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人間らしさを職場に:人、ビジネス、そして世界を変える可能性のある職場づくり10の方法

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人間は、ほかの人とつながり、関係をつくるようにできています。ですから、私たちが最も長い時間を過ごす職場で、人間関係を育めるようにすることが必要です。
『Bring Your Human to Work: 10 Surefire Ways to Design a Workplace That's Good for People, Great for Business, and Just Might Change the World』の著者エリカ・ケスウィン氏は、ビジネスコーチとして20年以上に渡り企業のリーダーや重役と協力して、人間らしさを重視した組織を構築してきました。

人間らしさや人間関係を重視する企業は、生産的で、創造的で、ロイヤルティの高い従業員を定着させることができ、競合他社との競争でも優位性を獲得することができるといいます。
本書のポイントをご紹介しましょう。

利益だけでなく、自社の社会的な役割を理解する

人間らしさを重視する企業が成功するためには、価値観に一貫性があり、本物でなければいけません。そしてその価値観にいつでも忠実である必要があります。
そのために、まずは価値観を定義すること。例えば「従業員の多様性」など、事業目標だけでなく自社の社会的な役割を念頭に置いて企業が持つ価値観を考えます。

組織の価値観は、そこに所属する人がどのような人たちであるか、そして企業が何を大切にするかを表しています。組織の価値観は、ビジネスの分岐点や従業員を雇うときなど、重要で戦略的な決定をするときの助けとなります。4つから6つの価値観を定義することで、リーダーにとって焦点を当てるべき重要な目標を特定しやすくなり、従業員にとっても覚えやすくなります。
価値観の実現は、多くの場合、あまり人が見ていないところで従業員が行っています。例えば、顧客を助けるために努力をした従業員を見つけたら積極的に褒めましょう。
そのときのポイントは、同僚の前で賞賛を送ること。そうすることで、ほかの従業員も価値観を実現するためにどのような行動をとればよいかがわかります。定義された価値観を実践している従業員に光を当てることはとても大切です。

長い目で見る。持続可能な挑戦はニーズを知るところから

何かに挑戦しても、継続できなければあまり意味がありません。サステナブル(持続可能)であることは、職場を人間らしくするための鍵です。どこから始めたらよいか迷うかもしれませんが、一度にすべてを行う必要はありません。組織の価値観に沿って始めてみましょう。
例えば、「多様な従業員」という価値観を重視する場合には、就業規則や実績の分析をして自社の多様性を把握します。「透明性」を重視する場合には、ビジネスパートナーの価値観と自社の価値観について、ビジネスパートナーと話し合うといいでしょう。

どこから始めていいかわからないときには、従業員にとって何が重要か、日々の会話や面接のときに尋ねてみるのもいいでしょう。トレーニングや柔軟な勤務制度など、世代やライフステージによって、従業員のニーズは異なるはずです。従業員が望まない、または従業員にとって価値のないプログラムを提供するために時間やお金をかけないでください。
例えば、勤務時間を柔軟にするプログラムの導入にはコストがかかりますが、病気の親のケアのために、週に1日の在宅勤務や休暇を取得できないことで優秀な従業員が離職するコストは、それよりもはるかに高くなります。

明確な目的をもって会議を開く

目的がはっきりしない会議は時間の無駄になるだけでなく、残業やストレスの原因にもなります。次の質問を自問自答してください。

  • カレンダーに予定されている会議のうち、対面で集まらなくても開催できるものはどれですか?
  • 今週出席した会議のうち、生産性の高かった会議はいくつありましたか?

