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採用ブランディングとは?注目背景やメリットを解説

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経営者、人事担当者であれば多くの方が「採用ブランディング」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。これは文字通り、企業の採用活動をブランディングするための活動であり、昨今のビジネスに欠かせない人事戦略になりつつあります。

しかしながら、具体的にどのように取り組めばよいのか、あるいはそもそも採用ブランディングとは何を意味しているのか、実は採用ブランディングについて概要的なことしか知らないという方は多いはずです。

本記事ではそうした方々に向けて、採用ブランディングとは何なのかを総合的に解説していきます。採用ブランディング。果たしてそれは、企業とその人事にどのようなソリューションをもたらすものなのでしょうか?

採用ブランディングとは

「ブランディング」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?恐らくは多くの方が、企業が販売する商品やサービスの価値向上、あるいはブランドそのものの認知度アップを想起されるかと思います。採用ブランディングの大枠もこれらと同様です。違いは何を対象とするか。もちろん、採用ブランディングでは企業の採用活動の価値向上を目指し、求職者視点から見て「この会社で働いてみたい!」と思わせることが目標になります。もっとも、厳密な最終目標を設定するとなれば採用ブランディングを通じて優秀な人材を確保し、かつ自社内において継続的に成果を上げてもらうことになります。

採用ブランディングと聞くと難しく考えられがちですが、やるべきことは商品やサービス、ブランドの価値や認知を向上させるためのそれと変わりありません。前述のように、ブランディングの対象が採用活動だということが大きな違いになります。細かいタスクを挙げれば、従来のブランディングと異なる点は多いものの肝心なのは難しく考えず、企業がこれまで取り組んできたブランディング活動と変わらないという認識を持つことです。

採用ブランディングによって大きな効果が得られる企業というのは、ニッチな市場で日夜戦っている企業や中小企業です。それらの企業は市場や広い範囲での認知度が低いことから、人材獲得市場において常に劣勢を強いられています。しかし、仕事のやりがいは事業の大小で決まるものではなく、求職者にとって魅力的な環境が揃っている企業は多数存在します。問題はどのようにして注目してもらうか?それが大切です。

採用ブランディングが注目される背景

売り手市場が長らく続いている日本企業の人事。数年前には「War for Talent(ウォー・フォー・タレント/人材獲得戦争)」という言葉も流行し、人事における採用活動が事業成長に如何なる成長を与えるかについて議論されてきました。今日の人事担当者は、単なるコストセンターの職員ではなく、事業成功に向け戦略的な採用活動を展開すべき重要なポジションに着かされているのです。それでは、採用ブランディングが注目されている背景を、客観的なデータを参考にしながらご説明します。

厚生労働省が毎年統計を取っている一般職業紹介状況(職業安定業務統計):雇用関係指標によると、2019年度におけるパートを含む一般有効求人数は3,195万5,811件となっています。これに対し、同年の月間有効求職者数※は2,033万8,494人となり、求職者数に対して求人数が大きく上回っている状況です。

※月間有効求職者数とは、「前月から繰越された有効求職者数」と当月の「新規求職申込件数」の合計数(厚生労働省 用語の定義より抜粋)

War for Talent、人材獲得戦争が起こるのは必至といえるでしょう。こうした状況の中で企業が優秀な人材を獲得する、あるいはより多く求職者の母集団を集めるためには、「自社の事業や魅力を最大限にアピールする」ことが何よりも大切です。採用ブランディングとはそのための、いわば戦略的採用活動の一環なのです。

採用ブランディングを行うメリット

採用ブランディングには様々なメリットがあります。それらをしっかりと引き出すためには、ブランディングに取り組む経営者や人事担当者自身がメリットを熟知し、その実現に向けた活動を継続的に続けることが肝要です。では、具体的なメリットを確認していきましょう。

求人に対する応募者数の増加

日本全土に向けて自社の事業内容や職場環境、優遇制度などをアピールすることで多くの求職者から注目されることになります。これはブランディング効果によるもので、企業としての価値が向上したと考えてよいでしょう。求人に対する応募者数が増加することは、優秀な人材がより多く集まりやすいということでもあり、売り手市場が続く人事市場において他社よりも優位に採用活動を展開できるのは最大の利点です。

