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採用証明書とは?必要な理由と記入方法を解説します

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企業で従業員を中途採用した場合、採用者から「採用証明書」の記入を依頼されることがあります。しかし、企業や担当者によっては「書式を見たことがない」「今まで記入を求められたことがない」こともあるでしょう。

本記事では、今まで採用証明書を扱ったことがない担当者に向けて、採用証明書の内容、どのような場合に必要な書類なのか、採用者から証明を求められた場合の対処手順、証明書の記入方法などをわかりやすく解説します。

 

採用証明書とは?

採用証明書とは、失業手当(基本手当)を受給している失業者が、再就職先が決まったときにハローワークに提出する書類です。失業者を採用した企業が、採用者からの依頼により所定の欄を記入することで自社の従業員として採用したことの証明になります。

採用証明書が必要な理由

内定を受けた失業者が、再就職先の企業に採用証明書の発行を依頼する理由は次の2点です。

失業手当の受給を停止するため

失業手当は失業者が再就職するまでの期間、生活費を補填するために手当を支給し、再就職活動を促進するための制度です。従って再就職先が決まれば企業から給料をもらえるようになるため失業手当の支給を止めることになります。 再就職が決まった採用者は、再就職先の企業に採用証明書を記入してもらい、ハローワークに提出することで失業手当を停止する手続きをします。

失業手当は、採用証明書をハローワークに提出したらすぐに止まるのではなく、雇用契約が開始する前日分まで計算し支給されます。 採用者がハローワークに採用証明書を提出せずに再就職し、失業手当の支給が継続された場合、不正受給となる可能性があるので、漏れなく手続きをすることが必要です。

再就職手当を受給するため

再就職手当は失業手当の受給資格を満たしている人が、受給資格の決定を受けた後、早期に再就職した場合にハローワークが支給する手当のことです。「ハローワーク就職祝い金」ともいいます。 再就職手当の支給目的は、失業者が求職活動をせずに長期間失業手当を受けることを防止し、早期の再就職を促すためです。再就職が決まると失業手当はもらえなくなりますが、そのかわり再就職までの期間が短いほど再就職手当の支給額は多くなります。

ただし、再就職手当をもらうためには、就職日の前日までの失業認定を受けた上で、失業手当が所定給付日数の3分の1以上残っていることが必要です。その上で再就職した時期、再就職先企業の要件、雇用形態や雇用期間などの条件を満たさなくてはなりません。

企業が行う手続き実務

採用者が企業に対して採用証明書の記入を依頼した場合、(1)から(4)の手順で手続きを進めます。

  • 会社で証明する必要事項を記入する
  • 記入した証明書を採用者に渡し、ハローワークで失業手当を停止する手続きをしてもらう
  • 採用者が(2)の手続きを終了してから、再就職手当支給申請書の記入を依頼してきた場合、会社で証明する必要事項を記入する

(1)採用者が採用証明書の記入を依頼した場合、会社側で証明する必要事項を記入する

採用証明書を入手する

失業者がハローワークで手続きを行い、失業手当の受給が決定した際に受け取る「受給資格者のしおり」という冊子の中に採用証明書が入っています。再就職先が内定した採用者が、採用証明書に支給番号などの必要事項を記入してから、会社に持参、もしくは郵送して企業側に記入を依頼します。

採用者が書式を紛失したなどの理由で採用証明書を持参、郵送できない場合は、会社が採用証明書を用意します。その場合、採用証明書の書式は都道府県によって異なることもあるため、採用者が登録している管轄のハローワークもしくは管轄の都道府県労働局のホームページから書式をダウンロードしましょう。

印刷した採用証明書は、先に会社で必要事項を記入してから採用者に渡し、本人記入欄を記載後ハローワークで手続きをするように伝えます。

採用証明書の必要事項を記入する

採用証明書を入手後、会社で証明する事項を記入します。

本記事では東京都内ハローワークの書式を参考に、採用証明書の記入項目と、記入時のポイントなどを解説します。都道府県により書式が異なる場合がありますが、記入する内容はほとんど同じです。

