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従業員が退職したときの手続き方法と注意点・誓約書の提出に関して

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突然発生する従業員の退職。企業側にはさまざまな事務手続きが発生し、また、退職する従業員にも、適切な説明と手引をする必要があります。退職した後の再接触は難しい場合もありますので、最終出社日まで迅速に漏れなく手続きをしましょう。

当記事では、退職発生時に、人事総務担当者が行う手続きや注意点を紹介します。

退職時の人事総務担当の業務フロー

退職時の業務は、大きく分けて、退職前の業務と退職した後の業務に分けられます。

退職前 退職願いの受理
退職届けの回収
退職者への説明
企業から退職者へ返却
貸与物などの回収
退職後 雇用保険の手続きと離職票の発送
社会保険の手続き
税金関係の手続きと源泉徴収票の送付

「退職願い」を書面で受理する

「退職願い」とは、従業員が企業に対して、労働契約の解除を申し出る行為で、退職者が直接の上司に申し出るケースが一般的です。

「退職願い」は、書面でなくても問題ないとされていますが、退職理由は、失業保険の受給に関連し、ハローワークから照会を受けます。意見の相違が発生しないように、退職理由、退職希望日を明確に記載した書面の提出を求めましょう。

「退職届」にサインをもらう

「退職届」とは、退職が確定した際に、従業員が会社に提出する書類です。企業側で、退職日や退職理由が記載された書面を用意し、退職者がサインする形式が用いられます。「退職届」の提出は任意であり、退職者に強制できません。

退職手続きの説明

「退職届」が提出され退職日が確定した場合、速やかに、退職手続きの説明を行いますしょう。 退職時に企業から渡すモノ、退職後に企業から送付されるモノ、退職者から企業に提出するモノなどを明示し、チェックリストを退職者に渡して漏れなく進められる体制をつくりましょう。

また、有給休暇の買取も、退職時のみ例外として認められています。ただし、企業側に買取義務はありません。ケースとしては、退職者の残有給休暇の消化により、引継ぎ業務に支障をきたす可能性がある場合、双方合意の上で、有給休暇を買取り、引継ぎ業務を完遂することが想定されます。

企業から退職者への返却物

企業から退職者へ、年金手帳、雇用保険被保険者証などを返却します。

貸与物などの回収

退職者から、健康保険証や貸与物、誓約書などの書類を退職前に回収します。退職後は連絡が取れなくなる場合もあり、退職前に全て回収しましょう。

社会保険・雇用保険・税金関係の手続き

退職日以降、雇用保険の手続き、社会保険の手続き、税金関係の手続きを行います。諸手続きが完了後、退職者に、離職票、源泉徴収票の送付を行います。

退職時に企業から渡すモノ

ここでは、退職時に企業から渡すモノを整理して紹介します。

年金手帳

従業員から預かっている年金手帳を返却しましょう。国民年金の切り替えや、転職先でも同じ手帳を用います。

雇用保険被保険者証

失業給付に必要な書類で、企業が保管し管理している場合と、個人が保管している場合があります。企業が保管している場合は、速やかに返却しましょう。また、企業側で保管していない場合は、その旨を退職者に伝えましょう。

退職証明書

退職者が「退職証明書」を求める場合があります。請求された場合は、速やかに発行しましょう。拒否や遅延をした場合は、労働基準法に従い罰に処される可能性があります。

退職証明書には、法的に定まった書式はありません。記載項目は、退職者の希望に応じて、「雇用期間」「業務の種類」「その事業における地位」「賃金又は退職の事由(解雇の場合はその理由も含む)」などを記載します。また、退職者が望まない項目を記載することは禁止されています。

書式例は、厚生労働省のホームページに「労働基準法関係主要様式」「退職事由に係るモデル退職証明書」が用意されています。

退職者から回収するモノ

ここでは、退職者から回収する書類や物品を紹介します。退職後は連絡がとりづらくなることも多く、早めに確実に回収しておきましょう。

健康保険証の回収

本人や被扶養者分の健康保険証を回収しましょう。また、「健康保険限度額適用・標準負担額認定証」などの証書が健康保険組合から発行されている場合は、これらの証書もあわせて回収しましょう。

他社の名刺・業務資料の回収

名刺交換で得た他社の名刺や業務で作成した資料、データ、記録媒体など全て回収しましょう。

貸与品の回収

社員証や退職者の名刺、入館証、パソコン、事務用品、通勤定期など会社から貸与している物品を全て回収しましょう。

退職所得の受給に関する申告書

退職金を支払う場合は、記入済みの「退職所得の受給に関する申告書」を提出してもらう必要があります。この申告書は、納税に関わる書類になり、企業側に保管義務があります。

