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効果をもたらす採用担当マネージャー

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効果をもたらす採用担当マネージャーは、どのような採用活動をしているのでしょうか。マネージャー研修を専門とするManager Toolsの共同創設者マーク・ホーストマン氏の著書 The Effective Hiring Managerは、効果的な採用をするために、採用担当マネージャーがどこに力を入れるべきか解説しています。その概要をご紹介しましょう。

効果的な採用3つの原則

効果的な採用をするために心得ておきたい3つの原則があります。

  • 必要のない採用はしない
  • 採用の基準を高くする
  • 的確に断る

まず、本当にそのポジションに人を採用することが必要なのかを考えることが大切です。チームが効率よく動けていないことが人材不足の原因だとしたら、人材を採用するよりも、先に仕事の内容を分析し効率化を目指さなければなりません。次に、採用の基準は常に高く設定すること。あらかじめ設定した基準に満たない人を採用してはいけません。最後に、どんなに技能の高い人材でもチームの中で上手くいかないと思ったら断ること。チームの文化に合う人かどうかは非常に重要です。

効果をもたらす採用担当マネージャーは、面接で候補者にどのような問題があるかを見つけます。彼らは候補者の長所に焦点を当てることはしません。採用して問題を起こすような人物にも長所があるからです。長所に焦点を当てた採用面接は、その人の本質を見落とす可能性を高めます。

採用基準を決める

面接をする前に、組織がどのような人材を求めているのかを明確にするため、採用基準を決めましょう。募集するポジションに必要な技能だけでなく、成功のためにどのような勤務態度が必要なのかを挙げていきます。それには職務内容を詳しく知ることが大切です。そして、募集を計画しているポジションで成功している人が、どのような点で評価されているのかを分析します。それを基にすれば、そのポジションにどのような素質が必要かを理解することができるはずです。

行動面接の準備をする

本書では、最も効果的な面接の手法として行動面接を勧めています。行動面接とは、質問の仕方により候補者の過去の経験、そのとき取った行動、その結果を聞き出すことができる面接です。次の3つのステップに沿って行動面接に使える質問を作成しましょう。

1 導入の作成

導入部分では、募集するポジションの役割で期待される主な活動について考え、それを言葉で表現します。
例:「このポジションでは、新製品のアイデアを求められることが多くあります。」

2 質問部分の作成

次に候補者の経験について質問を投げかけます。
例:「あなたが~したときのことについて話してください。」

3 質問部分に行動を追加する

2で作った質問に、このポジションで働く人に求められる行動を追加します。
例:「効率的にするために」「上手く解決するために」

行動面接の質問例

3つのステップに沿って質問を考えると、次のようになります。「この仕事では、あなたは私たちのチームだけでなく、ほかの人々に仕事の進捗状況について定期的にプレゼンテーションをする必要があります。あなたが今までに大勢の人に向けてプレゼンテーションを行った経験と、そのプレゼンテーションの効果をどのようにして確認したかを話してください。」

履歴書のチェックポイント

履歴書を確認することも効果的な採用をするための大切なステップです。次のようなポイントを重点的に確認します。

役職

役職の名前や責任範囲は企業によって違います。その人が成功したかどうかの基準ではなく、募集しているポジションに関連する経験があるかどうかを見ます。

勤務期間

ポジションに関連する経験がある場合、その仕事に就いていた期間はどれくらいでしょうか。もし3か月なら経験とはいえないかもしれません。しかしそれが数年であれば、関連した仕事をこなすのは難しくないでしょう。また、長期に無職だった時期があれば、その理由を知ることも必要になるかもしれません。

勤務先

役職の名前が同じでも、企業に実績があるかどうか、また規模、業種、安定性、業界の成長度などによって役職が持つべき責任の範囲が違ったり、求められる職務内容が違ったりします。

キャリアが向上しているか

その人が職歴のなかで成長しているかどうかを確認します。ただし、人によって成長の仕方は違います。ずっと同じ仕事をしている人なら、年ごとに責任の範囲が増えているか、技能をアップデートしているかなどがポイントになるでしょう。

仕事に対する責任

職位だけではなく、その人が仕事のなかで、実際にどのような責任を果たしてきたのかを確認します。例えば「グローバルなチームをまとめる役割を担当した」、「プロジェクトの進行管理を担当した」など、これまでの活動に目を向けましょう。

業績

数字で測れない業績に惑わされないこと。「表彰された」とか「1位になった」など具体的な業績を確認します。

教育

仕事に必要な教育を受けているかを確認します。学位が同じでも、教育機関によって履修内容のレベルは様々です。教育機関で具体的にどのようなスキルを身につけたか、また就学中の成績も大切です。

正確さ

履歴書に間違いがないかを確認します。ホーストマン氏がManager Toolsを通じて今まで確認した履歴書の半数以上に間違いがあったといいます。さらに25%の履歴書には複数の間違いがありました。履歴書は正しくなければいけません。それが故意でなくても、候補者が不注意な人であることを示しています。

濃さや密度

見過ごされがちな領域ですが、履歴書に濃さや密度があるかどうかも確認が必要です。履歴書の濃さや密度というのは、例えば一つのことを粘り強く続けてきたかどうかを指します。一貫したバックグラウンドを持っていれば成功するというわけではありません。しかし、ポジションに関連する深い知識を持っていることは選考のポイントになります。

面接を実施する

履歴書をスクリーニングし、可能性がある候補者にスマホやパソコンを使ったビデオ面接を実施します。オンライン面接は候補者を絞り込むことが目的です。最終面接は、実際に対面して行います。
ホーストマン氏は、次のような理由から複数の面接官による採用面接(パネルインタビュー)は選択すべきではないと提案します。

