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「ジョブローテーション」とは?導入メリットや成功事例について

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ひとつの部署だけでなく、様々な部署で働くジョブローテーション。現在注目を浴びている制度ですが、一体どのようなシステムなのでしょうか。また、ジョブローテーションの導入状況やどのようなメリットがあるのか、詳しく解説していきます。

ジョブローテーションとは

ジョブローテーションとは、企業が社員の育成を目的として、一定の期間職務を異動させることをいいます。異動させる理由は経験やスキルを身につけるためです。

組織の強化を目的とする場合は、同じ職務の人や経験がある人を異動させ、即戦力のある人を従事させます。社員の育成を目的とする場合は、職務を変えて新たなポジションで業務を経験してもらうことで、成長の機会を与えます。

ジョブローテーションの実施は、目的を決めて計画的に行うことが大切。部門の選定や期間の設定など事前に決めることが多く、ローテーションの期間は大体3〜5年で設定されることが多い傾向にあります。

新卒社員のジョブローテーションは早期育成や本配属を見極めるために行われています。本配属前に様々な職務を経験させることで、本人の適性を見極められる点がメリットです。

一方、中途社員のジョブローテーションは、ジェネラリスト育成や次世代の幹部育成のために行われるケースが多い。経営側の仕事を経験してもらい、知識を深めて視野を広げることを目的としています。

ジョブローテーションは一定期間行われるので、終了したあとは本務業務に戻るというフローが一般的ですが、本務業務以外に適性が見極められた場合は異動することがあります。このように、ジョブローテーションは将来的なキャリアプランを育成するためにも効果的です。

ジョブローテーション制度のメリット

企業側がジョブローテーションを導入するメリットは4つあります。

1.社員の適材適所が判断できる

ジョブローテーションは、ひとりの社員に様々な業務を経験させられるので、適材適所を見極めることも可能です。希望する部署だけでは本人すら気付けなかった強みや得意領域が明確になることで、パフォーマンスが向上し、組織全体の生産性アップにも貢献します。

2.社員間の交流が盛んになる

企業の大きなプロジェクトはいくつかの部署が合同で行うことが多い。しかし、あまり交流のない部署と一緒に仕事をするのは容易ではないでしょう。ジョブローテーションを取り入れることで、複数の部署に所属するため、社員間の交流が盛んになります。それにより、共同プロジェクトなど仕事の場で一緒になった際、部署の垣根を越えた連携が生まれやすい。また、社員間の交流が盛んになることで企業の一体感も強化されます。

3.新たなアイデアが生まれる可能性がある

企業にとって定着率の向上はとても大事ですが、変化のない環境で働く人の中には業務の“慣れ”が生じ、新しいアイデアが生まれにくいという課題を抱える企業も少なくありません。企業の成長には新しいアイデアが必要不可欠であるため、ジョブローテーションをすることで新しい人との関わりにより、思いもしないようなアイデアが生まれることもあります。組織の活性化はもちろん、イノベーションを生み出すきっかけに繋がる可能性は大いにあるでしょう。

4.業務の属人化を防げる

ひとつの部署で特定の社員が担当する業務があると思いますが、長期的にひとりの社員が担当することで、当人以外ではどのようなフローで業務を進めればいいかが分からなくなる可能性もあります。ジョブローテーションを取り入れることで、別の社員が業務を担当する機会が増え、仕事のパターン化や属人化の防止に繋がります。専門性の高い業務も複数の社員が対応できるようになるため、いざという時には代替要員を確保でき、部署内のバランスが保たれるでしょう。

従業員にとってのメリット

ジョブローテーションによる従業員側のメリットは3つあります。

1.能力を発揮しやすい

ジョブローテーションを導入することで、社員がもつ潜在的な能力が発揮しやすくなります。同じ部署に所属し続ける中で、ちっとも仕事の成果が得られなければ「自分には合わないな」とモチベーションが下がってしまいます。ジョブローテーションでは別の部門や業務を担当することで、自分でも気づいていない能力を発見したり、得意ジャンルを開拓したりと、個々の能力を開花させるきっかけやチャンスが豊富です。

