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M&Aは誰のために行うものなのか?

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後継者がおらず、経営者も高齢となった会社はどういう選択肢を選ぶべきなのか。経営者にとっても、従業員や取引先などのステークホルダー (会社の利害関係者)にも関わる大きな決断だと言えます。前回は後継者不在の事業は廃業すべきなのかという視点で後継者が見つからない理由や政府の支援策などを紹介してきました。今回は事業承継のためのM&Aについて考えていきましょう。

近年、後継者のいない会社が事業を続けるために、M&Aを選択するケースが増えています。しかし、M&Aは会社の雰囲気を大きく変えるかもしれない一大イベントで、それをきっかけにしてさらに成長することもあれば、逆に業績が悪化してしまうこともあります。 事業を続けるためにM&Aで事業承継したのに、本末転倒な結果になる原因のひとつが「ステークホルダーの気持ちを軽く見てしまうこと」です。そうならないようにするためには、どのような点に気をつけておけばよいのでしょうか?

事業承継のためにM&Aをする目的は?

事業承継のためにM&Aをする目的は何なのでしょうか。それを理解するために、事業承継をめぐるM&Aの現状から確認していきましょう。

後継者不足と事業承継M&Aの現状

後継者不足に悩む会社は少なくありません。2019年に日本政策金融公庫が中小企業を対象に行った調査(※1)でも、事業承継の意向がある企業の2/3程度が、後継者が決まっていないと回答しています。しかし、どうしようもないからと廃業してしまうと、取引先に迷惑をかけてしまうし、従業員の今後の生活も心配です。

そこで、取引先や従業員などのステークホルダーのためにも、廃業を避けて社外から後継者を見つける会社も増えています。その選択肢のひとつが「M&A」です。2019年に中小企業庁が作成した資料(※2)を見ても、2012年に184件だった事業承継M&Aの件数が、2018年には544件となっており、M&Aによる事業承継を検討している会社が増えていることがうかがえます。

事業承継M&Aを選択する2つの目的

事業承継のためにM&Aをする一番の目的は、会社を存続させることです。従業員の雇用を維持することなど、ステークホルダーにとっても歓迎すべきことと言えます。

また、会社を売却してお金を手に入れられるので、オーナー経営者にとっての退職金がわりにもなります。廃業した場合は、会社の資産をお金に変えて、給与や借入金などを全て清算した後に残った分だけが手元に残りますから、思ったよりも少ないケースもあるようです。

このように、事業承継のためにM&Aをする目的には、「会社を存続させること」と「リタイアメントプラン」の2つの側面があると言えます。

事業承継のためにM&Aをする目的は何なのでしょうか。それを理解するために、事業承継をめぐるM&Aの現状から確認していきましょう。

後継者不足と事業承継M&Aの現状

後継者不足に悩む会社は少なくありません。2019年に日本政策金融公庫が中小企業を対象に行った調査(※1)でも、事業承継の意向がある企業の2/3程度が、後継者が決まっていないと回答しています。しかし、どうしようもないからと廃業してしまうと、取引先に迷惑をかけてしまうし、従業員の今後の生活も心配です。

そこで、取引先や従業員などのステークホルダーのためにも、廃業を避けて社外から後継者を見つける会社も増えています。その選択肢のひとつが「M&A」です。2019年に中小企業庁が作成した資料(※2)を見ても、2012年に184件だった事業承継M&Aの件数が、2018年には544件となっており、M&Aによる事業承継を検討している会社が増えていることがうかがえます。

事業承継M&Aを選択する2つの目的

事業承継のためにM&Aをする一番の目的は、会社を存続させることです。従業員の雇用を維持することなど、ステークホルダーにとっても歓迎すべきことと言えます。

また、会社を売却してお金を手に入れられるので、オーナー経営者にとっての退職金がわりにもなります。廃業した場合は、会社の資産をお金に変えて、給与や借入金などを全て清算した後に残った分だけが手元に残りますから、思ったよりも少ないケースもあるようです。

このように、事業承継のためにM&Aをする目的には、「会社を存続させること」と「リタイアメントプラン」の2つの側面があると言えます。

事業承継のためのM&Aで起きかねないこととは?

