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SNS採用とは?メリット・デメリットや導入方法、スカウト活用の手法を解説

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デジタルパイオニアとよばれるミレニアル世代や、デジタルネイティブ世代をはじめとした人材を探し、採用するためには、強力な戦略が必要です。新卒だけでなく、中途採用においても効果的な方法の一つとして「SNS」を採用に活用する方法があります。
本記事では、主に中途採用において、SNS採用を活用するメリットやデメリット、SNSが特に高い効果を発揮する採用手法、SNSごとの特徴を解説します。また、SNSを採用に活用する際の具体的なフローと、注意すべき点についても紹介します。

SNS採用(ソーシャルリクルーティング)とは

SNS採用は、LinkedInやFacebook、Twitterなどのソーシャルメディアプラットフォームや、ジョブボード(求人ページ)、ブログなどのWebサイトを通じて候補者を募集するプロセスを指します。SNS採用は、ソーシャルリクルーティング(Social Recruiting)とも呼ばれます。
SNS採用は、従来型の採用活動を補強する手段として活用されてきました。例えば、Aberdeen社やLinkedIn社の調査によると、18~34歳の米国の労働者の4分の3近くが、SNSを通じて直近の仕事を見つけています。さらに、CareerArc社が2021年に行った調査によると、米国のリクルーターの90%以上が、「LinkedInから人を採用したことがある」という報告があります。また、求職者の86%が求職活動にSNSを利用していると回答しています。
実際、多くの企業にとって、SNSは今や候補者を見つけるための最良の選択肢となっています。広告、従業員の紹介、求人サイトよりも上位にランクインしているのです。

SNS採用のメリット・効果

なぜSNSを採用戦略の一部にする必要があるのでしょうか? ここでは、SNS採用の3つの大きな利点をご紹介します。

1. 転職潜在層へのアプローチ手段の一つになる

SNSによっては、シェア機能によって情報が拡散されることもあるため、リーチできる人材の幅広さと人数の多さが、SNS採用の最大のメリットといえるでしょう。様々な社会人に利用されているSNSを活用することは、まだ求人サイトに登録していない「転職潜在層」に対してのアプローチ手段の一つとなり得ます。
SNSを日常的に見ている転職潜在層が、あなたの会社の投稿を見て、自分の価値観にマッチしているかどうかを自ら判断することができるため、ミスマッチの防止につながる効果も期待できます。

2. 企業のブランドをダイレクトにアピールすることができる

SNSでは、求人情報とともに企業文化や価値観を共有することができ、転職潜在層にリアルな職場生活を見てもらうことができます。
また、SNSの強みである「情報拡散力」によって、広告などではアプローチしづらい不特定多数のユーザーにまで自社の存在を知ってもらうことができます。上手く投稿が拡散されれば、企業の認知度向上に繋がるのです。
エージェントを介した企業の紹介の場合、どうしてもエージェントの担当の理解度に左右され、自社の企業文化や候補者へ訴求したい自社の魅力を十分に伝えきれないことがあります。 SNS採用であれば、企業側も発信に関わるコストを軽減でき、自社の公式サイトとは違った観点でリアルに内情や自社の魅力等の情報をダイレクトに伝えられる点もメリットです。

3. 採用にかかるコストをコントロールできる

一般的に、企業が人材紹介を使用して新しい人材を採用するためには、理論年収の30%~50%の紹介手数料がかかります。また、ポジションを埋めるには、平均で1ヶ月以上かかると言われています。
SNS採用は、無料でアカウントを作成できる手軽さもありますし、プラットフォーム側の有料プランを利用する際でも、自社の予算に合わせて調整できるなど、企業の時間とお金を節約することができます。従業員のネットワークと口コミの力を活用すれば、より多くの潜在的な採用候補者に、より短時間で、より低コストでアクセスすることができます。

SNS採用のデメリット

SNS採用には上述したようなメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。

1. 運用は時間・工数がかかる

更新頻度が少ない、または情報が少ない場合、悪印象を与えてしまうことがあります。

2. 即効性は期待できない

低コストであることや目新しさを理由にSNSの運用を始めてしまうと、思っていた結果が出ずに運用を継続できないケースも見かけます。
SNS採用は即効性のある手法ではないこと、フォロワーを獲得して効果を実感するまである程度時間がかかること、長期的に運用しなければ信用が得られないことを十分に理解する必要があります。

