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その質問の仕方で大丈夫? 新卒採用面接における「学生の本質を見極める方法」

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新卒採用の現場では、日々さまざまな広報手法や採用手法が開発され、提唱され続けていますが、「見極め」の領域で相変わらず重要度の高いプロセスが「面接」です。

これをお読みの採用担当者の方の中には、シーズンを通じて100人以上の面接を行っているという方も少なくないでしょう。
そして一方では、面接の効果について疑問を持たれている方もいるのでは?

そこで今回は、多くの企業に採用コンサルティングを提供している株式会社人材研究所の代表、曽和利光さんに「面接で学生の本質を見極める方法」について伺いました。

お話を伺ってみると、そこに「王道」はないようですが、絶対に踏み入ってはいけない「邪道」は確実に存在するようです。

― 曽和さん、今日はよろしくお願いします。今回は面接についてお話を伺いたいと思っていますが、日々さまざまな企業から相談をお受けになる中でよく見られる傾向や実態についてお聞かせください。


曽和さん:はい。まず前提として、多くの企業で「ファクト」、つまり実際にあった事や事実をベースとした候補者の評価ができていないようです。
面接はコミュニケーションですので、どうしても話のうまい学生や、珍しいガクチカを持っている学生を高く評価してしまいやすい傾向にあります。本当に重要なのは、その「話」や「ガクチカ」のベースとなっているファクトなのに、です。

もちろん、学生側の問題ではありません。「ベテランの就活生」は一人もいませんから、話すことや話の深さなんかは基本的にそれほど変わらないんですね。問題は面接官にあります。ファクトを聞き出すことの重要性に気付いていないということが多いようです。

― 面接におけるファクトの重要性については後ほど詳しくお話を伺いたいと思いますが、そのような状況が生まれやすいパターンというのはあるのでしょうか?


曽和さん:ベテランの面接官に多い傾向があります。「自分は人間の本質を見抜くことができる」と過信して、ファクトをおざなりにした質問をしてしまいやすいんです。

例えば「○○についてどう思うかね?」「こんな時はどうするのかね?」みたいな質問ばかりする面接官に覚えはありませんか? 私はあれを「大喜利面接」と呼んでいます。面接官が納得する答えが言えたら1ポイント(笑)。

― なるほど……そういう面接官は確かにいそうですよね。面接官個人の感覚ではなく、ファクトに基づいた評価をすべきということですね。


曽和さん:面接というのは最終的に面接官が評価を下すものなので、その点は間違っていないんです。重要なのは、おっしゃるとおり「ファクトに基づいた評価ができているか」という点に尽きます。

― ここから、曽和さんが何度となくおっしゃっている「ファクト」の重要性についてお伺いしたいと思います。ファクトをベースとした面接での評価とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?


曽和さん:はい。例えば、面接官を数年やっていれば、ラクロス部の話なんて飽きるほど聞くことになるんです。「チームワークの重要性を学びました」「厳しい練習を乗り越えて耐え抜く力を身に付けました」みたいな話ですね。

なので、ベテランの面接官は学生が「ラクロス部に所属していました」というだけで、「チームワークに長けた忍耐力のある学生なんだろうな」と思ってしまうんです。

しかし、そこに「ファクト」はありませんよね。面接官が勝手に想像しているだけで、事実かどうかは分かりません。

― アンコンシャスバイアス(※)の話にもつながりそうですね。


曽和さん:まさにそうですね。「□□部出身なら○○だろう」「そんな経験をしたのなら、きっとこんなことができるだろう」と勝手に想像してしまう、その原動力がまさにアンコンシャスバイアスです。
そして、それは自身の経験への過信から生まれます。だから、ベテラン面接官ほどファクトを見抜けなくなってしまいがちなのです。

アンコンシャスバイアスに陥らないためには、「ラクロス部に所属していました」と学生が言うなら、「どんなスポーツ? どんなポジションだったの?」というくらいに知らないふりをして、どんどん相手に話させなくてはいけません。
想像しないで、ちゃんと相手に言わせるということ。これが「ファクトを捉える」ということです。

※ アンコンシャスバイアス:Unconscious(無意識の)Bias(偏見)。過去の経験や知識から事実に基づかない解釈・判断をしてしまう脳の動きのこと。

― 話を先読みして勝手に評価しない、ということですね。


曽和さん:そうです。普段のコミュニケーションでこれをやっていたら「察しの悪いやつだなぁ」と思われてしまいますが、面接の場ではその振る舞いが正解ですね。
いったん、自分の持っている過去の知識や経験をリセットして、ゼロベースで相手の話を聞くということが重要です。

― 相手の言葉からファクトを探って評価するわけですから、身振り手振りや表情のような非言語情報が受け取りにくいWEB面接でも有効な方法のように見えますね。


曽和さん:そういう面は確かにありますが、一方で相手(学生)の言葉で話させるという特性上、話が下手な人が評価されにくいという面もあります。
事前に質問項目を伝えておいて学生に準備の時間を与えるなど、公平な評価のためには準備も必要です。

