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面接での見極めと志望度を高める方法とは?~HRコミュニティサロン Vol.1~

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さまざまな企業において、採用面接時に応募者の能力や特性をうまく見極められないケースは多くあります。本記事では、「面接での見極めと志望度を高める方法」というテーマで、応募者を見極められない3つの理由と、見極めるポイントについてお伝えしていきます。また、応募者の志望度を高めるためのステップを紹介します。

応募者を見極められない3つの理由

面接にはいくつかの手法がありますが、なかでも「非構造化面接」と呼ばれるフリートークを活用した面接手法(候補者ごとに異なる質問をして反応を見る方法)は、現在でもさまざまな企業において活用されています。
しかし、非構造化面接は数ある面接手法の中でも妥当性係数(※)が最も低い、つまり「面接だけで得られる応募者の情報の精度が低い」といわれています。
面接は重要な選考手法であるにも関わらず、なぜ精度が低いのでしょうか。その理由としては、主に下記の3つのプロセスにおける問題があります。

  • インタビュー(情報収集)……採用担当者が応募者の具体的な事実を掴めていない。
  • アセスメント(見立て)……採用担当者の心理バイアスが働き、間違った見立てをしてしまう。言葉が曖昧で齟齬が生まれる。
  • ジャッジ(評価)……採用担当者が採用基準を理解できていない。

ここからは、この3プロセスにおける問題を解決するためのポイントをお伝えします。

面接で応募者を見極めるポイント①インタビュー(情報収集)

面接で、応募者に対して聞きたい情報を“具体的に聞く”ことは、いたって普通のことかもしれません。しかし実際には、頭の中で過去の自身の経験や知識を組み合わせて想像し、応募者が発言していないことまで「こういうことを言っているのか」と推定してしまう傾向があるのです。
この傾向は、日常生活においては問題ありませんが、面接で応募者が発言していないのにも関わらず勝手に色々なことを推定し、頭の中で補完して理解することは、面接の精度を下げる原因となってしまいます。

例えば、「大きい店」と相手が言っても、どのくらい大きい店なのかを数字に落とし込んだりしなければ、実際の大きさはわからないでしょう。『大きい』や『難しい』などの形容詞や、『都市の方の支社でした』といった固有名詞のない言葉は、応募者に詳細を聞いて具体的な情報を得る必要があります。
また、日常会話の中ではよく使われる比喩やたとえ話も、そのままにしてしまうと採用担当者と応募者との間に認識のズレが生じてしまいます。また、『これ・それ・あれ・どれ』などの「こそあど言葉」も、具体的な言葉や名称を使わなければ認識のズレを生みます。

応募者の情報をしっかりと収集できなければ、限られた面接の時間内に精度の高い見極めはできません。たとえ普段の生活では理解できる内容であっても、応募者の発言の中に「抽象的な言葉/形容詞」「比喩/たとえ話」「こそあど言葉」があれば、そのままにせずに具体化していく必要があります。

面接で応募者を見極めるポイント②アセスメント(見立て)

面接で応募者を見極めるためには、「アセスメント(見立て)」のプロセスにおける心理バイアスを理解することと、言葉の問題への対処が重要です。

心理バイアス

心理バイアスとは、人が人を認知する際に、自分自身の経験や先入観などによって非合理的な判断をしてしまう現象です。面接において採用担当者が陥りやすい心理バイアスには、以下のものが挙げられます。

  • 確証バイアス:人は固定概念に陥りやすい。
  • 初頭効果:最初の印象に引きずられて評価、判断する。
  • ハロー効果:一つの良い点(悪い点)によって、全部が良い評価(悪い評価)になる。
  • 類似性効果:自分に似た人を「良い」と捉える。

他にも、採用担当者が「何とかして採用しないといけない」というプレッシャーを感じることで、応募者の評価を自然と上げてしまうケースもあります。
さらに、人は「相対的にしか評価できない」という特徴があるといわれています。実際に、面接においては応募者を何名か比較し、その中で相対的に評価の高い人を採用することがほとんどでしょう。