3. コンテンツの少ない企業は運用が難しい

SNSの運用を始めたばかりでコンテンツが少ない場合、候補者から警戒心を抱かれてSNSのアカウントをブロックされてしまう可能性も否定できません。そのため、必要なターゲットに対して必要なタイミングでコンテンツを届けることができないなど、情報の需給のギャップが生まれてしまうことで、費用対効果が得られないことがあります。

4. 炎上リスクがある

社内でルールを定め、誰がどの段階でどのようにSNSの運用に関わるのかを明文化し、採用に関わるメンバーが徹底することを前提にSNSの運用を行わなければ、炎上してしまうリスクは否めません。

SNS活用が有効な中途採用における採用手法

SNSが標準的なネットワーキングのツールとなった今、SNSこそがあらゆるレベルの経験者に門戸を開いているプラットフォームとも言えます。「初対面の人に声をかけるのは不適切である」とか、「時間の無駄である」という考え方は、もう過去のものです。ネットワーキングという考え方が全体的に受け入れられている現在、中途採用にSNSを採用に活かさない手はありません。
ここでは、中途採用において特にSNSの強みが発揮される採用手法について解説します。

スカウト採用

自社が採用したい人材に対して個別メッセージを送り、メッセージを受け取った候補者が希望した場合に選考が進むプロセスで、企業から候補者へダイレクトにアプローチをする採用手法です。海外では、ダイレクトリクルーティングと呼ばれています。

SNS採用が有効な理由

個別にアプローチをするというスカウト採用の特徴上、個別に公表されたアカウントを持つSNSは、スカウト採用との相性が非常に良いです。まず、採用担当者がSNSの公式アカウントを使って潜在的な候補者に直接コンタクトを取ることができます。
加えて、SNSを使用して広く多様な候補者に届く方法で企業文化を伝えられれば、自社ブランディングの強化にも繋がります。

注意点

個別にアプローチできるSNSをスカウト採用に活用する場合、複数の候補者とリアルタイムでコミュニケーションをとることになります。ときには候補者からの連絡が殺到し、採用担当者の返信が追いつかないこともあるでしょう。
大事な候補者一人ひとりの返信を無視せずに、誠実かつ丁寧に対応する必要があります。そのための採用戦略の一環として、膨大なコミュニケーションを採用担当者まかせにしないような体制もしくは仕組みを構築することが重要です。
例えば、候補者とのやり取りは一人の担当者とのダイレクトメッセージ上で行うのではなく、自社のアカウントで複数の担当者が対応できるようにするといった方法があります。こういった取り組みにより、会社としての信頼性を担保していきましょう。

リファラル採用

従業員紹介とも呼ばれる社内採用手法のひとつです。企業や組織が、既存の従業員に既存のネットワークから候補者を推薦してもらうことで、人材を見つけます。人材を推薦した従業員に対しては、様々なタイプの報酬を提供することが一般的です。

SNS採用が有効な理由

SNSを使うことで多くの人に見てもらい、偶然投稿を見た知人が転職を考えていた場合に、有効に働きます。また、オペレーション上、リファラル採用情報を簡単にSNSに送ることができると紹介の手間を大幅に減らし、効率的かつスピーディに採用することも可能です。
例えば、社員が平均して一人当たり300人のFacebookの友達を持っているとしましょう。それをたった10人の従業員に当てはめると、3,000人にリーチできる可能性があります。従業員の紹介は、母集団を形成するうえでも、質と量の両面で最も効果的といえます。
このように、従業員のソーシャルメディア・ネットワークをどのように活用するかによって、採用が成功する可能性を上げることにもつながります。

注意点

リファラル採用は、そもそも社員が企業の採用活動に関する戦略や戦術を理解していることが前提となる手法です。そのため、日ごろから「自社がどんな人材を求めているのか」、「今の募集状況はどうか」など、採用に関する情報を社員がいつでも知ることができるように、情報をオープンにしておくことが重要になります。
特に、候補者を不採用にした場合、その候補者を紹介した社員に直接フォローさせるのではなく、個別のフォローアップを採用担当者が担うなど、合否通知の後のフローまで明確にしておく必要があるでしょう。紹介した社員と候補者の関係性を壊してしまうような事態とならないように、リスク管理を念頭に置いてプロセスを構築する必要があります。

