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中小企業の採用にも活用できる「KGIとKPIを活用した目標達成」

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ビジネスにおいて、立てた目標を着実に達成するためには、「目指すべきゴールの姿」と「ゴールに到達するためのプロセス」を明確にすることが大切です。
このプロセスや結果に関する指標として代表的なものにKGIとKPIがあります。企業の採用や人事政策にも、KGIとKPIを活用することで、目標の達成や達成までのプロセスの把握が容易になります。本記事では、採用における「KGI」や「KPI」の活用について詳しく見ていきましょう。

採用活動におけるKGIとKPIの活用

中小企業は、限られたリソースの中で、必要とする時期に適した人材を採用しなければなりません。
採用活動において、KGIとKPIを設定したうえで計画的に進めていくことが採用における目標達成でポイントとなります。

KGIとは

そもそもKGIとは、ビジネスに関するゴール(最終目標)を定量的に表した指標です。 「Key Goal Indicator」の略であり、日本語に訳すと「重要目標達成指標」と呼びます。

KPIとは

KPIとは、KGIを達成するまでのプロセスを定量的に評価する指標のことです。
中間指標としての意味合いがあります。
「Key Performance Indicators」の略であり、「重要業績評価指標」と呼ばれています。
ひとつのKGIに対して複数のKPIを設定し、ゴール(KGI)の達成を目指す運用が一般的です。

KGIとKPIを設定する目的

KGIとKPIを設定する目的は、会社や組織の活動の方向性を明確にした上で、あるべき姿に到達する確実性を高めることにあります。
KGIで最終的なゴールを設定して、KPIで活動の方向性(KGIに到達するまでのプロセス)を明確にしましょう
そうすることで、プロセスごとに達成度の評価と調整を行うことが可能となり、あるべき姿(最終的なゴール)へのに到達度することへの確実性が高まります。

KGIとKPIの設定方法

会社や組織として達成したいゴールの具体的な内容をKGIとして設定し、KGIの中身を分解したものをKPIとして設定します。
例えば、ある会社が営業を3人採用したいという目標を掲げたとします。それを実現するために、応募から入社までの段階ごとの目標を想定することで、以下のようにKGIとKPIを設定することができます。

応募から入社までのプロセス;応募→書類選考→一次面接→最終面接→入社

KGI

営業3人の採用

KPI

1)最終面接

最終面接の合格率50%、内定後の入社辞退率20%と想定した場合、最終面接に進む人数の目標が「3人÷0.5÷0.8≒8人」となります。

2)一次面接

一次面接の合格率80%、選考中の辞退率20%と想定した場合、一次面接に進む人数の目標が「8人÷0.8÷0.8≒13人」となります。

3)書類選考

面接実施前の辞退率10%と想定した場合、書類選考に進む人数の目標が「13人÷0.9≒15人」となります。

4)応募

書類選考の合格率80%と想定した場合、応募総数の目標が「15人÷0.8≒19人」となります。

KGI(3人採用)を頂上に書き、その下にKGIを分解したKPIを、3人採用に至る内訳としての最終面接合格者数・不合格率・入社辞退率、最終面接合格者数確保に至る内訳としての一次面接合格者数・不合格率・選考中辞退者率…というようにツリー状に書き広げていく図を作成すると、全体の構図が見えやすくなります。

OKRとの違い

近年注目されているマネジメントの指標にOKR(Objective and Key Result)があります。
日本語に訳すと「目標と主要な結果」と呼びます。
OKRを設定する主な目的は、会社や組織と個人の目標を連動させることです。
メンバーが目標を共有することによって、メンバーのパフォーマンスの合計が全体の目標と合致させやすく、また会社や組織の目標の達成度も高められされるのではないかという考えに基づくものです。

OKRは、柔軟な運用を行うことで効果を発揮します。
OKRの設定後に環境が変化した場合、必要に応じて全体の目標や主要な結果も変更します。
一方、KGIとKPIは目指すべき方向性と、それによるゴール、ゴールに到達するためのプロセスを表す指標なので、基本的に該当するプロジェクトなどが終了するまでの間は変更しません。
柔軟な運用を想定するのかしないのかが、OKRとKGI・KPIとの違いです。

採用活動におけるKGIとKPIの立て方

ビジネスに関する目標を設定するのと同様、採用活動においても、達成するための行動(KGIやKPI)を設定していきましょう。
定量化された指標を明らかにし、進捗管理を行うことで目標達成の実現性が高まります。

