T型人材とはどういうタイプなのか?今求められている理由などを解説!
ビジネスパーソンを分類するキーワードとして、I型・T型・Π型などのさまざまな人材タイプがあることをご存じでしょうか。企業成長において優秀な人材を採用することは人事の重要なミッションです。今回は、採用市場で注目されているこれらの人材タイプの中でも、特に多様性かつグローバルな時代のベーシックなタイプとして求められている「T型人材」をメインに、その特徴や育成法などについて解説していきます。
T型人材とI型・Π型・H型人材の違い
かつての日本産業は、欧米追従型の研究開発やものづくりが主流であったため、既存技術の向上や専門性を追求する一芸に秀でた人材が求められていました。その後、グローバル化が急速に進み、働き方や生き方そのものが多様化する中で、従来のような追従型ではなく新しい価値を生み出す創造型の人材が求められています。
それら人材をタイプ別に表現したものがT(ティー)型・I(アイ)型・Π(パイ)型・H(エイチ)型人材です。
T型人材の特徴
「T型人材」とは、専門的な知識とスキルを蓄積し、特定の分野を究めた豊富な経験を軸に、専門外のあらゆるジャンルに関しても知見がある人材タイプのことです。
T型人材の「T」には、タテ棒が「専門性の深さ」、ヨコ棒が「知識の広さ」といった意味が込められており、ひとつの優れた専門知識やスキルをもつことから「シングルメジャー」と表現されることもあります。
専門性の高い技術と知識をもつスペシャリストであり、かつ幅広いジャンルの知見を豊富に持ったジェネラリストでもあるため、近年のグローバル化が進む社会やダイバーシティにおいて求められるニューノーマルな人材タイプともいえるでしょう。
I型人材の特徴
「I型人材」とは、ひとつの専門分野に特化したスペシャリストのことで、T型人材の前身ともいえるでしょう。これまでの日本企業が重要視してきた従来型の人材タイプであり、特に技術職に多く存在します。
高度経済成長期以降に急速な技術革新が進み、専門知識やスキルを持ったI型人材が必然的に増えていきました。これは、新卒一括採用の終身雇用が終焉を迎え、転職という選択肢が増えたことも大きく影響しており、他社でも活かせるスキルをもったスペシャリストのニーズが高まったのです。
Π型人材の特徴
「Π型人材」とは、異なった二種類以上の専門知識を究めており、その他の幅広い知見も併せ持つ希少性の高い人材タイプのことです。T型人材よりもさらにひとつ以上の専門領域が加わることから「T」にタテの棒「専門性の深さ」を追加した「Π(パイ)」で表現されています。
また、ふたつの優れた専門知識やスキルをもつことから「ダブルメジャー」と呼ばれることがあります。複数の専門領域に対して深い知見があるため、次々と単独でクリエイティブな発想を生み出せる万能性に富んだタイプといえるでしょう。
H型人材の特徴
「H型人材」とは、ひとつの専門領域を究めているT型人材と同様の知見があるだけではなく、他のT型人材と横の繋がりをもつ橋渡し役を担える人材タイプです。自らがハブとなり異なる専門領域とのコラボレーションを可能にすることから「I(スペシャリスト)」同士を横軸で繋ぐという意味が込められ、「H」で表現されています。
また、革新的なビジネスやサービスを生み出すことが可能であることから、イノベーション人材と呼ばれることもあります。グローバル化が進み、多様性が求められるこれからの社会において、専門領域を越境した連携ができる能力に注目が集まっています。
T型人材が求められている理由
従来型の人材タイプであるI型人材、つまりスペシャリストに当てはまる方は多くいると思いますが、そこからT型人材へとステップアップするには、どのようなスキルが必要なのでしょうか?ここでは、T型人材になるための必須スキルをご紹介します。
アナロジー的思考力
アナロジー的思考とは、専門領域に関する理解を深める時や、新たなアイデアを生み出す際に、異なる分野の知見や物事を組み合わせたり、結び付けたりして方策を導き出すという思考法です。自身が培ってきた専門領域のスキルと異なる領域の知見とでシナジー効果を発揮するアナロジー思考力はT型人材の特徴的な能力のひとつといえるでしょう。
自律的な行動力
スペシャリストとジェネラリストを兼ね備えたT型人材は、チャレンジ思考はもちろん、意図的に成長するための「自律的な行動力」が備わっています。この自律的な行動力には、自分が成し遂げたいことを特定する「目標意図」と目標を達成するための行動をいつ、どこで、どのようにとるかを確定する「実行意図」というふたつの要素が必要不可欠です。
自分事化できる
将来の予測が困難な今の時代を、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字から「VUCA(ブーカ)時代」と表現されている昨今。パンデミックによる世界規模の混乱や人材の流動化など、まさに明確なゴールの見えない社会を迎えています。T型人材は、そのような先行きが不透明な社会情勢においても、自ら答えを導き出す力を備えており、ポジティブな提案ができる人材です。
T型人材の育成に大切なポイント
T型人材を育成するためにはどのような方法があるのでしょうか。
専門領域に特化した研修
T型人材を目指すには、まずI型人材を究める必要があります。つまり、最初の一歩としては、スペシャリストとしてひとつの専門分野に関する深い知見を得ることが重要です。そのためには、各種部門やミッションに応じて対象者をしっかりと選出し、専門領域に特化した外部の研修制度を導入すると良いでしょう。
ジョブローテーション
T型人材は、「専門性の深さ」と「知識の広さ」を併せ持っていることが特徴です。ひとつの部門や仕事だけを追求するだけでは、幅広い専門性や知見を広げることができません。そのため、定期的なジョブローテーションを実施し、他分野の実務を磨くことで、新たな専門領域へもチャレンジしやすくなります。
コラボレーション
組織内で、同じ部署の社員同士が協力し合って仕事を進めるケースは多くあると思いますが、他部署とタッグを組んでプロジェクトを進めることが、T型人材の育成に効果的です。例えば、営業職と技術職の各部門のスペシャリストがコラボレーションすることで、固定観念に囚われないアイデアやイノベーションが生まれるでしょう。そのフローが定着すれば、T型人材からΠ型人材、H型人材へと成長を遂げる可能性もあります。
専門領域をタテとヨコに伸ばすとイノベーションが起こる
高度経済成長期以降の日本を支えてきたI型人材は、専門技術をタテに深掘りし続けてきましたが、働き方やアイデアなどの多様性が求められる時代においては、あらゆる知見をヨコに広げられるT型人材が求められています。
一方で、人材の流動化により従業員の定着率が減少傾向にある企業は年々増えています。これらの課題に関しても、組織内にT型人材やΠ型人材、H型人材が増えれば、専門領域を究めつつ異なる人材タイプを結ぶ役割を果たしてくれます。そのため、副業や兼業が増えてもイノベーティブで柔軟な働き方を実現できるでしょう。
- 人材採用・育成 更新日:2021/10/26
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