SNSを活用した効果的なスカウト採用の方法

採用戦略は、各組織の採用ニーズに合わせて決定されます。しかし、効果的にSNS採用を行うためには、以下の基本を押さえることが重要です。

個人的なつながりを作る

最近では、企業の公式アカウント以外にも、採用担当者が個人アカウントを作って対応する企業が増えてきています。複数の担当者がそれぞれの個人アカウントを運用して発信していく方が、採用において高い効果を得られるケースもあるのです。
効果を得るためには、候補者がInstagramやTwitterの投稿にコメントを寄せた場合、採用担当者は必ず一対一で対応します。どんなに小さなことでも、個人的なつながりを作ることが重要になります。
SNS採用では、直接的または暗黙的に企業文化を強調するようにします。組織の文化や価値観を明確にし、その文化や価値観をSNS採用の働きかけに直接つなげられるようにする必要があります。言い換えれば、SNS採用は、あなたの企業文化をより多くの人々に伝えているのです。

社員を巻き込む(社員が参加できるようにする)

優秀な候補者の中には、社員の紹介で入社してくる人もいます。従業員がすでに利用しているネットワークで、求人情報や社風に関する投稿を簡単に共有できるようにしましょう。
前述したリファラル採用のように、従業員紹介プログラムは従業員を巻き込むために効果的な採用ツールです。従業員支援のためのプラットフォームを構築することができれば、求人情報やイベント情報、会社の最新情報などのコンテンツを一元管理でき、従業員が個人のSNSプロフィールで簡単に共有できるようになります。
また、企業文化を売り込むためにも、従業員の協力は効果的です。なぜなら、企業のアカウントによって企業文化を売り込むよりも、社員自身がそれを共有することで、より説得力のある売り込みになる可能性があるからです。

一貫性を保つ

SNS採用は、求人を出して応募者が来るという単純なものではありません。優秀な候補者はすでに職についており、積極的に転職を考えていない可能性があります。そのような転職潜在層を惹きつけるには、時間をかけて一貫して魅力的な企業ブランドと企業文化を構築することが大切です。
そのためには、企業文化や組織の目標が明確になるような形で定期的に求人を出しましょう。また、応募してきた人に直接返事をしたり、コメントしたりすることも必要です。その結果、転職潜在層の中に、「求人が出たらすぐに入社したい」という気持ちを起こさせることがゴールになります。
また、毎年出版される採用関連の書籍を読み、業界の最新トレンドやコンセプトを常に把握しておく必要もあります。

適切なSNSプラットフォームを選択する

多くのSNSプラットフォームは、採用に大きく役立つ高度な検索機能を提供しています。これらの高度な検索機能を使えば、現在の転職潜在層について詳しく知ることができますし、今後適切なグループをターゲットにするのに役立ちます。
一方で、異なる特徴をもつSNSごとに、異なるアプローチが必要とされます。具体的なアプローチは後述しますが、まずは「誰を惹きつけたいのか」を決めたうえで、その対象となるグループに合わせて戦略を立てていきましょう。

SNSごとの特徴と活用方法・ポイント

ここからは、LinkedIn、Facebook、Instagram、TwitterのSNSプラットフォームの特徴と、活用するためのポイントを紹介していきます。ぜひプラットフォームを選ぶ際の参考にしてください。

LinkedIn

世界最大のプロフェッショナルネットワークであり、SNS採用のリーダーとして実績があるプラットフォームです。特に、潜在的な候補者を特定することができるという点で優れていると言えます。「ビジネスSNS」というコンセプトということもあり、SNS採用に最も効果的で相性の良いソーシャルメディアツールと言っても良いでしょう。

活用する際のポイント

LinkedInは最もビジネス向けのSNSなので、その高度な検索機能が、候補者を見つけるのにも最も適しています。例えば、LinkedInの検索機能では、特定のスキルや経験を持つ候補者を簡単に見つけることができます。
具体的には、LinkedInのプロフィールに記載されている必要な資格を持つ人をキーワードで検索し、LinkedInメンバーの中から候補者を積極的に探すことができます。その後、候補者に直接メールを送ったり、コネクションを共有している場合は紹介を依頼したりすることも可能です。
これらの検索機能の多くは無料ですが、LinkedInの有料プラン「プレミアムアカウント」が必要なものもあります。