退職者の雇用保険・社会保険・住民税の手続き

社員・契約社員・パート・アルバイトの就業形態に関わらず、雇用保険や社会保険に加入している場合は、手続きが必要です。

雇用保険の資格喪失手続き

退職した日の翌日から10日以内に、雇用保険の資格喪失手続きを行います。

「雇用保険被保険者資格喪失届」と、本人署名のある「雇用保険被保険者離職証明書」を用意し、事業所を管轄するハローワークに、持参・郵送・電子申請にて提出します。

「離職票」(雇用保険被保険者離職票)の送付

「雇用保険被保険者離職証明書」の手続きが完了するとハローワークから、企業宛に「離職票-1」「離職票-2」が発行されます。

この書類は、雇用保険給付の手続きを行うための書類です。ハローワークから到着しだい速やかに、退職者に送付しましょう。

社会保険の手続き

退職日の翌日から5日以内に、社会保険の資格喪失手続きを行います。

「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を用意し事業所を管轄する年金事務所に、持参・郵送・電子申請にて提出します。

健康保険の任意継続

「協会けんぽ」には任意継続制度があり、退職者が希望し条件を満たすならば「協会けんぽ」を継続利用できます。退職者が任意継続を希望する場合は、「協会けんぽ」に問い合わせるように案内しましょう。また、任意継続でも、健康保険証は回収する必要があります。

健康保険被保険者資格喪失確認通知書の保管

「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」の手続きが完了すると「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」が交付されます。この書面は、原則、退職者に送付する必要はありませんが、退職者が国民健康保険に加入する際、必要な場合があります。退職者から依頼があった場合は、コピーを送付しましょう。

住民税の手続き

住民税を特別徴収(給与から毎月自動支払)にしている場合は、退職したことにより、特別徴収を停止する必要があります。

「給与支払報告に係る給与所得異動届」を、退職者の住民票がある自治体に提出する必要があります。提出期限は、自治体により異なりますので、退職後、速やかに提出することをおすすめします。

源泉徴収票の送付

源泉徴収票を発行し、退職者に送付します。源泉徴収票は、転職先での年末調整の計算や、確定申告のために用いられます。

退職後の個人情報の保管義務

労働基準法では、「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない」と定められています。

他にも、各種法令で、様々な書類の保管期間が定められています。また、これらの個人情報は厳重に保管し、期限が過ぎたときに速やかに廃棄をする必要があります。退職日から起算した廃棄年月日を記録して整理保管することをおすすめします。

保管期間 書類
2年 健康保険・厚生年金保険に関する書類
4年 雇用保険関連の書類
5年
  • 雇入れに関する書類(履歴書、労働条件通知書など)
  • 解雇に関する書類
  • 災害補償に関する書類
  • 賃金に関する書類
  • その他労働関係に関する書類(出勤簿など)
7年 源泉徴収簿、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、などの税務書類

退職者が福利厚生などの施策を利用している場合

企業が社員に対して、財形貯蓄や株主会、社内融資などの施策を提供している場合も、注意が必要です。企業独自の規定もありますので、ここでは一般的な対応を解説します。

退職者が財形貯蓄を利用していた場合

企業は、退職後6カ月以内に、「財産形成貯蓄の退職等に関する通知書」を取扱金融機関に提出する必要があります。その後、継続、解約は、退職者が手続きを行います。

退職者が企業型DC(確定拠出年金)を利用している場合

自社が契約している企業型DCに対して「資格消失」の手続きを速やかに行いましょう。以降、転職先の企業型DCに引き継ぐか、iDeCoに移転するかは、退職者が手続きを行います。

退職者が株主会を利用していた場合

退職後、株主会を退会します。企業が指定する証券会社の口座に証券を残すか、精算するか退職者が手続きします。

退職者が社内融資を受けていた場合

企業から何らかの理由で、退職者が借金をしている場合は、退職時に一括で精算が基本です。

退職者向け誓約書の用意

退職後は、雇用契約書の影響が及びません。競業禁止や守秘義務に関する誓約書を用意し、退職者に提出を求めましょう。ただし、退職者は誓約書を提出する義務はありません。強要はできませんので、配慮した運用が必要です。

競業禁止の誓約書

退職者が、自社のノウハウや情報を持って、同業他社に転職する、もしくは、同業を起業することを防止するための誓約書です。

守秘義務の誓約書

退職者が、自社の機密を第三者に漏えいすることを防止するための誓約書です。

退職手続きの注意点

退職願い、退職届は記録の残る形で回収する

退職願いは口頭でも法的に問題はありませんが、可能な限り書面で受理し保管しましょう。

特に、退職理由に関しては、雇用保険の支給に大きく影響し、ハローワークからの確認が入る場合や、争議に発展する可能性もあります。自己都合による退職なのか、会社都合による退職なのか、明確に証拠を残す必要があります。

退職前に貸与物は早めに回収する

貸与物や誓約書などは、退職後に回収をしようとしても連絡がつかなくなる場合も多く、退職前に、早めに確実に回収しましょう。

退職手続きには、社会保険、雇用保険などの行政手続きを含め多くの業務が発生します。従業員の退職が決まりしだい、速やかに、退職者に説明を行い、また、必ずチェックリストを用意して漏れなく進めましょう。

  • 労務・制度 更新日:2022/05/19
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