採用活動コストの削減

採用ブランディングという、これまでにない戦略的人事を展開するのですから、短期的に見るとコストは増加するでしょう。主にブランディングを目的としたメディア運用や広告出稿、あるいは外部コンサルタントへの依頼、採用活動効率化のためのサービス利用などのコストが発生します。しかし長期的に見た場合、採用活動コストを大きく削減できる可能性があります。特に新規・中途採用者1人当たりの獲得コストに換算すると、これまでにない低コストで優秀な人材を獲得している企業も確かに存在します。

採用後のミスマッチの抑制

採用活動を展開するだけで大きなコストがかかるわけですから、採用後のミスマッチは企業にとって死活問題に等しいでしょう。従来は「一定の割合で起こるもの」と目を瞑ってきた方も多いかもしれません。もしも、そのミスマッチを無くせるとしたら?大幅なコスト削減と生産性向上に繋がるのは間違いありません。採用ブランディングでは自社の事業内容や職場環境等をオープンにすることで、求職者とのミスマッチを抑制し、なおかつ企業に対するロイヤリティ(忠誠心)を高める効果があります。

採用ブランディングがもたらすデメリット

「採用ブランディングは良い事づくめでデメリットはない」と言いたいところですが、何事もメリットとデメリットは表裏一体。採用ブランディングにもデメリットはあります。ただし、大切なのはデメリットを知り実施可否を考えるのではなく、対策を練りメリットを最大限引き出すための工夫を凝らすことです。これを念頭に、採用ブランディングのデメリットを確認していきましょう。

ブランディング効果が発揮するまでに時間がかかる

採用ブランディグに限った話ではなく、ブランディングという活動には効果が現れるまで一定の時間がかかります。世間に対して何かをアピールするという作業、想像しているよりも地道な作業が必要なのです。具体的な期間については企業によって異なりますが、採用ブランディングを途切れる事なく継続すれば、12ヵ月あれば何らかの効果が表れるはずです。さらに採用ブランディングの効果を確立するには、そこから1〜2年ほどの時間がかかるでしょう。「愚直に継続すること」、それが採用ブランディングを成功させる秘訣となります。

間違った情報発信は逆効果になる

採用ブランディングに失敗してしまった企業の中には、間違った情報を発信し続けたことにより、採用後のミスマッチが起こり採用活動コストも増えてしまった等の事例があります。原因は主に、誇張的な情報発信です。求職者の多くは企業が発信する情報をそのまま受け入れているので、採用後に強いギャップを感じると当然ながら離職の原因になります。また、間違った情報発信により企業ブランドを傷つける可能性もあるため、採用ブランディングは慎重さを持って取り組まなければいけません。

採用ブランディングの手順や方法について

ブランディング手法についてすでに確立されている企業の場合、改めて手順や方法を確認する必要はないでしょう。しかし多くの企業は独自のブランディング手法を持っておらず、ゼロからのスタートになるかと思います。採用ブランディングにはどのような手順や方法が必要なのか?ここで大まかな流れをご説明します。

  • 自社の魅力を再発見する
  • ターゲットとする人材像を浮かび上がらせる
  • 情報発信の手段を検討する
  • コンテンツを用意する
  • 採用の振り返りを行う
  • 求める人材が集まる組織へと変わる

自社の魅力を再発見する

どの企業にも、外部に誇れるような魅力があるはずです。「うちの会社にそんなものはないよ」と悲観的に考えてしまう方もいるかもしれませんが、問題ありません。魅力は必ず1つや2つあります。どうしても見つからないのならば、作ればよいのです。ポイントは事業や職場環境において、客観的な事実に基づいた明確な魅力を挙げることになります。悪い例は、「仕事にやりがいがある」「ワクワクしながら仕事ができる」などの抽象的なものです。具体的な魅力を探すためにはSWOT分析などのフレームワークを活用することをお勧めします。SWOT分析とは、社内外それぞれの環境における、強み (Strengths)・弱み (Weaknesses)・機会 (Opportunities)・脅威 (Threats) という4つの要素を導き出し、現状分析を実施するフレームワークです。これによって、競合優位となるポイントや経営資源が明確になります。

