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異文化コミュニケーション初心者が知っておきたいこと

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ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された記事のなかから、異文化マネージメント初心者が読んでおきたい記事を10篇集めた『HBR's 10 Must Reads On Managing Across Cultures』は、企業で多国籍のスタッフを採用することになったときや、海外赴任ができる人材を探すときなどに役立ちそうな書籍です。異文化マネージメントについて何も知らなくても、この本のトピックに一通り目を通せば、どこから勉強したらよいのか分かることでしょう。本書に収められている異文化マネージメントの専門家による10篇の寄稿文について、概要をご紹介します。

カルチュラル・インテリジェンスを鍛える

ほかの国の人とビジネスをするとき、または、新しい場所で働き始めたばかりのとき、文化や習慣の違いが障壁となることがよくあります。しかし、カルチュラル・インテリジェンス(CQ)が高ければ、初めての文化や習慣に触れても、その違いを難なく乗り越えられるのです。ロンドンビジネススクールのP・クリストファー・アーリー教授と、コロラド大学ボルダー校のエレイン・モサコウスキー教授は『Cultural Intelligence』という記事のなかで、カルチュラル・インテリジェンスを、認知的、身体的、感情的の3つに分け、自分の弱みを知り、それを克服する方法を説きます。

3つのカルチュラルインテリジェンス

カルチュラル・インテリジェンスを次の3つに分けることで、自分の得意なこと不得意なことを分析します。

  • 認知的CQ:異文化について学ぼうとする姿勢があるかどうか
  • 身体的CQ:異文化のジェスチャー、マナー、風習、慣習などに自分を合わせることができるかどうか
  • 感情的CQ:異文化を受け入れる自信や、異文化を受け入れたいという信念があるかどうか

カルチュラル・インテリジェンスを鍛えるステップ

次のようなトレーニングをすることで、カルチュラル・インテリジェンスは誰にでも向上させることができます。

  • ステップ1 本書に紹介されているセルフアセスメントの問題や、ほかのCQを測る診断テストを受けて、自分の強み、弱みを知る。
  • ステップ2 身体的CQが弱い人なら演劇を習うとか、認知的CQが弱ければケーススタディーを読んで勉強するなど、弱みを克服するトレーニング法を選ぶ。
  • ステップ3 感情的CQが弱い場合には、現地の人に話しかけたり、職場に来た人にあいさつをしたりという簡単な練習をしてみる。
  • ステップ4 自分が学びたい分野の指導をしてくれる人を探したり、所属部署にトレーニング時間を捻出してもらったりと、自分が選んだトレーニング法を実施できるよう環境を整える。
  • ステップ5 自分が鍛えたい文化的設定の中に身をおく。あえて苦手なことに挑戦してみる。
  • ステップ6 同僚やチームメンバーからフィードバックをもらう。

多文化チームをまとめるときの障壁を知る

ケロッグ経営大学院にある紛争解決研究センターのディレクター、ジーン・M・ブレット教授と、ニューヨーク市立大学バルーク校にあるジックリンスクールオブビジネスのマリー・C・カーン助教授は、『Managing Multicultural Teams』という記事を通して、グローバル企業で異なる文化を持つ人が集まった多文化チームをまとめる役割についたとき、どのようなことに気をつければよいかをアドバイスしています。

多文化チームに立ちはだかる4つの壁

次のような文化の違いが、多文化チームの活動を妨げることがあります。

  • 問題を直接指摘する文化と遠回しに表現する文化との違い
  • 共通言語が流暢か流暢でないかの違い 
  • 組織のヒエラルキーに対する態度の違い
  • 決定までのスピードや分析方法の違い

例えば、チームの中の問題を単刀直入に指摘する文化を持つメンバーがいた場合、直接問題を指摘されることに慣れていない同僚は必要以上に傷つくかもしれません。また、言葉が流暢な人がチームの中で有利になることは多いでしょう。そして、組織内で年齢や経歴の上下関係にこだわらない文化を持つ人が日本のように上下関係を重視する国で働く場合、本人にそのつもりがなくても失礼に思われてしまうことがあるかもしれません。同様に、何かを決める前に慎重に分析を重ねる文化と、決断にスピードを重視する文化の人が同じチームにいれば、意見の食い違いが起こりやすくなります。

