2021年卒の就職活動は『インターンシップ』『広報活動開始前の準備』で差がついた
6月になり、2021年卒ではスケジュール上採用開始の月を迎えました。
2021年卒の6月15日時点の内々定率は57.6%と前年同日比で14.4pt減少しました(「マイナビ2021年卒大学生 活動実態調査(6月15日時点)」)。
新型コロナウイルス感染症の影響で例年通りの採用活動が5月末まで進まなかったことが大きく影響しているといえます。また、学生側も3~5月に就職活動を進めることができず、広報活動開始前の就職活動の準備具合に学生間で大きく差がついてしまい、現在の内々定状況に影響しているのではないか、と推察されます 。
本コラムでは、「マイナビ2021年卒大学生 活動実態調査(6月1日)」の結果をもとに、2021年卒学生の「内々定有無」・「入社意思の最も高い企業への内々定先への満足度」・「内々定者の活動継続意向」について「インターンシップ」、「広報活動開始前の準備状況」という観点で差があるのかをみていきます。
具体的には、「インターンシップ」については『インターンシップ参加経験者の割合』および『インターンシップ参加社数』で確認していきます。「広報活動開始前の準備状況」については『これまでにエントリーした企業の総数を10割としたとき、2020年2月までにエントリーすると決めていた企業の割合』を利用し、検証していきます。
まず内々定有無および内々定先満足度・内々定者の活動継続意向と「インターンシップ」の関係を確認します。
【1】インターンシップ参加経験

6月1日時点の内々定有無別に、インターンシップ参加経験に差があるかどうかを確認したところ、内々定なしの学生(n=4,721)はインターンシップに参加したことがある割合が73.9%であったのに対し、内々定ありの学生(n=4,635)は91.0%と17.1pt高い結果になり、5%水準で有意差がありました(p<0.05)。内々定のある学生の方が、未内々定の学生よりもインターンシップ経験者が多かったといえます。
【2】インターンシップ参加社数

6月1日時点の内々定有無別に、インターンシップ平均参加社数を比較したところ、内々定なし(n=3,429)の学生が平均4.0社参加であったのに対し、内々定ありの学生(n=4,152)の学生は平均6.5社参加と2.5pt高い結果になり、5%水準で有意差が見られました(p<0.05)。
一方で、内々定ありの学生に限定して、「現在入社意思の最も高い企業への内々定に対する満足度」および「内々定先に満足したので活動終了する(以降、グラフ中では満足終了とする)かどうか」においては、平均値で0.2~0.5ptの差があるものの、有意差はありませんでした。
以上【1】、【2】より、インターンシップ経験およびインターンシップ参加社数は、「内々定の有無」には影響していることがわかりました。一方で、インターンシップ参加社数が多いかどうかは「内々定先の満足度」および「内々定先に満足したので活動終了するかどうか」には影響していない、ということが確認できました。
次に内々定有無および内々定先満足度・内々定者の活動継続意向と「広報活動開始前の準備状況」の関係を確認するために、『これまでにエントリーした企業の総数を10割としたとき、2020年2月までにエントリーすると決めていた企業の割合』の関係をみていきます。
【3】内々定有無別

内々定有無別にみると、内々定なしの学生は0~4割に、内々定ありの学生は5~10割に回答が集中していることがわかります(図3)。7~10割と回答する割合に着目すると、内々定なしの学生(n=4,721)では21.2%であるのに対し、内々定ありの学生(n=4,635)では45.4%でした。内々定ありの学生のおよそ2人に1人は、エントリー先の7割以上を2月末までに決めていたといえます。
【4】現在入社意思の最も高い企業への内々定満足度別

現在入社意思の最も高い企業への内々定先への満足度ついて、7~10割と回答する割合に着目すると、不満足な学生(n=902)では33.1%であるのに対し、満足している学生(n=3,701)では48.5%でした(図4)。内々定先に満足している学生のおよそ2人に1人は、エントリー先の7割以上を2月末までに決めていたことがわかります。
【5】今後の活動継続意向別

今後の活動意向別に関して、内々定先に満足したので終了する(満足終了)学生とそれ以外の学生について、7~10割と回答する割合に着目してみると、満足終了以外の学生(n=2,518)では39.6%であるのに対し、満足終了の学生(n=2,091)では52.6%でした(図5)。満足終了する学生のおよそ2人に1人は、エントリー先の7割以上を2月末までに決めていたことがわかります。

【3】~【5】について、7割以上を決めていた割合で比較すると、内々定のある学生、内々定先に満足している学生、内々定先に満足しているので活動終了する学生のそれぞれにおいて、そうでない学生よりも2月末までに7割以上決めていた割合が有意に高いということが確認されました(図6、p<0.05)。
以上【3】~【5】より、6月1日時点の学生の「内々定有無」、「現在入社意思の最も高い企業への内々定満足度」、「内々定先に満足して就職活動を終了するかどうか」、は2月末までにエントリー先の企業を決められていたかどうかで異なっていること、さらに7割以上決めていたかどうかで有意な差があることがわかりました。
【1】~【5】より、インターンシップ参加経験やエントリー先企業を決めていた割合など、広報活動開始前の就職活動準備がどれだけできていたかで、学生における現況にギャップがあることがわかりました。
本結果は、内々定に満足するには、十分な比較検討およびその判断材料となる情報が必要であり、それが3~5月は不足していた可能性がある 、ということも表しているといえます。
6月15日時点で「今後も就職活動を継続する」とした学生は70.9%と、前年同日比で16.2pt増加しており(「マイナビ2021年卒大学生 活動実態調査(6月15日時点)」より)、今年は6月以降も就職活動を続ける学生が例年より多くなると予想されます。
活動継続学生のうち未内々定の学生は、今後の活動については「業界の幅を広げる(39.2%)」、「就職情報サイト(インターネット)を通して選考に参加する企業を見つける(74.5%)」、活動終了の時期については「7月末~10月末(68.1%)」としています(「マイナビ2021年卒大学生 活動実態調査(5月)」より)。
採用活動にも新しい生活様式が求められており、採用手法にもオンラインの導入が進んでおりますが、学生においても同様に就職活動が変化している様子がみられます。外出自粛の要請を受けた4月以降、弊社の学生調査の回答数も例年の約1.2倍で増加していることから、2021年卒学生は今まで以上にインターネットでの情報収集を行ったり 、メール等を確認したりする機会が増えていると推察され、今後はオンラインでも企業と学生のマッチングが進んでいくと思われます。
その際に、内々定を出した学生を入社につなげる工夫として、社風や社員の人柄を伝えることは必須になるでしょう。
たとえ入社意思の最も高い企業であっても、「インターンシップ」という対面の機会を経験していない学生は、経験した学生より、その企業への入社を検討するにあたり社員の雰囲気や人柄など、オンラインでは伝わりにくい“人”の部分について、より不安に感じているということが分かっているためです(【図7】マイナビ2021年卒大学生 活動実態調査(5月) 「対面の機会が少なかったために、入社先の企業を決めるために不安なこと(複数回答)」より) 。

7月以降も就職活動を継続する学生は特に、オンラインでは見えにくい“人”などの情報に不安感を持っていることが予想されます。
学生が安心して入社を決めることができるよう、今までの情報発信の方法と内容を見直すなど工夫をする必要があるといえます。
- 人材採用・育成 更新日:2020/06/30
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