その場合、例えば100名の応募があったとき、5人の面接官で応募者を20人ずつ面接するのと、20人の面接官で応募者を5人ずつ面接するのでは、5人の面接官で面接する方が、精度が高くなる傾向にあります。20人を5人ずつに分けた場合、優秀な人ばかりのチームもあれば、そうでない人ばかりのチームもできるでしょう。すると、たとえ優秀ではない人ばかりのチームであっても、相対的な評価によって優秀ではない人が次の面接まで進むことができてしまいます。
このように、面接時には必ず何かしらの心理バイアスが発生します。面接で応募者をしっかりと見極めるには、心理バイアスの影響が存在することを理解したうえで採用しましょう。

言葉の意味や表現のズレをなくす

正確なアセスメント(見立て)のために必要なもう一つ対処すべきことが、言葉の問題です。
経団連(日本経済団体連合会)が10年以上実施している調査によると、選考時に重視する要素の上位5項目はほぼ毎年、①コミュニケーション能力、②主体性、③チャレンジ精神、④協調性、⑤誠実性となっています。

しかし、1位の「コミュニケーション能力」と一言でいっても、企業によってさまざまな捉え方をしているようです。例えば、「わかりやすく筋道立てて話す」ことをコミュニケーション能力と考える企業もあれば、「自分の考えをうまく表現できる」ことをコミュケーション能力と考える企業もあります。「人と仲良くなれる」「社交的」「空気を読める」といった能力をコミュニケーション能力と考える企業もあるでしょう。
採用面接時には、企業(あるいは個々人)によって考え方や捉え方が異なる言葉や表現について「自社ではどの意味で使っているのか?」を検討し、一義的にすることで双方の認識のズレをなくすことが重要です。

面接で応募者を見極めるポイント③ジャッジ(評価)

面接で応募者を見極めるための三つ目のポイントは、ジャッジ(評価)つまり採用基準です。
採用基準を決める際には「社会的な望ましさ」に惑わされないことが重要です。例えば、「好奇心旺盛な人材」という言葉を聞くと、「積極的に物ごとに興味を持って主体的に行動を起こす」ようなイメージがあり、社会的に望ましいため「採用したい」と思うかもしれません。しかし、好奇心旺盛な人は、物事の興味や関心がすぐに移り変わってしまう「飽きやすい人」とも言えます。

他にも、「論理的である」ことは「理屈っぽい」とも言えますし、「感受性が豊か」という特性は「過敏」とも言えます。一見すると社会的に望ましい特性も、仕事や文化によってはマイナスに働くこともあるのです。
応募者を正しく評価(ジャッジ)するためにも、社会的な望ましさに惑わされることなく採用基準を決めることが大切です。

仕事と特性をフィットさせる「RIASEC」の活用

自社のハイパフォーマーの意見をもとに、ハイパフォーマー人材の特性を抽出して「〇〇の職種に向いているのは△△の特性を持った人である」という指標を立て、それをもとに採用活動を行っている企業は多いでしょう。しかし、ハイパフォーマー人材の意見と実際の行動は、必ずしも一致しているとはいえません。また、現状のハイパフォーマー人材よりも、もっと適性の高いタイプが存在するかもしれません。人材の特徴を抽出するだけでは、自社が本当に求める人材の特徴を十分に理解できていない可能性があるのです。

そこで活用できるツールの一つが、RIASEC(リアセック)と呼ばれる理論です。RIASECはさまざまな仕事を分類し、それに適した特性を理論的に導き出したものであり、現在でも多くの採用シーンで使われています。
実際のハイパフォーマー人材の特性を抽出することと併せて、RIASECも活用することで、さまざまな角度から見た採用基準を持つことができます。それによって採用したい職種に対する人材の候補を広げられ、採用基準の多様性が増すことにも繋がります。
実際のハイパフォーマー人材の特性と、RIASECのような理論を組み合わせて、最終的にどのような特性が自社の採用基準として正しいかを精査することで、より効果的な採用基準に則った採用活動が行えます。

