理想的なチームプレイヤーの3つの特徴と、採用面接での見極め方
理想的なチームプレイヤーに最も必要な特徴は謙虚さです。謙虚な社員は、自分が手柄をあげることよりもチームの成功を重視します。たとえ技術や経験に優れていても、自分が注目されていないと気がすまない、謙虚さに欠ける人は、チームの輪を乱すので要注意です。
ハングリー精神を持つ人は、熱心に働き、チームの成功を助けるために必要なことを何でもします。そして、意欲的で勤勉であるため、上司から、一生懸命働くようプッシュされる必要はほとんどありません。彼らはボランティア精神を持ち、責任感が強く、チームのためになる新しい方法を探すことができます。
賢さとは、知性というより、賢く人と関わる能力です。この特徴を持つ人は「一を聞いて十を知る」というように、チーム内のニュアンスを素早く理解することができます。そして、自身の言葉や行動が他者にどのような影響を与えるかを知っています。また、優れた判断力と直感により、チームメンバーをうまく統率することができます。
1つずつの特徴をみてみると、それほど目新しくなかったかもしれません。しかし大切なのは3つの特徴を全て持ったバランスのよい人を探すことです。謙虚でありながらハングリー精神を持って挑戦できる人や、プロジェクトに没頭しながら、ほかのチームメンバーと上手くコミュニケーションを取れる人を見つけるのは、そう簡単ではありません。
3つの特徴のひとつが欠けると、どうなるでしょうか。謙虚でハングリー精神を持っていても、賢くない社員は、目標を達成することはできるかもしれませんが、チーム内の人間関係を壊すかもしれません。賢くて謙虚でも、ハングリー精神に欠けている社員は、言われたことだけしかしないため、常に誰かが助言をしなければならず、チームメンバーをイライラさせることになるでしょう。そして、ハングリー精神があり賢くても、謙虚さに欠けている社員は、チームに壊滅的な影響を与える可能性があります。謙虚さだけが欠けている人は、自分の利益だけを考えながらも、チームメンバーに自分のことを良い同僚であると思わせることができます。そのことに気づくまで、チームメンバーは操作され、傷つけられてしまうのです。

謙虚さ、ハングリー精神、賢さの3つを備えた候補者を採用するには、伝統に縛られない面接方法を取り入れ、採用基準にこだわることです。採用面接でどのようなことができるか考えてみましょう。
まず、候補者全員の面接が終わってから審査に入るスタイルは効果的ではありません。一人面接を終えるごとに、いま面接した候補者が3つの特徴を持っていたか、面接官全員で振り返るようにします。記憶が鮮明であれば、ほかの候補者の印象と混同せずに正しく評価できます。
また、グループ面接を取り入れてみるのもいいでしょう。一人のときと候補者の態度が変わるかもしれません。候補者が他の人に対してどのような態度で接するかを見ることもできます。
そして、従来の面接方法にとらわれないことが大切です。例えば、面接試験の場所をオフィス以外にすることで、候補者の本来の姿が見えやすくなります。レンシオーニ氏が面接をするときには、候補者にショッピングセンターへの使いを頼んだり、車に乗って一緒に出かけたりすることもあるとか。予想外の状況に対する候補者の対応から、3つの特徴を持っている人かどうか見極めるのです。
さらに、実務を通して3つの特徴を確認します。採用を決定する前に試用期間を設け、実際に働いてもらいながら、謙虚さ、ハングリー精神、賢さを兼ね備えている人か判断しましょう。採用通知を渡すときにも、謙虚さ、ハングリー精神、賢さを日常的に求められる職場であると念をおしてください。ここまでの過程で、もし候補者が3つの特徴を持っていないと思ったならば採用を見送ります。妥協は禁物です。
「あなたのキャリアのなかで、もっとも大きな実績について話してください」
この質問をしたときに「私」を主語にせず「私達」というチームを含めた回答が出てくる人は謙虚な気持ちを持っています。
「今まで、仕事の中で最も恥ずかしかった失敗、または大失敗は何ですか?」
謙虚さを持つ人は、極度に恥じることなく自分の失敗談を話すことができます。
「あなたの専門分野で、あなたよりも優れている人について教えてください」
自分より技術や才能がある人への誠実な尊敬や憧れがみられるでしょうか。謙虚な人は、ほかの人が自分より優れていても気になりません。
「今までの人生で、最も懸命になにかをしたことについて話してください。」
苦労をしながらも、その体験を楽しんでいたか、その体験に不平を言うのではなく、人生の糧と思っているかを確認します。
「10代の頃、一生懸命に取り組んでいたことがありますか?」
