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日系企業のアルムナイ活用事例② 〜二度目の入社だからこそわかるカムバック採用の本当の価値〜(パナソニックグループ)〜

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パナソニックグループ(以下、パナソニック)は2018年の創業100周年を機に、多様な人材が活躍できるオープンな風土や働き続けることのできる環境づくりに向け「A Better Career」活動をスタートさせました。そしてその活動の一環として、再雇用制度から一歩踏み出し、転職をして他の会社で経験を積んだ人材を再び雇用する「カムバック採用」に取り組んでいます。

年々加速するキャリア採用拡大の流れに加え、アルムナイを活用したカムバック採用は、人材を資本と捉え企業価値の向上に繋げる「人的資本経営」の観点から近年日本においても注目を浴びています。今回は自身がカムバック採用により二度の入社を経験した河野氏にお話を伺い、パナソニックのカムバック採用について採用する側・される側の両面から紐解いていきます。

Q カムバック採用に取り組み始めたきっかけについてお聞かせください

河野安里沙様(以下、河野):以前から、社員再就職制度という制度はありました。これは、育児・介護、配偶者転勤等のやむを得ない事情により退職した社員が、指定の条件を満たす場合に再び退職時に在籍していた事業場に戻ることができる制度であり、運用もきちんとされていました。しかし、転職に伴い退職した場合、どうなるのかについては記載はなかったため、暗黙の了解で戻ることはできないと思われていました。

実は私自身もパナソニックから人材会社へ転職をした後、再びパナソニックに戻ったという経歴です。パナソニックへ戻ってきた2016年当時はカムバックキャリアの事例は聞いたことがなく採用責任者の方から「戻っておいでよ」と言われたときは正直驚きました。そこから1年後の2017年に日本ヒューレット・パッカード社長、日本Microsoft会長などを歴任した樋口がパナソニックへカムバックしたことで、「パナソニック=カムバックキャリアOK」という認識が広がり、受け入れる風土が社内で醸成されはじめたように思います。

さらに、その次の年の2018年は当社の創業100周年であり、次の100年をどう創っていくのか、数々のワーキンググループが社内に存在していました。そこで「働く環境」という観点からカムバック採用にも注目し、2018年に発表した「A Better Career」の取り組みにあるように「カムバックキャリア」が人事から正式にアナウンスされ、社内外にオフィシャルな取り組みとして認知されるようになりました。

Q河野さん自身が再びパナソニックで挑戦しようと思ったきっかけは何ですか

河野:パナソニックへ戻ってくる前は、人材会社で法人営業をしていました。仕事の経験を積む中で、どんなに考え抜いた提案をしても、責任をもって最後まで実行していくのは私ではなくお客様なんだと気づきました。そこから、お客様に向き合うほど、自分が提案していることが本当にお客様のためになっているのか、次第に信じられなくなってしまいました。
それと同時に、私は外野で「頑張れ」と言っているだけの評論家ではなく実行者でありたいのだという自分の働くうえで大切にしたい想いに気づきました。
あわせて、社外からパナソニックを俯瞰的に見たときにパナソニックで働く魅力が世の中に十分伝わっていないもどかしさも感じていました。

そういった話を退職後も繋がりがあった同期に話をしていたところ、採用責任者に繋いでいただき、正式なステップを踏んで再度入社することになりました。

一度、違う環境に身を置いてみることで、自分は何を大切に働きたいのか、それができる場所はどこなのかを改めて考えるきっかけとなりました。
また、パナソニックから見えていた世の中だけではなく、世の中におけるパナソニックはどんな風に捉えられているのかなど客観的に会社をみることができることができるようになったことも一度退職したことで得られた財産だと思います。

Qカムバック採用にはどのようなメリットがあるとお考えですか

採用時のミスマッチが少ない

河野:通常の新卒採用やキャリア採用と比較して、入社時のミスマッチはとても少ないと思います。カムバック採用の場合、同期や元々の上司を始め社内での繋がりがすでにあるため、ホームページや面談以外の機会でカジュアルに仕事や会社についての実情を聞くことができます。

