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賃金制度とは、その必要な要素や設計フローを解説

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「賃金制度」は、企業が従業員に支払う賃金を決定する基準を定めた制度です。当記事では賃金を構成する要素や、賃金制度の設計のポイント、設計フローを紹介します。

賃金制度とは

「賃金制度」とは、従業員への賃金の支払いの根拠となるルールです。一般的には、企業が定める人事評価制度の等級に応じた賃金や、成果に対する賃金などで構成されます。
「賃金制度」は、企業の戦略を表します。例えば、成果主義を追求する企業は、成果に対する賃金を高めるなどの施策を採用します。また、ユニークな手当を設計し、従業員のモチベーションアップや求職者へのアピールを行う企業もあります。

賃金を構成する要素

日本の一般的な「賃金制度」は、毎月支給される基本給、諸手当、賞与、退職金に分類されます。ここでは、各賃金に関して紹介します。

基本給

基本給とは、給与のベースになる賃金です。通常勤務すれば必ず貰える賃金です。基本給を決める要素は複数あり、何をどのように組み合わせるのかは、企業の方針によって異なります。ここでは、一般的な要素を説明します。

種類 内容
年齢給・勤続給 従業員の学歴、年齢、勤続年数を基にして定める賃金です。年功序列を重視する企業に用いられます。
職能給 従業員の職務能力を基に定める賃金です。
職務給 従業員が担当している職務(仕事内容)を基に定める賃金です。
役割給 従業員の役割を基に定める賃金です。
業績給・成果給 残した業績や成果を基に定める賃金です。

手当

手当とは、必要に応じて支給される賃金です。法律で定められた手当以外は、企業が自由に設定できるため、企業の独自の設計を行い、従業員のモチベーション向上や求職者へのアピールに活用できます。

分類 種類 内容
法律で定められた手当 残業手当 法定労働時間を超えて労働した際に発生する割増賃金です。通常賃金の25%割増になります。
深夜残業手当 夜の10:00以降~翌朝5:00に労働した際に発生する割増賃金です。残業手当の25%割増になります。
休日出勤手当 休日に出勤し労働した際に発生する割増賃金です。 休日には、「法定休日」と「法定外休日」があります 就業規則に記載した法定休日に労働した場合は、通常賃金の35%割増賃金になります。 法定外休日に勤務した場合、通常の勤務と同じルールが適用され、法定労働時間内であれば割増賃金は発生しません。
一般的な手当 通勤手当 通勤時に発生する交通費に応じて支払う手当です。上限金額を設定するケースもあります。
出張手当 出張で業務を行った際に支給される手当です。
役職手当 従業員の役職に応じて支給される手当です。
住宅手当 従業員の住居の賃料などに支給される手当です。一律支給や、賃料に応じた割合での支給、上限金額の設定など企業によりさまざまです。
家族手当 扶養家族に応じて支給される手当です。

その他にも、地域手当、勤続年数による手当や、昼食代や夜食代の手当、スキルアップのための手当など、企業独自の手当を支給し、他社との差別化を図ることができます。

賞与

主に企業の業績に応じて、従業員に支給する賃金です。賞与金額の決定方法は企業によって異なります。一例として、企業の経常利益をベースに賞与の原資を決定し、原資の中から個人の人事評価に応じた金額を分配する方法や、基本給の●カ月分とする決め方もあります。

退職金制度

退職する際に支給する賃金です。在籍年数や、職務の貢献に応じて賃金を定める方法があります。

賃金ポリシーの重要性

「企業は、何を評価して賃金を決めるのか?」その基本方針を「賃金ポリシー」と呼びます。
「賃金ポリシー」は、その企業が従業員にどのように働いて欲しいのか、どのような従業員を求めているのかを明示する指標となり、企業の理念を表す重要な要素です。

ポリシー 配分
成果を重視する 成果給の配分を高め、成果しだいで高額な賃金を出す。
勤続年数を重視する 勤続給の配分を高め、長く勤めることにメリットを出す。
人材の質向上を重視する 職能給に配分を高め、能力アップが賃金上昇につながる環境を作る。

