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日系企業のアルムナイ活用事例① 〜離職後の再チャレンジを全員で応援する組織文化(株式会社良品計画)〜

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2016年というとても 早い時期からカムバック採用に着手し、開始3年で約600名以上もの再雇用実績を誇る良品計画。企業側から声をかけずとも自然と戻ってきたくなる組織風土が、成功の秘訣だといいます。

雇用の流動性が高い現場社員スタッフ を中心に再雇用を加速させ、強力な人的資本を形成している良品計画のカムバック採用の背景や成功の秘訣について、お話をお伺いしてきました。

Qカムバック採用の制度化に踏み切った背景を教えてください

退職後も再び挑戦したいという社員の気持ちを汲み取り、カムバック採用の制度を始めました。主婦の方をはじめ家庭事情などでやむを得ず退職される方も多く、そういった方々の再チャレンジを応援できればと考えています。また当社では現場スタッフを中心に人材の流動が激しく、退職後の穴を埋めることも課題でした。そこで当社で勤務経験があり、もう一度挑戦したいという熱意をもった方々の再入社は大変心強く、今後も積極的にカムバック採用は続けていきたいと考えています。

Q たくさんの再雇用を生み出している秘訣は何だとお考えでしょうか

一人ひとりの社員が「もう一度良品計画で挑戦したい」という想いを持っていただけていることはもちろん、退職した社員を快く送り出す文化が、大きな秘訣 だと考えています。特に当社のような小売業は、パートナー社員やアルバイトの方を中心に雇用の流動性がもとより高く、良い意味で社員の出入りに慣れているため、退職する方の次の挑戦を応援する文化が社内に根付いています。退職される方に対して「何か欠陥があったから辞めたのではないか」と疑いの目を向けるのではなく本人がもう一度働きたいという想いを何よりも優先する考え方が各店舗レベルで浸透しているのです。

そして、特に退職後は会社から直接連絡を取ることはしていませんが、退職者はもちろん既存社員にもカムバック採用に関する理解が広く浸透しているので、自然と戻ってきやすい組織文化が形成されています。実際に各店舗でも「あの人カムバック採用で来てくれたんですね、心強い。」という会話がなされるなど、言葉自体が文化として浸透していることが見て取れます。

Qカムバック採用が自社にもたらすメリットについてお聞かせください

自社ブランドへの深い理解がある

当社は幅広く商品を扱う小売会社であることから、採用時点で既にブランドへの理解が進んでいるということは一つ大きなメリットだと考えています。研修などでゼロから教育するプログラムも進めていますが、ブランドへの理解が形成されるまで時間がかかります。このブランド理解が深い状態で入社していただけることは、新卒や中途で新たに採用することでは得られない価値だと考えています。

一度離れたからこそわかる俯瞰的な視点

ずっと当社で働いている社員とは異なり、一度退職して家庭に戻ったり他社へ転職することで、良品計画という会社を外から俯瞰的に見ることができるということも、メリットの一つだと思います。一度離れることで見えてくる課題感や「もっと会社を良くしていきたい」という想いを持って再入社していただける方が多いので、大変心強く感じております。

過去の勤務経験を活かしたリーダーシップ

過去の勤務経験をもとに、カムバック採用の社員がハブとなって組織づくりに貢献してくださるケースも多いです。特に新店舗の出店などスタッフの多くがまだ業務に慣れていない場合において、一度勤務経験のあるカムバック採用スタッフが 中心となり周りのスタッフをまとめ、店舗の立ち上げにも大きく貢献していただいています。

良品計画から学ぶ、アルムナイ文化形成に必要な2つの秘訣

再雇用のジョブオファーや定期的なコミュニケーションなど、アルムナイに向けたアクションを特段実施することなく、数々の再雇用の実績を誇る良品計画。インタビュー内容を紐解いていくと、主に組織風土や文化面からのアプローチに成功の秘訣を見出すことができました。

カムバック採用制度の浸透率

再雇用される側、職場の両方でカムバック採用に関する理解が浸透していることが、成功の鍵を握っています。再雇用される側については、カムバック採用で退職後ももう一度チャレンジできるという制度自体をまずは認識してもらう必要があります。ただしそれだけでは不十分で、彼らを受け入れる側である職場における制度への理解が重要になります。

こうしてカムバック採用のメリットを理解し彼らを即戦力として歓迎する文化をつくりあげることができれば、職場において心理的安全性が担保され、結果的に「自然と戻ってきたくなる組織風土」ができあがるのです。

退職に対するポジティブな受け止め

前提として「退職」というものが社内で比較的ポジティブに扱われていることもまた、アルムナイ文化の形成において重要であると言うことができます。特に日本においてはまだまだ退職がネガティブなものだと捉えられる傾向にありますが、そのままでは一度退職した社員を繋ぎ止めておくことは難しいです。

一方退職後の他社での挑戦も含めて社員のその後の活躍を応援するなど、去り際にお互いに気持ちよく送り出す文化があれば、退職がよほどネガティブな理由でない限りカムバック採用の可能性を紡ぐことができます。こうして退職を会社としてポジティブに受け止める文化を形成し、いつでも戻ってくることができるというカムバック採用の制度をしっかりと伝達することで、自然と再雇用を促進することができます。

女性活躍促進にもつながるカムバック採用

今回の良品計画の事例のように、企業の退職者の一定割合を占めるのが、出産や子育てなどの家庭事情を理由に多くの女性が仕事を離れてしまうケースです。このような方々を対象に再雇用の選択肢を提示することで、産休や育休とは違った角度から「女性が働き続けられる環境」を構築することができます。

年々勤務制度や休暇の整備によって環境は改善されつつありますが、まだまだ出産を機に退職してしまう女性の数は多いままです。この離職自体を防ぐという方向性もある一方で、再雇用制度を整備することによって、一度やむを得ず離職した社員を再びアルムナイとして雇用することができ、新たなキャリアの選択肢を提供することができます。こうして出産を機に退職した後でも、キャリアダウンすることなく過去の同社での経験やスキルを評価され再入社する道をつくることで、女性の活躍促進にも貢献することができるのです。

  • Person 増田 実佳

    増田 実佳 株式会社良品計画 人事部人事企画課

    2016年4月 新卒入社。
    神奈川県の店舗で店舗スタッフとしてキャリアをスタートし、店長として店舗マネジメントを経験後、2020年2月に人事部へ異動しました。
    現在は従業員のための制度設計やキャリア開発に携わり、良品計画の第二創業を人事としてサポートすることに尽力しています。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/10/13
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