要員計画とは?作り方を徹底解説【テンプレートつき】
自社の事業計画を実現するために必要な人員の数をまとめた「要員計画」は、採用活動や人事異動の軸ともなる重要な計画です。しかし、どのように必要な人員数を割り出してまとめればよいか、難しいと感じている担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、要員計画とは何か、なぜ必要なのかをお伝えしたうえで、要員計画・人員計画・採用計画の違い、要員計画を立てるメリット、具体的な作り方、運用する際のポイント・注意点についても紹介します。また、要員計画を作るうえで起こりやすい失敗例とその対策についてもお伝えします。
要員計画とは
要員計画は、自社の事業計画を遂行するために、それぞれの部署(もしくは役職)に何名の人員が必要かを割り出してまとめた計画です。
要員計画では、「○○人不足しているから、○○人新しく採用する」といったように、人材の頭数のみで考えるのではなく、「採用するなら、社員・アルバイト・業務委託のどの形態がよいか?」「業務の効率化や、既存社員の異動によって、不足している人員を補うことはできないか?」など、事業計画を進めるために、さまざまな視点から考えます。そのうえで、経営層のニーズと現場のニーズの両方をヒアリングして調整し、適正な人員数を割り出します。
要員計画はなぜ必要?
部署の業務量に対して人手が足りない場合、事業目標の実現が難しくなり、過重労働にもつながります。また、人員が多すぎる場合も、人件費や労務コストがかさんで収益低下につながってしまう可能性があります。
適切な要員計画を立てて実行することは、コストバランスを最適化し、事業目標を達成するために不可欠です。また、適材適所の人材配置を実施することで、業務と人材のミスマッチによる離職の防止や、生産性向上も期待できます。
要員計画と人員計画・採用計画の違い
要員計画と間違われやすい「人員計画」や「採用計画」。いずれも、事業計画や経営戦略を実現するという目的は同じですが、以下のように異なるものです。
人員計画との違い
要員計画は、事業計画に沿って人材の「量」を考慮した計画です。
一方で人員計画は、要員計画をベースに「どの部署にどのような人材が必要か」「今いる人材をどのように配属するか」など、人材の「質」を考慮した計画であると考えると、違いが分かりやすいでしょう。
一般的には、まず要員計画を立てたうえで、それをもとに人員計画を立てていきます。
採用計画との違い
採用計画とは、要員計画・人員計画を踏まえて、採用に関する以下の項目を、具体的に立案していくものです。
- 採用人数(何人採用するか)
- 人材の要件(どのような人材を採用するか)
- 退職者数・異動者数(※)
- 選考方法(どのように採用するか)
- 採用コスト
- 採用スケジュール(いつまでに採用するか)
要員計画を立てるメリット
要員計画を立てることで、以下のようなメリットがあります。
生産性の向上
要員計画では、事業計画を実現するために、経営層の意見をヒアリングします。同時に、現場の「何人足りていない」といったニーズもヒアリングしたうえで必要な人員数を調整するため、要員計画に沿って採用・異動が行われれば、現場の従業員の負担軽減につながり、生産性向上にもつながるでしょう。
早期離職の防止
経営層や人事部だけで採用に関する方針を決定すると、現場の声が反映されづらく「実際の業務に必要なスキルを備えていない・足りない」、反対に「高いスキルを持っているのに現場で生かせない」といったミスマッチが発生し、せっかく採用した人材の早期離職につながる恐れもあります。
要員計画では、経営層のニーズと現場のニーズの両方を取り入れて調整するため、ミスマッチを防止し、結果的に採用コストの抑制にもつながります。
要員計画の作り方
ここからは、実際に要員計画を作るための具体的なステップを解説していきます。
1.現状(従業員の過不足)を把握する
このプロセスは「要員調査」とも呼ばれます。部署や事業所ごとに在籍人数を確認したうえで、「トップダウン方式(適正人件費から必要な人数を決める方法)」と「ボトムアップ方式(業務量から必要な人数を決める方法)」それぞれの方式を使って、人員の過不足を把握していきます。
トップダウン方式とボトムアップ方式は、それぞれにメリット・デメリットがあります。
トップダウン方式
事業計画に基づいて、「人件費」と「予算(採算がとれるかどうか)」を考慮して必要な人員数を決める方法です。予算の範囲内で人員を補填するという考え方であり、予算オーバーしづらい点がメリットでしょう。ただし、予算を重視するあまり、現場目線で実際に必要な人員数を確保できない可能性もあります。
ボトムアップ方式
業務量から必要な人員数を割り出す方法です。現場のニーズを考慮できるメリットがあるものの、現場は売り上げ目標を達成するために必要な人数を多めに見積もる傾向があることから、必要な人員数が膨れ上がってしまう可能性があります。
大切なのは両方の方式を使って検討することですが、ボトムアップ方式から検討すると、必要な人員数が膨らみがちになる傾向があるため、トップダウン方式から始めるとよいでしょう。
2. 現場・経営層のニーズを把握する
上記で把握した必要な人員数に加えて、「現場」と「経営層」の両方向にヒアリングして要員数を調整していきます。
ボトムアップ方式の場合
現場(部署の責任者など)に対して、下記をヒアリングしてみましょう。
- いまの業務量に対して、人員数は適切か
- 来期の目標に向けて、人員を補充する必要はあるか
- どのようなスキルを持った人材を求めているか
- 繁盛期と閑散期で、どれくらい業務量が違うか
トップダウン方式の場合
経営層に対して、下記をヒアリングしてみましょう。