― 面接官側も練習が必要そうですね。


曽和さん:確かにそうですが、「行動評価面接法(BEI:Behavioral Event Interview)」とか「コンピテンシー面接」とか「スター面接」みたいに呼ばれるテクニックを身に付けるだけですから、意外と難しいことではありません。

どれもコアにあるのは「どんな場面で、どんな問題があって、そこで何を考え、どう行動し、どんな苦労があって、どんな結果を得たのか」と丁寧に聞いていくというルールです。

ラクロス部の話で言うなら、「チームワークの重要性を実感したのはどんな場面でしたか? なぜ、そのときにチームワークが必要だと思いましたか? あなたはその時、どのように考えて行動しましたか? 結果として、何が得られましたか?」と細かく聞いていく、ということになります。

知れば意外と難しいことではありませんが、コミュニケーション能力の高い人ほど、これを自然に行うのが難しいという面がありますから、慣れは必要になるかもしれません。

― とはいえ、「ファクト」を知るだけでは評価はできませんよね。評価基準も定めておく必要がありそうです。


曽和さん:そうですね。ファクトを引き出す面接ができるようになっても、評価基準が間違っていれば、「ミスマッチな人を正確に採用する」という最悪の事態になりかねません。

これは意外とよくあることです。ある会社では採用したい人物像として「素直で従順な学生」と定めていましたが、実は社内のハイパフォーマーには従順性の低い人が多く、従順性の高さは早期退職者の特徴だったと分かりました。
つまり、その会社では面接でしっかりとファクトを捉えて、分析した結果、正確に「早期退職者」ばかりを採用してしまっていたのです。

― それは…… 大騒ぎになりますね…。


曽和さん:はい(笑)。だから、人材要件の定義が重要です。方法はさまざまですが、ポイントはここでも「ファクトを集めること」です。

人材要件を定義しましょう、というときよくやってしまうのが、「人事責任者や経営者に理想の人材像をヒアリングする」とか、「ハイパフォーマー自身に、その人が大切にしていることをヒアリングする」といった方法ですが、これだけでは足りません。

例えば、ハイパフォーマーに面接(インタビュー)をして、先ほどお話しした「BEI」に基づいてファクトを分析するような方法がおすすめですね。
トップ営業マンが口では「とにかく根性が大事だ!」と言っていても、行動評価面接法で話を聞くと実は「綿密な事前準備と手厚いアフターフォロー」こそがコアにあったと分かる。そういうことは非常によくあることです。

― 社内の人にも面接をするわけですね。目からうろこです。


曽和さん:他にも、今の時代なら職務適性検査などを活用して新しいタイプのハイパフォーマーを模索するというのも大切です。
今いるハイパフォーマーを再生産するのも重要ですが、これからは若年人口がさらに減少を続けます。人口が減っているのだから、望む能力値を持つ学生の数も減っているはずです。
となると、計画した人数を採用できない恐れがあります。だから、他のタイプもハイパフォーマーになり得るのではないか、と考えていくことが求められますね。

― 新しいハイパフォーマーを模索する。なかなか難しそうなテーマです。


曽和さん:業務分析によって、それぞれのポジションに求められる職務適性を分析していく、という科学的なアプローチになります。
ただし、そのときに「自責意識が高い人がいい」とか「素直な人がいい」みたいな日本の文化に照らして、一般的な「社会的望ましさ」といえる言葉が出てきたら要注意です。思考停止を疑い、改めて問い直しましょう。

ここまで、曽和さんのお話から「ファクト」の重要性をひも解いてきました。「ベテラン面接官ほど、ファクトを引き出せない」というお話など、ドキッとすることも多かったのではないでしょうか。

そして最後に、人材要件のお話もありました。
人材要件とは、自社で採用したい・するべき人材を「言葉で」定義したもののことを指しますが、人材要件を持っているという企業であっても、その中には「コミュニケーション能力の高い人」のような、曖昧な表現が含まれているのではないでしょうか。

往々にして、企業が考える「人を表現する言葉」は、多義的で曖昧になりがちです。
先ほど例に挙げた「コミュニケーション能力が高い人」をひとつとっても、「相手の気持ちを想像できて、感受性が豊か」「自分の考えを適切に表現できる」「人が好きで社交的」「人を納得させる交渉力がある」など、非常に多義的な言葉であることに注意が必要です。

定義のブレがない言葉で評価基準を定めないと、一人ひとりの面接官が違った評価を下す可能性がありますので、せっかく引き出したファクトも無駄になりかねません。
言葉に内包された具体的な意味をしっかりと共通言語化し、評価へ落とし込むことも、見極めにおいて非常に重要になってくるでしょう。

そこで今回、多義的な言葉を具体的に言語化したリストをダウンロード資料としてご用意いたしました。面接官同士の目線合わせだけでなく、自社の求める人物像が意味する能力はどれに当たるのかの再確認にも、ぜひご活用ください。

  • Person 曽和 利光
    曽和 利光

    曽和 利光 株式会社人材研究所 代表取締役社長

    1971年、愛知県豊田市出身。1995年、京都大学教育学部教育心理学科を卒業。株式会社リクルートで人事採用部門を担当、ゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を確立し、2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。企業の人事部へ指南すると同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

  • 人材採用・育成 更新日:2023/03/10
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