多文化チームの障壁を乗り越えるためにできる3つのこと

文化の違うメンバーをまとめるリーダーは、次の3つのことを常に心に留めて行動するとよいでしょう。

  • 文化の違いについてチームの中でオープンに語り合い、お互いの理解を促す
  • チームメンバーが文化の違いに適応できない場合、チームの構造に介入する(例:対人関係の摩擦が起きないような配置替え) 
  • どうしても文化の違いを受け入れられないメンバーがいる場合、その人をチームから外す

マルチカルチャリズムを使いこなすロレアルの事例

マルチカルチャリズムとは、異文化を持つ人の自主性を大切にし、受け入れ先の文化への統合を推奨しない多文化主義のことです。3つ目の記事『L'Oreal Masters Multiculturalism』は、フランスの一企業からグローバル企業へと発展を遂げたロレアルが、マルチカルチャリズムを戦略としてビジネスに取り入れている事例を元に、文化を越えてビジネスを成功させるヒントや、複数の異なる文化をバックグラウンドに持つ人がチームにいることの利点を紹介しています。執筆者は、フランスにあるルーアン・ビジネス・スクールのホン・ヘジョン助教授と、インシアードビジネススクールのイブ・ドーズ教授です。

複数の異なる文化をバックグラウンドに持つ人がチームにいることの利点

フランス人とドイツ人のマネージャーが製品テストについて英語で相談していますが上手くいきません。その会話をフランスとドイツとイギリス3か国のバックグラウンドを持つマネージャーが聞いたとき、2人の英語の会話における解釈の違いに気づきました。使っている単語が同じでもフランスとドイツそれぞれの国でニュアンスが違うことに気づけたのは、このマネージャーが両方の国の文化を知っていたおかげです。

グローバル企業のロレアルは、この例のように複数の異なる文化をバックグラウンドに持つ人がチームにいることの利点を理解し、戦略的にマネージャーとして起用しています。特に文化によるニーズの違いに敏感になれることや、様々な文化を背景にしたアイデアを一度に出すことができること、そして、フランス、アメリカ、中国といった国や文化の枠を超えた新しいプロダクトの可能性を見いだせることが、多文化をルーツに持つ人材の魅力です。ほかにも、チームに違う文化を持つメンバーが入ってきたときにモデレーターの役割ができたり、現地法人と本社の橋渡しができたりと、グローバル企業のなかで活躍することができます。

統合パラダイムという新しい多様性の考え方

多様性のある職場は、新しい市場の発見や、士気の向上、生産性の促進といった効果を生み出します。しかし、それは多様性が上手に生かされている場合のことです。単に異なるバックグラウンドをもつ人を採用するだけでは逆効果になってしまいます。ハーバード・ビジネス・スクールのデイビット・A・トーマス准教授と、コロンビア大学国際公共政策大学院のロビン・J・エリー准教授は、『Making Differences Matter: A New Paradigm for Managing Diversity』のなかで、多様性のあるチーム作りが上手くいかないときに考え直すべきポイントを指摘します。

文化の違いに価値を認め、機会均等を目指す統合パラダイム

パラダイムとは、ある問題についてどのような物の見方や考え方をするかという方法論のことです。多様性を考えるとき、今までは同化(私たちはみんな同じである)と区別(私たちはそれぞれが違うことを喜ぶ)という2つのパラダイムが存在していましたが、これからは従業員一人一人の違いを大切にする統合パラダイムにシフトするべきだと、この記事では述べられています。

統合パラダイムでは、文化の違いに価値を見いだし、機会均等を目指します。例えば、単一の人種だけで構成されている弁護士事務所では、所属弁護士と同じ人種のクライアントがほとんどです。そこでほかの弁護士と同じ条件で、別の人種の女性弁護士を雇ったところ、彼女と同じ人種や女性のクライアントが増え、弁護士事務所のパフォーマンスが上がりました。このように、同化でも区別でもなく違いを重視することで良い結果を導きます。

統合パラダイムを促進させるためにできること

チームの中で次のようなことを試してみましょう。

  • 文化の違いについてオープンに語ることができる職場にする
  • 個人が力を発揮する妨げになるような、階級、機能、人種、性別などの優勢をなくす
  • 組織が本気で多様性の向上に取り組んでいることを示す

