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卓越した才能:最高の従業員を惹きつけ、採用し、維持する方法

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組織に適切な人材を惹きつけ、採用し、育成し、維持することは、組織の成功にとって極めて重要です。『Exceptional Talent』の著者、マット・オルダー氏とマービン・ディネン氏は、テクノロジー、コミュニケーション、求職者のし好の変化が、タレントジャーニー(就職活動から採用試験を経て、有力な人材として組織に定着するまでの流れ)に、どのような影響を与えているかを検証しています。

ここでは、本書で紹介されている6段階のタレントジャーニーに沿って各章のポイントを紹介しましょう。

1.才能がある人に注目される

才能がある人材を採用するためには、まず求職中の人たちに自社を見つけてもらわなければなりません。そのために企業は様々な方法で広告を出します。

しかし、インターネットが普及し情報が氾濫している現代に、戦略なしに広告を出しても、なかなか注目されません。そこで著者は「信頼」の重視を提案します。

例えば、迷惑メールのように何度も何度も同じ内容の求人情報を送ってくる企業を候補者は信頼しません。それよりは、候補者が欲しいと思う情報をタイミングよく提供する企業に興味を持つはずです。

マーケティングコンサルティング会社のエデルマンが毎年発表する信頼調査「トラスト・バロメーター」を見ると、一般の人が最も信頼する情報源が何か分かります。

調査によれば、学術的、技術的な専門家の意見が最も信頼される一方で、自分たちのような一般の人の意見が同じように信頼されているのです。この結果からは、WEBサイトにユーザーが書き込む口コミが、そのページの閲覧者の購買意思の決定に影響を与える理由が納得できるはずです。

同じように、採用活動でも実際の従業員の声を利用するべきです。従業員が参加するコンテンツによって魅力的な雇用主ブランドを構築することができます。

2.才能がある人を惹きつける

才能のある人が企業に注目し興味を持ったら、次はその人に企業を売り込み惹きつけます。採用活動のプロセスはマーケティングと似ています。

WEBサイトに求人広告を載せるときには、探している人材が集まりそうな場所をリサーチしてから掲載を決めること。そして求める人材がWEB検索をしたときに自社の求人広告が表示されるよう見出しや説明文を工夫することが必要です。

また、SNSを使い自社に興味がある人たちのコミュニティをつくることや、そのメンバーをさらに惹きつけるためのコンテンツマーケティングなども現代の採用活動には欠かせません。

本書では人事向けの応募者追跡システム(ATS)を使って候補者のデータベースを作成し管理していくことも推奨されています。ATSを導入すると、住所やメールアドレスなど候補者の基本情報が管理できるだけでなく、社内の様子を紹介する情報発信、自社採用サイトの閲覧者の追跡、採用の進捗状況の社内共有などが簡単にできるようになります。

このようなツールを使い、マーケティングに近い方法で適切な人材を惹きつけます。

3.才能がある人を獲得する

3つ目のステップは、採用試験で才能がある人材を獲得することです。著者は、「採用試験の案内、面接、採用・不採用の通知」という採用プロセスのなかで、候補者の体験を重視するべきだと説きます。

例えば、Mystery Applicantというデータ分析会社が採用試験を受けた後の候補者のフィードバックをリアルタイムに集める調査をしました。その結果、採用試験の後にその企業をもっと好きになった候補者は26%、以前と変わらなかった候補者が31%、採用試験を受けたことにより企業が嫌いになった候補者は43%もいました。

採用活動を通して企業の印象が悪くなってしまっては才能のある人材を獲得することは不可能です。採用試験を終えた候補者に「この企業で働きたい」と思われるようにしなければなりません。

また、採用試験での候補者の体験はブランドにも影響を与えます。Mystery Applicantの同調査では、採用試験を受けた人の67%が、その企業と自分の関係性が採用試験をきっかけに変わったと感じていました。採用試験を受けた候補者は、採用に至らなくても将来の顧客になることがあります。採用試験でブランドのイメージを傷つけないような体験を提供しましょう。

採用試験で候補者の体験を向上させるには、試験の進捗について適切なフィードバックをすることが大切です。応募から採用者が決定するまでの流れを綿密に計画し、あらかじめスケジュールと選考基準を候補者に知らせておくといいでしょう。採用試験の流れを求人情報に載せることで、応募が平均25%まで増えるという、オランダのリサーチ会社Digitaal Wervenの調査結果も紹介されています。

4.才能がある人のオンボーディング

オンボーディングとは、新入社員が同僚や仕事に慣れるようサポートすることです。その人が自分のスキルや才能を職場で発揮できるようになるまでのプロセスですから、必ずしも最初の数か月で終わるとは限りません。最も効果的なオンボーディングは、ビジネス、状況、文化の3つのコンテキストに沿って組織とつながりを持てるようにすることだと著者は述べます。

ビジネスのコンテキスト

自社の製品とサービスが何であるか、どのように利益を得ているか、どのようなマーケティング活動やブランディングがされているのかなど、ビジネス活動の全体像を理解します。このように、企業のビジネスがどのように機能しているか知ることが大事です。

