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従業員エンゲージメントを向上させる10の要素

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企業の業績を向上させるために従業員エンゲージメントが注目されるようになりしばらく経ちますが、どの企業にとっても成果を上げるのはなかなか難しいようです。 『Build It: The Rebel Playbook for World-Class Employee Engagement』の著者グレン・エリオット氏とデブラ・コーリー氏は、従業員エンゲージメントが向上しない原因は、エンゲージメントを改善するために取り組む課題が間違っていることにあると指摘します。そして、従業員エンゲージメントがどのように企業の業績を向上させるか、また従業員エンゲージメントを促進する主な要素とその作用について解説しています。その概要をご紹介しましょう。

従業員エンゲージメントを向上させるメリット

従業員エンゲージメントとは、従業員の企業に対する信頼度や、企業に貢献したいという意欲を指します。従業員エンゲージメントの高い従業員が多いほど、より良く、より強く、より回復力のある組織を構築することができます。

従業員エンゲージメントの高い従業員が優れた組織を構築する3つの理由

従業員エンゲージメントが高い従業員が優れた組織を構築する主な理由は3つあります。

  • 従業員エンゲージメントが高い従業員は、組織が目指す方向性や顧客の特徴などを理解できており、良い決断ができる
  • 従業員エンゲージメントが高い従業員は、自分の仕事が好きなため生産性が高い
  • 従業員エンゲージメントが高い従業員は、組織の成功を願うため、より多くのイノベーションを起こす

従業員エンゲージメントを向上させるための「エンゲージメント・ブリッジ」とは

本書では、Engagement Bridge™ (以下、エンゲージメント・ブリッジ)という10部構成のモデルを元に、企業における従業員エンゲージメントを向上させるために、どこに焦点を当てたらよいか解説しています。エンゲージメント・ブリッジの目標は、従業員が自分の仕事や組織に熱中できるような条件を作り出すこと。著者は世界中の2,000社以上の企業との仕事を通じて、このモデルの開発に10年を費やしました。

エンゲージメント・ブリッジの10の要素

エンゲージメント・ブリッジの10の要素のうち、7つは組織と従業員をつなぐ橋となります。そして残り3つの要素は、橋を支えサポートする土台となります。

橋となる部分

  • オープンで正直なコミュニケーション
  • 目的、使命、価値観
  • リーダーシップ
  • マネジメント
  • ジョブデザイン(従業員が熱中できる仕事上の役割をデザインすること)
  • マネジメント
  • 学び
  • 承認

橋の土台となる部分

以下の3つの土台がしっかりしていなければ、7つの要素を乗せても橋がぐらぐら揺れてしまいます。

  • 給与と福利厚生
  • 幸福(心身の健康)
  • 職場環境

エンゲージメント・ブリッジで重要なのは順序ではなく、すぐに行動できるところから始めることです。また、従業員エンゲージメントの向上において100%を目指す必要はありません。より努力をすれば、より大きな結果が出ます。
エンゲージメント・ブリッジの要素は、上で紹介したように10ありますが、本書では関連する要素をまとめて5つのグループにしています。そのグループに沿って、それぞれの要素がどのようなものか解説します。

①オープンで正直なコミュニケーション

オープンで正直なコミュニケーションは、エンゲージメント・ブリッジの基盤です。著者によれば、従業員エンゲージメントに成功している企業で、この分野の努力をしていない企業はありません。 オープンで正直なコミュニケーションが重要なのは、従業員の信頼と密接に結びついているためです。信頼がなければ、従業員が企業の使命や目的を第一に自発的に考えるエンゲージメント文化をつくることは困難なのです。

オープンで正直なコミュニケーションを実現する5つのポイント

  • 透明性を基本にして、すべての情報を公開する。SlackやGoogleドキュメントなど密接なコミュニケーションをとるためのツールを使う。
  • 何かの「方法」を説明するときに「なぜ」という理由を説明することに重点を置く。
  • 反対意見、意見の相違、意見の多様性を受け入れる。
  • 受け手の気持ちを考え、温かい気持ちで継続的なコミュニケーションをとる。
  • 横方向のコミュニケーションを活発にするため、チームや部署を超えて交流する場を設ける。

②使命、目的、価値観

明確な方向性と目的、そして価値観に沿って一貫した行動様式を持つことで、従業員のエンゲージメントが高まります。使命、目的、価値観を持つことで、お金を稼ぐだけではない充実感を得ることができます。自動車メーカーのフォードは「私たちの車をよりよくし、従業員を幸せにし、地球をよりよい場所にするために、さらに先へ進みたい」という使命を掲げています。

ソフトウェア会社のアトラシアンは「すべてのチームの可能性を解き放ち、ソフトウェアの力で人類を前進させる」という使命を掲げています。Googleの目標は「世界の情報を整理し普遍的にアクセス可能で有用なものにすること」です。それぞれの企業の使命は異なりますが、従業員の仕事に使命や目的を提供する役割を担ってます。

  • 使命(Mission)-組織が「何をしたいか」という使命
  • 目的(Purpose)-「なぜ」その使命を達成したいかという目的
  • 価値観(Value)-使命を達成するために「どのような」行動をするか

③リーダーシップ、④マネジメント

リーダーシップとマネジメントは、エンゲージメント・ブリッジの中で別々の要素ですが、2つのつながりを強調するために一緒に考えてみましょう。 例えば、優れた顧客サービス、イノベーションへの献身、そして人々を公平に扱うことができるリーダーが本社にいたとしても、各支店のマネージャーが、それを提供する権限を持っていなかったり、意欲を感じていなかったりすれば、上手くいきません。そのため、密接に絡み合うこの2つの要素は一緒に考えるべきです。

