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キャリア・アンカーを知り強い組織作りに役立てよう

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キャリア・アンカーとは、個人のキャリアを選択する際の軸になる「重要な価値観」を分類する指標です。キャリア・アンカーは個人が適職を探すための指針になる一方で、企業側もキャリア・アンカーを活用することで、職務のミスマッチを防ぎ、パフォーマンスの向上、離職率の低下など、より良い職場環境を形成することができます。

キャリア・アンカーとは、キャリア選択で軸となる価値観

キャリア・アンカーは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の組織心理学者エドガー・ヘンリー・シャインが提唱したキャリア理論の概念です。

アンカー「Anchor」は、船の錨の意味を指します。アンカーがなければ、船はとどまることができずに漂流してしまいます。アンカーがしっかりしていれば、船はさまざまな港へ寄港しながら航海できます。キャリア・アンカーとは、長い仕事人生の中で、漂流せず、安心して留まるための基点となる軸を意味しています。

よく聞く言葉に、キャリアビジョンがありますが、キャリアビジョンは、5年後や10年後の理想の姿を自由に思い描くことです。一方で、キャリア・アンカーは、学術的に分析された定義の中で自分の当てはまる分類を見つけていくことになります。

キャリア・アンカーは、後述する3つの要素をベースに8種類のカテゴリーに分類され、これを分析することで、キャリアで、自分が何を大切にしているのか、自分らしく生きるための軸、譲れない価値観を知ることができます。

キャリア・アンカーが注目される背景

日本の採用制度は、新卒一括採用を軸として、個人の価値観ではなく、職場の価値観に合わせる一律のゼネラリスト育成をしてきました。

しかし、グローバル化が進み、転職市場も活性化していく中、労働者も自分の価値観にあった職場を求める傾向が強くなってきています。

また、企業側は、キャリア・アンカーを元にした人事制度を運用することで、従業員の価値観にあった職場環境を提供し、ミスマッチによる離職防止や、モチベーションの向上を狙う目的があります。

キャリア・アンカーの診断方法

キャリ・アンカーの診断方法は、以下の2つがあります。

アンケートの設問に答える

キャリア・アンカーは、提唱者のエドガーが用意した、簡単なアンケートに答えることで診断できます。 各設問に「当てはまる」「だいたい当てはまる」「どちらかというと当てはまる」「どちらかというと違う」「だいたい違う」「違う」などの6つの選択肢から「直感的」に選んでいく形式です。

第三者の客観的な評価を知る

アンケート以外には、第三者からの評価をベースにする方法もあります。 同僚や友人に手伝いをお願いし、一緒に仕事をしている中で、「どのような場面で活躍しているのか?」、「どのような性向があるのか?」第三者の視点で客観的な評価をしてもらい 自分がどのタイプに当てはまるのか分類してみましょう。

キャリア・アンカーの8分類

キャリア・アンカーは3つの「What」をベースに8種類の「How」に分類されます。 ここでは、8種類の分類の特長を解説します。

3つのWhat

キャリアを考える要素として、最初に「What」の価値観があげられます。

  • 動機:自分は何がしたいのか?
  • 価値観:自分は何をしているときに価値を感じるのか?
  • コンピタンス:自分は何が得意か?

どれもキャリアを考えるのに重要な要素です。 キャリア・アンカーでは、さらに深堀りし、上記の「What」に加えて、「どのように働きたいか?」、つまり「How」を見つけることがポイントです。

キャリア・アンカーが定義する8つの価値観

エドガーは、労働者にアンケートをとり「How」の調査分析を行いました。その結果、あらゆる職種の労働者は、8種類の「How」に分類できると定義しました。以下「キャリア・アンカー」を分類する価値観です。

1.経営管理能力(General Managerial Competence)

経営や管理に興味を持ち、出世欲が高い特長を持つタイプです。責任を積極的に引き受け、より大きな仕事や収入、地位を得ることにやりがいを感じます。 専門的な知識や能力の必要性は認めつつ、自身は、広く経験を得たいゼネラリスト志向を持っており、別職種への異動も知見を得るためと考えて受け入れます。

2.専門・職能別能力(Technical/Functional Competence)

自分の得意とする分野の専門性を高め、仕事に活かすことに価値を見出します。 専門分野に関して、最新情報を常にキャッチし、学習意欲も高く、現場での仕事を望む傾向が強く、管理や指導者としても能力を発揮します。一方で、専門外の業務に興味がなく、異動した場合は、モチベーションとパフォーマンスが下がってしまう傾向があります。

3.自律・独立(Autonomy/Independence)

自分の責任とルールで行動することを好み、裁量が大きく、成果主義の職場に向くタイプです。組織やルールに縛られることを嫌い、マイペースで仕事をすることで成果をあげます。集団行動よりも一人での行動を望む傾向があります。

4.保障・安定(Security/Stability)

将来の安定を重視し、安心して働くことを望むタイプです。雇用が安定している大企業や公務員などで働くことを望み。ハイリスクで高収入を得るよりも、リスクを回避し安定した収入を得ることを好み、出世欲は低い傾向があります。変わらない環境を望むため、異なる職務への異動はストレスになります。

5.起業家的創造性(Entrepreneurial Creativity)

独創性を持ち、リスクを恐れずに克服して「成功」することに価値を見出すタイプです。芸術家や起業家に多く、新規事業や新しい価値を創造することに能力を発揮します。

6.奉仕・社会貢献(Service/Dedication to a cause)