  • 面接官と候補者のやり取りに、ほかの面接官が影響されてしまい正しい判断ができなくなる
  • 異なる視点から候補者を見る機会を失ってしまう
  • 候補者が緊張してしまい本来の姿が分からない

それでは、どのような最終面接が理想なのでしょうか? 本書では、丸一日をかけた最終面接が提案されています。候補者は、一日に6人から7人の面接官とそれぞれ1時間程度の面接をします。このときの面接官は、候補者が採用されたときに一緒に働くことになる人たちを中心に選びましょう。ランチタイムは候補者に食事を出し、数人が同席して一緒に食事を取ります。もちろんそれも候補者を知るための時間です。一日の最後に採用担当者が90分から2時間かけて最終面接をします。
各面接官は、あらかじめ質問を決めておき、すべての候補者に同じ質問をすること。そして候補者が話すことをできるだけ細かく、聞いたままをメモすることを心掛けます。

面接の結果を判定する

1人の面接が終わったら直ちに面接官が集まりミーティングを開き、そこで合否の判定をします。候補者が複数いるときでも、全員の面接が終わるまで合否判定を待ってはいけません。採用試験では、候補者が組織で決めた採用基準に合っているかどうかを判断します。候補者同士を比べて、どの人を採用するか決める試験ではありません。

判定のヒント

次のようなポイントについて各面接官から意見を聞きます。

  • 個人的な印象:候補者がどれくらい上手く話すことができたか。何を話し、どのような態度だったか。
  • 文化:候補者が組織にどれくらい合うと思うか。候補者はどのように言っていたか。
  • スキル:行動質問の回答から得た結果。コミュニケーション能力の優劣。なぜそう思ったか。
  • 技術:技術試験の結果。

合否の決定

合否を決める方法は、投票制をとる場合や、最終決定を採用担当マネージャーに一任するなど企業によってさまざまです。ホーストマン氏は、採用担当マネージャーを含む面接官全員が採用に賛成する場合に合格を出すよう勧めています。ほかにも面接していない候補者がいる場合には、すぐに候補者に連絡をする必要はありません。しかし、合格者をあまり長く待たせないことが大切です。
候補者同士を比べるのではなく、採用基準に合った人を選ぶということを常に忘れないようにしましょう。組織にふさわしいと思える候補者がいれば、その後に予定されている面接を断って、その人に決めてもいいのです。

合否の連絡

合格の場合も不合格の場合も、できるだけ早く連絡することが候補者にとって親切です。

合格の場合

採用担当マネージャー本人から電話で連絡。留守電へのメッセージでも構いません。「おめでとう」の一言を忘れずに言いましょう。そして給与やその他の条件を口頭で連絡します。そのほうがスピーディーに個人的な話として受け取られ、すぐに返答がもらえます。連絡すべき内容は次の5つです。

  • 採用であること
  • 給与
  • 勤務開始日
  • 候補者からの回答の締め切り日

不合格の場合

不合格の場合も採用担当マネージャーから電話を入れます。回りくどい言い方をせず、分かりやすく不合格であることを伝えてください。補欠合格の可能性がある候補者の場合、合格者からの回答を待ってから連絡します。次のようなポイントを押さえて不合格を伝えましょう。

  • 候補者を不安にさせないよう、関係ないことは話さず、すぐに結果を伝える
  • 不合格の理由を簡潔に伝える
  • 合否は、わずかな差で決まることが多いため、細かいフィードバックをする必要はない
  • 応募に対する感謝の気持ちを伝える

新入社員の受け入れ

候補者が入社を承諾したら直ちにコミュニケーションを取り、入社の手続きをします。目安は3日以内です。

歓迎

入社が決まったら新入社員を歓迎します。仕事が始まるまで、複数の担当者が定期的に連絡を取りましょう。職場見学、引っ越しが必要な場合は住居探しの手伝い、雑務の補助などを手助けします。

入社準備

出社初日に候補者が戸惑うことのないよう準備をします。入社時に必要な書類や手続きをマニュアル化し、漏れがないようにしておくといいでしょう。

各種手続き

名札の準備、契約書類の記入、IT、経理、HRなど各部署への登録といった必要手続きを行います。多くのマネージャーが、この手続きを「新入社員の受け入れ」であると考えているはずです。事務手続きはもちろん大切ですが、それだけでは十分とはいえません。

橋渡し

新入社員の受け入れで最も大切なことは、新入社員とチームの橋渡しをすることです。新入社員がチームの中で一人でも上手くやっていけるようサポートしてください。「新人を早く役に立つようにする」のはマネージャーの仕事です。
採用試験では候補者の問題点に目を向けてきましたが、新人を受け入れるときからは、その人の長所に目を向け才能を伸ばします。

採用活動のステップに合わせ細かくポイントを押さえる

効果をもたらす採用担当マネージャーは、採用活動のステップに沿って細かくポイントを押さえていくことで効果的な採用を実現します。ただし、効果的な採用であったかどうかは、候補者の採用を決めたときにすぐ分かるものではありません。その候補者を採用した結果、組織が良くなったかどうかで決まります。効果をもたらす採用担当マネージャーは、そこまで考えた採用ができるのです。

The Effective Hiring Manager
著者Mark Horstman
出版社Wiley; 第1版 (2019/10/1)
ISBN-10 : 1119574323
ISBN-13 : 978-1119574323

  • 人材採用・育成 更新日:2022/12/27
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