2.様々な部署を経験できる

ジョブローテーションでは様々な部署を経験するので、社員が気分転換しやすいというメリットもあります。部署によっては単純作業を毎日繰り返すことも多いので、仕事のやりがいを感じられない人も多いでしょう。ジョブローテーションで様々な部署を経験することで、仕事のやりがいが上がり、従業員エンゲージメントの向上も期待できます。

3.ジェネラリストが誕生しやすい

ジェネラリストとは、ビジネスシーンにおいて、広範囲かつ総合的な知見や技術をもつ人材をいいます。大企業ではなくても、部署が複数ある中小企業は多く、部門ごとに様々なスキルが必要です。ジョブローテーションでは数多くの部署を経験することにより、幅広い知識や経験が身につきます。その結果、複数の専門的なスキルを身につけることも可能であり、ジェネラリストになることが可能です。

ジョブローテーションのデメリット

ジョブローテーションは企業側にも従業員側にもたくさんのメリットがありますが、その反面いくつかのデメリットもあります。ここでは、それらジョブローテーションのデメリットについて説明します。

まずは、企業側のデメリットから見ていきましょう。

1.スペシャリストの育成を妨げる可能性がある

従業員のジョブローテーションは短い期間で働く部署が何度も変わるため、専門的なスキルを持つスペシャリストの育成が妨げられてしまう可能性があります。特にモノづくりなどの専門領域では匠と言われるようなスキルを磨くために長い時間を必要とします。年月をかけて着々と技術を身につけていくスペシャリストを目指す場合、一定スパンで部署が変更になるジョブローテーションの運用は難しいでしょう。

2.人員的コストが大きい

ジョブローテーションでは部署を変更するたびに、新しく入った従業員を教育しなければなりません。また、一度教育した従業員は数年足らずで他の部署に移ってしまうので、次に入って来る人材を改めて教育しなおす必要があります。そのため、再教育する時間や人員的コストがかかりやすいというデメリットが生じてしまうのです。

3.従業員のモチベーションが下がる場合がある

従業員は何度も部署を変更するため、働くモチベーションが下がってしまう可能性があります。人によっては何度も環境が変わることに適応できない場合もありますし、自分に合った部署を離れなければならないことで退職を考える人が増えてしまうかもしれません。

従業員側のデメリット

次に、従業員側のデメリットを挙げていきます。

1.望まない異動も受け入れる必要がある

従業員にとっては、慣れ親しんだ部署を異動することにメリットを見いだせず、ジョブローテーションの制度自体を億劫に感じる人もいます。仕事が楽しく感じており、部署や人間関係が良好な部署を辞めるのは精神的に苦痛です。そのため、ジョブローテーションを行う目的をしっかりと理解してもらうことが重要になります。

2.キャリアが中途半端になってしまう

ジョブローテーションで何度も部署を変更すると、キャリアアップを目指していた社員にとっては自分のキャリアが中途半端になってしまうと落ち込むケースもあります。専門的なスキルを身につけることに情熱を燃やす方にとって、ジョブローテーションで違う部署に異動することは、専門性を身につけられなくなるため、モチベーションの維持に苦戦するかもしれません。

3.働く場所が何度も変わることでストレスを蓄積する方も

様々な部署異動を体験する中で、新しい出会いや業務に刺激や喜びを感じる方がいる一方で、環境の変化に適応することが苦手な方もいます。ジョブローテーションという“働く環境やミッションが変化する”ことに恩恵を得られる社員でなければ、それは大きなストレスを感じてしまいます。

ジョブローテーション制度の導入について

ジョブローテーションを導入する方法は、新人社員・ミドルクラス・管理職で変わります。

新人社員の場合

新人社員はジョブローテーションで適材適所の判断ができるので、それに合わせた計画や制度をプランニングするとよいでしょう。新卒社員は会社に慣れていないため、精神的なサポートが必要です。困ったことがあったら先輩や人事担当者がサポートに入る「メンター制度」などを取り入れると効果的でしょう。

ミドルクラスの場合

ミドルクラスのジョブローテーションは次代を担う管理職の育成を目的として実施するケースが多い傾向にあります。また、ミドルクラスは入社以来、何年も同じ部署で働いていることも多いので、ジョブローテーションによって会社全体の業務を知るチャンスにもなります。また、ミドルクラスの場合は配属先が変わるたびに部下も変わるので、性格や思考の異なる部下への対応力やマネジメントを育むうえでも有益な経験が得られるでしょう。

