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採用充足率の高い企業の採用施策とは

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前年よりわずかに高い充足率


17年卒の企業新卒内定状況調査によると、採用充足率(以下、充足率)は87.7%で、前年の86.3%と比べると、わずかですが高い値でした(充足率=内定者数/募集人数)。また、内定者数の前年採用実績数比は+0.2%で、すでに前年実績数分の内定を出し終えていることになります。調査時期が前年より10日ほど早かったことを考えると、これらの数字は、企業の採用活動の進捗状況が、全体で見ると前年よりもやや順調であることを表していると言えるでしょう。しかし、「前年より厳しかった」という印象を持つ企業は41.9%で、「前年より楽だった」という印象を持つ企業の8.4%を大きく上回っています。これらのことを受けて、今回のコラムでは、「前年より厳しい状況だったのに、充足率が高かったのはどんな企業なのか」について、考察したいと思います。

充足率が上がった業界の状況は?


はじめに業界別の充足率について見て行きたいと思います。業界大分類別で、前年より充足率が上がったのは、差が大きい順にマスコミ(97.2%、対前年8.2pt増)、サービス・インフラ(82.4%、対前年4.7pt増)、建設(88.3%、対前年3.6pt増)、商社(86.5%、対前年2.7pt増)、小売(82.0%、対前年2.7pt増)です。逆にソフトウエア・通信では大きく下がりました(82.7%、対前年5.0pt減)。
業界ごとに詳細に見ると、マスコミと建設ではそれぞれ特徴のある状況が見られましたが、サービス・インフラと商社と小売の状況は共通点がありました。それは、募集人数の前年実績数比は16年卒より17年卒の方が低く、内定者数は17年卒も16年卒も前年実績数に近い数字だったことです。つまり、17年卒は採用増の目標が低かったため、充足率が上がったことになります。ソフトウエア・通信はこれらの業界とは逆で、17年卒は採用増の目標が高かったため、充足率が下がったということでした。

*募集人数対前年入社実績数比(前年入社実績数と比較した募集人数の増減比)=(募集人数/前年入社実績数)-1 プラスだと前年実績数より募集人数を増やす。マイナスだと前年実績数より募集人数を減らす。 *内定者数対前年入社実績数比(前年入社実績数と比較した調査時点の内定者数の増減比)=(内定者数/前年入社実績数)-1 プラスだと前年実績数より多い内定者数が確保できている。マイナスだと前年実績数に内定者数が足りていない。
続いて、特徴のある2つの業界について見ていきましょう。マスコミは、16年卒では、募集人数がほぼ前年実績並みの1.0%採用減だったのに対して、内定者数は前年実績比11.0%減と採用減で、そもそも他の業界に比べて採用意欲が低い状況でした。17年卒では、募集人数は前年実績から13.5%増、内定者数も前年実績から10.3%増で、一転して高い採用意欲を示し、それに見合った採用増に成功しています。よって、マスコミの充足率の改善は採用意欲が前年より高かったためだと言えるでしょう。インターネット広告市場の拡大を背景にした広告業界の採用増などが背景として考えられます。
 建設は、16年卒では、募集人数は前年実績から10.8%増が目標だったのですが、内定者数は前年実績を下回り7.9%減と大苦戦でした。17年卒では、募集人数が16年卒よりさらに高い14.7%増という目標設定で、内定者数は前年実績より2.1%増です。一部で会社説明会の開催を早め(3月開催開始:16年卒 54.3% → 17年卒 75.8%)理系の内定を出す基準を前年より緩くするなどして(15.1%)なんとか採用増にこぎつけ、前年の状況を挽回したということのようです。

充足率の高い企業は採用活動への「協力人数」が多い


厳しい状況の中、高い充足率を達成している企業は、採用活動においてどのような行動を取ったのでしょうか。ここでは便宜上、企業個別の充足率で90%以上(募集人数の9割以上の内定者数を確保している)を「高い」と定義し、これに該当する企業を、充足率が低い企業(60%未満)及びその中間の企業(60%以上90%未満)と比較することによって、分析を進めたいと思います。

