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Measure What Matters:Googleが活用している目標設定・管理法OKR

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OKRとは「Objective and Key Result(目標と成果指標)」の略です。GoogleやIntelをはじめ、多くのグローバル企業の目標設定と管理に活用されています。OKRは、設定された目標に対して成果指標を細かく決め実行するため、目標達成度の把握がしやすく、成果指標の完了が最終目標の達成に直結すると考えられています。

『Measure What Matters』の著者ジョン・ドーア氏は、2000年代の初めにOKRをGoogleに導入しました。本書では、Googleの取締役だったドーア氏がOKRを使い始めたいきさつや、OKRの発案者であるIntelの元CEOアンディ・グローブ氏に関するエピソード、成功事例などを交えながら、OKRの哲学や優れている点を紹介しています。また、読者がOKRを活用するときに役立つポイントが随所に述べられているため、マニュアルとしても役立つ一冊です。OKRの活用法を中心に、本書の概要をご案内します。

目標と成果指標の決め方

OKRを職場に取り入れるときには、まず1つの目標に対して、3つ程度の成果指標を決めます。ポイントは、成果指標は必ず具体的な数字で示すこと。
例えば「インディ500で優勝する」という目標に対して「ラップスピードを上げる」とか、「ピットストップの時間を減らす」という成果指標では足りません。指標となる成果は「平均ラップスピードを2%上げる」や、「平均ピットストップの時間を1秒減らす」というように、目標達成のために実現すべき具体的な数字で表します。

1.Objectives(目標):何を達成するか

最終的なゴールは四半期から半年周期で立てられる事業計画の達成です。事業計画の達成をゴールとして、まず企業のリーダーが企業理念やビジョンを元に目標を立てます。続いて部署のリーダーが目標を立て、さらに、配下のチームや個人がその部署の目標達成をゴールとした目標を立てていきます。
このようにOKRは、それぞれの目標と指標が階層的なつながりを持つ点が特徴的で、そしてもう一つ重要な点は「全て社内に公開し進める」ということです。
次に目標を設定するときのポイントをあげてみましょう。

  • 目標の数が多すぎると焦点がずれてしまうので、3~5個までに絞ること。
  • 現状維持は目標にならない。現状よりも上を目指す目標を立てること。
  • 高い目標でありながら、実行できる現実的な目標にすること。
  • 客観的、具体的、明確な目標にすること。
  • 目標達成までの締め切りがあること(3か月~長くても1年)。

2.Key Results(成果指標):目標達成まで、どうやって到達するか

Googleの元副社長マリッサ・メイヤー氏は「数字の入っていない成果指標は、成果指標ではない。」という名言を残したそうです。目標を達成するために取る行動を示す成果指標は、必ず数値で測れるようにします。成果指標を設定するときのポイントは次のとおりです。

  • 1つの目標に対し、さらに3~5つ程度の成果指標をあげること。
  • 指標は、計測可能で目標達成に直接影響するものであること。
  • 「平均ラップスピードを2%上げる」というように具体的な数値結果で示すこと。
  • 実現した証拠が残すこと。
  • 定期的にチェックし、上手くいかない成果指標は調整すること。

GoogleのOKR評価方法

評価指標の「達成度」で判断する

Googleでは、もっとも簡単で分かりやすい方法として、関連する成果指標から達成度の平均を出し、0~1.0の数字で評価をしています。完全に達成できれば1.0、まったく出来なければ0となり、評価が低い成果指標は見直します。

  • 0.7~1.0=緑(達成)
  • 0.4~0.6=黄(進歩はしているが、完了には満たない)
  • 0.0~0.3=赤(進歩がみられない)

OKRの評価は社員の成績(報酬)には結びつきません。あくまでも、自分の仕事が目標の達成にどれくらい貢献できているか確認するためのものです。Googleでも、自己評価ツールとしての利用を推奨しています。

間違ったOKRが設定されていたケース

自己評価ツールとして使うOKRは、評価を出して終わりではなく、成果指標を改善することでさらに効果的に達成度を測れるように見直すことが大切です。
「新規顧客を増やす」というチームの目標に対し、個人の成果指標が「50件のセールスコールをする」だった場合を例に考えてみましょう。もしOKRの期間内に35件のセールスコールをしたという結果が出た場合、達成率は70%で0.7という評価になります。