採用者から採用証明書の作成依頼を受けたら、会社は速やかに必要事項を記入し返却します。

採用者(本人)が記入する欄

次の項目は採用者が記入します。

  • 氏名
  • 生年月日と年齢
  • 住所
  • 電話番号
  • 支給番号

支給番号は雇用保険受給資格者証に記載してあります。

雇用保険受給資格者証は失業手当をもらうときに必要な証書ですが、会社に提出する書類ではないので、会社で支給番号の確認をすることはできません。従って採用者に記入してもらってから会社に持参もしくは郵送するよう依頼しましょう。

他の項目は採用者の応募書類などを見ながら会社が記入することもできます。

事業所(会社)が記入する欄

会社の記入箇所は次の項目です。

雇入(予定)年月日と一週間の所定労働時間

●雇入年月日には、会社と採用者の間で契約した雇用期間の初日を記入します。初日には試用期間、研修期間、臨時職員、パート、アルバイトなどの期間も含まれます。

●雇入年月日の初日について、以下のケースに該当する場合は注意が必要です。

  • 雇入日が休祝日の場合:1月1日付で雇入、仕事初めの4日から出勤 ⇒雇入日は「1月1日」になる
  • 出勤すべき初日に欠勤した場合:雇入日の4月1日に欠勤をして2日から出勤 ⇒雇入日は「4月1日」になる
  • 臨時や試用期間、アルバイトなどの期間がある場合:4月1日~30日まで試用期間、5月1日付で正社員の場合 ⇒雇入日は「4月1日」になる

●間違って雇用契約の締結日や内定日を記入しないようにしましょう。

  • ・一週間の所定労働時間は、雇用契約書などで定めた時間を記入します。
  • 従業員数
    支店や営業所などを含む企業全体の人数を記入します。また従業員数はパート・アルバイト、派遣社員なども含めます。
  • 職種
     ・採用者が実際に業務する内容を記入します。
     ・記入内容がわからない場合は「厚生労働省編職業分類」の中から最も近い職種を選ぶ方法もあります。
  • 雇入年月日前の就労の有無
     ・雇入(予定)日前に採用者がアルバイトなど自社で働いていた時期があった場合は「ア・有」を選び、働いていた期間を記入します。働いていた期間がない場合は「イ・無」を選びます。
  • 採用経路
     ・ハローワークからの紹介の場合は「ア」を選びます。
     ・転職エージェント、人材紹介会社などの職業紹介事業者からの紹介の場合は「イ」を選び、事業所名・所在地・電話番号・担当者名を記入します。
  • 雇用形態
     ・正社員で採用した場合、契約社員やパート等でも長期間(1年以上)日常的に勤務する予定の場合は「常用」を選びます。記入方法に迷った場合は「その他」欄に雇用形態を記載します。
  • 雇用期間の定めの有無
     ・有期雇用契約の場合は「ア・有」を選び、正社員、無期雇用契約など契約期間に定めがない場合は「イ・無」を選びます。
  • 会社の所在地や名称、代表者氏名などと押印
     ・令和2年12月25日より企業が雇用保険関係の書類を作成した場合、原則押印は不要になりましたが、採用証明書の押印は必要です。押印漏れがないようにし、ハローワークに雇用保険適用事業所の登録印として届け出た印鑑を押しましょう。
  • 雇用保険適用事業所番号
     ・番号はハローワークで交付される「雇用保険適用事業所設置届 事業主控」「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」などで確認できます。

(2)記入した証明書を内定者に渡し、ハローワークで失業手当を停止する手続きをしてもらう

採用者がハローワークに採用証明書を提出する期限は、採用者の内定承諾日から雇入(予定)日の前日までです。 採用者が採用証明書・雇用保険受給資格者証・失業認定報告書をハローワークに提出すると、再就職手当支給申請書を渡されます。ですが、申請書を渡されない場合でもインターネットから入手が可能です。

(3)採用者が失業手当を停止する手続き終了後、再就職手当支給申請書の記入依頼があった場合、会社で証明する必要事項を記入する。

再就職手当支給申請書とは

再就職手当支給申請書は、採用者が再就職手当をもらうために必要な書類です。申請書を提出するとハローワークで受給条件の確認審査を行い、要件を満たしていれば再就職手当が支給されます。