応募者の志望度は採用担当者が高めるもの

今後の日本は、少子高齢化に伴う構造的な人材不足に陥ることが予想されます。そのような中で企業が採用力を維持していくためには、応募者の志望度を採用担当者が「測る/評価する」のではなく「高める」ものであると認識し、採用に対する考え方を変えていくことが求められます。
つまり、面接時に応募者の能力や特徴が自社にマッチしていると思ったのであれば、たとえ応募者の志望度が低くても、採用担当者が動機付けをして志望度を高めるような取り組みが、企業の採用力向上には必要なのです。

動機付けの3ステップ

採用担当者が応募者の志望度を高めるには、動機付けの3ステップを活用しましょう。新卒採用と中途採用では各ステップにかけられる時間は変わりますが、基本的にこの3ステップの順番は変わりません。

  • ステップ1:信頼関係の構築
  • ステップ2:情報収集
  • ステップ3:説得と勧誘

ここからは、各ステップについて見ていきましょう。

動機付けのステップ1:信頼関係の構築

採用活動という限られた時間の中で、どのようにして応募者との信頼関係を構築すればよいのでしょうか。
方法の一つが、応募者との共通点を見つけることです。採用担当者が自己開示をして話題を広げることで応募者との共通点を見つける、あるいは応募者に「共通点があるな」と思ってもらえるような取り組みをすることが、信頼関係の構築につながります。

しかし、面接の場で採用担当者がいきなり自己開示(自分語り)をし始めたら、応募者は驚いてしまうでしょう。自己開示のベストなタイミングは、応募者に「入社動機」を聞かれたときです。
「〇〇(採用担当者)さんは、なぜ御社に入ったのですか?」と応募者から聞かれたら、自己開示のチャンスです。自社への入社動機を「何が好きだったのか(What)」ではなく「なぜ好きだったのか(Why)」で話しましょう。
「私自身はこういう環境で生まれて育ち、このような出来事があって、このような人に影響を受けた。だから、このような価値観になり、この企業のここに惹かれて入った」と、「なぜ(Why)」で答えることで自己開示になり、応募者の共感を生むことにもつながります。

動機付けのステップ2:情報収集

信頼関係が構築できたら情報収集に移ります。その際、応募者からは「事実」よりも「気持ち(主観)」を聞き出すことが重要なポイントです。
特に、主観・妄想・思い込み・誤解・偏見といった気持ちは、面接時に可能な限り聞き出し、応募者の持つ不安を解消することが必要です。応募者の気持ちや考えが自社の事実と異なる場合でも、一旦はすべてを受け入れることで、応募者の不安要因を把握し、解消することにつながります。

応募者が抱える不安要因を解消する方法

これまでの採用経験を活かし、まずは応募者が自社に対して抱くであろう不安要因をある程度リストアップしておくことが大切です。リストアップすることで、不安要因への対策や、回答を事前に用意することができます。
例えば、応募者に「御社ではハードワークのイメージが強いのですが、実際はどうですか?」と聞かれた場合、事前に用意しておいた数字を交えて「前年の有給消化率は△△%です」「産休・育休からの復帰率は○○.○%で、女性も働きやすい職場です」と答えることで、相手の抱く不安要因の解消につながります。

意思決定スタイルを見極めて対応を変える

応募者の意思決定スタイルによって採用担当者側のすべき対応が異なるため、応募者が以下の4つのうちどれに該当するかを早い段階で見極めることが大切です。

論理型

論理型は、コンサルタントや経営参謀タイプに多い傾向です。物事の矛盾を嫌う論理型の応募者に対しては、モチベーションリソースやキャリア感に合った情報を、矛盾が無いように取捨選択して提供することが、自社への志望度を高めるために必須です。