賃金制度設計のポイント

賃金ポリシーを定める

前述のとおり「賃金ポリシー」は企業の理念にも繋がります。どのような企業を目指しているのか、従業員にどのように働いて欲しいのか、検討した上で決定しましょう。

等級制度を決定する

「等級制度」とは、従業員の賃金などの序列、賃金などの待遇を決める表で、等級に応じて賃金を決定する方法は多くの企業で採用されています。等級制度には。主に「職能資格制度」、「職能等級制度」、「役割等級制度」が用いられ、自社の環境に合うようにアレンジして導入します。

種類 特徴
職能資格制度
  • 従業員の今まで蓄積した能力(顕在、潜在)を軸として評価する方法です。
  • 職務の内容に関わらずに待遇を決定するため、ゼネラリストが育てやすく、蓄積した経験や能力も評価対象とする場合は年功序列の要素が出やすい特徴があります。
職務等級制度
  • 担当する職務を軸として評価する方法です。
  • 専門的な職務を高給に設定するなど、専門的な人材の育成・採用に適し、勤続年数は考慮されずに、同じグレードであれば同一の賃金になります。
役割等級制度
  • 役割を軸とした評価方法です。
  • 企業が従業員の果たすべき役割を等級ごとに明示して、その役割を果たせているかどうかで等級が決定します。勤続年数などの要素は考慮されません。

手当で企業の独自色を出す

手当は、企業独自で自由に設計できます。自社の理念にあった手当を設計することで、従業員のモチベーションアップや、人材採用の際のアピールとして活用できます。

等級制度と賃金制度

等級により賃金を決定する制度は多くの企業で採用している手法です。「○等級の場合は、○○円」と、等級のグレードによって、賃金が決定するテーブル(表)を作成します。等級の上昇、下降は、人事評価によって決定し、これを従業員に公開することによって、理由なく給与が高い、低いなどの不公平を排除し、自分がどの等級になれば賃金はいくらになるのかを把握することができます。

賃金制度設計フロー

企業の理念を整理する

従業員にどのように働いてほしいのか、どのような従業員を求めているのか、企業の方向性を整理します。同時に、賃金設計で何を実現したいのか明確にしましょう。

現在の賃金制度の課題の洗い出し

現在の賃金制度の実情を分析し、解決すべき課題を洗い出します。

賃金ポリシーの設計

「成果を重視するのか」、「勤続年数を重視するのか」「能力を重視するのか」、別な要素を重視するのか、企業の理念や課題をベースに自社にあった「賃金ポリシー」を作成します。

等級制度の設計

企業の方針として、人材の能力を重視するならば「職能資格制度」、職務の中身を重視するならば「職務等級制度」、役割を重視するならば「役割等級制度」 を採用し、自社に最適な等級制度を設計し、賃金テーブルを作成します。
等級の数が少ないと、同じ等級に多くの人材が混在し、差別化ができなくなります。また、等級の定義が不明瞭な場合、「なぜ、自分がその等級なのか?」従業員の不満につながる可能性があります。分かりやすく明瞭な定義を設定しましょう。

賃金のシミュレーションを行う

設計した新しい賃金テーブルに現状をあてはめて、支給総額の変化、個々の従業員の賃金の変化を確認します。また、数年後の変化もシミュレーションしておきましょう。

導入時期の調整

給与の変化は従業員の生活に直結します。十分な準備期間を持って移行できるように、従業員への周知期間を設けて、実施時期を検討します。

従業員への周知

従業員と話し合いの場を持ち、新賃金制度の目的を明確に説明し同意を得ましょう。

雇用契約書などの再締結

企業と従業員は、既に、労働条件通知書や雇用契約書で賃金の取り決めを行っています。これらの書面と賃金設計に差異が発生する場合は、従業員に説明を行い、契約の更新を行いましょう。

労働基準監督署に書面を提出

賃金制度を変更した場合、就業規則・賃金規定を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。必ず提出しましょう。

「賃金制度」は、企業の経営に直結する重要な制度です。うまく制度設計すれば、従業員のモチベーションを向上させ、人材の採用にも効果があります。自社に最適な制度を設計し、企業成長の武器にしましょう。

  • 労務・制度 更新日:2022/07/26
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