Facebook

実名で登録しているユーザーが多く、ユーザーのリアルな交友関係が反映されやすいFacebookでは、企業のプロフィールから直接「求人情報」タブが表示されるため、求職者は求人情報を簡単に確認することができます。

活用する際のポイント

Facebookの「グラフ検索」では、場所、興味、「いいね!」したページ、専攻分野など、利用者のプロフィールの情報を検索することができます。例えば、「SEOマーケティングに興味があり、ロサンゼルスに住んでいる人」というように、特定の興味を持つ地元の人材を探している場合、グラフ検索は潜在的な候補者を見つけるのに最適な方法です。

Instagram

若い年代の求職者層にアピールしながら、写真、短いビデオ、テキストで、視覚的に自社のブランドを宣伝できる魅力的なSNSです。

活用する際のポイント

Twitter同様に、ハッシュタグ戦略を使用してリーチを広げますが、よりパーソナルでスタイリッシュなコンテンツを好む傾向があるInstagramユーザーに対しては、独自のコンテンツを作成することが重要になります。
職場風景や社員が働いている様子を投稿することで、候補者に働くイメージをもってもらったり、企業イメージを向上させるためのブランディングとして活用することができるでしょう。
企業のアカウントに従業員の写真を掲載し、チームへの参加、募集職種への応募(リンクを付ける)、履歴書の提出を促すメッセージを添えたり、企業文化を紹介する写真や動画、新製品やサービスの紹介などを行うといったアクションが重要です。

Twitter

日本では非常にメジャーなSNSです。ただし、ツイートには文字数が定められているため、ユーザーは使用する単語を最小限に抑える傾向があります。
自社が求めている分野の候補者や採用担当者が特定のハッシュタグを使用している場合は、そのハッシュタグを検索することが関心のある相手を見つけるために役立ちます。また、採用活動においては、リアルな情報の発信や専門的な情報を発信することで、カルチャーフィットする候補者を集めるのに向いています。

活用する際のポイント

ツイートの文字数制限140字以内で企業ブランドを売り込むことは、想像以上に難しいことです。しかし、アイキャッチ画像やタイトル、説明文などを表示させられる「Twitterカード」を作成することで、文字数の制限を超えた表現力で、より大きなインパクトを与えることができます。
また、運用者が魅力的なキャラクターをつくり込み、個性的な投稿をすることで話題性を呼び込むことができます。Twitterで特定のキーワードについて議論している人を検索すると、数百人のコンタクトを見つけることができます。フォローする人は、その業界で働いている人、自社が必要とするスキルを持っている人、またはそのネットワークにいる人をターゲットにすると良いでしょう。多くの場合、これらの人々はフォローし返す傾向があるため、運用者はフォロワーのリストを構築することができます。

なお、Twitterの高度な検索機能によって、候補者が特定のハッシュタグやキーワードを使用している場合、それらを検索して、関心のある人を見つけることができるかもしれません。ハッシュタグの例としては「#求人」「#採用」「#キャリア」「#営業担当」などが挙げられます。同じようにキーワード検索を使えば、候補者を直接検索し、情報を得ることができます。
ただし、話題性が高い反面で炎上リスクも高いので、運用には細心の注意が必要です。

SNS採用の導入フロー

SNS採用の戦略を実施する前に、組織として着手するための5つのステップをご紹介します。

1. SNS採用の目標を設定する

ターゲットを明確にしてペルソナを作成する

企業によって「どんな人材を採用したいのか」「どんな人材にSNSを通じて情報を届けたいのか」は異なるはずです。「求職者」と一括りにするのではなく、自社のコアコンピテンシー(企業の核となる得意分野)に直接合致する、より企業文化に適した人材をターゲットとして定める必要があります。
また、自社の採用プロセスに関わるメンバー間で認識の相違が起きないように、「理想的な候補者は、どのような経験、特徴、スキルを持っているのか?」をペルソナとして設定しましょう。「世代」だけでなく、「職種」や「このような想いを持っている人」など、様々な観点からペルソナを作成しておくと、メッセージがより具体的でリアルなものになるでしょう。

KPIを設定する

目標とベンチマークを設定しない限り、採用戦略がうまくいっているかどうかは測れません。

  • 応募者数を増やしたいのか?
  • 採用プロセスを短縮したいのか?
  • より優秀な候補者にアプローチしたいのか?