採用活動のゴールとプロセスを明らかにすることが重要

採用に関して求められている成果は「決められた期間内に、欲しい人材を、欲しい人数確保すること」です。
これに関して、待つだけの採用を続けていては成果が得られにくいでしょう。受け身のままでは、偶然に頼るだけの結果に終わってしまうからです。
採用活動で成果を上げるためには、まず採用活動のゴールを明らかにしましょう。次にゴール(結果)を実現させるためのプロセスについて仮説を立てます。その仮説を踏まえた上で人材の募集を開始し、状況に応じて、求人媒体の活用や募集原稿の内容、求職者への対応などを臨機応変に変更・最適化していくことが必要です。

採用におけるKGIの立て方

採用活動におけるKGIの立て方として「いつまでに、どのような人材を、どの程度確保するのか」を具体化することがポイントとなります。
「いつまでに」というのは、採用者を確定するタイミング、あるいは採用者が入社するタイミングを指します。
「どのような人材を」という点は、採用する人材の質についてです。「○○レベルのことができる」といった能力、「○○に関する業務を○年間以上経験している」といった仕事のキャリア、保有する資格などが該当します。
人材の育成が必要な場合、「○歳以下」といった年齢的な要件を加えるのもよいでしょう。

また「どの程度確保するのか」という点は、採用人数についてです。
入社後の離職や能力等によるミスマッチリスクを考えるのであれば、余裕をもって採用したい人数を目標として設定します。
上記を踏まえてKGIを考えた場合、例えば「今年の9月までに◯◯の業務に◯年携わった経験がある人材を2名採用する」といった具体的な目標を立てることができます。
このようなKGI指標がなかった場合、応募者の中から最終的にベターであった人材を採用する対応となり、採用ミスマッチが生じやすくなります。

ただし、採用に関しては、採用市場の状況に影響されます。
現在、データサイエンティストやAIに精通した人材が超買い手市場となっていて採用が全般的に難しくなっています。このように、特定の業種に関わる人材や、特定のスキルを有した人材の採用競争が激化し、採用へのハードルが高くなってしまうことがあります。
そのような状況が存在する場合、KGIとして無理な目標を立てるのではなく、KGI指標の中の優先順位を考え、現実的な目標を掲げる必要があります。
例えば、業務経験要件や経験年数要件の優先順位を低くし、目標とする時期に目標とする人数の採用を実施した上で、入社後の教育で経験値を高めるという対応が考えられます。

採用におけるKPIの立て方

人材の募集を開始後、採用に至るまでの間には「求職者の応募」「応募者との面談」「採用したい人に内定を出し該当者が採用内定を承諾」といったプロセスが発生します。
それぞれのプロセスを、過去の採用活動における実績、現在の求人市場や求人環境を踏まえた人材会社からのアドバイスなどを参考にして見込める結果を数値化しましょう。

(例)
① 自社が必要としている職種は売り手市場である
② ①により、複数の求人企業に対して同時進行で応募する求職者が多いことが想定される
③ ①に関して、30歳未満の人材に対する求人需要が高いという人材会社からの情報がある
④ ③を踏まえて、30歳以上の求職者をターゲットにする
⑤ ②を踏まえた以下のプロセスの実現を目指す
Ⅰ.募集開始後2週間で30歳以上の求職者からの応募が最大5名ある
Ⅱ.応募を受け付けた後すぐに書類選考を実施する
Ⅲ.応募受付後2日以内に面談通知を行うことで全応募者との面談を実現する
Ⅳ.面談日から最大1週間以内に採用可否の通知を行うことを約束する
Ⅴ.そうすることで、最終的に1名の採用を実現する

数値化することで、設定した採用活動のゴール(KGI)を実現させるために必要な採用プロセスや、採用活動を成功させるための根拠が明らかになります。

応募人数

募集後の一定期間内に何人程度の応募が見込めるのかをKPIに設定することがポイントです。 前述した見込める結果を数値化した例で言えば、「募集開始後2週間で30歳以上の求職者からの応募が最大5名ある」といった内容でKPIを設定します。

面談率

応募者全体の中から、どの程度の割合に対して面談を行う想定なのかもKPIに設定しましょう。
これに関しては、この程度の面談者がいれば、その中から必要な人数分の内定を出すことができるだろうという見込みも加味したうえで指標化することが望ましいです。

内定承諾率

内定を出した人の中から、どのくらいの割合で入社の承諾が得られる想定なのかもKPIに設定します。
最終的に採用したい人数を達成するための承諾率を指標化しておきましょう。

