店舗ビジネスにおける中途社員の早期離職を防ぐために人事ができること
店舗で中途採用で社員を採用しても、長続きせず早期退職する人が後を絶たない現場にお困りではないでしょうか。その原因の一つが、店舗での人間関係の構築が難しいことが挙げられます。中途採用の社員(以後、中途採用者と表記します)にすれば、とくに上司となる人との関係性が築きにくく、自分本来の能力を活かしきれない、評価されていないと不満が溜まり、離職することが多いといえるでしょう。
そこで今回は、各店舗の店長、それを統括しているエリアマネージャーの存在に注目し、中途採用者と上司の人間関係の構築を確認し、原因と対策を解説いたします。
店長としての仕事が、これまでの経験を活かせる仕事ではなかった。必要なスキル・経験が違いすぎるなどのギャップを感じて、続かないと判断したというケースが考えられます。また、採用先で経験を積み、スキルアップができるとは感じられなかったという職場環境も「仕事が想像と違った」とする要因と考えられます。
店舗での人間関係の構築が難しいことが考えられます。とくに上司となる人との関係性が築きにくく、自分本来の能力を生かし切れない、自分のスキルや働きを正統に評価されていないと感じ、不満がたまり、離職へとむずび付いていることが考えられます。
中途採用は半年で店長になれる人を採用基準としていました。しかしマネジメント経験のある人であっても入社して半年程度ではその店舗のシステムや人間関係などを含めた業務の全てを理解することは難しいと言えます。そのためお店の責任者として仕事を任されても、分からないことも多く、不安やプレッシャーに苛まれる状況に陥る人が多いようです。
また、入社してまだ人間関係が十分に作れていない場合ならとくに、周りに質問できる人もいないため、不安やプレッシャーはさらに大きなものになり離職を考えるようになると思われます。本来ならエリアマネージャーが相談にのったり、状況を判断してアドバイスをしたりすべきところなのですが、エリアマネージャーは離れた店舗を複数管理する必要があり、一店舗の中途採用者の問題点や周りの社員の様子に気を回す余裕がないのが現状です。エリアマネージャー自身も社員教育の専門知識が身に付いていないことがあります。こうした状況では、中途採用者が店長になった場合は、同僚として相談できる人も少なく、孤立してしまいがちです。
こうした状況をさらに分析すると、店長と中途採用者との間に、さらに店長とエリアマネージャーの間に密なコミュニケーションが不足していることが想像できます。お互いが相手のことをきちんと知らないまま、さらに相手の現状を把握できないまま、自分自身の日常業務に追われることで、良好な人間関係やチームとしての使命感、一体感が形成されていない可能性もあったと分析できます。
そのことが、中途採用者の職場環境に対する不満足感、将来性の不透明感につながり、離職へと動かしているのではないかと考えられます。
上記の原因に対して、例えば以下のような対応策が取れます。
選考時から仕事に期待していることを聞き出し、現状を体験してもらうなどして、ギャップを減らす工夫を実施しましょう。
中途採用者の適性に合わせた配属を心がけましょう。中途採用者の人柄と現場の状況や店長の人柄、能力を知る必要があるため、難易度は高くなります。人への接し方や教育方法などを改善するには社会的な研究なども必要となり、時間とコストをかけた対応策が必要です。
中途採用に限ってよくある状況だと考えています。なぜなら中途採用者は、即戦力を周りから期待されているから「すぐに成果を出して期待に添えなくてはならない」と自分自身を追い込みがちです。
この状況を改善するには、中途採用者が自分の能力を高め、店舗の雰囲気や仕事の段取りに自分なりのやり方や改善策を考えられるためには、最初の3ヶ月程度の目標設定を「学習」として、分からない事や不安に感じる事をを積極的にエリアマネージャーに質問ができる期間とすることが重要です。
また、その期間はエリアマネージャーが意識をして中途採用者にコミュニケーションをとることです。それを可能にするためには、現場を巻き込んで中長期的な見通しを立てることが必要です。
今回は人間関係にフォーカスして解説いたします。
- 業務が店舗に限られるため、横(同期、他店舗)のつながりが薄くなりがちです。そのため相談もできない環境が生まれます。
- 店舗の店員はアルバイトが多いため、例えばアルバイトとの人間関係の悪化であれば、アルバイトが辞めてしまうなどが発生し、消極的な解決となります。一方、上司との関係は、接する機会が比較的多いこともあり、一旦悪化すると、ストレスの蓄積につながります。