これらを測定するのに役立つ指標を選択し、現在の採用戦略がどの程度成果を上げているかを調べます。
一般的なSNS採用のKPIには、次のようなものがあります。

  • 応募者1人あたりの滞在時間(Time spent per Applicant)
  • 採用単価(Cost per Hire)
  • ソーシャル・メディア・エンゲージメント(Social-media Engagement)※1
  • 従業員紹介率(Employee Referral Rate)※2
  • ソーシャルメディアから採用ページへのクリック数(Clicks from Social-media to Your Hiring Page)
  • 内定承諾率(Offer Acceptance Rate)

競合他社をチェックする

競合他社はSNSで強い存在感を示しているでしょうか。そのアカウントを採用活動に活用しているでしょうか。もし、競合他社のSNS採用がエンゲージメントを獲得できていないようであれば、何をすべきでないかを学ぶことができますし、自社の投稿が競合他社よりも目立つように企業文化やブランドをアピールすることもできます。

自社ブランドを定義する

ブランドを宣伝する前に、それを言語化して定義する必要があります。転職潜在層に見てもらいたい特徴や価値を選択し、採用に関する投稿や従業員が作成したコンテンツにそれが反映されているかどうかを再確認しましょう。

2. SNS採用のルール作りをする

SNSは、採用における唯一の手段ではなく、多くのツールのうちの一つであることを理解しましょう。SNSへの投稿はあくまでも「広告」であり、投稿は他の雇用や求人の文書と同様であることを忘れないでください。
また、発信だけでなく情報を取得したり、直接アプローチするという意味で、SNSは個人情報の宝庫といえますが、一方でリスク要因となりえることも忘れてはなりません。いわゆる炎上リスクや訴訟リスクも多く含んでいるのです。
SNSを運用する前に、今一度以下のポイントについて見直しましょう。

  • 転職潜在層や応募者にコンタクトをするのは誰なのか
  • プロフィールをチェックするのは誰なのか
  • 公開されている情報以外にまでアプローチするのか
  • 発信情報にコンプライアンス違反はないかどうか
  • 本当に候補者のアカウントなのか

また、バイアスを回避するために、「候補者自身による投稿やツイートにだけに注目して、他の人が候補者についてどう言っているかには注目しない」などのルール設定が必要です。様々な情報に触れる機会が多いだけに、誰がどの段階でどのように関わるのかを社内で明文化して、採用に関わるメンバーに徹底させること、およびこれらを通じて対外的に説明責任を負う必要があります。

3. ターゲットにマッチしたSNSを選ぶ

以下の点を踏まえて、最適なSNSプラットフォームを選んでいきます。

自社のターゲットが多く利用しているSNSはどれか?

転職潜在層だけでなく、積極的に転職活動を行っている求職者に向けて求人情報を見つけやすいようにする必要があります。プロフィールには、業種、所在地、そして求人している事実を示すためのキーワードを確実に含めるようにしましょう。
求人情報をSNSで共有する場合は、職種名と勤務地を投稿文に含めるようにします。これらの情報によって、求職者に見つけてもらいやすくなります。
マーケティングを、「顧客がいる場所」で行う必要があるのと同様に、採用活動でも、デザインの仕事を探しているなら、「Instagram」などのより視覚的なプラットフォームをチェックするとよいでしょう。ソフトウェア・エンジニアを採用する必要があるなら、コーディングスキルを確認するために「Github」の活用を視野に入れてもよいかもしれません。
理想的な候補者は、どのようなソーシャルメディアをチェックしているのか調査してみましょう。現在の従業員に、どのプラットフォームを最もよく使うか尋ねてみるのも一つです。

伝えたい情報や魅力を発信するのに最も適したSNSはどれか?