M&Aは会社にとっての一大イベントです。それがきっかけで会社に大きな変化が起きることもありますが、悪い変化にはしたくないものです。どのような問題が起きやすいのか、その一例を紹介します。

従業員の待遇悪化

従業員の待遇が悪くなってしまうことがあります。これは雇用維持や給与だけでなく、働き方も含めてです。「風通しが良く、意見の言いやすい組織」だったのが、M&Aをきっかけに「トップダウンで言われたことだけをこなす組織」に変わってしまうこともあるかもしれません。

業績の悪化

経営方針が変わって、それまで自社を評価してくれていた顧客が離れていってしまう場合があります。業績が悪化してしまうと、従業員の待遇悪化にもつながるかもしれません。

取引先との関係悪化

M&A後も、既存の顧客がそのまま取引を継続してくれるとはかぎりません。例えば、ある顧客の競合である会社に自社を売却した場合、取引が打ち切られることもあるでしょう。

また、顧客や仕入れ先との基本契約書に、「M&A等をするときは事前に連絡をすること」などと定められている場合もあります。にもかかわらず、事後報告としてしまうと、その取引先との信頼関係が崩れてしまいかねません。

M&Aができずに廃業せざるを得なくなる

M&Aは必ずできるというものではありません。交渉相手と合意できてこそ成立します。そのため、うまく相手が見つけられずに時間がどんどん過ぎていき、M&Aによる事業承継もあきらめて廃業せざるを得なくなることも起きかねません。

こういったことになれば、ステークホルダーにとって幸せなM&Aとは言えません。また、元経営者として、自分が育ててきた事業がダメになってしまうのは心が痛むのではないでしょうか。

ステークホルダーにとって不幸せなM&Aになってしまう2つの理由

ステークホルダーにとって不幸せなM&Aになってしまうよくある原因は、大きく「早く売却したいと考えた」と「条件にこだわりすぎた」の2つがあります。

早く事業承継をしなければ、と考えてしまい、相手企業の経営方針や従業員の雇用がどうなるかなどを深く確認せずにM&Aを進めるのはよくありません。リタイアするオーナー経営者自身に直接かかわる譲渡価額を優先して、経営方針や雇用をないがしろにしてしまっては、ステークホルダーが悲しむ結果になるでしょう。

逆に、条件にこだわりすぎてM&A先が見つからないのも問題です。特に創業経営者の場合は、「自分が作り上げた会社」に強い愛着を持っているからこそ、M&Aにあたって譲れない条件がたくさんあるかもしれません。

「給与は下げずに全員雇用を約束して、営業方針は維持して得意先への価格引き上げはせずに、譲渡価額は高くて……」と要求ばかりしては、買い手にとってのメリットは少なくなるでしょう。会社とステークホルダーの将来を考えたからこその要望だとは思いますが、優先順位をつけて多少の譲歩も必要です。

ステークホルダーにとっても幸せなM&Aにするために考えるべきこと

ステークホルダーにとっても幸せなM&Aにするためには、従業員の雇用と経営方針について考え、そのなかでできるだけよい相手を探すことです。

従業員の雇用では、当面は雇用や現状の給与が維持されることや福利厚生がどのようになっているか、M&A相手については、経営理念・経営方針・社内の雰囲気が近いかどうか、といったことがポイントになります。M&Aの契約をする前に、事前に相談しなければならない取引先があるかも確認しておきましょう。

こういった点を確認したうえで、M&Aにあたっての条件を優先順位付けしておき、どこまでなら譲歩できるかを考えておくことが大切です。

ステークホルダーの気持ちも考えながら、じっくり進めるのが大切

自分自身がどうやってリタイアするかということ以上に、ステークホルダーの気持ちを考えてM&Aに取り組むことが大切です。

専門家からの客観的視点でのアドバイスにも耳を傾けながら準備を進めましょう。耳の痛い話を聞かされることもあるかもしれませんが、会社を維持・発展させて、ステークホルダーにもっと幸せになってもらうための大仕事です。じっくり時間をかけて、みんなが幸せになれるM&Aにしたいものです。

※1 日本政策金融公庫「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」
※2 中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」(2019年11月7日)

  • $タイトル$
  • ねこのて合同会社 代表
    横山 研太郎

    1978年大阪生まれ。シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト。
    保険と投資をミックスした「守りと攻めを両立させる」資産形成プランを提案する。会社と経営者の資産管理アドバイスも行っている。

  • 経営・組織づくり 更新日:2022/02/22
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