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内定辞退対策にも有効な「リクルーター制度」とは? 歴史から導入のメリット・デメリットまで解説

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先輩社員と学生が対面で面談を行うことが当たり前ではなくなりつつある昨今。
リクルーター制度がこれまで担ってきた役割や、その実施内容は、コロナ禍以降大きく変化しているようです。
そもそも、リクルーター制度とはどのようなものだったのか。そして、コロナ禍以降、どのような変化が生じ、今後どのような対応が求められるのか。

ウィズコロナ、ポストコロナにおけるリクルーター制度のあり方について、シーズアンドグロース株式会社の河本英之さんにお話を伺いました。

― そもそも、リクルーター制度はいつ頃、どのような背景の下で始まったのでしょうか。


河本さん: 日本におけるリクルーター制度は、金融機関が現場のエース社員を新卒採用シーズンに採用部門の直下に置き、応募者と1対1で面談を繰り返し、動機形成を図ってきたことに端を発するといわれています。その背景にあったのはバブル期の人材獲得競争で、金融業界においては特に優秀な新卒社員を採用しようとする動きが顕著だったのです。
私は2005年から新卒採用のマーケットをウオッチし続けてきましたが、リクルーター制度の多様化が進んだのは2010年くらいからだと感じています。リーマンショック後しばらくして有効求人倍率が上昇し、新卒採用が売り手市場となったことで、多くの企業が採用活動により力を入れるようになったのです。その結果、大学訪問によって母集団形成を目指す、スポット面談で応募者の動機形成を目指す、内定未承諾者に対して不安払拭(ふっしょく)を目指すといった役割に分化し、応募者と1対1の対応をする社員を広くリクルーターと呼ぶようになっていったのです。

― メンター制度やブラザー・シスター制度との違いについても教えていただけますか。


河本さん: メンター制度やブラザー・シスター制度はリクルーター制度と混同されがちですが、前者は人材育成のために先輩社員が後輩の育成に取り組むというもので、後者は採用活動のためにリクルーターが応募者と1対1の面談などを行うというものになります。なお、メンターとブラザー・シスターの違いは、メンターが所属部署を問わないのに対し、ブラザー・シスターは一般的に同一部署の後輩の面倒を見るというところにあります。

今回のテーマはリクルーター制度ですが、実はこのメンター制度やブラザー・シスター制度にも重要な役割があります。実際、仕事や人間関係に不安を抱える新入社員にとって、メンターやブラザー・シスターの存在は非常に大きく、新入社員のモチベーションを高めたり、不安や不満を解消したりすることで、早期離職を防ぐ効果が期待できます。

もっとも、内定期間中から新入社員にメンターやブラザー・シスターをアサインできる企業の割合は決して高くはありません。ベンチャー企業などの場合は内定期間中からアルバイトに入ってもらい、その際にメンターやブラザー・シスターを割り当てることが多いようです。ちなみに、メンターやブラザー・シスター制度の導入には副次的な効果もあり、新入社員と向き合うことでメンターやブラザー・シスター社員自身の成長を促すことができるという一面もあります。

― 現在のリクルーターが担う役割を具体的に紹介していただけますか。


河本さん: 現在のリクルーターが担う役割は大きく、

  • 大学訪問リクルーター=プロモーター:母校の研究室へ訪問し、母集団形成を担う
  • 面談対応リクルーター=リクルーター:インターンシップ後、もしくは選考途中に応募者の動機形成のために面談を行う
  • 内定未承諾者への面談リクルーター=クローザー:内定未承諾者に対して、競合他社との差別化ポイントを訴求したり、不安払拭(ふっしょく)を行うことで、内定承諾に導く

といった分類になります。

それぞれの役割の難易度は、プロモーター、リクルーター、クローザーの順に高くなっていきますので、エース級の人材を配置するのであれば、クローザーを担当してもらうのがいいでしょう。

― 企業が最も多く導入しているのはどの役割になりますか。


河本さん: 最も多いのは面談対応をするリクルーターで、応募者対応をスポットで行うパターンと、応募者と長期的に連絡を取り合うパターンに大別できます。前者については面談調整を採用担当が行うことでリクルーターの負荷を軽減できるのが特徴で、多くの企業がこのパターンを導入しています。後者については内定承諾時、場合によっては入社直前まで応募者の対応を続ける必要がありますので、リクルーターの負荷が必然的に大きくなってしまい、かなり体力のある企業、あるいは新卒採用を全社的なミッションと捉えているような企業でないと導入することが困難になります。そのため、これからリクルーター制度を導入しようと考えている企業には、まずはスポット面談から始めることをお勧めしたいと思います。

― リクルーター制度にはどのようなメリットがあるのでしょうか。


河本さん: リクルーター制度の最大のメリットは、「年次が近い現場社員からの訴求力」です。そもそも、応募者は企業の採用担当のことを「会社のプロモーション担当だから良いことしか言わない」と捉えていたり、面接官に対しても「年次が離れているため、なかなか本音を言えないし、言ってくれない」と思っていたりします。その点、リクルーターは年次が近い現場社員であることが多いため、応募者としても本音で話しやすい相手になるわけです。

一方で、デメリットもあります。一番に挙げられるのが、かかる工数の多さから、リクルーターへの負荷が大きくなってしまうことです。現にその辺りを考慮し、リクルーター制度の導入に二の足を踏んでしまう企業も多いようです。ただ、この点については「リクルーターを増員し、一人ひとりの負担を減らす」「選考後半で絞られた学生のスポット面談に注力する」などの施策を導入することで解消できますので、ぜひ前向きに検討いただきたいところです。