自社のターゲットが多く利用しているSNSプラットフォームを選ぶようにしましょう。今日、多くの様々なSNSチャンネルが存在します。したがって「それぞれのチャンネルがどのように機能するのか」、また「それぞれのチャンネルにおける主なユーザーは誰なのか」を理解することが重要です。
例えば、デザイン、マーケティング、小売業などの人々をターゲットにする場合はInstagramが最適かもしれませんが、エンジニアにとってはこのチャンネルは最適ではないかもしれません。ターゲットのSNS活用状況を考え、自社にとって最適なSNSを選定しましょう。

適切なSNSを選択するということは、「どの種類のコンテンツを優先させるか」を選択するということです。例えば、Instagramで採用活動を行うのであれば、主にビジュアルコンテンツに焦点を当てる必要があります。LinkedInであれば、テキスト、画像、動画、リンクを組み合わせたキュレーションを行うといったアクションを選択することになるでしょう。

4. 情報発信の目的を明確にしたうえでコンテンツを企画する

発信内容(訴求)の決定

発信するコンテンツを考えるうえでは、自社の魅力や仕事内容の説明も欠かせませんが、写真や文字では伝えきれない「雰囲気」や「空気感」を言語化できると、採用に関わるメンバーとの齟齬も起きにくくなります。コンテンツに触れた人に対して「どんな読後感を残したいか」と考えてみるとよいでしょう。

配信コンテンツを企画

「ターゲットをどのように態度変容させたいのか?」を言語化し、それ合うコンテンツを企画していきます。曖昧な情報発信をしてしまうと、本来めざしたいターゲット層からずれてしまいます。目標とすべきターゲット層やターゲットの状態を定義したうえで、コンテンツを企画・決定していきましょう。

5. 情報が埋もれないような工夫をする

新着情報から上位表示されるというSNSの特性上、ターゲットに情報を届けるためには継続的に発信していく必要があります。
継続的に発信するためには多くの工数がかかるため、事前にSNSの運用を担当する従業員の選定や、更新頻度を決めておくなど、発信が止まらないような工夫が必要です。

SNS採用における注意点

SNSを採用に活用するにあたっては、セキュリティやプライバシーをはじめとした点に細心の注意が必要です。

セキュリティへの懸念

不満を持った従業員や不注意な従業員によって、ネガティブな情報が発信されたり、企業秘密が漏洩してしまったりするなど、SNSがネガティブなニュースの火種となって、自社のブランドを傷つける可能性があります。また皮肉にも、より良い仕事をしようとするあまり、社員が知らず知らずのうちに会社の情報を公開してしまうこともあります。
社員は、会社の情報にアクセスする際に、「何をすべきで、何をすべきでないか」を知っている必要があります。また、「自社のレピュテーションに影響を与える可能性のある情報が何なのか」について、企業リスク管理責任者と連携して、ルール作りをしておく必要があります。
具体的には、公式SNSのレピュテーション・リスクを継続的にモニタリングする体制を構築し、月、四半期、年2回、または年1回のペースで定期的に行うなど、タイミングを決定します。継続的に監視することと、リスク発生時の危機対応フローの構築が重要です。

プライバシーやコンプライアンスに関する懸念

インターネットは基本的には公共の領域ですが、同僚の社員が自分のアカウントをチェックすることを不快に感じる人がいることも忘れてはなりません。SNS採用を行う場合、私生活と仕事の境界線が曖昧になることを望まない候補者を、排除してしまう可能性があるのです。
また、採用活動においてSNSに頼りすぎてしまうと、担当者のバイアスがかかる傾向があります。企業側は知らず知らずのうちに、オンライン上の活動が活発な人を、そうでない人よりも優遇してしまうといったバイアスを持ってしまったり、特定の人を不当に差別してしまう可能性があります。特に、人種、民族、性別に関しては差別訴訟のリスクが大きくなります。

情報の欠落や不正確さ

インターネット上の情報をすべて信用することはできません。完璧な候補者に見えても、現実は正反対である可能性もあるのです。健全な懐疑心を持って採用活動を行い、矛盾する情報やプロフィールに目を光らせましょう。
SNSの利用状況は人によって異なるため、公正な採用を行うためのツールとして利用する場合には、性格を判断するためのアプローチの正確性という点でも問題があります。
1年、1か月、あるいは1週間でさえ、良い意味でも人は変わります。2年前に稚拙な文章でブログを書いていたライターが、今頃は大幅にスキルアップしているかもしれません。候補者のSNSのアカウントにあるコンテンツも同じです。「彼らは今頃、違うことを考えているかもしれない」という点には、留意すべきでしょう。