- エリアマネージャーとの人間関係の構築が難しい状況にあります。
店長は、アルバイトの教育経験はあっても、社員の教育の経験値が少なく、部下の育成や部下を把握することへのスキルは培われていないことが多いです。
アルバイトは店長自身で採用して教育をしていくために、相性の良いことが前提になっている状況ですが、社員は会社からの配属のため、店長と相性の良い社員や中途採用者が配属されるとは限りません。部下を理解し相手に合わせた教育をしていく必要があります。
つまり、店長の多くは、教育する相手(社員)の考えや行動をまず受け止め、把握し、そのうえで適切な方法を考えて指導をするというスキルが培われていない場合が多いと考えられるのです。
エリアマネージャーは、中途採用者に対応するための時間が避けないと考えられます。
エリアマネージャーの仕事はお店、社員の管理など多岐に渡ります。また部下が近くに居るわけではないため、遠隔地での管理を常にする必要があります。一人一人の社員に対して十分に時間を割くことが難しいのが現状です。
では、こうした職場環境において人間関係を悪化させないために人事はどのようなことを工夫すればよいでしょうか。次の項目が代表的な対応策です。
上記でみたように、中途採用者が不満を感じたり、不安をつのらせたりするのは、相談する人、話を聴いてもらえる人の存在がないためだと分析できます。そこで、つながりを作るため、また、スキルを身につけるためにも研修を定期的に行うことは効果的だといえます。
新任店長がまず頼りにするのがエリアマネージャーであるという相関図を意識し、お互いを知る場を設けることは重要でしょう。
社員の就労環境を把握する立場にある人事は、各店の店長やエリアマネージャーの就労状況を積極的に分析し問題発生に関する予測を立てることも必要でしょう。
人間関係構築には相性の良し悪しが影響します。時間を掛ければ補える相性の不一致も、時間不足やコミュニケーションの不足が原因で決定的な要因になることも考えられます。まずは配属時に相性を確認することも効果的だといえます。
教育と学習の機会をOff-JT、OJT、セルフトレーニングの3つで考えます。
どれも大事ではありますが、入社時のOff-JTは、人事部で実施しますが比重は小さいといえます。大半は、現場に一任することになるためOJTが大切です。OJTを有効活用することにより、セルフトレーニングとしての中途採用者の学習効果をあげることができます。
では、OJTをうまく機能させるためには、どうすればいいのでしょうか。リーダーシップのSL理論を使って考えます。
SL理論は、部下の習熟度によって、上司はリーダーシップを使い分けようという理論です。しかしながら、上司全員がリーダーシップを使い分けられることも少ないのが実態だと思います。わかりやすく言えば、上司は、ティーチングしかできないのか、ティーチングに加えてコーチングもできるのか。
もちろん、ティーチングしかできない人に、コーチング研修することで上司の教育機会を作りますが、すでに現場は動いていますので、上司がコーチングを習得するまで部下をつけることは待てません。
そこで、人事配置のマッチングが重要になります。
実際の現場で、SL理論を生かす人事配置にするには、見るべきポイントが2つあります。
- 中途採用者の習熟度や、成長スピートはどうか。
- 店長、エリアマネージャーがリーダーシップを使い分けられる人なのか。具体的には、ティーチングしかできないのか、ティーチングに加えてコーチングもできるか。
その上で、上司のリーダーシップと部下の習熟度を以下のようにマッチングさせます。
- ティーチングしかできない上司には、習熟度が浅い人。成長スピードが遅い人。
- コーチングには、成長スピードが早い人。あるいは、成長スピードが遅くてもそれなりに習熟度がついてきた人。
店舗ビジネスにおける中途採用者の早期離職を防ぐために人事ができることは、教育やOff-JTを通じて上司の教育をすることです。また、上司の経験不足は、上司と中途採用者の特性を考慮したマッチングによる配属をすることで補うことができます。
まずは、人事の担当者が中途採用者の人柄や仕事への期待度や目標を把握、分析して、配属のミスマッチを防ぐことからはじめましょう。そうした積み重ねで中途採用者の早期離職を防ぐことができるでしょう。
- 労務・制度 更新日:2020/09/29
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