その他のKPI

自社の採用ページや募集ページなどへのアクセス状況が分かる場合は、アクセス率を指標化し、目標とする応募人数につなげていきます。
また、入社後の定着までのことをゴール(KGI)として掲げるのであれば、早期離職率をKPIとして設定する運用も考えられます。

KGIとKPIを設定するときのポイント

KGIとKPIを設定する場合、以下のポイントに留意する必要があります。

指標を定量化する

「求人情報を◯◯のサイトに掲載し、△人の応募をXX月までに達成させる」といった、数字で評価できる指標を設けることが重要です。
そうすることで、進捗状況を可視化することができます。

実現可能な指標を設定する

採用活動においてKGIとKPIを設定する場合、実現可能な指標であることが重要です。
KGIとKPIを設定する目的は、採用に関するゴールを達成するためのプロセスを明らかにし、管理して実現することです。
実態とかけ離れたことを指標化してしまうと、非現実的な対応になり、実現するための管理もできなくなります。

KGIとKPIを連動させる

KGIとKPIを連動させることが重要です。
KGIは最終ゴールであり、KPIは最終ゴールに行き着くまでの道筋です。
この2つが連動していなければ、採用活動においてゴールを達成することはできません。
別々の目標を立てるのではなく、KGIを達成するためにKPIを設定している点を意識しましょう。

期限を明確にする

決められた時期に必要とする人材を確保することが採用活動の目的です。
その目標を達成するための期限は、明確にしましょう。
そのための道筋を明らかにすることがKGIとKPIの設定なのです。

進捗管理を行う

定期的に採用の進捗状況を確認し、今後の対応を随時検討していくことも重要です。
採用活動のゴールを達成するためのプロセスを明らかにしたとしても、その通りに採用活動が進むとは限りません。
ふたを開けたときに、当初想定した指標と乖離することも多くあります。
そのため、定期的に採用状況を確認したうえで、今後の対応を変更・改善するなどのアクションを繰り返すことが必要なのです。

KGIとKPIを設定するメリット

採用活動においてKGIとKPIを設定することで、次のようなメリットが得られます。

やるべきことが明らかになる

人材の採用においてやるべきことが可視化されるため、目標を達成するための行動がしやすくなります。
採用活動においても、出たとこ勝負や待ちの姿勢から脱却することができ、現在の状況を踏まえたうえで今後の最適な対応を考えることができるようになります。

携わる人のモチベーションが向上する

自らが指標を設定することで、携わる人のモチベーションが向上します。
採用活動においても、採用担当者自身が指標を設定し、達成に向けた管理を行うことで、採用活動に関する目標達成に向けた意欲が向上します。

進捗管理がしやすくなる

ゴールの姿と行き着くまでのプロセスが可視化されることで、着実に目標を達成するための採用担当者自身による進捗管理がしやすくなります。
採用活動においても、募集開始後に中間での効果測定を行い、その結果を踏まえたうえで、求人媒体の取捨選択や活用の期間、募集原稿の修正や応募者への対応などに関する最適な判断を都度行うことができるようになります。

客観的な評価を行える

ゴールの姿と行き着くまでのプロセスが可視化されることで、主観性が排除され、客観的な評価がしやすくなります。
採用活動においても、採用効果を高めるための採用活動の内容や在り方について、過去の経験からの勘に頼るのではなく、現状の成果を客観的に評価したうえで、今後の対応を考えやすくなります。

採用活動におけるKPIの評価と対策

KPIを評価して対策を考えるというのは、次のような対応を行うことです。
いずれも、募集媒体を運営している人材会社等のアドバイスを得て行うことで、効果が向上します。

応募人数が少ない

応募人数が応募開始時の見込みよりも少ない場合、「労働条件上のミスマッチ」や「人材要件上のミスマッチ」などの要因が考えられます。
「労働条件上のミスマッチ」は、他社の募集と比較して給与などの労働条件が低いことを理由に応募をためらう人が多い際に起こります。
これに関しては、他社の類似職種の募集広告との比較を行い、可能な範囲で労働条件を修正・変更します。その後の募集要項に反映させることで、応募人数の改善が期待できるでしょう。
さらに、立地条件や仕事内容に対するイメージが応募人数に影響していることも考えられます。その場合は、働きやすさや入社後のフォローが充実していることなどをアピールしましょう。