SNS採用の活用事例

ここでは、採用におけるSNSの活用事例として、いくつかの例をピックアップしました。

求人情報をTwitterに投稿する

求人情報や企業文化に関するコンテンツをTwitterに掲載した事例では、求人情報のツイートにハッシュタグを使用するなどし、フォロワーをチームの一員と感じさせ、自社で働くことがどのようなものかを示すことで、フォロワーを惹きつけました。

社員の誕生日をFacebook投稿する

社員一人ひとりにサプライズ・ギフトボックスを送り、バーチャルな誕生日のお祝いがあるまで開封しないように伝えた事例です。これを見た候補者は、対面での活動が制限される時期であっても、楽しい社風が待っているという期待につながりました。

自社でのキャリアをTwitterで投稿する

TwitterとInstagramのアカウントを使って、社員とその功績にスポットライトを当てた事例です。社員が自分の言葉で自社での経験を語ることで、自社で働くことがどんな感じなのか、よりリアルで信頼性の高い情報を得ることができました。

Instagramで採用に関する投稿をする

候補者は、自分と同じ価値観を持つ企業で働きたいと考えています。自社の採用に特化したInstagramアカウントを作成した事例では、ダイバーシティやLGBTQのイベントを祝い、同社が女性従業員やマイノリティを大切にしていることを示しました。
公式アカウントと従業員の投稿では、企業文化のコンテンツを共有する際にハッシュタグを使用して、情報を拡散しました。

自社LinkedInページで企業カルチャーを動画で投稿する

自社のLinkedInページで、世界中の従業員を、短くて共有しやすい動画コンテンツで紹介した事例です。さまざまな部署やオフィスにスポットを当てたことで、潜在的な候補者が「自社のチームの一員になることがどのようなものか」を理解することに役立ちました。

まとめ

スマートフォンの普及に加え、最近はSNSでも動画を日常的に見ることが多くなっています。また、オンラインの採用説明会や面接なども増えているなど、採用手法はITの進化に伴って日々進化していると言えるでしょう。候補者に自社の求人を見つけてもらうだけでなく、将来の候補者を探索し、長期に育てていくチャンスをつかみましょう。
SNS採用では、採用活動だけでなく企業ブランディングのためのツールとして、社内ですでに実際に築き上げられている「想い・雰囲気・リアルをどう表現して、伝えるか?」といったマーケティング的な考え方がポイントになります。自社を見つめ直し、その姿を言語化するところが勝負となるでしょう。

ただし、SNSは候補者のことを知るために非常に強力なツールとして活用できる一方で、時には私たちの判断に間違った影響を与えるような情報も含まれています。リスク管理をしながら、経営計画や採用戦略に基づいて、SNSというツールを使うことにより、採用活動のDX化に繋げていきましょう。

参考

  • (※1)ソーシャル・メディア・エンゲージメント:SNS上の交流総量を図る指標。ソーシャルメディアのプラットフォームによって、閲覧数、「いいね!」、共有数、言及数、コメント数、タグ数などのフィードバックを得ることで、ターゲット層をより明確に把握し、フォロワーに響くコンテンツの種類を確認することができます。
  • (※2)従業員紹介率:応募者と採用者に占める紹介の割合を図る指標。従業員がソーシャルメディアを効果的に使ってブランドと文化を売り込んでいるかどうかを分析し、新しいコンテンツを投稿する最適なタイミングの見極めや、候補者が特定の職種にどの程度適しているかを確認することができます。
  • Person 鈴木 秀匡
    鈴木 秀匡

    鈴木 秀匡

    日立製作所やアマゾンなど、一貫して管理部門のビジネスパートナーとして人事総務労務業務に従事。現在は、欧州のスタートアップ事情や労働環境、教育事情の背景にある文化や歴史、政治観など、肌で感じとるべくヨーロッパへ家族移住を果たし、リモートで日本企業の人事顧問やHRアドバイザリーとして独立。三児の父。海外邦人のコミュニティプラットフォームのための財団法人立上げなど、日本のプレゼンスを上げていく活動にも奮闘中。

  • 人材採用・育成 更新日:2023/01/31
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