そして、一度在籍していたからこそ、会社の魅力だけでなく課題として抱えている部分もしっかりと認識があるため、一方的な魅力訴求をゼロから受ける場合と比較してより客観的に会社を見定めることが出来ることも要因の一つです。数値としては出せていませんが、良い一面も悪い一面も知った上で改めて入社するからこそ、入社後の定着率も高くなり、最終的に離職率の改善にも繋がるのではないかと考えています。

受け入れる側・受け入れられる側双方のオンボーディングがやりやすい

河野:会社特有のシステムや用語、社内ルールに加え、社員の間での空気感やカルチャーなどを比較的早くキャッチアップできるため、受け入れる側がオンボーディングの際にかける時間的コストやリソースが少なく済むということも魅力の一つです。また、受け入れられる側も会社のシステムに一度触れていたり、過去に築いた人脈があるため、活躍までのスピードが速いという面もあります。

第三者視点での組織への貢献

河野:第三者視点を持ち合わせているということも、とても大事だと思っています。私自身もずっとパナソニックに所属しているだけでは持てなかっただろう俯瞰的な視野を元に、自信を持って組織に貢献できるようになりました。

過去、私自身もそうでしたが、新入社員からパナソニックしか知らない状態だと、特にキャリアが浅い時期は、自分がやろうとしていることが正しいのかどうか確かな自信が持てないことが多かったです。しかし、現在は、過去当社で経験したことはもちろん活かしつつ、社外を見てきたからこそわかる第三者としての視点を大切に、当社の常識や当たり前にとらわれず柔軟に物事を考え判断することができるようになったのではと感じています。

Qカムバック採用を成功させる秘訣は何でしょうか

退職者のタレントプール

河野:当社は定年退職の方を除いて、基本的には退職される方に同意をいただいた上で会社側に連絡先を教えてもらうようにしています。こうして一度退職した人材もタレントプールに蓄えておくことで、採用候補者として適切なタイミングでアプローチをすることができます。実際に当社でも、タレントプールに登録していただいた方々に求人をお知らせする取り組みをするための準備を始めています。

プライベートの繋がりを促進

河野:今回私がカムバック入社した際もそうだったのですが、社員同士の繋がりが退職後も続くことでカムバック採用を促進する一つのきっかけとなります。私の場合は、退職後も同期との繋がりはもちろんのこと、新入社員から3年間所属していた国内のマーケティング本部の方々からは私のSNSの投稿をみて「他社でも活躍していてうれしいよ」と言葉をいただいたりしていました。

このようにプライベートの繋がりではありましたが、退職後もパナソニックとのゆるい繋がりがあり、会社のリアルな雰囲気や状況が感じ取れることは、改めて働く場所として選ぶきっかけとなりました。

キャリア採用の浸透

河野:キャリア採用に対して積極的に取り組んでいるため(2021年度キャリア採用比率36.7%)、人の流動性に対する許容度が上がってきたように感じています。
そして、十数年前から自ら手を挙げて新たな仕事にチャレンジする社内公募制度があり、200~300名/年は異動しているところに、特にここ数年ではキャリアやDEI(Diversity, Equity & Inclusion)、働き方に関するトップや人事のメッセージが増えてきたことで、多様なキャリアや働き方を会社全体で認め、「自分のキャリアは自分でつくる」という考えを持つ社員が増えてきたことも、カムバック採用を進める上でプラスに働いていると思います。

参考

  • 競争力を支える「社員のウェルビーイング」実現に向けて~グループCHRO 三島執行役員に聞く
  • Person 河野 安里沙

    河野 安里沙 パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社 リクルート&キャリアクリエイトセンター

    新卒でパナソニックに入社し、経理を担当。その後、人材会社へ転職。営業として3年間従事した後、人事としてパナソニックに戻る。現在は、パナソニックグループの採用ブランディングを推進。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/12/14
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