従業員エンゲージメントを向上させるリーダーになるために

従業員を理解し、エンゲージメントを向上させるリーダーになるためのポイントを挙げてみましょう。

1企業の使命(Mission)を第一に考える

短期的な利益やその他の目標よりも、企業が掲げる使命を可能な限り優先します。

2企業の価値観を実践する

ほかのメンバーの手本となるよう企業の価値観を実践します。

3顔色をうかがうよりも正しいことを優先する

ビジネス、顧客、従業員のために正しい決定をするためなら、嫌われ者になる覚悟を持ちます。悪いニュースもメンバーに正直に伝えます。

4人間味を大切にする

謙虚さや誠実さ、弱みを見せる勇気を持ちます。思いやりと優しさを持って導き、チームメンバーのことを本当に気にかけていると示していきましょう。

5誠実に行動する

正直さと率直さを持ち、ビジネス上だけではなく、本当の正直さのために努力します。

⑤ジョブデザイン、⑥学び、⑦承認

学びや成長の機会は、最初から組織に組み込まれていることが大切です。承認(レコグニション)とは、従業員の仕事の成果や本人の努力を認めて感謝の気持ちを示すことを指します。この3つも非常に強いつながりを持っています。 例えば、意味のあるアウトプットでも、達成感を感じられず、やっても誰にも褒められないような退屈な仕事をしていては、どんなに研修を受けても効果がありません。

従業員エンゲージメントを向上させるには、ある程度の自律性を持ち、承認され、有意義な結果を生み出す役割に就く必要があります。そしてどんな仕事でも、時間の経過とともに発展し進歩しなければ、魅力的ではありません。

ジョブデザインのポイント

1 失敗と成長する自由

失敗すること、成長する自由があること。何かに挑戦して上手くいかなくても、適度なコストで逆転することはできます。成長、開発、革新を妨げないことが大切です。

2 説明責任と可視性

説明責任とは、従業員が権限を持つ仕事の状況や詳細情報を、関係者に説明する義務のことです。成果がはっきりと目に見える役割をデザインし、担当者が説明責任を持つようにします。

3 企業の使命に合った役割

企業が掲げた使命(ミッション)に合った役割を考えます。

4 集中力のある機敏なチームづくり

チームがどのように協力し一緒に成功するか考えます。例えばAmazonには2枚のピザを分けられないほど大きなチームを作ってはいけないという「ピザ2枚ルール」があります。

5 将来の進化を考えた役割づくり

タスクや一貫性よりも、責任と成果に焦点を当てた、より緩やかな役割定義を作成します。手順や技術が改善されても流動的にできること、役割の中で成長、発展、前進できるようデザインしましょう。

学ぶことができる文化をつくる3つの要素

従業員が成長し自発的に多くのことを行えるように、仕事の中で学ぶことができる文化を持ちましょう。そのために考えるべき3つの要素は次の通りです。

自由と自律性

ストレスや不安を感じずに行動できる範囲をコンフォートゾーンといいます。例えば職場では、自分の持っているスキルの範囲内で何でもできるコンフォートゾーンにいると居心地はいいのですが、学ぶ機会がありません。学ぶことができる文化のためには、コンフォートゾーンの外に出て、新しいアプローチを学び、試す余地があるような仕事を設計することが必要となります。

野心

より良いことをし続け、次の足掛かりを探したいということが学習意欲につながります。それがなければ成長も発展もありません。野心を持てるような工夫が必要です。

失敗を受け入れる

従業員が間違えることを恐れてはいけません。企業文化が失敗を受け入れなければ従業員は成長できません。

承認(レコグニション)のポイント

従業員を認めて励ます承認(レコグニション)にもポイントがあります。

  • 承認はタイムリーかつ継続的に。
  • 特別なルールはいらない。信頼を築くことを目的にし、良いところがあったら褒める。
  • 企業の価値観に合った行動を評価する。
  • ほかの部署、チームとの関係を強化する機会にする。
  • 承認される人にギフトを贈ったり、カードを添えたりすることでパーソナルな体験にする。

⑧給与と福利厚生、⑨幸福(心身の健康)、⑩職場環境

最後の3つの要素は、エンゲージメントの戦略を支える要素であり、ほかの要素とは異なります。この3つだけでは従業員を引きつけることができませんが、非常に重要な要素であることは確かです。この3つが充実していないと、エンゲージメント・ブリッジの土台部分が弱くなり橋がぐらついてしまいます。そして土台ですから、まず初めに対策するべき要素です。

  • 給与が公正であることを最優先する。
  • インセンティブ報酬を全社的なプログラムに置き換え、セールスのような特定の職種だけでなく、管理職や研修の指導者などにも適用する。
  • 個性を生かせるクリエイティブな活動や、従業員が望む研修を福利厚生で可能にするなど、文化的な差別化に生かす。
  • 福利厚生を利用して企業の価値観を最大化する。
  • 福利厚生に関しても、ほかの業務と同様、従業員の意見を聞き取り柔軟に改善していく。

まとめ:職場慣行を見直して従業員エンゲージメントを向上させよう

エンゲージメント・ブリッジの目的は10の要素を職場で見直し、従業員エンゲージメントを向上させるために改善できるポイントを見つけることです。そこから、従業員が自分の仕事や組織に熱中できる条件を作り出すことができます。

Build It: The Rebel Playbook for World-Class Employee Engagement (English Edition)
著者 : Debra Corey /  Glenn Elliott
出版社 : Wiley; 第1版 (2018/2/1)
ISBN-10 : 1119390052
ISBN-13 : 978-1119390053

  • 人材採用・育成 更新日:2023/03/22
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