によっても育成プログラムは異なってきます。人材の選定と、それに合わせた育成の方法をよく考え、社内プロジェクトを組んで行う必要があります。

なお、同報告書によると、DX人材の資質として求められる「新しいスキルの習得」や「さまざまな挑戦の機会」について企業側の要望は高いものの、従業員側が 低くなっています。このことから、学びに対する従業員側へのさらなる動機づけが必要と思われます。 最後に、DXは一部の社員が行う特殊な活動ではありません。デジタルリテラシーの理解・活用・実践の順に、全社的な教育を行います。全社員がDX人材となることが求められているのです。

  • Person 敦賀 吉継

    敦賀 吉継 国家資格キャリアコンサルタント

    人事労務の専門誌の取材記者として、記事の執筆・編集に従事。現在は専門学校にて留学生への日本語教育と進路指導に携わり、キャリア形成支援に力を入れている。

  • 人材採用・育成 更新日:2023/05/18
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