回答は、勉強やスポーツ、学校行事や趣味についてなど、なんでも構いません。ただし楽しむだけでなく、何かを達成するために困難を乗り越えた経験があることを重視してください。レンシオーニ氏によれば、労働倫理は、若い頃に形作られることが多いといいます。
「仕事をしていないときに何をしていますか?」
全ての趣味が悪いわけではありませんが、海外で開かれるレースに何日も出場したり、シャークハンティングに出たりといった、大がかりな趣味がある人には注意が必要です。もしかしたら、職場よりも趣味を優先させてしまうかもしれません。質問をしながら、ほかのことをするために仕事をする人なのか、キャリアアップを目標として仕事をする人なのかを判断します。
「あなたの性格を説明してください」
賢い人は、一般的に自分のことをよく知っています。そして、長所や短所について面白い話ができます。
「あなたをイライラさせるのは、どのような人ですか?そういう人がいた場合、どう対処しますか?」
自分が何に腹を立て、自分をいらだたせる人をどう扱えばよいか知っている人を探します。
「あなたは、以前の同僚から気の合う人だと言われていましたか?」
人の気持ちを推し量ることができ、ほかの人に共感できる人かどうかを確認します。
- チームメイトの成功を心から賞賛することができますか?
- チームメイトが間違いを犯してもすぐに受け入れることができますか?
- チームの成果のためならレベルの低い仕事も受け入れられますか?
- チームの成果に喜んで貢献していますか?
- 自分の弱点を把握していますか?
- 誤ったことがあれば謝罪をし、ほかの人から謝罪されたときには、ためらわずに受け入れていますか?
謙虚さが足りない人は、子供の頃に根ざした不安感が原因となっていることが多いとレンシオーニ氏は述べています。MBTIやDISCと呼ばれる性格診断によって、問題を抱える可能性の高い人を予測することができるので、採用試験に取り入れてみるのもいいでしょう。また、上の質問で「ノー」の答えになった項目を、意識的にやってみることで謙虚さを補う簡単な訓練ができます。
- 必要とされた仕事以上の仕事をしていますか?
- チームの “使命”に情熱を持っていますか?
- チーム全体の成功に対して、個人としても責任感を感じていますか?
- 必要であれば、時間がかかり挑戦が必要な仕事をしたいと思っていますか?
- 自分の責任範囲以外でも、貢献できる機会を探していますか?
ハングリー精神は3つのなかで、もっとも単純な特徴です。しかし、レンシオーニ氏の経験では、ハングリー精神を持っていない人を変えるのは最も難しいといいます。そして、単純作業が多かったり、サポート業務が多かったりする職種では、ハングリー精神を持っていない人のほうがうまくいく場合もあります。
本人がハングリー精神を高めたいと思っているときには、まず、その仕事を達成することによって、チームや組織全体にどのようなインパクトがあるか、「なぜその仕事をしているのか」を明確にする手助けをします。また、売り上げ目標のように、その人に期待する行動を明確にし、それに責任を持たせることも訓練となります。
- 会議や交流の場で、チームメイトがどのような気持ちでいるか感じ取ることができますか?
- ほかのチームメイトに感情移入することがありますか?
- チームメイトの生活に興味を示すことがありますか?
- 注意深く人の話を聞く人ですか?
- 自分の言葉や行動がチームメイトにどのような影響を与えているのか気づいていますか?
- 会話の内容や、相手との関係性に合わせて、自分の行動やスタイルを調整するのが得意ですか?
賢さは、謙虚さより繊細な問題ではなく、ハングリー精神を持たない人を変えるよりは簡単です。多くの人が、できれば賢く振る舞いたいと望んでいます。しかし行動が伴わないのです。このような人を助けるには、その場で愛情を持ってアドバイスします。
例をあげるならば、会議中に、努力をしたメンバーに対し感謝の言葉が出ないチームリーダーがいた場合、その場で「会議の中で感謝の気持ちを表したほうが良いのではないかな?」とアドバイスをします。出来ないことを責めるのではなく、相手のことを思って提案することが大切です。
書籍情報
The Ideal Team Player: How to Recognize and Cultivate The Three Essential Virtues Patrick M. Lencioni (著)
Jossey-Bass; 1版 (2016/4/25)
ISBN-10: 1119209595
ISBN-13: 978-1119209591
- 人材採用・育成 更新日:2022/11/28
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