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<2022年最新版>学生のリアルな悩みと、新卒採用担当者に求められるコミュニケーションとは

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新型コロナウイルスによる、最初の緊急事態宣言発出が一昨年の2020年4月。その後も状況は行きつ戻りつ、まだまだ元の生活には戻れていないという方も多いでしょう。

その状況は学生も同じです。多くの学生が今の時代ならではの悩みを抱えています。そこで今回は自身の事業やプロジェクトを通して多くの学生と対話し、キャリアのアドバイスなどをされている羽田 啓一郎さんに「今の学生が抱えているリアルな悩み」と、それに対して企業側がすべきアクションについて伺いました。

― 羽田さん、今日はよろしくお願いいたします。まずは、いまの大学生について共通する傾向や悩みなどがあればお聞かせください。


羽田さん: はい。まず、自分に自信がないということが挙げられると思います。一部の理系学生などは対面授業に戻っていますが、多くの場合は今でもリモート授業が続き、バイトやサークル活動など、これまで学生が当たり前に行ってきた活動ができていません。

特に24年卒の学生は高校卒業の時期と最初の緊急事態宣言が重なっていますので、卒業式が中止、入学式も中止、新歓はもちろん中止、キャンパスには数回しか行っていない……という状況のまま、いま大学2年生になっています。10代後半の大きなイベントが軒並みなくなっているんですね。

― そうした活動を通じて学生の中に育まれるはずの「自分にはこれができるんだ」というような自信を得られないまま、間もなく就職活動の時期を迎えようとしているということですね。

羽田さん: そうです。学生から直接聞いた中で、特に印象的な言葉がありました。
2021年の後期(9月)から対面の授業が少しずつ戻ってきて、同級生と対面したときに、「私たちは高校5年生なんだと痛感しました」と。それだけ、自分たちが経験不足であることを実感しているし、そのために自分に自信がないんです。

実際、キャリアセンターからも2年生の退学者が多いと相談を受けたことがありました。
あらゆるコミュニケーションは、そういった学生の現状を理解した上で取るべきだと考えます。

― そうした状況だと、いわゆる「ガクチカ」が不足して、採用担当者から見ると経験不足に映ると思います。ですが、実際には学生本人には何の責任もありませんよね。採用担当者として、どう接したらいいでしょうか?

羽田さん: 根深い問題ですね。「学生時代に力を入れていた活動はなんですか?」という、いっぺんに学生のポテンシャルを測れる定番の質問が通用しないということですから、採用担当者にとっても難しい状況です。

とはいえ、私が話をした学生からは「社会人の話を聞く機会や、オンラインでの学びの機会は意外と多く、大学側からも発信されている。これを使っていないのは甘えではないか」という厳しい声もありました。事実、コロナ禍を言い訳にしてしまっている学生もいるにはいるでしょう。

しかし、全ての学生にそれを求めることは難しいですよね。通っている大学の状況や本人の置かれている環境に差があるので、必ずしも「何もしていないのは甘えだ」と断言することもできません。

では「ガクチカ」を聞かない方がいいんじゃないかというと、そういうことではありません。高校時代のことを聞くのもひとつの方法だと思います。仕事で高校生ともコミュニケーションをとる機会がありますが、高校と大学はやっぱり地続きなんですよ。高校で活動的だった学生は大学でも活動的です。

状況的に活動ができなかった学生に対して、高校時代のことを聞くことでポテンシャルを予測するということはできると思います。

― 対面での接触機会が減っているのは大学生活だけでなく、就職活動も同様です。そんな学生にはどのような情報を伝えるべきだと思いますか?


羽田さん: まず、コロナ禍とは無関係に、あまり「大きな話」をしないようにした方がいいかなと思います。SDGsなどの社会課題の話などですね。

― そういった話題は学生も興味があると考えている採用担当者は多いと思いますが……。


羽田さん: 企業側が言い始めたので、学生もそれに合わせていることが多いと思いますよ。本音ではあまり興味がない。というより、興味を持つきっかけが不足していると言った方がいいかもしれません。

抽象的な企業理念や社会課題に対する企業の姿勢というのは、経営基盤の上にあるものです。その経営基盤というのは、ひとつひとつの職種、そして社員が形作っていますが、足元の理解がないまま、一番上の理念だけを語っても、学生は興味があるふりはしますが、実際にはあまり理解できていないことが多いでしょう。

― あまり大きな話をされても、その中で自分がどう活躍できるかがイメージしにくいということでしょうか。

羽田さん: そうですね。採用担当者の方が、どのようなビジネスモデルで自社が稼いでいるのかを語ることが少ないこともひとつの問題だと思います。
企業理念を語ることが不要とは思いませんが、例えばそれはサッカーで言うと、「目標は勝つことです」と言っているのと同じです。