目的がはっきりとした生産性の高い会議をするために、会議の目的と最後に達成したい目標を含めたアジェンダの作成を、会議の前の課題にしてください。ケスウィン氏は、従業員に毎週1回「出席しない会議」を決めるように勧めている企業について触れています。この思考プロセスによって、全員が自分の仕事と会議の関連性を継続的に評価しなければならず「これは私が出席するべきものか」と考えることができるのです。
出席を決めた会議では、全身全霊をつくしてください。誰かがメンバーに対して何かを提示しているのに、机の下でテキストメッセージをしているメンバーがいたら、それは人間関係にも良くありません。もし自分がリーダーになったときには、メンバー全員が関与しなければならないように、会議をデザインします。

例えば、Eileen Fisherというファッション企業では、瞑想のための鐘が会議開始の合図です。また、Microsoftの上級リーダー向けの会議では、会議の始めに「研究者が最近どのような成功を収めているか」という事例を発表します。方法は様々ですが、会議の始めに参加者全員の注意を引き、気持ちを一つにまとめることが重要です。
また、従業員が声を上げ、意見を述べられるように促す方法を見つけてください。初対面の人が多いときには、まずメンバー全員に、自分自身の興味深いところについて話してもらいましょう。会議は人間関係を尊重する貴重な場となります。また週末にオフィスで食べ物や飲み物を振る舞う小さなパーティーを開き、日ごろから職位や部署に関係なく交流を持っておくことも、会議のときの活発な意見交換に役立ちます。

企業の価値観に合った会議のルールを決めておくことも大切です。「会議中の電子デバイスの使用を禁止する」「会議の長さと頻度に関する厳しい規則を設定する」といったルールを設定したら、決めたルールを必ずメンバー全員に伝えてください。
チームメンバーからアイデアを募集し、ルールを決めることもできます。まずチームメンバーに、最近の会議に関するフィードバックを依頼します。何が上手くいったのか、何が上手くいかなかったのかを尋ね、フィードバックに基づいて会議のルールを決めていきましょう。

社員のウェルビーイングを奨励する

ウェルビーイング(心身と社会的な健康)のコンセプトは比較的新しいものですが、急速なペースで拡がっています。日本でも従業員のメンタルヘルスケアに取り組んでいる企業は多いのではないでしょうか。
企業が従業員のウェルビーイングを考えることは、従業員のためであるとともに、健康で生産性の高い人材の定着にもつながるため企業にも大きなメリットがあります。
組織、従業員、価値観は各企業によって異なります。自社にとって最も重要なことを考慮しながら、適したウェルビーイング戦略を設計するために、例えば、次のようなことを考えてみましょう。

  • ストレス軽減に焦点を当てることはできますか?
  • 従業員が職場のどこかで瞑想できますか?
  • あなたの企業では従業員が孤立しやすく、うつ病を減らすために従業員同士のつながりを持つ必要がありますか?
  • 職場のハラスメントに焦点を当てる必要はありますか?
  • 従業員が机に向かっている時間が長すぎませんか?
  • 従業員が1日1万歩を歩けていますか?
  • ウェルビーイング施策を、どのように導入し、成功させますか?

従業員が何を切望しているかをヒアリングし、従業員が幸せで健康を感じるために必要なものがわかったら、それらを中心に、ストレス軽減のためのヨガ教室や、就業時間中のエクササイズプログラム、そのほか従業員が望む習い事など、自社に合ったウェルビーイングプログラムを導入します。
ウェルビーイングプログラムを設計したら、ウェルビーイングが重要であることを従業員に周知し、企業が用意したプログラムを最大限に活用してもらいます。

フィットネスニュースレターを書くこと、ウェルビーイングの説明会を開くこと、専用の瞑想ルームを設置すること、Slackでウェルネスチャンネルを設定するなど、コミュニケーションは非常に重要です。従業員が活用できるプログラムについて知らない場合、用意したプログラムが無駄になってしまいます。
従業員の幸福は、本人にとってもビジネスにとっても良いことであることは間違いないでしょう。しかし特定のウェルビーイングプログラムが従業員のために役立っているかどうかを確認するには、指標を使ってROW(Return on Wellness)を測定する必要があります。

  • 何人がプログラムに参加していますか?
  • 欠席は増加しましたか? 減少しましたか?
  • プログラム前後で企業が負担する医療費に変化がありましたか?
  • チームメンバーは何と言っていますか?

