新型コロナウイルスが転職市場に及ぼす影響について
リーマンショック時の有効求人倍率は「0.7倍」前後、「有効求人数」が少なく「有効求職者数」が多い状況でした。
2019年の平均有効求人倍率は「1.60倍」と高水準でしたが、2020年5月には「1.20倍」と急下降しました。
有効求人数は2020年1月から5月にかけて減少するも、有効求職者数には大きな変化はありません。
就業者数は2009年から10年間で410万人増加、増加は60代以上の割合が多く、反対に30代は減少しています。
「男女×産業別」でみると、過去10年間の就業者数増は、女性の「医療・福祉」の増加が牽引。
2020年4月・5月の「情報通信業」での就業者数は、前年同月比で4月9.0%増、5月15.0%増となった一方で、「宿泊業・飲食サービス業」の就業者数は、前年同月比で4月11.0%減、5月38.0%減となりました。
● 新型コロナウイルスによる採用計画への影響
新型コロナウイルスの影響を受けて企業の採用意欲はこれまでの上昇基調からやや減少傾向に転じる結果となりました。
但し、53.1%の企業は「当初の予定どおり」、28.8%の企業が「検討中」としており、明確に「減らす」「中止」としたのは16.4%で、限定的な減少に留まっています。
業界別比較では「運輸・交通・物流・倉庫」「金融・保険」「サービス・レジャー」「IT・通信・インターネット」などで当初の予定どおり採用する割合が高い結果となりました。
● 採用計画の増減比
企業の採用予定数で比較すると、当初(12月時点)の採用予定数より14.6%のマイナスにとどまっており、さほど大きな減少には至っていません。
従業員規模別にみると50人未満の減少割合が目立つが、採用数がさほど多くない為、全体の採用数に対する影響は少ないようです。
採用数を増やす企業は1.7%で増やしても「1~2割」とする回答が多くなっています。一方で、採用数を減らす企業は9.8%で、減らす割合は5割とする回答が多くなりました。
しかし、企業の当初(12月時点)の採用数を1として集計してみると、14.6%のマイナスで、それほど大きな減少には至っていません。
● 新型コロナウイルスによる採用計画への影響(各職種別)
新卒を含めた正社員の採用において職種別に比較をすると、「ITエンジニア、webサイト運営」「営業」「設計・施工管理」などはこれまでどおり、採用する割合が高くなっています。
一方、「接客(ホテル・旅館)」「イベント運営」「接客・販売(飲食)」などの職種は減少傾向にある。
● 現在の勤務先の新型コロナウイルスの対応への満足度
中堅中小企業では「マスク・消毒液の配布」や「オフィスや職場の換気徹底」など職場ですぐ取り組める内容が挙げらています。
従業員規模の大きな会社では「在宅勤務制度導入(実施)」「時差出勤制度導入(実施)」といった制度整備が上位。
転職完了グループの満足度は76.6%と高い一方、転職後再活動グループと活動継続グループは不満の割合が40%前後と満足度が平均より低い。
● 新型コロナウイルス影響後に転職活動を始める理由
転職活動で困っていることは、「転職活動に対するモチベーションが維持しづらい」でした。
続いて「希望業種や職種の採用が縮小・中止になった」や「面接など選考が延期になった」といった直接的な影響が挙げられている。売り手市場という認識で活動している中、自身の転職可能性が不透明感を増していることでモチベーションを保つことが難しくなってきていると推察されます。
● WEB面接の受験率
● どの段階までWEB対応だったか

既に4割の求職者がWEB面接を経験しており、新型コロナウイルス影響後は更にその割合を増すことが予想されます。今後、重要になってくるのは「相互理解の場作り」及び、「面接で見るべきポイントの整理」です。相互理解には様々な面接官との会話や、対面より長めの時間を要して情報提供を行えるかが重要になります。面接前に気軽に質問を受け付ける時間を設けるのもよいでしょう。
求職者の見極めについては、適性試験等で測れる部分は予め数値で可視化しておき、面接で聞きだすポイントを明確に絞り込んだ方が全体を把握しやすくなります。
但し、最終的な判断や心理的契約を結ぶ場面では対面面接に分があると感じる人事担当者も多いため、各社の状況に合わせた組み合わせで運用することをお勧めします。
● これまでの状況まとめ
- 直近の求人倍率は1.20倍と下降しているが、リーマンショック直後の0.7倍前後と比較すると、まだ良い就労環境。
- 2020年5月の就労者数は2009年5月から約300万人増の6,656万人だが、就労者の高年齢化が目立つ。
- 業界別にみると女性を中心に「医療・福祉系」の就労者数が増加している。
- 累計会員数推移に変化はないが掲載社数が減少している為1求人当たりの平均応募数は前年同月比1.2倍に増加。
- 掲載企業の応募条件で「経験者」のみとする比率がやや上昇するも、求職者の応募では「未経験可」に応募が集まる。
- 業界別では「医療・福祉・介護」「流通・小売」「IT・通信・インターネット」、職種別では「ITエンジニア」の応募総数が増加。
- 当初の予定どおり採用が半数を占めるものの、全体はやや減少に転じている。
- 採用予定人数では、12月時点と4月時点の比較で、1割強の減少にとどまる。(12月比85.4%)
- 職種別に比較をすると、「ITエンジニア、webサイト運営」「営業」「設計・施工管理」などは、これまでどおりに採用する割合が高い。
- 新型コロナウイルス影響下で活動中止者より活動開始者がやや多い。
- 今後転職活動を行うグループでは、企業の新型コロナウイルス対策に満足していない割合が高い。
- 今後活動する求職者の7割が転職軸を見直し。
- 見直すのはワークスタイルが最多。
- 活動時期はやや後ろ倒しの傾向。
- 希望勤務地では「首都圏」勤務を避ける傾向。
- 直近1年間のWEB面接経験割合は4割。
- WEB面接でも十分情報を得られたが6割。
● 直近すべき対応
今後も求人を行う企業にとって、求職者数は横ばいの為、1社あたりの応募件数増加が見込める。これまで採用が難しかった職種等も条件次第で採用できる可能性が増えてくる。
WEB面接に関しては求職者は若い年代を中心にポジティブにとらえる傾向が見られた。これまで採用できなかったエリアや業種から採用できる可能性を高めると共に、相互理解の時間や情報提供の場作りを意識することでミスマッチを軽減するなどの施策が必要になる。
対策を怠ると、社内の人材流出に繋がる可能性が高い。
対策しやすいところから順次社内に情報を発信しながら進めていく事が肝要。
● 長期的にすべき対応
将来の若年労働力減少は既定の事実。若者への技術継承を怠った企業が自らの競争力や企業価値を失うといった過去の過ちを繰り返さぬよう、特に技術者採用中心の企業や企業フィロソフィーを大切にする企業は、中長期的な視点で定期的な雇用を維持する事が重要。
転職の軸を変更した7割の求職者において、最も多かった変更軸が「ワークスタイルの見直し(出勤や在宅、副業や兼業) 」。
特に女性や現在の業種がIT系の求職者においてその傾向が強い。今後は直近の新型コロナウイルス対策に加え、長期的な設備投資や柔軟性を持たせた就労環境の制度改定が必要になってくる。
- 調査・データ 更新日:2020/07/21
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