人事担当者が取得しておくべき資格とは? 取得の難易度を紹介
人事担当者として、資格の取得は、仕事の幅を広げ、キャリアップの大きな武器となります。そして、勉強の過程で実務に役立つ広範な知識を身につけることができます。
この記事は、人事担当者が、身に付けると役に立つ、さまざまな資格を紹介します。
人事系資格の取得メリット
直接業務に役に立つ
資格を勉強する過程で、業務に役立つ広範な知識を学ぶことができます。 また、社外の一般的な手法や知識を体系的に学ぶことは、業務改善や効率化に役立ちます。
社内評価が上がる
業務知識を自ら進んで取得し、専門的なスキルを身につけることは、仕事の幅を広げ、社内で高く評価され、その結果、昇進や昇給なども期待できます。
転職に有利になる
当然のことながら人事系部署への転職時に、資格欄に取得した資格を記載しアピールすることができます。
また、資格を多くとっている人材は、「勤勉で向上心が強い人材」と前向きな評価を得ることができます。
人事担当者に必要なスキル
人事担当者に必要なスキルを紹介します。資格や検定で得た知識は、この必要なスキルを高めることに貢献します。
対人折衝の能力
会社は、従業員にとって、自己実現の場や生活の糧を得る重要な場所です。そして、人事は、その従業員をマネジメントする重要な役割を担っています。
従業員をマネジメントするためには、観察眼や、従業員の心のケア、自主性を引き出すコーチングスキルも必要です。
従業員、一人ひとりと向き合い、適切なコミュニケーションを採っていく能力は人事担当者の必須スキルになります。
労務知識
人事担当者の実務は、行政手続きも多く、憲法や労働基準法などの各種法令と密接に関わっています。特に労働者の権利は、法律で強く守られており、理解をしていないと、知らない間に違法行為を犯してしまうリスクがあります。
対人折衝スキル向上に役立つ資格・検定
人事担当者の必須スキルである対人折衝能力。その能力を強化する資格・検定を紹介します。
キャリアコンサルタント
特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会が所管し、2016年より国家資格となった新しい資格です。
労働者の職業選択・能力開発に関する相談・助言を行う専門職です。学科と実技試験があり、5年毎に更新が必要な資格です。
人事担当者がこの知識を身につけることで、従業員にキャリアに関する適切なアドバイスを行うことができます。
受験資格
厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した人、技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験の合格者
合格率
64.0%(2021年 キャリアコンサルティング協議会(CCC)受験者)
メンタルヘルス・マネジメント検定
メンタルヘルス・マネジメント検定は、大阪商工会議所が所管する民間の資格です。
厚生労働省策定の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を参考に作られた、職場環境でのストレスによる、心の病などを対策するための知識を検定します。また、職場での役割ごとに3タイプの試験に分けられています。
●Ⅰ種(マスターコース)
経営層や人事の管理職などを対象とした、社内のメンタルヘルス対策を立案、促進する知識。
●Ⅱ種(ラインケアコース)
部署の管理職としてのメンタルヘルスの知識。
●Ⅲ種(セルフケアコース)
自分自身でメンタルヘルス対策ができるようになるための知識。
職場の従業員のメンタルケアは、重要度を増しています。知識を習得することでコミュニケーションスキルの向上に役立つでしょう。
受験資格
制限なし
合格率(2021年31回実績)
Ⅰ種(マスターコース):19.8%
Ⅱ種(ラインケアコース):46.4%
Ⅲ種(セルフケアコース):71.2%
産業カウンセラー試験
産業カウンセラーは、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が所管する民間の資格です。
職場での人間関係の悩みやメンタルヘルスのケア、キャリア開発支援の知識を問う試験です。
「傾聴力」を重視し、従業員に寄り添うコミュニケーションスキルを身につけることができます。
受験資格
成年に達した者で、協会が行う産業カウンセリングの学識及び技能を修得するための講座を修了した者。または、4年制大学学部において、指定する学部の卒業者など。
合格率
62.7%(2020年度実績)
コーチング検定
コーチングとは、相手との対話の中で、質問や助言をしながら、自発的に答えを見つけ、行動を促す人材育成法です。答えを教えるのではなく、相手が自分で考えて答えを導き出すようにする。自発的な行動を促す所がポイントになります。
ビジネスシーンでは、従業員のモチベーションを引き出すコミュニケーションスキルとして広く活用されています。
コーチング検定は、このコーチングを学ぶ検定になります。
また、民間資格となり、複数の団体が独自の検定を設けています。
労務知識の向上に役立つ資格・検定
