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コロナ禍で変化?人事コンサルタントが語る「採用手法のトレンド」とは

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ITの発展や、働き方改革などによって、企業のリクルーティングに対する考えや手法が劇的に変化。また、新型コロナウイルス感染症対策により、採用活動がオフラインからオンラインへと移行しています。社会情勢が変わる中、一体どのような”採用手法のトレンド”がみられるのでしょうか。株式会社「ムービン・ストラテジック・キャリア」で人事コンサルタントを務める北野氏にお話を聞きました。

注目される”最新の採用手法”とは

Q注目される”最新の採用手法”とは一体どのようなものでしょうか

営業やマーケティングの領域でデジタル技術が注目されているように、リクルーティングの領域でもこれらを活用した採用の手法が注目を浴びています。その一つが、企業説明会や面接のオンライン化。従来の説明会や面接は物理的な制限が大きく、またリアルタイム性が極めて高い状態でした。

しかし、Web会議システムなどの導入により、動画や音声などをオンライン上に保管。面接内容などを振り返るだけではなく、採用コンテンツとして配信するような流れも一部増えています。

これまでの選考は面接官らの経験やスキルによる部分が大きく、採用活動が属人化するなど、さまざまな課題を抱えていました。しかし、今後はAI(人工知能)をはじめとするデジタル技術がリクルーティングで活用されることで、これらの課題が次第に解決されるのではないでしょうか。

私は以前、動画に映る人間の感情や性格などをAI(人工知能)で解析するプロジェクトに携わっていました。近い将来、AIがこれらに加え、求職者や面接官のコミュニケーション能力をも定量的に評価できるようになるのかもしれません。

進む採用活動のオンライン化

Q実際、採用活動のオンライン化は定着しているのでしょうか

採用活動のオンライン化は、やはり新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けています。また、各企業の感染症対策が本格化する以前と以後では、オンライン化に対する考えも様変わりしました。

マイナビ様が実施した統計調査によると、2020年5~6月頃まで企業は、1次~2次面接をオンライン上で実施。7割の企業が最終面接を対面で行うケースがみられました。しかし、6月以降では最終面接をオンラインで行う企業も徐々に増え、10月の時点では、約7割の企業が1次~最終面接までを一貫してオンラインで実施したということです。

全ての面接を対面で行っていた従来の選考スタイルと、全てオンライン上で行う選考のスタイルを比べ、企業は、”結果にあまり差がない”などと感じ始めたのでしょうか。最終面接のオンライン化が進む動きを見ていると、これまでオンラインに抵抗を感じていたとみられる多くの企業の間で、次第に採用活動のオンライン化が定着している様子がうかがえます。

採用のオンライン化が進む背景には、感染症対策だけではなく、労働スタイルの柔軟性を判断したいといった企業の意図も見え隠れします。コロナ禍や働き方改革などで労働環境が変わる昨今は、リモートワークへの対応はもはや当たり前の時代。リモートワークならではのビジネス所作などを、面接官が確認する判断材料にもなっています。同時に求職者にとっても、企業がリモートワークを導入し、どれだけ適応しているのかを判断する、良い機会になっているでしょう。

業界・職種別に見た採用手法のトレンドについて

Q業界によって、採用手法のトレンドはどう異なるのでしょうか

小売や外食産業などの業界では、求職者に1〜2分の自己PR動画を提出させ、1次面接実施の判断材料にするケースが増えているといいます。特に、慢性的な人材不足の課題を抱える飲食業界では、大量に人材募集せざるを得ない状況。結果、面接日時に来社しない求職者や、コミュニケーションが円滑にできない求職者が一定数現れ、余計な工数が経営に影響を与える例も少なくありません。

そこで注目され始めているのが、リクルーティングに特化した動画プラットフォームです。これらのサービスには、オンライン面接の実施はもちろんのこと、プラットフォーム上で動画を視聴・管理したり、面接官側のみでコメント内容を共有したりと、さまざまな機能が盛り込まれています。

一方、IT業界では、人材紹介会社などを介さず、直接求職者へアプローチする「ダイレクトリクルーティング」が大きなトレンド。中でも、SNSを活用した「ソーシャルリクルーティング」が注目を浴びています。これは、転職サービスを通じて求職者がスキルやポートフォリオを伝えるのではなく、noteやTwitter、Facebookなどのプラットフォーム上で企業に自己アピールするケースが増えているからです。特にソーシャルリクルーティングが積極活用される領域は、優秀なエンジニアの獲得。プログラマーがSNSなどで発信する情報などを基にし、現在多くの企業がダイレクトにアプローチしています。

また、コンサルティング業界についても、人材紹介サービスに加え、ダイレクトリクルーティングを活用する動きが広がっています。特殊な業界柄、採用応募が集まりにくく、また求人サイトなどで業務内容を公にできないケースも少なくありません。したがって、非公開の求人案件を斡旋するエージェントサービスの活用や、ソーシャルリクルーティングの導入が着目されているのです。

