在留資格から見える外国人留学生の採用事情
11月18日の参院本会議にて、技能実習適正実施・実習生保護法(技能実習法)と改正出入国管理・難民認定法(入管法)が可決され、在留資格に「介護」が加えられました。今後、介護分野にも外国人の受け入れが始まり、またひとつ外国人就労の間口が広がりました。 今回は、在留資格の取得という切り口から外国人留学生の就職状況をお伝えしたいと思います。 「在留資格」とは、簡単に言うと外国籍の人が日本国内に滞在するための資格のことで、この資格がないと日本で働くことはもとより、滞在することもできません。よく、「ビザ」のこと?と混同されがちですが、入国の際に必要な「ビザ」とも違うものになります。 日本に学びに来ている留学生は、「留学」という在留資格を取得して日本に滞在しており、卒業後日本で就労するためには、「留学」の在留資格を就労のための資格に切り替える必要があります。
法務省入国管理局のデータによると、平成21年から1年間の留学生数は毎年概ね110%から120%の間で増加しており平成27年には、10万人に迫る数の留学生が来日しています。留学生が卒業後、就労のための在留資格に変更し許可を受けた数も増加率としては、平成21年、22年には減少するものの23年以降は増加傾向にあります。
しかしながら、直近のデータである平成26年でみてみると12,958人という数は、平成25年度の卒業(終了)した39,650人の留学生数の内、約65%といわれている日本への就職希望者は約25,800人であると推計すると、約50%しか就職できていないことになります。当時の国内全体の内定率94.4%(※1)と比較しても就職したくてもできない学生の割合が高くなっています。
※1厚生労働省:平成25年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査より(4月1日調査)
一方で、経団連の2015年のアンケート調査では、回答企業の約63%がグローバル人材の育成に海外事業展開が追いついていないと感じており、事業展開におけるグローバル人材の不足が課題と認識されています。
企業内でのグローバル人材不足感は、そもそもグローバル人材を採用できていないことが課題でもありますが、グローバル人材が社内で活躍できるポジションを作れていないことで採用ができないというケースも多いです。事業が無いとポジションができないが、人材がいないと事業も始められないというジレンマに陥っています。このような状況を打開する手段の一つとして、外国人留学生採用が挙げられます。日本での生活習慣になじみ、文化にふれてきたポテンシャルを秘めた外国人留学生を採用し、入社後、新入社員教育研修からはじめることで人材を育てていく、同時に社内でのグローバル人材のポジションを確立させていくというプロセスを経ることができます。少し時間のかかるプロセスのように思いますが、少しずつ変化しながら自然となじんでいく風土を好む日本企業に合ったアプローチのひとつです。
業種別の在留資格許可人員の推移を見てみると、ある特定の業界での伸びに大きな変化があるわけではありません。製造業と非製造業を比較した場合、平成24年以降は、製造業での増加は見られず、非製造業での増加が全体の増加を底上げしています。留学生の就業先の裾野は非製造業で広がっていることがうかがえます。
▼ 業種別在留資格許可人員の推移
政府が掲げる「留学生30万人計画」は、2020年を目処に外国人留学生30万人の受け入れを目指すもので、これまで大学内での環境整備を中心に行われてきました。これからは卒業生の出口である就職率の向上が大学では目標とされてきます。2020年といえば東京オリンピックの年。またここ数年、訪日の外国人観光客は、過去最高を更新しインバウンド産業はグローバル対応を急ピッチで進めています。このような日本のグローバル化のムーブメントに自社の発展を掛け合わせて行くためにも、まずはグローバル採用の枠組み作りを採用の現場で実践し社内人材のグローバル化を推進していくことがはじめの一歩ではないでしょうか?
- 人材採用・育成 2016/12/02
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