学習を通じて、労務に関する知識を身につけることのできる資格・検定を紹介します。
人事総務検定
人事総務検定は、一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会が所管する民間の検定です。人事・労務管理・年金などの総合的な知識、実務能力を体系的に学ぶことができます。
1から3級までのランクがあり、1級は課長レベル、2級は主任レベル、3級は担当者レベル相当を対象とし、2級・3級は、特別認定講習を修了することでも取得でき、比較的取得しやすい資格と言えます。
受験資格
1級の受験者は2級に、2級の受験者は3級に合格しており、かつ人事総務スキルアップ検定協会への登録中であること、3級は制限なし。
ビジネス・キャリア検定
ビジネス・キャリア検定とは、中央職業能力開発協会が所管する公的な検定です。厚生労働省が定める「職業能力評価基準」に準拠し、試験は8分野43の試験から、自分の職種を選択し受験します。
「人事・人材開発・労務管理」は、1から3級までの3つのランクに分けられ、1級は実務経験10年以上、2級は実務経験5年以上、3級は実務経験3年以上のスキルをイメージしています。
受験資格
制限なし
合格率(令和3年度前期実績)
1級人事・人材開発・労務管理 10%
2級人事・人材開発 65%
3級人事・人材開発 60%
2級労務管理 41%
3級労務管理 51%
衛生管理者免許試験
衛生管理者免許試験は、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が所管し、労働安全衛生法を基にした国家資格です。
従業員の労働環境の管理や労働者の健康管理、労働災害の防止などを学びます。
また、労働安全衛生法により、常時50人以上の従業員がいる事業者は衛生管理者を1人以上置くことが義務付けられています。
事業者側の需要もあり、取得しておくと、転職時に有利に働く場合や、資格手当などを得られる場合があります。
受験資格
大学、短期大学を卒業していること
合格率(令和2年度実績)
第一種衛生管理者 43.8%
第二種衛生管理者 52.8%
社会保険労務士試験
社会保険労務士は、全国社会保険労務士会連合会が所管し、社会保険労務士法を基にした国家資格です。
労務管理や社会保険に関するエキスパートと言え、この資格を取得すれば、人事・労務管理、社会保険、年金、雇用保険などの各書類の作成や提出、就業規則などの公的書類作成、労使間のトラブルの相談、など幅広い業務を行うことができます。
受験資格は厳しく制限され、学歴や実務経験、そして、社会保険労務士以外の厚生労働大臣が認めた国家資格を所有していることが条件と成っています。また、試験科目も8科目と多く、出題範囲も広いため、合格率も例年一桁台の取得難度の高い資格といえます。
受験資格
学歴・大学・短期大学・専門職大学などを卒業。実務経験。社会保険労務士以外の厚生労働大臣が認めた国家資格を所有していること
合格率(令和2年実績)
6.4%
人事総務系で取得しやすい資格・検定
受験資格の制限のある検定や資格もあり、また条件によっても異なりますが、合格率を基にした難易度を紹介します。
コミュニケーションスキル系 資格・検定の難易度
資格・検定名 | 種別 | 合格率 |
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅲ種 | 民間検定 | 71.20% |
キャリアコンサルタント | 国家資格 | 64.00% |
産業カウンセラー試験 | 民間検定 | 62.70% |
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 | 民間検定 | 46.40% |
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種 | 民間検定 | 19.80% |
労務知識系 資格・検定の難易度
資格・検定名 | 種別 | 合格率 |
ビジネス・キャリア検定 2級人事・人材開発 | 公的検定 | 65.0% |
ビジネス・キャリア検定 3級人事・人材開発 | 公的検定 | 60.0% |
第ニ種衛生管理者 | 国家資格 | 52.8% |
ビジネス・キャリア検定 2級労務管理 | 公的検定 | 41.0% |
第一種衛生管理者 | 国家資格 | 43.8% |
ビジネス・キャリア検定 2級労務管理 | 公的検定 | 41.0% |
ビジネス・キャリア検定 1級 | 公的検定 | 10.0% |
社会保険労務士試験 | 国家資格 | 6.4% |
上記以外に、民間検定の人事総務検定2級、3級は、特別認定講習を修了することでも取得でき、比較的取得しやすい資格と言えます。
人事担当は、「ヒト」の人生を扱う重要な業務です。コミュニケーションのスキルや法的な知識は必ず必要になります。合格することも大事ですが、資格や検定へのチャレンジは、体系的な知識を学ぶ良い機会です。積極的にチャレンジすることをおすすめします。
- 人事・労務 2022/07/21
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