また、導入に当たってはリクルーターの「人・風土」に依存しすぎないことも重要になります。リクルーター自身に依拠する「人・風土」が応募者の動機形成につながることが多いのですが、当然ながら全ての社員がリクルーターと同じような「人・風土」を持っているわけではありません。そのため、入社後、実際に働き始めるタイミングでミスマッチが生じ、早期離職につながるというケースが目立ってきています。昨今、多くの企業が他社との差別化を図るために「人・風土」を前面に押し出していますが、入社後のミスマッチの原因になりかねず、要注意だと言えます。「人・風土」という曖昧な魅力に頼らず、「事業・仕事内容」といった具体的な事柄にフォーカスを当て、リクルーターにもそのことを中心に語ってもらうようにしていくことが大切です。

― リクルーターへの負担をコストと捉える企業も多いようですね。


河本さん: リクルーター制度には、リクルーター社員自身の成長を促すというメリットがあることにも注目してほしいですね。例えば、3年目研修の一環としてリクルーター制度を位置付け、現場の業務だけでは獲得できないマネジメント能力の向上などにひも付けていけば、「工数」ではなく、社員教育のための「効果」と捉えることができるはずです。

― コロナ禍以降、リクルーター制度の実施内容に何かしらの変化はありましたか。


河本さん: 感染拡大を防止する観点から大学訪問や面談をリアルで実施する機会が激減し、多くの企業がオンラインへの切り替えを余儀なくされました。しかし、リアルとオンラインとではコミュニケーションの質が大きく異なります。リアルであれば視覚的に得られる情報量はもとより、お互いの〝間〟や〝呼吸〟を感じながら対話を進めることができますが、オンラインだとそういった繊細な情報を得ることも難しく、信頼関係の構築に時間を要するケースがあるのです。

― そういった状況を克服するにはどういった工夫が必要になりますか。


河本さん: まずはリアルのときよりも面談の機会を増やし、各回ごとにあらかじめテーマやゴールを設定するなどの面談設計がポイントになります。一例ですが、1回目は親睦を深める、2回目は応募者自身の考えを整理する、3回目は自社のことを深く知ってもらうといった段階を踏んでみるのもいいでしょう。また、面談の最後に応募者に対して、自己理解や企業理解に関する〝宿題〟を出すのも効果的です。例えば「どうしてA社とB社を併願しているのか」といった質問を糸口に応募者の考えを整理し、それに関するアドバイスをしていくことで、自然な形で信頼関係を構築することにもつながるはずです。

こうした信頼関係づくりはある意味、恋愛と似ているところがあります。相手にただ寄り添うだけでなく、何らかの気付きを与えるなどして影響を与えることが関心を引くきっかけになるわけです。リクルーター制度においても同様に、応募者が気付いていない自身の考えを整理してあげたり、指摘して再考を促してあげたりすることで、心の扉を開くことができるようになるはずです。しかし、あまりにも応募者に寄り添いすぎると、「この会社は自分の言うことを何でも受け入れてくれる」という勘違いから、入社後のミスマッチにもつながりかねないため、適切な距離感や関係性を保つことにも留意しなければなりません。

― こうした施策をスムーズに進めていくには、リクルーター自身の成長を促すことも重要になってきそうですね。


河本さん: ご指摘のとおり、リクルーターの育成も計画的に進めていかなければなりません。従来、リクルーターは限られたエース級の社員が担うのが一般的でしたが、これからはリクルーター一人ひとりに掛かる負担を軽減していくためにも、多様な社員に担ってもらう方が望ましいです。そのためにも人事部門はリクルーターを育成する研修プログラムを導入したり、面談の仕組み化やノウハウの共有を進めていかなければなりません。例えば、リクルーターに自己紹介用のスライドを用意してもらい、オンライン面談のときに活用するというのも一案です。面談の冒頭でリクルーター自身の入社動機や業務内容、モチベーションの源泉などについて自己開示すれば、応募者が質問しやすい雰囲気をつくることができるでしょう。また、応募者の考えを深掘りできるような面談シートを準備しておけば、スムーズに面談を進められるようになると思います。さらに、リクルーターが自社のことを説明するに際して、競合他社との差別化のポイントをあらかじめ整理し、伝えられるようにしておくことが肝心です。その結果をデータベースとして蓄積していくことで、競合他社に対する勝ち筋を見いだすことにもつながるのではないでしょうか。

― 面談などがオンラインに切り替わったことによるポジティブな影響はありますか。


河本さん: 従来は本社勤務の社員がリクルーターになることが多かったかと思いますが、オンラインで時間や場所の制約を受けず面談対応ができるようになったため、地方の支社や工場、海外などで活躍する人材の協力を仰ぐこともできるようになりました。これは実に大きな変化です。リクルーターの多様性を高めることで、これまで以上に応募者にマッチした人選ができるようになり、より効果的にリクルーター制度を運用できるようになると思います。

採用担当の皆さまには、こうした変化にうまく対応しながら、ウィズコロナ、ポストコロナにマッチしたリクルーター制度の確立を目指していただきたいと思います。

  • Organization HUMAN CAPITALサポネット編集部

    HUMAN CAPITALサポネット編集部

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  • 人材採用・育成 更新日:2022/09/13
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