ただし、この結果にはデータだけでは読み取れない部分もあります。例えば、セールスコールの件数は目標に満たなかったものの、8人の新規顧客が獲得できた場合、評価を1.0にしても構いません。また、それとは逆に、例え50件の目標は達成できても新規顧客が1人しか獲得できなかった場合には、評価が下がるでしょう。そして、評価の後には反省をします。このように目標との相関性の低い成果指標は、あまり良いものではありません。次回はセールスコールの件数ではなく、獲得する新規顧客の人数を軸にした成果指標を立てたほうが良さそうだと分かります。

必達目標と野心的な目標を用意する

GoogleのOKRには、必ず1.0を出さなければならない必達目標と、0.7が出れば成功とする野心的な目標の2種類があります。
必達目標は、ビジネス上必ず達成しなければいけないことです。もし1.0の評価が出せなかった場合、計画や実施の欠点を見いだし、なぜ達成できなかったのかを説明できなければなりません。一方、野心的な目標とは、まだどのように達成するか、はっきりとしたアイデアや、どれくらいのリソースが必要か分からない未知の挑戦です。野心的な目標では、平均0.7程度の達成度を目指します。Googleのように、2種類の目標を使い分ける場合、設定した目標が、必達目標と野心的な目標のどちらに当たるのか、あらかじめ関係者に知らせておく必要があります。

OKRの基本サイクル

OKRを運用するサイクルは企業や目的によって多少異りますが、一般的には四半期程度を1サイクルの目安にするとよさそうです。

  • 四半期が始まる前に企業の目標を設定し社員に内容を説明する機会を設ける。
  • 各部署では、企業の目標を受けて部署ごとのOKRを設定しミーティングでほかのメンバーと共有。さらに部署の目標に合わせた個人のOKRも設定する 。
  • 目標達成期限までの間に何度かミーティングを開き、各自の進捗状況を確認、必要があれば成果指標を調整する。
  • 四半期の終わりにOKRの評価と反省をし、次の行動につなげるというのが基本的なサイクルです。

なぜOKRは優れているのか

なぜOKRを取り入れるべきなのでしょうか。ドーア氏は4つのスーパーパワーとしてOKRが優れている点をあげています。

1.優先順位の高いものに集中して取り組むことができるようになる

目標を絞ることで無駄なものが排除され、組織内で最も重要な仕事を表面化させる効果があります。OKRを設定する時には「何が最も大切か?」常に自分に問うことが大切です。スティーブ・ジョブズは「イノベーションとは、数千ものことにノーと言うことだ。」という言葉を残しました。不要なものを取り除くことで必要なものが見えてきます。

2.同じ目標を組織全体で共有することでチームの結束が高まる

公開されている目標は、公開されていない目標よりも達成する可能性が高いという調査結果があります。しかし目標が他部門に開示されず日々の業務が行われ ているケースも多々あるようです。ある調査によると、企業のビジネス戦略をしっかりと理解し、目標達成を助けるために何を期待されているか分かっている社員は7%しかいないという調査結果も。

OKRを導入すれば、たとえ新入社員でも、社長の目標から同僚の目標まで、全員の目標が開示されることが条件となります。誰が何に取り組んでいるのか一目瞭然のため、所属部署や同僚のOKRと自分のOKRをすり合わせながら、目標を達成するために助け合うことができるようになります。OKRによって組織のなかの小さなグループが結び付き、大きな力を発揮できるようになるのです。

3.誰が目標を実現したか追跡できる

目標を共有し、誰がどのような成果指標に取り組んでいるかお互いに見えるOKRでは、誰が目標達成に貢献しているかが分かります。ドーア氏によれば、社員が最もやる気になるのは、自分がどのように企業の成功に貢献しているか目に見えるときです。OKRでは、それが分かります。

4.実力よりも高い位置に導いてくれる

野心的な目標は、簡単な目標よりも効果的にパフォーマンスを向上させます。さらに、その目標が具体的であると、漠然とした言葉で表された目標よりも「高いレベルの成果」を生み出します。Googleでは、アンディ・グローブ氏が開発した古くからの標準に従って、達成率が60%~70%で成功とみなされる野心的な目標を設定しています。