カルチャー・マップで世界の文化を理解する

本書には、日本でも『異文化理解力』の著者として知られている、インシアードビジネススクールのエリン・メイヤー教授の寄稿文も収められています。『Navigating the Cultural Minefield』の中で、メイヤー教授は、8つの指標によって各国の文化を理解することができるツール、カルチャー・マップについて紹介しています。

カルチャー・マップの8つの指標

  • コミュニケーション:ハイコンテクストか、ローコンテクストか
  • 評価:直接的に否定のフィードバックをするか、間接的に否定のフィードバックをするか
  • 説得:演繹法か、帰納法か
  • 指導:平等主義か、階層主義か
  • 決定:合意を得るか、トップダウンか
  • 信頼:仕事の成果を重視するか、人間関係を重視するか
  • 同意できないとき:対決するか、対決を避けるか
  • 決スケジュール:きっちりと決まっているか、柔軟性があるか

アメリカでは率直に意思を伝えるローコンテクストのコミュニケーションをしますが、日本はニュアンスで伝えるハイコンテクストのコミュニケーションが多い文化です。また、アメリカやヨーロッパでは人を説得するときに「〇〇だから〇〇である」という演繹法を使うことが多いのに対し、アジアの文化では様々な事実や事例から結論を導き出す帰納法が多くなります。カルチャー・マップは、このように8つの指標の対比する特徴が各国にどれくらい当てはまるかを示した、文化を知るための地図です。この文化の地図を使えば出身国が違う人と仕事をするときに気をつけなければならないポイントが見えてきます。

異文化マネージメント4つのルール

メイヤー教授は、カルチャー・マップを使うことに加えて異文化マネージメントをするときに次の4つのことを気にとめるようアドバイスしています。

  • 異文化マネージメントに挑戦することを簡単だと思わないこと
  • 複数の視点を持つこと
  • 違う文化にポジティブな気持ちを持つこと
  • 調整を繰り返すこと

組織管理の方法や仕事のスタイルを変えることは、無意識に身についた生活習慣を変えるように難しいことです。異文化マネージメントが簡単にできると思わないようにしましょう。また、様々な国の出身者で構成されたチームをまとめるには、自分の行動を考えるだけなく、チームメイトが自分をどう思うか、チームメイト同士がどう思うかという複数の視点から考えるようにします。そして、ほかの文化に批判的にならず、違う文化をポジティブに受け入れる力も必要です。さらに、一度で完璧を目指すのではなく、チームメイトに受け入れられるように少しずつ自分のポジションを調整します。

海外赴任中に倫理問題に遭遇したらどうするか

もし海外のオフィスで働くことになったとき、現地の同僚が倫理的ではないビジネスをしているのを目撃してしまったらどうしますか?「郷に入れば郷に従え」の精神でほかの人と同じように振る舞うべきでしょうか?それとも自分の文化の倫理基準に従うべきでしょうか? 『Values in Tension: Ethics Away from Home』では、ペンシルベニア大学ウォートン校でビジネス倫理を教えるトーマス・ドナルドソン教授が、白黒はっきり決められない異文化の倫理問題について例をあげて解説します。

ポイントは文化の違いと間違いを見分けること

企業は海外赴任中の従業員に文化の違いと間違いを見分ける手助けをすることが必要です。文化の違いの全てが正しいわけではなく、文化の違いのすべてが間違っているわけでもありません。答えは、その間にあります。ドナルドソン教授は、企業が3つのガイドラインを海外赴任者に教育するべきであると提案しています。

  • すべての事業活動において絶対的な倫理的しきい値の基準となる、人間の価値を何よりも尊重すること
  • 地域の伝統を尊重すること
  • 何が正しいのか、何が間違っているのかを判断するには、文脈が重要であること

本書には、日本のお中元やお歳暮が、アメリカのビジネスマンには賄賂を受け取っているように思えるという例が挙げられています。アメリカの文化からすると厳密にいえば良くないことかもしれませんが、日本の企業と上手くビジネスを進めるためには、ある程度、地域の伝統を尊重して贈り物を受け取ったほうが良い場面もあるかもしれません。逆の立場から考えれば日本の習慣であるお中元やお歳暮が、ビジネスの上で歓迎されない文化もあるということを私たちは知っておくべきでしょう。

グローバルビジネスにおける英語公用語化の重要性

『英語が楽天を変えた』の著者としても知られる、ハーバード・ビジネス・スクールのセダール・ニーリー助教授は、『Global Business Speaks English』という記事の中で、グローバルビジネスの共通語を英語にすることの利点を説きます。

なぜ英語を共通語にするべきなのか?