「人材要件上のミスマッチ」は、募集広告に掲載した求める人材の要件が高すぎることが原因で起こります。難易度が高いスキルや能力を求めている場合、仕事内容に興味があっても応募をためらったり諦めたりする人が多くなってしまうのです。
これに関しては、人材要件のハードルを許容できる範囲内で下げることがポイントです。
人材会社のデータベースに自社の人材要件にマッチした人材がどの程度いるのかを確認することができるのであれば、より精度が高まります。

面談率が低い

応募後に面接にいたる割合が応募開始時の想定よりも低い場合は、「人材要件上のミスマッチ」や「応募者への対応が不十分」といった要因が考えられます。
「人材要件上のミスマッチ」は、自社が求める要件を満たしていない求職者が応募してくる事案が多いということです。
これに関しては、募集広告に自社の人材要件が的確に反映されていないケースが考えられます。絶対的に必要な能力やキャリア、資格取得などの要件があれば、そのことをしっかり記載する必要があります。 育成などの事情があることを理由に年齢要件を設定している場合は、そのことも明確に謳う必要があります。

「応募者への対応が不十分」というのは、面接を行いたい応募者に面接に応じてもらうための対応がしっかり行えていないケースです。
応募後の企業からの返信・反応が遅かったり、面接の段取りなどが不明確だったりした場合、応募者は不安になり、他に応募した企業への対応を優先してしまいます。
このような事態を防止するために、応募があった後の対応内容や期限などをマニュアル化することが大切です。

内定承諾率が低い

内定を出した人から承諾を得る(入社が実現する)割合が応募開始時の想定よりも低い場合は、「内定者の事情によるミスマッチ」や「内定を出した後の対応が不十分」などの要因が考えられます。
また、内定者が最終的に自社への入社を選択しなかった際に「内定者の事情によるミスマッチ」が起こったと言えます。これに関しては、複数の会社から内定をもらい他社に入社することになった、面接時に自社に対して良い印象を持つことができず入社する意思を無くしたなどが考えられます。 具体的な対応策として、面接時に自社への入社に対する本気度や自社以外への応募状況などを確認することなどが大切です。

「内定を出した後の対応が不十分」といったケースは、内定を伝えたときには前向きな反応が見られたものの、最終的に入社を断られた事案が多いということです。
これに関しては、内定を出した後に内定者に寄り添った対応を行わなかったことが原因で、内定者が不安に感じ、内定辞退を招いてしまったと考えられます。
このような事態を避けるために、内定を伝えた後の対応をマニュアル化しておくのも良いでしょう

早期離職率が高い

費用と時間、労力をかけて採用した人材が早期に離職してしまう事案も少なくはありません。
そうなることは、企業にとって、採用や入社後の教育コストが無駄になるということです。
これを改善するためには、入社後のフォローの在り方を見直す必要があります。
例えば、入社後一カ月間は社内の教育プログラムに沿った社内教育を施し、教育期間終了後に上司が面談することで早期離職のリスクを20%程度に抑えられると見込んでいたが、実際の早期離職率がそれよりも高いという課題に直面した場合、入社後の面談機会を増やして、入社者が不安に感じていることを解消するための対応を都度行うフォロー体制を敷き、その後の採用に反映させるなどの対応が考えられます。

入社後の教育体制が入社前のイメージと異なり、早期離職につながるケースも多いです。
これに対しては、面接・面談の段階で入社後の教育体制の中身を具体的に説明することが、入社後の早期離職率の向上につながります。

KGIの見直し

採用活動におけるKGIは、企業の要員計画に紐づいているため、安易に変更することは望ましくありません。
しかし、KPIを設定し、それに対する進捗管理を行うことで、KGIの達成確率が著しく低いことが判明した際は、KGIの見直しを考える必要もあります。
いたずらに時間を費やした結果何の成果も得られないよりは、次善策を考えて、それに対する成果を実現させることのほうが、人員を確保できないことによる事業リスクを低減させることにつながるからです。

まとめ

人手不足は中小企業が抱える共通の経営課題であり、これを解消するのが採用活動です。
限られた予算、限られたリソースの中で効果的な採用活動を行うためには、達成すべき目標と目標を達成するためのプロセスを明確にした上で臨む必要があります。それに対して役立つのが、KGIとKPIなのです。

  • Person 大庭 真一郎

    大庭 真一郎 中小企業診断士・社会保険労務士 大庭経営労務相談所 代表

    東京生まれ。東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。
    「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/10/26
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