決断型

決断型は、少しの情報だけで即断できる人たちです。頭の回転が速かったり、自信があったり、覚悟ができていたりと、優秀な人に多い傾向があります。
決断型の応募者に対して、「他社も色々と見てから決めると良いですよ」といった伝え方をしてしまうと、「自分への評価が低い」と捉えられてしまいます。「どうしても採用したいわけではないのか」と思われてしまい、それが原因で他社に流れてしまうケースは実際に多いのです。
決断型には、タイミングを逃さずこちらも即決して回答すべきでしょう。

柔軟型

柔軟型は、クリエイティブ系の職種に多い傾向です。口コミなどのわずかな情報からでも、さまざまなことを想像してしまう傾向にあるため、それを逆手に取って、不安要因をこちらから先に出してしまう方法が有効です。
「自社はハードワークだと思われがちですが、○○○○という理由があって、実際はそうではありません」などと先に伝えることで、口コミや就職情報サイトの影響を受ける前に、不安要因を解消できます。

統合型

統合型は、技術者や研究者に多い傾向です。統合型は決断型とは真逆で、多くの情報から熟考し、決めるのに時間を要する人が多いという特徴があります。この場合、採用担当者は多量・継続的に情報提供しながら、相手が決断するまで焦らずに待つことが求められます。

応募者の家族の意見も聞いておく

両親や配偶者などの「応募者の意思決定に強い影響を与えている人」が、自社についてどう感じているかを聞いておくことも重要です。「ご家族は今回の就職、転職についてどのように言っていますか?」「自社についてどのようなイメージを持たれていますか?」と聞くことで、相手の就職に対する価値観や温度感がわかります。
採用後に、応募者の家族などが入社を反対するケースもあります。もし応募者が、家族などの意見や価値観を確認していない場合には、聞いてもらうように促すことで、そのようなトラブル防止にもつながります。

動機付けのステップ3:説得と勧誘

面接の前に、事業説明の準備は念入りに行いましょう。実際、応募者自身が調べればわかるような自社のビジネスモデルを簡単に伝えただけで面接を終えてしまうケースは少なくありません。しかし、そうではなく「自社の仕事の何が面白いのか」「どのような能力・経験が得られるのか」「どんな社会的価値を持っているのか」など、事業とそれに付随して得られることを、しっかりと説明できるようにしましょう。

また、組織文化を説明する際には、「風通しの良い職場」「若手が活躍できる」といった抽象的な伝え方ではなく、具体的な社内事例を伝えたり、社内でよく話されている会話・やり取りを伝えたりすることで、応募者が自社に対する具体的なイメージを持てるようにすることが大切です。
例えば、「自社では若手社員も活躍できます」ではなく、「このビックプロジェクトのマネージャーは、実は27歳の若手社員なんです」と伝えることで、応募者自身が「若手でも活躍できるな」とイメージでき、より志望度を高めることにつながります。

また、「応募者自身が発した言葉(言質)」を使って勧誘することは、応募者の当事者意識を刺激することに繋がり、採用の場面においてとても効果的です。採用側が無理やり口説こうとするのではなく、応募者自身が「入社するかどうかを自分で決める」状況を作り上げることが、優秀な人材の確保へと繋がります。

まとめ

面接で応募者を見極めるには、インタビュー(情報収集)、アセスメント(見立て)、ジャッジ(評価)の3プロセスのポイントを押さえて取り組むことが効果的です。
また、応募者の志望度を高めるためには、採用担当者が応募者の動機付けに取り組む必要があります。ぜひ今回の内容を参考に、より効果的な採用活動に取り組んでみてください。

参考

  • (※)妥当性係数の値が大きいほど業績予測力が高い
  • Person 曽和 利光
    曽和 利光

    曽和 利光 株式会社人材研究所 代表取締役社長

    1971年、愛知県豊田市出身。1995年、京都大学教育学部教育心理学科を卒業。株式会社リクルートで人事採用部門を担当、ゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を確立し、2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。企業の人事部へ指南すると同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

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