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コロナ禍からの転換として考えたいESGへの取り組み

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新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、社内体制の見直しを迫られた企業は多いことでしょう。先行き不透明ななか、企業の利益を守りながら、社内整備を進めることにリスクを感じるかもしれません。
しかし、こうした厳しい事態は、一つの転換期でもあり、企業成長につなげるチャンスです。一時的な対処ではなく、ESG課題に取り組む機会として意識を高めてはいかがでしょうか。
今回は、コロナ禍からの転換として取り入れたいESGのポイントについて、詳しく解説します。

ESGに取り組むメリット

ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの企業課題について、非財務視点から経営手法を見直し、企業の長期的な成長を目指す取り組みを指します。
テレワークやオンライン会議の実施など、国内のESGにも進展が見られました。とはいえ、コストがかかるESGへの対応に懸念を抱いている経営者も多いかもしれません。ここでは、ESGに取り組むメリットをお伝えします。

1. 生産性の向上

ESGの「S(社会)」にあたる項目の1つに、労働環境の整備があります。テレワークやデジタル化などを進めたものの、業務プロセスに不具合が起きたり、人材不足で属人化が進んだりしているケースが考えられます。働き方改革の実施も含め、ESGに基づいた労働環境を整備する必要があるでしょう。
長期的な視野で取り組めば、本質的な生産性向上を目指すことができるだけでなく、ステークホルダーとしての従業員満足にもつながります。

2. 人材確保への良い影響

人材不足が続くなか、生産性の向上を目指して業務改善や事業の再構築を考える必要が出てきました。しかし、そうしたプロセスを実行するためには、対応できる人材を確保しなければいけません。
労働環境の整備やDX化といったESGへの取り組みは、多様化した人材を受け入れる下地になると同時に、採用においても大きなアピールポイントとなります。
ただし、多くの企業が同じようにアピールし始めているため、自社ならではの強みを明確にする必要があります。

3. 資金調達が有利になる可能性

ESG投資が拡大するなか、国内の金融機関でもESGに取り組む企業を評価する姿勢が見られます。今後のESGへの取り組みによって、融資を受けやすくなったり、金利引き下げが受けられたりする可能性があります。
基本的には、エネルギー効率の改善や、再生可能エネルギーの利用といった環境問題への取り組みが評価されるケースが多く見られます。なかでも、環境・社会面における野心的な数値目標を達成することで金利引き下げとなる「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」が注目されています。
ESG投資の拡大に伴い、世界規模で普及が進んでいる金融商品で、国内では環境省が後押ししています。借り手にも貸し手にもメリットがある手法として、今後、国内に広がる可能性があります。

4. ビジネスチャンスの発掘

ESGの視点は、ビジネスチャンスの発掘や創出にもつながります。自社と関連性の高い環境問題や社会問題に取り組みながら、利益を得られるチャンスともいえます。上述した融資を活用することで資金の確保も期待できるかもしれません。
結果的に、ステークホルダーが抱える経営課題や社会課題へのアプローチに発展したり、ESG評価の高い企業としてパートナー企業が広がったりする可能性が考えられます。

5. 経営リスクの軽減

ESGへの取り組みは、単なる社会課題への貢献にとどまらず、企業の長期的な成長を促すものです。逆に、ESGを経営方針に取り入れなければ、企業の評価が下がり、事業継続が危ぶまれる可能性があります。
例えば、環境汚染や人権侵害などを引き起こしてしまった場合、社会からの評価が下がり、売上が下がったり、ステークホルダーからの信用を失ったりするかもしれません。ESGの実践は、こうしたリスクを軽減、回避するためにも有効です。

6. 企業価値の向上

社会貢献の実績があり、働きやすい環境を整備する企業には、優秀な人材が集まりやすくなります。結果として、事業にも良い影響を与え、利益の拡大と同時に社会的評価の向上が期待できます。ESGへの取り組みは、企業価値を高めるのに有効です。競合との差別化にもなり、ステークホルダーのロイヤルティ向上も期待できます。