「私たちは、素早いボール回しで相手に攻める隙を与えません」とか「守りを固くした選手の配置で堅実に勝ちを取っていきます」とか、そういう具体的なことを語れば、学生側も「私は足が速いから活躍できそうだ」とか、「粘り強い性格が活かせそうだ」とか、具体的に自分の持っている価値と企業が持っている価値を照らし合わせて企業選びができるはずです。

― そういった具体的な情報を与えることで、「ガクチカ」が不足している学生でも自分の強みをしっかり語れるというメリットもありそうです。


羽田さん: そうですね。自己分析など就職活動の基本的なアクションは学生側もしっかり行っていますので、ビジネスの話をつなげることで具体的な強みなどを引き出すことも可能だと思います。

また、入社後のミスマッチも防ぎやすくなります。例えば、マーケティング部門志望の学生が入社後に営業部に配属されるとしましょう。当然、学生(新入社員)はがっかりするでしょう。

ですが、ここでビジネスのことをしっかり理解していれば、「いま、お客さまのことを営業の現場でしっかり理解すればマーケティングにも生かせるはずだ」と腹落ちできます。

― ここまで、具体的な場面で取るべきコミュニケーションについてお話を伺いましたが、より広く「コミュニケーションの方向性」という意味では、企業側がどう振る舞うべきだとお考えですか?


羽田さん: まず前提として、やはり企業と学生とのコミュニケーション不足は否めません。これは情報量が足りないということではなく、その質が足りていないということです。

企業がウェブサイトやオンライン説明会で発信するキラキラした情報の裏には、なにか隠されているのではないか、いま自分たちに見えていない企業の一面があるのではないかと学生は考えています。

― 採用担当者側も同じように考えていますよね。「この学生、良いことばっかり言うけれど、着飾っているんじゃないか?」と(笑)。


羽田さん: そうなんです。要するに、どちらも着飾りすぎて本当に知りたいことを知りづらい状況なんです。就職活動・採用活動というもの自体にそのような特性があるのは間違いないですが、コロナ禍で対面の機会が減ったことでその傾向が加速しています。

もっと学生に寄り添って、企業主催の説明会では幅広く専門的になりすぎないコミュニケーションを取ると良いでしょう。自己分析の機会を提供したり、人生やキャリアに関する相談、業界やビジネスに関する基礎講座を実施するなどです。
その上で、企業理念のように上段に構えず、リアルなコミュニケーションを取ることをおすすめします。

― リアルなコミュニケーション、とは具体的にはどのようなものでしょうか。

羽田さん: 学生は、企業が言うことよりも、知人・友人の言うことをより信用する傾向にあります。そのポジションに入っていくということです。
「若手の頃は苦労したけれど、今は楽しいよ」とか、「好きな仕事をしているけど、やっぱり体がキツいときもあるな」とか、社員から等身大の言葉を聞く機会をもっと設けた方が良いと思います。

それで信頼されたら、次に会社全体のビジネスの話をする説明会に誘導するような方法が良いんじゃないでしょうか。
多くの場合は逆で、会社説明会で興味を持った人と個別のコミュニケーションを取りますが、まずは人(社員)を好きになってもらうことから始めた方がエンゲージメントを高めることができるはずです。

― 学生側の本音を聞き出す機会としても有効ですね。


羽田さん: そうですね。お互いに腹を割って話すということです。「ガクチカ」のような便利な質問が使えなくなったからこそ、こうして向き合って一人ひとりを理解する流れになっていけば、より良い就職、より良い採用がかなうのではないかと思っています。
羽田さんの話からは、学生がいま求めているのが、「自分がこの会社を志望する理由」を学生が心から納得するだけの情報、つまり「腹落ちするコミュニケーション」であることが分かりました。

リモート授業で外に出る機会が少なく、結果として人とコミュニケーションを取る機会も少ない今の学生は、他者と自分とを比較して進路を決めることがしにくい状況にあります。
そんな就職活動の中で接する一人の人間として、企業側も学生に寄り添い、理解と判断の機会を提供することができれば、よりよい採用もかなうかもしれません。
  • Person 羽田 啓一郎
    羽田 啓一郎

    羽田 啓一郎 株式会社Strobolights 代表取締役社長

    立命館大学卒業後、株式会社毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)に入社。
    大手企業の新卒採用支援を行った後、政府の有識者会議委員や学生向けキャリア支援プロジェクト「MY FUTURE CAMPUS」「キャリア甲子園」などをゼロから立ち上げた後、2020年に独立。大学講師や学生向けコミュニティ運営、企業のコンサル、執筆業なども行う。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/01/27
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