世の中を良くすることに価値を見出します。報酬や地位、労働環境よりも、仕事の内容(世の中に役立つか?)を重視し、医療や福祉、教育、聖職者などの分野を志望する傾向があります。

7.純粋な挑戦(Pure Challenge)

課題を克服する、ライバルと競争する、などの「困難に打ち勝つこと」に価値を見出すタイプです。ルーティンで安定した退屈な業務を好まず。刺激や競争のあるハードでチャレンジングな環境で力を発揮します。

8.ワーク・ライフバランス(Lifestyle)

自分のライフスタイルを重視する価値観です。家族との時間や趣味などのプライベートを大切にします。無駄な残業を好まず、休暇の取得しやすさや、育児休暇制度など、ライフスタイルを維持できる職場環境を好みます。

キャリア・アンカー8分類の長所と短所

長所 短所
経営管理能力 出世意欲が高い。 出世に関係のない業務に興味が薄い。
専門・職能別能力 特定の分野のプロとなる。 特定の分野以外の業務に興味が薄い。
自律・独立 自律的に行動できる。 束縛されると能力を発揮できない。
保障・安定 報酬の額に左右されにくい。 リスクの高い業務を避ける傾向がある。
起業家的創造性 新分野への挑戦に適する。 ルーチンワークを避ける傾向がある。
奉仕・社会貢献 献身的な業務をこなせる。 ビジネス的な利益と相反する可能性がある。
純粋な挑戦 競争を生み、組織が活性化する。 ルーチンワークを避ける傾向がある。
軋轢を発生させる可能性がある。
ワーク・ライフバランス 時間管理に優れている。 イレギュラーな案件の対応に難がある。

キャリア・アンカーを活用するメリット

キャリア・アンカーを知ることは企業にも個人にもメリットがあります。以下では、その効果を紹介します。

キャリア・アンカー活用メリット:企業側

モチベーションと生産性の向上

従業員のキャリア・アンカーを知ることで、一人ひとりの重視している価値観を理解できます。価値観を知ることで、対応を変化させ、従業員のモチベーションを管理し、生産性の向上に繋げることができます。ここでは、各タイプ別に長所の活かし方を記載します。

  • 経営管理能力(General Managerial Competence)タイプは、部署異動を行うことで社全体を見合わたせる能力や社内人脈を作れるようにする。
  • 専門・職能別能力(Technical/Functional Competence)タイプは、専門職としてスキルアップができる環境を整える。
  • 自律・独立(Autonomy/Independence)タイプは、プロセスは自由に行動させて、結果を評価する。
  • 保障・安定(Security/Stability)タイプは、異動や転勤をさけて、収入は上がりにくくても、安定した職務を提供する。
  • 起業家的創造性(Entrepreneurial Creativity)タイプは、新規事業などのリスクとチャレンジが含まれる創造的な業務を任せる。
  • 奉仕・社会貢献(Service/Dedication to a cause)タイプは、人を助け、サポートする職務を任せ、その行動を評価する。
  • 純粋な挑戦(Pure Challenge)タイプは、競争できる環境を提供し、切磋琢磨できるようにする。
  • ワーク・ライフバランス(Lifestyle)タイプは、業務とプライベートを切り分けを意識し 、望む休暇が取りやすい職務を任せる。

採用での活用、離職防止効果

採用の際、キャリア・アンカーを分類する試験を行うことで、職務に適切な人材であるか把握できます。また、人事異動の際も、「重視する価値観」のミスマッチによるモチベーション低下や、離職を防止できます。

人材教育と組織強化

社員研修の場で、キャリア・アンカーについて説明し、理解を深めることは重要です。 特に、部下を指導育成する立場の役職者が、さまざまな従業員の価値観を理解することはトラブルを防止し、円滑な組織運営に役立ちます。 また、お互いの上司、同僚、部下と価値観を理解しあうことで、より強固な組織を作ることができます。

キャリア・アンカー活用メリット:従業員側

「どんな働き方をしたいのか」、「どうありたいか」を知るきっかになります。自分の満足度の高い働き方を知ることで、会社の知名度や報酬や地位などに左右されずに、満足度の高いキャリアを選択できるようになり、自分の天職を発見する指標になります。

キャリア・アンカー導入の注意点

従業員の価値観を知ることができるキャリア・アンカーですが、導入には以下の点を考慮した運用をしましょう。

固定観念で決めつけない

人には多面性があります。キャリア・アンカーで、あるタイプが診断されたとしても、 そのタイプが強く出ているだけで、他の価値観の要素が無いわけではありません。 キャリア・アンカーで、その人を決めつけてしまわずに、一つの指標として用いましょう。

キャリア・アンカーは優劣を決めるものではない

キャリア・アンカーは、「このタイプは優れている」と優劣を評価する指標ではありません。各タイプには長所と短所があります。短所を補い、長所を伸ばすことが大切です。

これまで、キャリア・アンカーの概要と8つの分類、効果やメリットについて解説してきました。キャリア・アンカーは、個人の仕事に対する価値観を知ることができる指標です。これを知ることは満足度の高いキャリアを得るための手助けになります。 そして、企業は従業員のキャリア・アンカーを知ることで、職場でのミスマッチやトラブルを防止し、個人が能力の発揮できる働きやすく生産性の高い職場環境を作ることができます。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/03/17
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