コロナ禍で明確化したESGの重要性

ESGにおける、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの企業課題のなかでも、コロナ禍によって、企業内でとくに顕在化したのが、「S(social:社会)」の課題でしょう。
新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)の拡大に伴い、企業活動には大きな変化が生じました。感染予防として非対面、非接触が前提となる社会となり、業務遂行においても緊急措置としてテレワークや業務のデジタル化などへの対応が求められました。

また、事業縮小に伴う人員整理が難しかったり、目の前の対応に追われ人材育成にかける時間が足りなかったりと、雇用や人材育成の見直しを迫られたケースもあるでしょう。こうした社内整備や雇用問題などはESGのうち、主に「S(社会)」に含まれる企業課題です。

一方で、外出自粛により車を使用する機会が減ったことで、温室効果ガス排出量(CO2)の減少につながっています。これは、「E(環境)」に該当する環境保全が推進された結果ですが、同時に経済停滞を引き起こしました。政府による温室効果ガス排出量の削減が進められるなか、経済を回しながら両立するにはどうすればよいのかが、今後の検討材料となるでしょう。
そのほか、コロナ禍では、企業のリスク管理も問われることになりました。テレワークやオンライン活用時のサイバーセキュリティ対策や、リスク管理体制の構築は、ESGの「G(ガバナンス)」に該当する項目です。これまで対応できていなかった企業は、厳しい状況を目の当たりにしたのではないでしょうか。

このように、コロナの影響で顕在化したさまざまな企業課題の多くは、ESGに直結しています。そもそもESGは「社会問題への取り組み」と「経済成長」の両立を目指す考え方です。企業においても、一時的な対応ではなく、中長期的な成長を見越した体制づくりが今まで以上に求められます。

コロナ禍におけるESG投資の増加にも注目

2020年4月以降、ESGに取り組む企業を評価するESG投資も増加しています。2020年2月には、国内のサステナブル投資残高(ESGなどの課題を勘案し、持続可能性を考慮した投資残高)が一時的に落ち込んだものの、その後回復し、今後さらに増加する可能性があります。

ESG投資は、世界的な投資市場でスタンダードともいわれる投資手法です。これまでは「E(環境)」分野への取り組みに関する評価が高かったものの、今後は労働環境などが問われる「S(社会)」分野への関心が高まるとされています。

ESG投資の評価方法は地方の金融機関における融資条件として加味されつつあり、中小企業にもその影響が広がっています。大手企業だけの問題ととらえるのではなく、企業規模を問わず、ESGへの取り組みが評価されることを理解しておきましょう。

企業が実施したいESGへの取り組み例

ESGには多くの項目があり、具体的に何を行えばよいのか迷うこともあるでしょう。ESGのなかでも、近年注目されている取り組みとして、4つの例を紹介します。

1.女性が活躍できる環境の整備

ESG評価にはさまざまなポイントがありますが、なかでも近年注目されているのが「女性の活躍」です。ESG投資の拡大に伴い、女性の活躍情報を投資判断に活用する傾向が見られます。
内閣府が公表した資料「ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究」によると、「投資判断や業務において女性活躍情報を活用する理由」として、7割近くの機関投資家(長期運用を主とする法人の大口投資家)が、“企業の業績に長期的には影響がある情報と考えるため”と回答しています。つまり、女性の活躍推進が非財務情報として重視される傾向にあるというわけです。

企業が実施できる具体的な取り組みとしては、在宅業務を希望する女性の活躍支援につながるテレワーク環境のさらなる充実や、女性役員比率を高めるといった方法が挙げられます。ジェンダーギャップの是正が叫ばれるなか、女性の活躍推進は、人材の確保や生産性向上にもつながります。
ただし、社内で取り組みが実施されても、公開されなければ、社会的評価にはつながりません。ESG評価を高めるためにも、どんなに小さな情報であっても、企業のホームページやアニュアルレポートなどの公式な形で公開することが重要です。