注)従業員数3,000人以上の企業については、個別の充足率90%以上の企業が75.4%と極端に多くなっています(全体では44.7%)。また、募集人数5人未満の企業については、内定者1人につき25%以上数字が動くため、個別の充足率を基準に分析するのに適さないと考えられます。よって以下の分析においては、これら2点に該当する企業を除いた「従業員数3,000人未満で募集人数5人以上」という条件下でも同じことが言えるかについて、合わせて分析しています。

充足率の高い企業と低い企業で差が出た項目として、まず最初に挙げたいのは「人事以外の社員の採用活動への協力」についてです。「協力を得られた人数」の全体平均は17年卒で22.2人ですが、充足率90%以上の企業では32.1人で、充足率60%未満の企業の7.5人と比較すると約4倍の差がついています。ただし、協力人数は従業員数が多い企業ほど当然ながら増える傾向にあります。そこで従業員規模別の人数について作成したのが下の表です。
この表を見ると、従業員規模に関わらず充足率が高い企業では採用活動への協力人数が明らかに多いことが分かります。つまり、多くの社員の協力を得ることが、目標とする募集人数を達成する上で大きな力になると言えるでしょう。

充足率の高い企業が行っている協力内容とは?


では、充足率の高い企業では、他の企業に比べてどのような協力が多く行われているのでしょうか。実際に行われた協力内容の割合が以下の表です。
上表について、充足率90%以上の企業とそれ以外の分類を比べると「OB・OG訪問への対応」「内定者フォロー」「面接官・実質的な選考」「選考補助(グループディスカッションの採点など)」「選考期間中の情報提供」で明らかな差がついています。逆に「出身校への訪問活動(ゼミ・研究室・キャリアセンターなど)」「出身校以外への訪問活動(ゼミ・研究室・キャリアセンターなど) 」「学内セミナーや就職イベントでの仕事紹介」などではあまり差は見られません。これにより「OB・OG訪問」や「選考活動」への協力を得ることが高い充足率につながり、「内定者フォロー」への協力は、募集人数を大きく下回るリスクを下げる可能性があると考えられます。

充足率の高い企業は内定辞退率が前年より低い


前項で挙がった「内定者フォロー」に関連して、内々定辞退率の前年比について調べてみたところ、充足率90%以上の企業は「前年より低かった」が約4割(39.2%)であるのに対し、充足率60%未満の企業は「前年より高かった」が4割を超え(43.9%)大きく明暗が分かれていました。
内定者フォローの内容では、充足率90%以上の企業は「内定式」「内定者向けweb掲示板やSNSを用意」「懇親会(飲み会)」「先輩との面談・OBOG訪問」「人事との面談」「レポートや課題を出す」などの実施割合がかなり高くなっています。
その他、充足率90%以上の企業が比較的高い割合で行っている施策としては「採用協力社員に対する事前レクチャーや教育」「学生の評価シートの作成」「求める人物像の定義を明確化」などがあります。また、インターンシップについては、18年卒に関して「これまでも実績があるので実施した(実施予定)」と回答した割合が比較的高くなっており、17年卒対象ですでにインターンシップを実施していた割合が高いことが分かります。

 なお、「内定を出す基準を厳しくする・緩くすること」と「充足率」の関係についても検証したところ、下表の通り、厳しくした割合は充足率の低い企業の方がやや高いですが、緩くした割合は大きな差はありませんでした。
ここまで見てきたことから、募集人数に対して充足率の高い採用を目指すには「社内で採用に協力してもらえる人を増やし」「協力してもらえる社員に事前レクチャーを行い」「OB・OG訪問や選考活動に協力してもらう」といったことや、「内定者フォロー」で「先輩との面談・OBOG訪問」「人事との面談」を行うことが有効である可能性が高いことがわかりました。この結果が貴社の18年卒の採用施策立案の一助となることを願います。
  • 調査・データ 更新日:2016/12/27
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