- 来期の売上目標の達成見込み
- 事業拡大など、経営環境の変化が見込まれるか
- 中長期的な事業戦略に対する進捗はどうか
上記でのヒアリングをもとに調整した要員数が、要員計画における「要員要望数」となります。
3. 要員計画書としてまとめる
調整した要員数を踏まえて、要員計画書を作成します。
なお、要員計画書は「役職(等級)別」「職種別」に分けて作成する場合もありますが、ここでは一例として「部署別」のテンプレートを紹介します。
要員計画のテンプレート
年度末在籍人数 (A) | 年度当初在籍人数 (B) | 年度減員分(-) | 年度増員分(+) | A-B | 要員要望数 | 配員決定数 | 決定数合計 | |||||
新卒採用 | 中途採用 | パート・アルバイト | 派遣 | 人事異動 | ||||||||
① | ||||||||||||
② | ||||||||||||
③ | ||||||||||||
合計 |
①~③に部署名を記入することで、部署ごとの要員計画として活用できます。
- 年度末在籍人数(A)……各部署における増減(-)(+)を踏まえて、今年度末に在籍予定の人数を記入します。
- 年度当初在籍人数(B)……今年度が始まったときに各部署に在籍していた人数を記入します。
- 年度減員分(-)……今年度中に減る人数(見込み)を記入します。
- 年度増員分(+)……今年度中に増える人数(見込み)を記入します。
- 要員要望数……現場・経営層のニーズをもとに調整した要員数を記入します。
- 配員決定数……要員調査の結果をもとに、必要な人材をどの方法(新卒採用・中途採用・派遣・アルバイト・人事異動)で補填するのか記入します。
4. 決裁者の承認を得る
経営者や、各部門の責任者など、自社における決裁者の承認を得たら、要員計画が決定されます。決定された要員計画をもとに、「採用計画」や「人事異動計画」などに展開していくのが一般的です。
要員計画を運用する際のポイント・注意点
要員計画をもとに要員の配置を行ったらそれで終わりではありません。事業計画を実現するという目的を達成するための、運用のポイントを紹介します。
効果の測定・定期的な見直しをおこなう
事業計画をどれくらい達成できているか、また、売上拡大によって社員の業務過多を招いていないかを把握するためには、分析や必要に応じて要員計画を見直すことが欠かせません。
ここでは、分析に活用できる2つの指標を紹介します。
①人件費効率分析
経年変化を確認することで、平均人件費が予想外に上昇していないかを確認するために活用できます。
人件費効率分析=売上高や粗利など÷人件費
②1人当たり生産性分析
経年変化を確認することで、売り上げが拡大している局面で、1人当たりの生産性が高まりすぎていないか(残業が多く発生しすぎていないか)を検証するために活用できます。
1人当たり生産性分析=売上高や粗利など÷人数
要員計画を策定するタイミングで、あらかじめ効果測定の時期や、見直しの時期を決めておくとよいでしょう。
既存社員へのケア・能力開発も大切
人材を採用する前に、既存社員の「異動」や、「能力開発」も視野に入れて要員計画を検討しましょう。既存社員に、専門性や特化したスキルがあっても、活用されずに埋もれているケースは少なくありません。既存社員の適材適所を進めることで、新しく採用する必要がなくなる可能性もあります。
また、すぐに直接効果が出るものではありませんが、自社の働く環境を整えるなど、既存社員へのケアや企業価値を高める取り組みをおこなうことで、結果として採用力の強化にもつながります。
要員計画の失敗例と対策
要員計画を立て、必要な人員を確保するために新しい人材を採用して教育しても、離職や休職が多ければ、欠員の補充に追われてしまい、要員計画通りに進まなくなります。
また、大人数を採用した場合は、採用にかかる労務コストや、教育の際の人件費などがかさみ、一時的に収益が低下するケースもあります。
要員計画を立てる際には、1人当たりの売上高と、1人当たりの労務費増加のバランスをチェックすることが大切です。また、採用だけでなく、前述したような「既存社員のケア」や「能力開発」も視野に入れましょう。IT化や省力化など、業務改善に取り組むことで、必要な人員数を削減できる場合もあります。
自社内で対応が難しい場合は?
採用担当者の経験が浅いケースや、そもそも専任の担当者がいないケースなどでは、コンサルティングサービスを活用することも一案です。
要員計画は、「採用計画」や「育成計画」「人事異動」の軸になる重要な計画です。採用のプロの視点で、採用戦略全体をチェックしてもらい、改善のためのアドバイスをもらうことで、採用全体の効率化につながるでしょう。
採用コンサルティングサービスを提供している企業によって、対応している範囲は異なります。「要員計画や採用計画の立案のみを支援するケース」や、「実際の採用における支援まで行うケース」など、対応範囲によってコストも変わります。コストとのバランスを考慮したうえで、以下の点も確認しておきましょう。
- 自社と同じ規模・同業種へのコンサルティング実績が豊富かどうか
- 契約終了後に、自社にノウハウが残るかどうか
まとめ
要員計画は、事業計画を実現するための軸となるもので、自社の採用や人事異動、能力開発のベースとなる重要な計画です。
要員計画を立てる際には、自社の人員に関する分析やデータ集めが必要になるため、難しい印象を受けるかもしれませんが、本記事を参考に作成を進めてみてください。
また、社内での対応が難しい場合は、外部のサービスの活用も検討してみるのも一つの方法です。
- 人材採用・育成 更新日:2023/08/03
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