多言語の環境が制限されなければ、グローバル企業のなかのコミュニケーションに誤解や不足が生じてしまいます。特に英語を選ぶ利点は、北米やオーストラリアなどで第一言語になっているとともに、歴史上イギリスの植民地であったインドやナイジェリアなどで流暢に話せる人が多いことです。また世界中で多くの人が第2外国語として英語を学んでいます。

しかし、なぜ英語なのでしょうか? なぜ中国語は共通語にならないのでしょうか? ニーリー教授は、英語の代わりに共通語として中国語を使うことも可能ではあるが実現はしないだろうと推測します。その理由のひとつは、イギリスの植民地主義のもとで英語が16世紀から世界の国々の共通語として使われてきたという歴史があること。そして、もうひとつの理由は、ほとんどの国の人にとって英語を習うより中国語を習うほうが難しいという点です。

職場の共通語を英語にするときのルール

職場の共通語を英語にするには次のようなルールを守らなければ成功しません。

  • 英語公用語化も、そのためのトレーニングも、すべての従業員が参加すること
  • 管理職が部下の英語公用語化の審判であり責任者となること
  • ネイティブスピーカーは、周りの人に合わせ、ゆっくりとシンプルな言葉で話すこと
  • ネイティブスピーカーではない人は、英語公用語化を遵守すること

国際的なイノベーションプロジェクトをうまく進めるコツ

グローバルなビジネス環境からは新しいアイデアやイノベーションを生み出す人材が輩出されます。しかし、実際にその能力を十分に生かしてプロジェクトを達成することは容易なことではありません。インシアードビジネススクールでシニアリサーチフェローを務めるキーリー・ウィルソン氏は『10Rules for Managing Global Innovation』のなかで、世界の有名企業を対象にした10年を超える調査から得た、国際的なイノベーションプロジェクトをうまく進めるコツを紹介しています。

例えば、グローバルチームのメンバーが上手にコラボレーションをするには、2か所か3か所の限られた場所で、プロジェクト発表までの開発をすること。また、国際的なプロジェクトを動かすには、シニアエグゼクティブが監督役としてプロジェクトを導く必要があります。その際、時間を無駄にしないために、シニアエグゼクティブは1か所から指示を出すといいでしょう。そして、必要なリソースは早めに準備すること。しかし混乱を避けるために外部のパートナーは制限します。最後にプロジェクトの成功は、様々な方法で離れていても近くにいるのと変わらないコミュニケーションがとれるかどうかにかかっています。

グローバル企業が意識するべき文化の違い5つのポイント

アムステルダムとロンドンを拠点とするTHTコンサルティングを経営するフォンズ・トロンペナーズ氏と、THTコンサルティングのパートナー、ピーター・ウーリアムス氏は『Lost in Translation』の中で世界に進出したい企業は、文化の違い、特に失敗に対する受け取り方を重視するべきだと述べます。そして30年に渡るリサーチの結果を元に5つのポイントをあげました。

  • 自分が環境をコントロールしていると感じるか、環境にコントロールされていると感じるか
  • ルールと人間関係のどちらが重要か
  • 失敗の責任が個人にあると思うか、チームにあると思うか
  • 失敗と個人を重ねて考えるかどうか
  • パフォーマンスと地位、どちらにステータスを感じるか

国の違いのほか、個人の性格や環境などによっても、その人が持つ文化は違ってきます。5つのポイントをもう少し具体的に見ていきましょう。

自分や企業が環境をコントロールしていると感じる人は、組織の仕組みや計画によって失敗を防げると思っています。このタイプの人は失敗を恐れるあまり独裁的になってしまうことも。逆に環境にコントロールされていると感じる人は、失敗は避けられないものであり、その状況に素早く対処するスキルが生き残りを左右すると考えます。このタイプの人の欠点は失敗の原因を追究せず何度も繰り返してしまうところです。