Q職種別では、どのような採用手法のトレンドがあるのでしょうか

消費者と対面する機会が多い営業職、アパレルや美容の販売・サービス職などのリクルーティングでは、社員の人的ネットワークを駆使し、人材の紹介や推薦を促す「リファラル採用」が増えているようです。一方、ベンチャー企業のクリエイティブ・エンジニア職のリクルーティングについては、企業が応募者の詳細なスキルや業務内容を把握したり、自社の雰囲気を周知したりするため、食事会などの親睦会を開催。現段階で転職を考えていない応募者も積極的に呼び込み、採用につなげているということです。

新卒・中途採用別に見た採用手法のトレンドとは

Q新卒採用では、どのようなリクルーティング手法が注目されているのでしょうか

古くから行われてきたリクルーティング手法ですが、インターンシップの開催が昨今、注目を浴びているようです。これまでのインターンシップは、学生が一堂に会して業務を体験するのが一般的でした。しかし、Web会議サービスが普及したことで、場所に関わらず多くの学生が集まることが可能に。社員と学生の新たなコミュニケーション手段として、企業が積極活用しています。

同時に、オンラインでのOB訪問や座談会、などについても企業が力を入れ始めています。一部の企業では、社員らが覆面を被り、身分や素性を隠して行う”覆面座談会”を開催。多くの学生の視線を集めます。その理由の一つは、学生がより企業のリアルな情報を求めているということ。また、紋切り型でなく話題性のある採用活動を行うことで、応募を促す狙いが隠れているとみられます。

こうしたトレンドの背景には、書類選考や面接だけではなく、普段の様子を判断要素として捉える企業の増加があるでしょう。

Q中途採用では、どのようなトレンドがみられるのでしょうか

やはり、多くの企業がダイレクトリクルーティングに視線を注いでいます。現在日本では、新卒で入社してから3年以内に離職する人が3割を超え、一つの会社に一生務めるスタイルも徐々に変わりつつあります。また、国内の労働人口減少に伴い、受け身型の採用活動だけでは人材の確保も困難です。

こうした中、人材開発にリソースを割くことをデメリットと捉える考えが多くの企業にみられます。特定の実績やスキルを備えた人材に対し直接アプローチするといった動きが広がるのは、このためではないでしょうか。特に知名度が低い中小企業の中途採用では、人材が減少する昨今、応募がなかなか集まらない傾向もみられます。したがって、企業の方から積極的にアプローチする必要性が生まれているのです。

また中途採用では、従業員を再雇用する「アルムナイ採用」についても、有効な採用手法として認識されつつあります。”出戻り”として知られるこのリクルーティングは、退職した社員を再び雇用する制度。職務スキルはもちろんのこと、企業文化や業務スタイルなどを把握しているため、即戦力になるのは言うまでもありません。

こうしたアルムナイ採用は、巨大企業であるトヨタ自動車などでも活用されています。例えば同企業では、「キャリア・カムバック制度」と呼ぶ採用方法を導入。再雇用申請を行った一部の従業員を会社の一員として再び招き入れています。

テクノロジーを活用した”次世代”のリクルーティング

Q後注目されそうな、最新テクノロジーを活用した採用手法があればお聞かせ下さい

冒頭で少し触れたように、AIやデジタルデータを活用したリクルーティングはますます注目されると思います。例えば、膨大なエントリーシートの情報をデジタルデータ化して、データベースに蓄積。AIでそれらを解析することによって、採用のカギとなる法則を導き出せるかもしれません。採用対象者の潜在能力や心理状況などが定量的に把握できるようになれば、最適な人材採用がより可能になるでしょう。

また、リクルーティング業界では、「ATS(Applicant Tracking System)」も注目されるとみられます。日本語で採用管理システムと呼ばれ、採用に関するさまざまな業務をまとめて管理します。求人や履歴書はもちろんこと、選考状況や内定者などに関する情報を一つのプラットフォームで可視化。その他、内定率を算出したり応募者をスコアリングしたりするなど、採用担当者の業務をサポートします。

システムや機械が採用活動を担うことで、精度が向上したりコストが軽減したりすることは、とても良いことです。しかし、採用活動の主体はもちろん人。全てをAIやシステムに任せるのではなく、テクノロジーと人間のハイブリッドが前提です。例えば、Alが判断した面接の合否を採用担当者が再確認するといったように、業務の補完として活用するのがベターかもしれません。

  • $タイトル$
  • 株式会社ムービン・ストラテジック・キャリア
    北野 雄大

    トヨタ自動車やデロイトトーマツコンサルティングを経て、AIベンチャーのエクサウィザーズで動画解析AIの開発などを担当。現在はムービン社にて、企業の人材開発を幅広く支援。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/03/08
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