OKRの導入事例

『Measure What Matters』には、OKRの優れた点の説明とともに、実際にOKRを導入している企業の事例が、たくさん紹介されています。OKRは、大手企業からスタートアップや個人まで、様々な場面で役に立っているようです。そのなかから、スマートフォンアプリの開発企業The Remindの事例をご紹介します。

OKRで優先目標を見直し、企業のレベルアップに成功

The Remindは、教師と生徒の家庭をつなぐコミュニケーションアプリの開発をしています。企業が急成長を始めた2014年の繁忙期には1日に30万人以上の生徒や保護者がアプリをダウンロードしていました。AppleのApp Store(アプリストア)のランキングも3位。どの部署の業務も急いで成長させる必要がありました。The RemindがOKRを始めたときの社員数は14人。その数は2年後60人まで増え、もはや会議室に全員が集まって相談することもできなくなりました。共同創設者のブレット・コプフ氏は、OKRによって優先的に取り組むものを絞り社員が目標に集中できたことで、企業を次のレベルまで押し上げることに成功したと振り返ります。

例えば、開発リソースをアプリのメインユーザーである教師のエンゲージメントを上げることに集中し、他の施策は先延ばしにしました。コプフ氏曰く、大きな目標はひとつずつしか成し遂げられません。一つの目標に集中することで、その目標をよく理解することができます。

このアプリを利用する教師たちは、メッセージを繰り返す機能を望んでいました。たとえば、毎回設定をしなくても毎週月曜日に「今、読んでいる本を学校に持って来てください。」というメッセージを小学5年生の家庭に送ることができる機能です。The Remindでは、この機能が喜ばれることは分かっていたものの、ユーザーを増やすために優先的に取り組むべきなのか決めかね、手をつけていませんでした。

しかし社内でOKRを取り入れたことが、優先的に取り組む仕事について考える機会になりました。経営チームは四半期の目標を絞り込むなかで、この機能の大切さに気づき目標として掲げました。そして社員に、なぜこの目標が大切であるか説明をしました。社員たちもOKRを使うことで、目標を実現するために自分が何をすればよいか具体的に考えられるようになったといいます。こうして社員が一丸となって目標達成のために取り組むことができ、企業を成長させることができました。コプフ氏は、もしOCRを導入せず、この目標に集中していなければ、現在の成功はなかったかもしれないと感じています。

OKRは個人の目標設定にも効果的

OKRは、コプフ氏の個人的な集中力を高めることにも役立っているようです。コプス氏は自分の目標を3つから4つに限定するようにしています。それをプリントアウトし、自分のノートのなかとコンピュータの隣に貼り、毎朝、自分がいま集中するべきことを振り返っているそうです。
The Remind の事例のなかに、コプフ氏が立てた目標の一例が掲載されています。コプフ氏は、OKRを採用活動にも生かしているようです。

【目標】会社の採用活動をサポートする

  • ファイナンスと運営のディレクターを1人採用する(少なくとも3人の候補者に話をする)
  • プロダクトマーケティングマネージャーになれる人を1人見つける(この四半期に5人の候補者と会う)
  • プロダクトマネージャーになれる人を1人見つける(この四半期に5人の候補者と会う)

目標を達成するための道標となるOKR

OKRは、組織に一番重要な仕事をはっきりさせ、目標まで到達する道筋を照らすものです。ドーア氏はOKRについて次のように説明しています。「OKRは特効薬ではありません。健全な判断や、強力なリーダーシップ、または創造的な職場文化の代わりにはならないのです。しかし、OKRの基礎が整っていれば、それらは、あなたを山頂に導くことができます。」
OKRは導入する企業を選ばず、規模や業種に関係なく活用することができます。また、個人の目標を管理することにも役に立ちます。ドーア氏の言葉を借りれば「考えるのは簡単、実行することが全て」です。ぜひ職場に取り入れてみてください。

Measure What Matters
著者 John Doerr
出版社Portfolio (2018/4/24)
ISBN-10 : 0525536221
ISBN-13 : 978-0525536222

  • 経営・組織づくり 更新日:2022/10/12
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