再就職手当支給申請書について、採用者から事業主証明欄の記載を求められた場合は、下記の要領で記入します。

採用者が記入する欄

  • 姓・名
  • 郵便番号
  • 電話番号
  • 住所
    就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の受給有無
    イ:再就職手当又は常用就職支度手当を受給したことがある。
    ロ:再就職手当又は常用就職支度手当のいずれも受給したことがない。
    イ、ロいずれかに〇をつける
  • 申請書を提出する日と氏名

事業主(会社)が記入する欄

  • 事業所の名称、所在地、電話番号、事業の種類
  • 雇用保険事業所番号
  • 雇入年月日
     雇入年月日は採用証明書に記入したものと同じ年月日を記入します。
  • 採用内定年月日
     内定を出した年月日を記入します。採用者がハローワークで失業手当を停止する手続きをしたときに、職員から「内定年月日は〇月〇日で書いてもらってください」と指定された場合、採用者から報告を受けた日付を記入します。
  • 職種と一週間の所定労働時間
     採用証明書と同じ内容を記入します。
  • 月額賃金
     雇用契約書などで定めた額を記入します。
  • 雇用期間
    「ロ:定めあり」の場合、契約期間を記入します。契約期間満了後に更新する、もしくは更新する可能性がある場合は「契約更新条項」の「イ・有」に〇をつけます。
     1年を超えて契約する見込みがある場合は「イ・有」に〇をつけます。
  • 記入年月日と事業主氏名・押印(雇用保険適用事業所の登録印を押す)

(4)記入した再就職手当支給申請書を内定者に渡し、ハローワークで手続きをしてもらう

 

再就職手当支給申請書の提出期限は、雇入日の翌日から1カ月以内です。

採用証明書に関するQ&A

採用証明書に関する疑問点についてまとめました。

採用証明書の提出期限に間に合わない場合

会社内に複数の事業所があり、採用証明書の記入は本社で一括して行う、証明書の記入は雇入日以降に行うなど社内手続きの都合でハローワークへの提出期限に間に合わない場合は、採用者からハローワーク宛てに提出期限に間に合わないことを説明してもらい、了承を得れば失業手当を停止する手続きを進めることができます。

その場合、採用証明書は記入後採用者もしくは会社がハローワークに郵送します。

また、採用者が再就職手当を申請する場合は、雇入日から1カ月以内に、採用証明書を再就職手当支給申請書・雇用保険受給資格者証と一緒にハローワークに提出することも可能です。 ただし雇入日から1カ月を過ぎても会社が採用者に採用証明書を渡せない場合、再就職手当の手続きが遅れる場合があるので注意しましょう。

ハローワークへの提出者は誰か?

採用証明書、再就職手当支給申請書をハローワークに提出するのは基本的に採用者本人です。会社は採用証明書の事業主記入欄を記入し、押印するだけになります。

採用証明書は必ず作成しないといけないか?

採用証明書は、採用者から依頼がない限り会社が率先して作成する必要はありません。採用者の依頼忘れを防ぐために、内定通知を出したときに今後の事務手続きなどの案内に「採用証明書の記入が必要な方は、◯月◯日までに担当者まで連絡してください」と一文添えるとよいでしょう。

再就職手当支給申請書も採用証明書と同じく、採用者からの依頼がない限り作成する必要はありません。

まとめ

採用証明書は会社が失業者の再就職を証明することで、失業手当を停止したり再就職手当を受給したりするために必要な書類です。

ハローワークでは採用証明書の記載内容を元に手続きを進めます。採用証明書の記入が遅れたり内容に誤りがあると、失業手当の一部を返還する、再就職手当がもらえなかったり給付が遅れるなど、ケースによっては採用者との間でトラブルになる可能性があります。採用証明書の記入依頼を受けたら速やかに対処し、記入内容に間違いがないように確認することが大切です。

  • Person 木村 政美

    木村 政美 社会保険労務士

    2004年社会保険労務士・行政書士・FP事務所きむらオフィス開業。
    企業の労務管理アドバイスを得意分野とし、顧問先や各種相談会での相談業務、セミナー講師、執筆活動等を幅広く行っている。2020年度より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。

  • 労務・制度 更新日:2023/05/09
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