2.ダイバーシティの推進

ダイバーシティ(多様性)の推進も注目される傾向にあります。これは、上述した女性の活躍支援を含め、性別や年齢、人種、性的指向などの多様性を受け入れる考え方です。具体的には、採用活動における多様化への対応や、出産・育児・介護による休業制度の充実、時短勤務制度等の拡充などが挙げられます。
ダイバーシティの推進により、多様な知識、経験、価値観を持つ人材が活躍しやすい環境が整うことで、プロダクトイノベーションが生まれやすくなる効果も期待できます。

3.グリーンリカバリーへの取り組み

コロナ禍からの経済復興を目指す施策として、拡大傾向にあるのが「グリーンリカバリー」への取り組みです。グリーンリカバリーとは、環境を重視した景気刺激策として注目されるもので、CO2削減と、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも一致した施策を実施することを指します。

主に、森林保全や気候変動への対応といった環境面での課題解決を指し、コロナ以前に戻る復興ではなく、持続可能な社会づくりのための復興プランです。具体的な施策としては、再生可能エネルギーの最大限導入や、電気自動車の充電スタンドの拡充などが挙げられます。
また、政府は民間企業のグリーンリカバリー推進に向けて、多くの補助金を確保しています。例えば、「グリーンリカバリーの実現に向けた中小企業等のCO2削減比例型設備導入支援事業」もその1つです。

省CO2型設備となる空調機や給湯器、ボイラーなどの導入に、上限5,000万円の補助が受けられます。コロナ禍からの経済復興と脱炭素化を同時に実現するのが目的であり、企業にとっては資金的な支援を受けながら企業成長につなげられるというメリットがあります。

4.DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進

DXとは、デジタル技術を用いて、ビジネスモデルや業務プロセスなどを再構築し、企業成長を促すものです。単なる業務効率化を目的とするIT化とは異なり、企業の在り方から変革を起こす仕組みといえます。

ここまで紹介したように、女性の活躍支援やダイバーシティ化、グリーンリカバリーへの対応など、それぞれの施策を実施したとして、その変化が可視化できなければ、企業価値の向上にはつながりません。コストをかけてESGに取り組むからには、成果を出し、非財務情報として公開できるまで進める必要があるでしょう。
しかし、ESGに含まれる多くの課題は、定量化しづらいものも少なくありません。そこで、効果的なのがDXの活用です。デジタル技術によって、施策の可視化、定量化を図ることで成果を測ることができます。

結果、スピーディな情報開示ができるようになり、企業価値もさらに高まることでしょう。DX化自体がESGへの取り組みでもあり、相乗効果が期待できます。
そのほか、ESGへの取り組みとしてさまざまな施策が考えられます。ESGへの理解を深め、自社に合った方法を検討してみましょう。

まとめ:ESGへの取り組みで、ニューノーマルな体制づくりを

ESGへの取り組みは、長期的な企業成長を促すものであり、企業価値の向上につながります。コロナ禍をきっかけとした社内環境の見直しは、一時的な施策で終わらせずに、中長期的な視点で取り組むと良いでしょう。
しかし、ESGへの取り組みはコストがかかるうえ、評価されるまでに時間がかかります。単なる社会貢献で終わらせず、現実的な企業評価に落とし込むにはどうすればよいか考えなければいけません。
また、実施した施策は、成果を上げ、非財務情報として公開するまでがワンセットです。ESGを加味したKPIを設定し、コロナ禍からの再生につなげる施策の立案を進めてみましょう。

  • Person 美濃佳奈子

    美濃佳奈子 一般社団法人国際SDGs推進協会認定SDGsスーパーバイザー

    フリーライター&編集者。サステナブル商材を取り扱うクライアントへの商品開発サポートやコンテンツ制作に携わる。その他、健康経営アドバイザー、薬事法管理者として適切なプロモーション手法を提案するほか、LYIU認定笑いヨガティーチャー、iACP認定もしバナマイスターとして企業や自治体におけるSDGs活動にも参画。一児の母。

  • 経営・組織づくり 更新日:2022/08/04
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