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【第2回】エントリーシートの新しい活かし方 ~人工知能(AI)がエントリーシートから選考優先度を評価する~

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第1回目でHR Techの動向を紹介したが、分析に値するデータが存在しなければ、ビッグデータ解析も人工知能も活躍する場面はない。

人事領域において考えてみると、分析に値するデータでありながら、十分に活用されていないデータとして、新卒採用やインターンシップにおけるエントリーシートがあげられる。

大量に応募されるエントリーシートからできる限り時間をかけずに自社に適した人物を見つけ出すのは、多くの企業の望むところである。エントリーシートにはある程度長い文章を書かせることが通常であり、そこには豊富な情報が含まれている。しかし採用活動に割ける人的・時間的リソースの少なさから、志望動機などを十分に読むことができていない、あるいは学歴や適性検査の結果といった一部の情報のみを利用した選考を行わざるを得ない、という企業も多いだろう。

応募者一人ひとりが手間と時間をかけて書き上げた文章の情報を、採用フローにおいて十分に活かすことはできないだろうか。

新卒採用におけるエントリーシートを有効活用するため、マイナビと三菱総合研究所は、「エントリーシート優先度診断サービス」を提供している。

サービスの概要は次のとおりである。まず、企業の過去のエントリーシートの選考データを人工知能(AI)に投入する。人工知能はその企業の選考傾向を分析・学習し、その企業独自の選考優先度スコアリングモデルを構築する。そして、新たに応募されたエントリーシートのデータをこのモデルに投入すると、個々の応募者に対する選考優先度が自動的に付与される、というものである。

本サービスで出力される結果は選考優先度だけではない。人工知能がエントリーシートの記述内容を読み解き、複数の人物像軸(「コミュニケーション」、「熱意」など)のスコアの高さを評価することができる(この評価軸は企業の採用軸に合わせて追加・変更することも可能)。これにより、個々の人物の特性を活かした採用ポートフォリオを組むことが可能となる(図)。

本サービスの独自性は二点ある。

第一に、企業の過去の採用傾向を人工知能が学習した上で、個々人の優先度を評価することができるということである。つまり、応募者の一般的な「優秀さ度合い」といったものを予測するのではなく、あくまでその企業にとっての優先度を判断するモデルを人工知能が構築することができるということである。
例えば、本選考とインターンシップでは評価軸が異なる、ということを考えればわかりやすい。それぞれの企業の、本選考・インターンシップ選考について、過去の選考結果さえ用意することができれば、個別の選考診断モデルをAIが学習し、優先度を判断することができる。

そして第二に、その評価に用いる情報には、志望動機や学外活動など、文章で書かれた情報も含まれているということである。学歴や適性検査の結果など、定型的なデータによる応募者の絞り込みはこれまでも可能であったが、本サービスでは、文章のような非定型的なデータの意味も加味した上で、優先度の評価が可能になるということである。
これまで単純な絞り込みで取りこぼしていたかもしれない優秀な応募者を、本サービスを利用することで拾い上げることができる。

▲図: エントリーシート優先度診断サービスのイメージ図

優先度診断の結果は、次のように活用することが可能である。

  • ボーダーライン上の書類選考:選考のボーダーライン上にいる応募者を、次の選考へ通過させるかどうかの判断に利用できる。
  • 採用方針と連動した人物像選考:優先度が同じ応募者の中でも、各個人の人物像を把握することで、採用方針に特に合致した応募者を見出すことができる。
  • 選考方針のチェック:これまでの採用実績において、応募者のどのような要素が合否に影響を与えていたのかを可視化することができ、選考方針と採用実績との間にズレがないか確認することができる。
  • 評価基準のブレない選考:評価者ごとの評価のブレをなくし、偏りのない基準で選考を行うことができる。
  • 採用ポートフォリオ形成:個々人の人物像を見ることで、個性を尊重した人財採用のポートフォリオを形成できる。

エントリーシート優先度診断サービスでは、個々のエントリーシートに対して、優先度の高い順に★5つ~★1つで評価を行う。

過去の採用活動での検証を行ったところ、全応募者で優先度の高い順の上位2割に該当する、優先度の高い★5つの応募者だけで、最終内定者の8割以上が占められていた、という事例もみられた。すなわち、書類選考の段階で、最終内定を出すかどうかの判断をかなり高い確度で行うことが可能になるということである。

また、本サービスを利用する利点は、単純に選考フローを簡略化できるということだけではない。これまでエントリーシートを十分に読み込むことのできていた企業でも、読み手ごとの評価のバラつきを抑えることは大きな課題であっただろう。これに対して人工知能による評価は、全ての応募者に対して一定の基準で客観的に行われるため、ブレる心配もない。

これまで人手と時間をかけて行っていた応募者の評価を、十分に活用できていなかったデータを活用しつつもさらに効率化し、かつ高精度に行えることが本サービスの提供する価値である。

一方で、採用活動においては依然として面接等で応募者とのコミュニケーションを取る過程が必要であることには変わりはない。人工知能といえども、応募者と会話をしながら臨機応変に情報を引き出すなど、創造性を要する処理は未だに不可能である。

連載の第1回でも述べたように、人財マネジメントは複雑化の一途を辿っている。考慮すべき要素が増大し、きめこまやかな検討が困難な状況となってきている。その中で人工知能がカバーできるのはまだ一部に過ぎない。人工知能はあくまで、人間による意思決定を支援するツールに過ぎないということを認識することも重要である。

人間が得意な処理と、人工知能が得意な処理を適切に組み合わせながら、企業の競争力を高める人財マネジメント戦略が今後も重要となってくるだろう。

 
  • 人材採用・育成 更新日:2017/01/30
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