ルールが人間関係より大切な文化のなかでは誰でも平等に競争できるようになりますが、ルールや規定に縛られすぎる危険もあります。失敗に寛大でルールより人間関係が重要と感じる文化のなかでは、イノベーションが生まれやすくなったり、新しいことを学びやすくなったりします。しかし、友達と競争しなくなってしまうと、企業として成長のチャンスを逃すことになるかもしれません。

失敗を個人の責任と思う文化では従業員の競争が激しくなり組織に悪影響を与えることもありますが、生産性が高まるという利点があります。一方、失敗がチームにあると思う文化では、チームにサポートされて個々の力が伸びやすい特徴がありますが、自分が失敗するとチームの責任になってしまうので羞恥心を感じやすくなります。

失敗と個人を重ねて考えない文化では、失敗してもアイデアが上手くいかなかったと思うだけなので失敗を恐れません。むしろ失敗によって学ぶことができると考えます。しかし失敗と個人を重ねて考えてしまう文化では、失敗した人やアイデアは非難の的となります。自分でも大きな責任を感じてしまうでしょう。調査結果から日本は後者の代表格として紹介されています。

パフォーマンスにステータスを感じる文化を持つ人は、イニシアチブを見せ失敗のリスクを負います。地位にステータスを感じる文化を持つ人は、上司が周りにいると自分は責任を持つことを避け失敗を犯すことに敏感になります。前者は行動を起こしてから上司に報告しますが、後者は上司に確認をしてから行動を起こします。
このように、失敗にまつわる文化を確認することで、各個人が組織にどのような影響を与える人なのかを推測できます。また、自分の文化を知り、ほかの文化の良い点を取り入れる手掛かりにもなるでしょう。

なぜ海外赴任が上手くいかないのか

サンディエゴのコンサルティングファームThe centre for Global Assignmentsのマネージングディレクターを務めるJ・スチュワート・ブラック氏と、ブリガムヤング大学マリオット・スクール・オブ・マネージメントのハル・B・グレゲルセン准教授が執筆した『The Right Way to Manage Expats』は、アメリカ、ヨーロッパ、日本の750社を対象とした調査を元に、海外赴任が上手くいかない原因を探ります。海外赴任者の何割かは結果を出せず予定を切り上げ帰国していました。さらに任務を完了した人でも期待通りにはならず、多くの人が1年以内に退職していました。

海外赴任が成功する企業の特徴

ブラック氏とグレゲルセン准教授は調査のなかで、海外赴任を成功させている少数の企業に注目します。そこで、海外赴任を成功させている企業の次のような特徴に気づきました。

  • 海外赴任者に与えられた目的がトラブルを解決することだけではなく、トラブルを解決した後に組織のために新しい知識を生み出すことや、リーダーになるためのスキルを獲得することができている。
  • 技術力が任務に見合っている従業員や、異文化コミュニケーションの能力が高い従業員に海外での任務を与えている。
  • 赴任を終えて帰国するときが海外生活者にとって激動の時期であることを認識しており、従業員が帰国して再調整するのを助ける様々なプログラムを使用している。

どの企業も、組織の持続的な成長が、国際的な経験を積んだ従業員の肩にかかっているという確信を持っています。そして海外赴任中や帰国後に選ばれた人物が活躍できるよう、きめ細やかなサポートをしています。

異文化マネージメントを様々な角度から見る

本書に一通り目を通すと、一言で異文化マネージメントといっても様々なアプローチがあることに気づかされます。どのような場面で文化の違いが問題になるのか知っておけば、これから何を深く学べばよいか考える指標にもなるでしょう。本書で紹介されている10篇の記事の中には日本語版が出版されているものもあるようです。探してみるのもいいかもしれません。

HBR's 10 Must Reads On Managing Across Cultures
著者 Harvard Business Review
出版社Harvard Business Review Press (初版2016/05/3)
ISBN-10: 1633691624
ISBN-13: 978-1633691629

  • 人材採用・育成 更新日:2022/11/02
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