管理職の場合

管理職のジョブローテーションは、企業の将来を担う幹部育成の目的を持っています。今まではひとつの部署で部長としてまとめる役割を持っていましたが、次のステップは企業の経営に関わる立場へ変化します。管理職のジョブローテーションを行う場合、事業について広い視野を持てるよう、経営層に近い部門や、売上などに苦戦を強いられている部門や支社に配属するのもひとつの手です。

ジョブ型雇用とジョブローテーションの違い

「ジョブ型雇用」とは、企業と従業員が職務内容や勤務地、勤務時間をあらかじめ定義して雇用契約を締結する雇用形態です。ジョブディスクリプション(職務内容定義書)に定められた職務内容、責任範囲で完結するため、転勤や部署異動はありません。欧米諸国で転職や雇用が一般的なのは、ジョブ型が主流の雇用形態だからです。

一方、ジョブ型雇用と対比されるのが「メンバーシップ型雇用」。年功序列や終身雇用が普及している日本ならではの雇用形態です。メンバーシップ型の企業で多く取り入れられているのが「ジョブローテーション」制度。職務が限定されていないので、転勤、部署移動を繰り返しながら社内の幅広い部署で経験を積んでいきます。社員は組織横断的な視点と柔軟性が養われ、幹部候補社員として育っていきます。企業としては、こうした人材を戦略的に配置することで強い組織を作っていけるのです。

「年齢や学歴で仕事を決める」のではなく「仕事に合わせた採用をする」ジョブ型雇用を行う目的として、専門性の高い人材を採用することが挙げられます。特に効果的なのは、特定のスキルや資格を必要とする職務内容がある場合。決められた範囲内の業務に従事させることで、専門領域におけるスペシャリストとしての育成が可能です。逆に専門職に特化させず、入社後に適材適所を見つける、あるいは部署間でマルチに活躍できる総合職のようなポジションを採用するケースでは、ジョブローテーションが効果的でしょう。

ジョブローテーションに向いている業界や職種

ジョブローテーションに向いている企業に共通する特徴

1. 幅広い事業展開と多様な部署構成

ジョブローテーションを導入しても異動・転換できる職種が少なくては、機能しません。そのため、社員が複数の部署で経験を積めて、部署間の連携が図れる環境であることが大前提です。さらに各部署の関連性が高いほど、それぞれの業務を俯瞰する視点が養われ、課題解決やサービスなどの再構築に好影響を与えるでしょう。

2. 人材育成にコストを割くことができる

ジョブローテーションを導入する目的のひとつに、「人材育成」があります。人材育成(キャリア形成)の効果を最大限に発揮するためには、育成の期間や費用の確保が必要不可欠。優先度高く、それら人材育成に対してコストを割ける余力があれば、中長期的なジョブローテーションの効果が期待できます。

3. 年間を通して離職率が低い

ジョブローテーションを行う際のデメリットとして挙げられるのが、異動による一時的な業務支障です。新たな部署に異動したメンバーが業務に慣れ、成果を出すまでには一定の時間がかかります。そのため、育成した社員が退職してしまっては、いつまで経ってもジョブローテーションは機能しません。つまり、年間を通した離職率の低い企業ほど、ジョブローテーションに向いていると言えるでしょう。

ジョブローテーションを成功に導くポイント

ジョブローテーションを成功へと導くためには、「キャリアデザイン」を社員一人ひとりが描けているかどうかがポイントになります。

キャリアデザインとは、個人がなりたい姿(理想像)を掲げ、その実現に向けた計画を設定すること。企業側が、ジョブローテーションを実施する目的は状況によって異なりますが、トップダウンで実施するのではなく、まずは対象となる社員の意思を確認しつつ、キャリアデザインとリンクした計画を立てることが重要です。

そうすることで、受動的ではなく能動的なスタンスで新たな部門の仕事に着手でき、個々のモチベーション向上にも繋がります。ぜひこの機会に、企業と社員が共に目的を実現するWin-Winの関係を築く方策として、ジョブローテーションを取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • 労務・制度 更新日:2022/05/10
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