ターゲットとする人材像を浮かび上がらせる

「働いてくれさえすれば誰でもいい」なんて企業は皆無でしょう。当然、自社にとって理想となる人材像があるはずです。最初は大まかにでも構わないので、採用ブランディングを通じてターゲットとする人材像を浮かび上がらせてみましょう。ここでは、ブランドマーケティング等で使用されることが多いペルソナのフレームワークを取り入れるとブランディングが円滑に進みます。この“ペルソナ”とは、求める人材(ターゲット)のことですが、属性のみならず現在の仕事や生活面、金銭感覚、家族構成や交友関係など、現実的な人物設定を行うことがポイントです。このように、リアリティのある人材像を創り上げることで、自社の魅力や価値の中でも、何をどのように訴求すれば伝わるのかが見えてきます。

情報発信の手段を検討する

自社ホームページ、ブログメディア、採用メディア(各種求人媒体など)、ウェブ広告、SNSなど今では多彩な情報発信手段で溢れています。ターゲットとなる人材像が確定したら、数ある情報発信手段の中から確実に自社の魅力をアピールできるものを選択しなければなりません。幅広くアピールしたい場合、ブログメディアやSNSが最適でしょう。ほとんどの求職者はウェブ検索やSNSを活用しているので、比較的早期段階でのブランディング効果が期待できます。

コンテンツを用意する

情報発信手段によって用意すべきコンテンツは異なります。いずれにせよ、自社の魅力を一方通行的にアピールするだけでなく、求職者の興味を引くような、有益なコンテンツを用意することが重要です。コンテンツ作成を内製化できない場合、現在は多様なアウトソーシング方法が揃っているので、予算やブランディング手法を考慮しながら検討されると良いでしょう。

採用の振り返りを行う

用意したコンテンツによって得られた効果(応募数や採用数)の振り返りができるシートなどを作成して、採用状況を可視化するとよいでしょう。例えば、情報発信の手段として選んだ手法や媒体からのエントリー数や歩留まり率といった“数値”で振り返りを実施。そうすることで、エビデンスに基づいた解決策を見出すことができます。

求める人材が集まる組織へと変わる

採用ブランディングを実施する目的は、企業が求める人材(求職者)が「この会社で働いてみたい!」という思いを抱き、入社してくれること。そのためには、継続的に自社の魅力や価値をアピールし、コンテンツの効果を見直しつつ、求職者に理念や価値を浸透させることが重要です。この繰り返しによって求職者の中でも口コミなどにより認知度が上がり、いずれ“人材が集まる企業”へと変わっていくでしょう。

採用ブランディングの事例

人事における戦略的な採用活動は海外の先進企業が中心になっているイメージが強いかもしれませんが、日本国内においても成功事例、面白い事例がいくつもあります。ここではその一部をご紹介しましょう。

アグレッシブな姿勢をアピールし、挑戦心旺盛な新卒者をターゲットに

ベアリング(軸受)の製造販売市場におけるトップメーカーである日本精工株式会社では、「新しい動きをつくる」というメッセージを主軸に置きながら、未来を動かすアグレッシブな姿勢をアピールして挑戦心が旺盛な新卒求職者をターゲットとした採用ブランディングを展開しています。採用サイトではトップページでコンセプトを全面的に押し出し、事業、職場、人材を魅力的な形で紹介しています。また、積極的に取り組んでいる女性活躍推進もアピールすることでダイバーシティを軸に優秀な人材を獲得する施策も展開しているようです。

事業に対する姿勢を熱く伝えるメッセージ動画の活用

工業用ゴム・プラスチック製品の製造販売等を手がける株式会社シバタは、従業員数500人弱の中小企業です。同社は動画制作会社に依頼し、自社の事業に対する姿勢、従業員に対する姿勢、社会に対する責任をメッセージ仕立てにした実写動画を使用し、採用活動にあたっています。中小企業には従業員や顧客に密着したビジネスという魅力があり、それを全面的に押し出した内容になっています。具体的な採用ブランディング効果は明らかになっていませんが、近年では動画コンテンツを活用したブランディング活動が人気を集めていることは確かです。

現代社会にマッチした採用ブランディング

採用ブランディングの手法に明確なルールは設けられていません。企業の数だけブランディング施策があり、アイディア次第で可能性は無限に広がります。現代企業が採用ブランディングに取り組まない理由はない、と言っても過言ではないでしょう。皆さんの企業にも、求職者に対してアピールできる魅力はたくさんあるはずです。自社を改めて見つめ、魅力を再発見し、積極的にアピールすることで激化する人材獲得戦争の勝者となりましょう。

一般職業紹介状況(職業安定業務統計):雇用関係指標
厚生労働省 用語の定義

  • 人材採用・育成 更新日:2022/11/08
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