これらフィードバックを生かしながら効果を測定することは、従業員自身にメリットを示すために重要です。また、何が機能して何が機能していないのか理解し、それに応じて調整をしていきます。

上司が率先して仕事を早く切り上げる

人間には休息が必要です。無駄な残業は生産性やモチベーションを下げるのはもちろん、ウェルビーイングにも悪影響を与えます。決められた時間に仕事を切り上げ、また翌日に再開するというメリハリのある働き方をすることが大切です。従業員に仕事を切り上げてもらうには、様々な方法があります。理想的なのは、企業がその役割を担うことです。最初のステップは、仕事からの切断を企業価値に組み込むこと。次にスタッフ、マネージャー、エクゼクティブなど、全員がそれを確実に行うようにします。
以下は、従業員を仕事から切り離すための3つのポイントです。

リーダーが手本となる

リーダーが手本を示しましょう。時間通りに帰宅し、休暇を取得し、週末にはEメールの返信をしないようにしましょう。できれば休暇中の写真を数枚ソーシャルメディアに載せ、仕事から自分を切り離す手本となってください。部下はそれを見て、自分たちも同じようにするでしょう。

終わらない仕事を分担する

休暇前に従業員が早く帰れないのは、休暇から戻ってきたときに仕事が山積みになっているのが嫌だからです。休暇中に届くメールは削除するか、ほかの人が返信することにします。

従業員の休暇を把握する

従業員が休暇を取っているかどうかを把握し、休暇を取っていない人と、なぜ休暇を取らないのか話し合います。休暇中の出来事を社内で共有した従業員に対してインセンティブを提供するようにし、休暇の取得を促すことも一つのアイデアです。

専門的な能力の開発を企業文化に組み込む

能力開発の機会は、ただ与えるだけでなく、従業員が何を学びたいのか聞き、希望に沿ったものにします。そして、彼らに何を学びたいか聞いたあと、彼らが何を同僚に教えられるか聞いてみてください。人は知られていないスキルを持っているものです。スキルを得るために、授業を受けることは大切ですが、指導することも同じように学びとなります。また同僚と専門分野の知識を交換することで、お互いの能力開発にも役立ちます。

多くの企業が、従業員のキャリアステージごとにコーチングを提供しています。誰しも新しいポジションについたときには不安を感じるものです。その時々でコーチングを提供することは理にかなっています。すでに仕事をこなせる従業員に対してコーチングをするのは無駄のように思えるかもしれませんが、キャリアステージごとにサポートをすることで「いつもあなたの幸せを願っています」というメッセージを伝えることができます。

人間らしさのある職場のためにできること

ほかにも、人間らしい職場のためにできることがあります。

  • テクノロジーを上手に使ってコミュニケーションを円滑にする
  • オフィスのレイアウトを変え、対面での交流の場を設ける
  • 従業員が地域社会に貢献するよう促す
  • 感謝の気持ちを伝える

シンプルだが簡単ではない、職場で人間らしさを重視すること

人間らしさや人間関係を重視することは、当たり前のように感じます。そして、紹介した方法も、すぐにできそうなものばかりです。しかし、実際に試してみると、簡単にはいかないことがわかるでしょう。忙しさのなかで、人間らしさや人間関係を後回しにしてしまうことがあるかもしれません。本書は、そんなときの従業員の離職を防ぐために読んでおきたい一冊です。

Bring Your Human to Work: 10 Surefire Ways to Design a Workplace That's Good for People, Great for Business, and Just Might Change the World
著者 Erica Keswin
出版社McGraw-Hill (2018/9/20)
ISBN-10 : 9781260118094
ISBN-13 : 978-1260118094

  • 人材採用・育成 更新日:2022/09/28
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