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「オワハラ」(就活終われハラスメント)のリスクと企業側の防止策

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「オワハラ」とは、企業が内定を出したい学生に対して、進行中の他社への就職活動を中止させて、自社に就職をするように働きかける行為です。この記事では、オワハラの法的リスクや防止策などを企業の視点で解説します。

オワハラ(就活終われハラスメント)とは

「オワハラ」とは、「就職活動終われハラスメント」の略称です。

企業が採用したいと思った学生に対して、現在進行中、もしくはこれから受ける予定の就職活動の中止を迫り、就職活動を終了させて、学生の選択肢を失わせて自社に就職するように働きかける行為です。

具体的には、「内定を出すから、就職活動を終わりにしなさい」と指示を出したり、「いまここで、内定辞退の電話をかけるように」と迫ったり、研修などの名目で、学生のスケジュールを抑えて、就職活動を物理的にできなくする行為です。 選ばれ採用される立場の学生は、早く、そして一つでも内定が欲しいものです。ここで内定を断って、就職活動を続けても、より良い会社の内定が採れる保証はありません。その弱みにつけこむ形で、学生の職業選択の自由を奪う行為として、社会問題となっています。

オワハラが生まれた背景

オワハラが生まれた背景は、日本の新卒一括採用の問題が大きな要因の一つです。

就職活動の早期化・長期化の問題

かねてより、優秀な学生を他社よりも早く確保したい企業側の狙いで、大学生の就職活動は、早期化かつ長期化する傾向があり、学生の本分である学業に集中できない環境が慢性的に続いていました。

対して、大学側は、経団連(経済団体連合会)に所属する大企業に対して、学校教育が正しく行われるように行き過ぎた就職活動の是正を求めてきました。

この状況を問題視した安倍晋三内閣総理大臣は、経団連に働きかけ、就職活動のルールを定めるように要請しました。こうして、2016年度以降卒の就職解禁時期を3カ月後倒しにし、大学3年生3月解禁、大学4年8月1日以降採用試験を行う、新たな就職活動のルールが定められました。

このルールは自主規制のため、経団連に所属している大企業や、イメージを大切にしているブランド企業は、提示された就職活動のルールに基づくスケジュールで採用活動を行いますが、ほとんどの企業は、優秀な学生をより早く確保すべく、ルールよりも早い採用活動を実施しました。

企業の心配がオワハラを生む

遅れて、大企業が採用活動を解禁すると、先行して内定を出していた各企業は懸念をいだくようになります。

「ブランド力があり待遇も良い大企業が採用を始めると、学生が流れてしまう」
「必要な人員も確保できず、かけたコストも無駄になってしまう」
「学生が他企業に流れてしまうことを阻止できないか?」

こうした、企業の心配が「オワハラ」を生む温床となりました。

オワハラの3つの傾向

オワハラには、「交渉型オワハラ」、「束縛型オワハラ」、「同情型オワハラ」、「脅迫型オワハラ」の4つの傾向に分類されます。

交渉型オワハラ

対面したその場で、学生に対して、断りにくい状況を作り、即断の交渉を迫る方法です。複数人で一人の学生に迫り選択の余地を与えない圧力をかけるケースもあります。

【事例】

  • 最終面接でその場で内定を出し、内定辞退の電話を目の前でかけさせる。
  • 研修などの場で、入社承諾書などをその場で提出するように迫る。

束縛型オワハラ

研修などの会社の行事をいれて、学生のスケジュールを束縛し、就職活動ができない状態を作ります。

【事例】

  • 解禁日周辺の日程を研修で全て抑えてしまう。
  • ライバル企業の試験日に研修の予定をいれる。
  • 研修旅行などを企画し、学生を軟禁する。

同情型オワハラ

食事会やイベントで、先輩社員との交流をつくり、プライベートも含めた人間関係を築くことで、断りにくい関係をつくります。

【事例】

  • 泣き落とし作戦を行う。
  • 親しくなった社員に交渉を行わせる。

脅迫型オワハラ

強圧的な言説で、学生を脅し、従わせる方法です。

事例

  • 賠償請求をチラつかせる。
  • 「今後、あなたの大学の後輩を採用しない」など周囲へのいやがらせをほのめかす。

オワハラが生む企業側のリスク

企業にとって人材が獲得できないことは大きな問題です。事業計画も大きく狂い、企業の業績に影響します。一方で、オワハラ行為は、企業側に大きなリスクを発生させます。ここでは、オワハラが企業に与えるリスクを解説します。

企業ブランドの毀損

学生は消費者でもあります。その企業に良いイメージを持つことはできないでしょう。また、SNSなどでオワハラが拡散された場合、企業の悪評が広まる可能性があります。結果、顧客を失い、また、入社希望者が減少するリスクがあります。

モチベーションの低下

オワハラの末に入社した人材は、会社への信頼を失っています。せっかく採用しても、想定のパフォーマンスを発揮せず、戦力になる前に、早期に離職してしまう可能性があります。

内定とオワハラの法的問題

学生が内定を受託していた場合、内定者と会社の間で労働契約が成立していると解釈されます。ただし、「始期付解約権留保付労働契約」とされ、「始期」、つまり労働開始日(例えば4月1日など)が定められた契約になります。つまり、「始期」まで、労働契約には縛られず、解約権が留保されているとみなします。

また、日本国憲法第22条第1項では、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と記され、職業選択の自由は権利として保証されています。

上記の要素から、内定を受託したことにより、「始期付解約権留保付労働契約」は結ばれていますが、内定辞退を申し出た学生に対して、強引な手段を用いて、強要した場合、「オワハラ」行為は違法とされる可能性があります。

上記とは別に刑法上の犯罪(脅迫、暴行、強要)があった場合は、違法として処罰の対象となりますし、民事訴訟のリスクも排除できません。

これらの観点から、オワハラに該当する行為は、法的リスクがあることを念頭におきましょう。

オワハラの防止策

経営陣から現場まで、「オワハラ」のリスクに対して共通認識を持つ

優秀な人材はたしかに欲しいし、人員が足りなければ、事業計画の達成も厳しくなります。しかし、会社を去る人材をつなぎとめておくことはできません。経営陣から現場まで「オワハラ」は企業にとって利のない行為であり、法的リスクがあることを共通認識として持つことが重要です。

現場に内定辞退の責任を追わせない

「計画人員を確保できなかった」

「採用ができなかったことで事業計画が狂ってしまった」

「採用コストが無駄になった」

これらの採用担当者にかかるプレッシャーが現場の「オワハラ」を誘発する可能性があります。

会社にとって、人員を確保できないことは痛手ではありますが、内定辞退の発生は、会社の魅力の問題ととらえて、採用担当者には内定辞退に関する責任を問わない体制をつくりましょう。

コストと時間と熱意をかけて獲得した人材が、あっさり内定辞退してしまうと、企業にとって大きな痛手です。しかし、意思のない人材を「オワハラ」でつなぎとめて無理に働かせても、企業にはプラスになりません。リスクも伴います。 経営層から、現場まで、「オワハラ」に関する共通認識を持ち、また、学習機会を設け、「オワハラ」が発生しない組織をつくりましょう。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/03/29
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