状況のコンテキスト

自分が担当する仕事を1人でスムーズにできるよう、同僚や上司に教えてもらいながら仕事を覚えます。日々の仕事のスケジュールや取引先との関係、ほかの部署とのつながりなども理解する必要があります。

文化のコンテキスト

組織の価値観と、それがどのように従業員に影響しているかを把握しておきましょう。さらに組織の個性となる行動や伝統、目的意識などを理解します。その前提として、企業文化に完全に同調し、その理念に没頭できる人材を採用することが必須です。

採用後のオンボーディングでは、新入社員を歓迎し、チームの一員であると感じられるようにすることが大切です。チームの先輩のなかから「バディ」を選んで一緒に行動してもらってもいいでしょう。バディはメンターと違い、その人のパフォーマンスを向上させるための存在ではありません。新入社員がチームや仕事に慣れるためのサポートを目的とします。

また、新入社員用のオンラインリソースとして、企業の歴史や理念、ビジネスの概要などが書かれたWEBサイトがあると役に立ちます。

才能がある人を育成する

人事の仕事に携わる人たちやジョブアナリストの間では、1980年から2000年の間に生まれたミレニアル世代が伝統的な終身雇用に背を向けているという共通認識があります。

ミレニアル世代は、学ぶことに意欲的で、新しいビジネスモデルやワークライフバランスを重視するともいわれています。起業家精神に溢れている人も多く、ミレニアル世代の従業員に長く働いてもらうためには、彼らのニーズに合った能力開発やパフォーマンスマネジメントが必要です。

これからの能力開発

企業側が押し付けるのではなく、従業員が伸ばしたい能力を開発する機会が必要です。その際、教室で学ぶだけではなくオンラインコースなどテクノロジーを使った新しい学びかたを取り入れるといいでしょう。

これからのパフォーマンスマネジメント

今までのパフォーマンスマネジメントは、半年ごとや年次ごとの評価が当たり前でした。しかしビジネス環境が変化し、このように目標を管理する方法が合わなくなっています。これからは、継続的なフィードバックやコーチングを提供することで成長を促すシステムに変える必要があります。

これからのキャリアパス

従業員のライフステージや将来の希望に合わせて社内で別の部署に移ることができる柔軟なキャリアパスの検討が必要です。また、外部に向けて求人募集をする前に社内公募をすることで、現在働いている従業員にキャリアアップやキャリアチェンジの機会をつくります。

これからの人事部の役割は、組織内の流動性や動きやすさを促進することです。チームのマネージャーとメンバーの間で適切な話し合いができるよう促し、従業員一人ひとりが、将来に向けて自分の能力開発を自発的に進められるようサポートします。

6. 才能がある人を維持する

自分が望んでいる仕事ができるときや、所属する組織に対して愛着を持っているとき、人は仕事に熱中することができます。このような状態は従業員エンゲージメントが高いと考えられます。従業員エンゲージメントを向上させることは、才能のある人材の生産性を高め、離職を防ぐことに繋がります。

ヨーロッパで従業員エンゲージメントに関するアドバイスをしているEffectoryという企業が、従業員エンゲージメントが高いことを示す4つの指標を提示しています。組織内の誰もが職場でこのように感じられることが理想です。

  • 私はこの組織に合っていると感じる
  • 私は組織のなかで感謝されていると感じる
  • 私のマネージャーは仕事のモチベーションを高めてくれる
  • 私のチームが携わっている仕事は組織の成功に貢献している

従業員エンゲージメントを高め、才能のある人を組織に定着させる方法として「表彰制度」が挙げられています。トップパフォーマーである必要はありません。ビジネスに貢献した従業員をメンバーの前でどんどん褒めましょう。少し賞金や賞品を用意することができれば従業員のモチベーションにつながるはずです。

そのほか、職場に信頼関係があること、組織の目的やビジョンがはっきりして透明性があること、協力とコラボレーションの文化があることなどが、職場の環境を良くし、従業員の定着率を高めます。

時代のニーズに合った新しい採用活動をする

マーケティング志向の採用活動、応募者追跡システムを使った候補者の管理、リアルタイムのフィードバックやコーチングによるパフォーマンスマネジメントなど、ビジネス環境の変化に合わせて採用活動や人材育成にも新しい方法を取り入れることが必要であると著者は主張します。

ただし、新しい方法を取り入れても「信頼」や「透明性」を重視しなければ人を動かすことはできません。その点に気をつけて著者のアドバイスに従えば、市場で優位な採用活動ができることでしょう。

タイトル Exceptional Talent: How to Attract, Acquire and Retain the Very Best Employees
著者 Mervyn Dinnen , Matt Alder
出版社Kogan Page; 1st edition (2017/5/15)
ISBN-10 : 0749479736
ISBN-13 : 978-0749479732

  • 人材採用・育成 更新日:2022/05/24
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