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アメーバ経営とは? 導入方法、そのメリット、デメリットを解説

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アメーバ経営とは、会社組織をアメーバ(細胞)と見立て小集団に細分化し、それぞれが、独立採算の会社のように運営する経営管理手法です。経営者意識を持ったリーダーを育て、組織の末端まで、収支を意識する集団を形成し会社を経営します。当記事では、アメーバ経営の定義や、導入の仕方、メリット、デメリット、注意点などを解説します。

アメーバ経営とは

「アメーバ経営」とは、京セラの稲盛和夫名誉会長が、自らの会社経営体験から見出した経営管理手法です。アメーバ経営を実践している京セラは、1959年の創業以来赤字を出したことがなく、稲盛氏が経営に携わったKDDIの前進である第二電電や、経営破綻した日本航空(JAL)の再建でも用いられた実績のある経営手法です。 京セラが、創業5年を経過し、従業員300名を超えて組織が大きくなったとき、すべての部門を経営者一人が管理することに困難を感じた稲盛氏は、「大きくなった組織を小さく分けて中小企業の連合体にすればよい」と発想しました。この発想がアメーバ経営の原点となります。

アメーバ経営では、組織をアメーバ(細胞)に見立てて、5~10人程度の小集団に細分化し、その小集団にリーダーを任命し、各アメーバをひとつの企業とみなし、独立採算制で運営する経営管理手法です。 この管理手法は、各アメーバの成績を日々明確にし、経営者意識を持ったリーダーを育て、また、社員の末端まで、組織の収支を意識する体制をつくります。

アメーバ経営と全員参加経営

このアメーバ経営の目的は、「全員参加経営」を目指すことにあります。 「全員参加経営」とは、全従業員が経営者の意識を持って、収支や事業運営を考える組織を作ることです。 「稲盛和夫OFFICIAL SITE」では、アメーバ経営の目的として、「全従業員が、神輿を担ぐように会社の発展のために力を合わせて経営に参加し、生きがいや達成感を持って働ける『全員参加経営』を実現します」と明示しています。

アメーバ経営の導入の仕方

組織を細分化し独立採算制を導入する

アメーバ経営の基本は、細分化と独立採算の採用です。組織をアメーバ(細胞)と見立て5~10人程度の小集団に細分化し、各組織をひとつの会社としてみなします。

数字の結果を可視化する

独立採算制を採用するにあたり大切なことは、収支や成果を明確に、自分のアメーバ内や他のアメーバにも共有することです。

アメーバごとに、仕事の成果を時間単位でどれだけ利益を生み出しているか示す「時間当たり付加価値」として計算し、アメーバ単位や個人単位での収支を公開します。これにより、部署間や個人の比較が明確になり、従業員は、自分の収益性や、状況を認識し、創意工夫や自発的な意思行動をしていくことに繋がります。

毎日情報を開示する

また、収支実績を毎日公表することも大切です。月単位や四半期ごとの結果を見るのではなく、日々、収支を公表、共有することで、目標予算の達成を逐次確認し、業務でやるべきことや対策を素早く意思決定します。

リーダーに権限を委任する

適切なリーダーを選び、リーダーに権限を委任することも重要です。事業計画の作成、予算の執行、実績管理、労務管理、資材発注、在庫管理、経費管理などの経営全般をリーダーに任せることにより、リーダーが経営者として責任を持った行動や意思決定を行える体制をつくります。 また、現場に権限をおろすことにより、上層部への決裁過程を減らし、現場で臨機応変に判断が行われることにより、事業のスピードが加速します。

フィロソフィ(哲学)の徹底

アメーバ経営は、現場に権限を委任します。現場のリーダーには、会社経営者なみの裁量と自由度が託されます。故に各リーダーの価値観や志向によって、各アメーバがバラバラに動き、会社が意図する目標とは異なる方向に進んでしまう可能性があります。

これを防止するために、企業にとって何が大切なのか「フィロソフィ」を定義します。 稲盛氏は、「フィロソフィ」とは「公平、公正、正義、誠実、忍耐、努力、利他」などの言葉で表される、人間として正しい判断基準と定義しています。

企業の進む方向性を示す「企業理念」という言葉がありますが、「フィロソフィ」は、行動を決定する根拠となる価値観やルール、行動規範に近い概念です。 アメーバ経営を導入する企業は、自社に適した「フィロソフィ」を定義する必要があります。

JALの事例では、運航、整備、客室、空港、貨物など現場の各部門から10人のリーダーが選ばれ、現場の声を反映させながら「JALフィロソフィ」を作り上げました。「すばらしい人生を送るために」から始まり、40項目にわたる詳細なフィロソフィが記述されています。

作り上げたフィロソフィは、充分な教育の時間と、日々反復を行うことで、全社員に浸透させ、従業員が迷わず正しい判断をし、同じ方向に進めるようにする必要があります。

アメーバ経営のメリット

従業員の収支に対する意識の向上が高収益に繋がる

日々の数字の可視化と共有は、従業員の経営への参加意識と収支数字への意識を高め、目標の達成率をあげることができます。個々の従業員が高い目標を達成することで、最終的には全社の目標達成や高収益化に繋がります。

事業スピードの加速

経営意識を持ったリーダーへの権限委任と、独立採算による部署運営により、上層部への決裁過程を減らし、現場での臨機応変な意思決定が可能になり市場の変化に対応し、事業のスピードをあげることができます。

経営者の分身をつくる

リーダーに事業を任せ、ひとつの会社を運営する様な権限を持たせることで、リーダーは、 経験を積み、多くの経営者候補を育成します。

アメーバ経営を行う上での注意点やデメリット

組織が縦割りになる

各アメーバが別会社のようにふるまうことで、縦割りの組織になり、ときにライバルのような関係が発生し、セクショナリズムを生み、部署間の横連携がとりにくくなる場合があります。

これにより、全社的なシナジー効果が発揮しにくくなるので、不平、不満がでないように、経営陣には適切に利害関係を調整する能力が求められます。

企業統治のバランスが必要

アメーバ経営のポイントは、部署を独立採算にして、現場に経営の権限を与えることです。上層部が権限を現場に渡さない場合は、アメーバ経営は機能しません。また、権限を与えすぎてしまうと、各アメーバがバラバラな行動を起こしてしまう可能性もあります。従業員へのフィロソフィの徹底に加えて、経営陣は、企業統治のバランス感覚が求められます。

ワークライフバランスへの配慮

アメーバ経営は、「時間当たり付加価値」を組織、個人で算出し、共有します。この追求により、社業の好循環が生まれるのですが、一方で、組織間、個人間の競争が生まれます。 日本人ならではの「組織に迷惑をかけられない」という思いから、時間効率を高め、成果をあげるために、「休暇がとりにくい」「時間外労働してしまう」などの、本来あってはならない状態が発生しないように充分なケアが必要です。

ここまで、アメーバ経営の定義や、導入の仕方、メリット、デメリット、注意点などを解説してきました。

日本を代表する経営者・稲盛氏が提唱した「アメーバ経営」は、多くの経営者から支持を集め、また実績も残しています。しかし、導入にはメリットもあれば、デメリットもあります。 昭和の時代から平成をへて令和に変わり、働き方改革が唱えられる社会の中で、アメーバ経営の管理手法を、自社の目指す方向や状況にあわせて、アレンジをして取り入れましょう。

  • 経営・組織づくり 更新日:2022/03/24
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