後継者不在にお悩みの方必見!中小企業が考えるべき3つの選択肢
「事業を引き継いでもらいたいのに、後継者がいない……」「継承者がいない場合、他の会社はどのようにしたのだろうか」このようにお悩みの方はいらっしゃいませんか? 後継者がいない場合でも、従業員や取引先などにも影響がでる廃業は避けたいところです。近年、少子化や経済情勢などを背景に、後継者不足が問題視されています。後継者が不在のままの会社も多く、雇用やGDPへの悪影響を国も解決すべき問題と考えています。
今回は後継者不足の現状や理由、承継方法について解説します。ぜひ参考にしてください。
後継者問題に悩む経営者は多い
経営者にとっての大きな悩みのひとつが「後継者」です。実際、後継者がいないことに悩んでいる経営者も少なくありません。帝国データバンクが全国の企業約26万6000社を対象に行った調査(※1)によれば、2020年においては、社長が60代で48.2%、70代以上でも30%を超える会社が「後継者不在」という結果となっています。。
また、日本政策金融公庫が2019年に中小企業を対象に行った調査(※2)では、事業承継の意向がある34.5%の企業のうち、2/3程度が、後継者がまだ決まっていない状態です。
事業承継意向と後継者の有無 | 割合 | |
---|---|---|
事業承継意向あり | 後継者が決まっている | 12.5% |
後継者が決まっていない | 22.0% | |
事業承継意向なし | 自分の代でやめるつもり | 52.6% |
まだ決める必要がない | 12.9% |
(日本政策金融公庫「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」より筆者が作成)
後継者問題に伴う廃業は経営者だけの問題ではない
しかし、事業承継(※)の意思があるにもかかわらず、後継者が見つからないことを理由に廃業をすることは、さまざまな悪影響を引き起こしかねない問題でもあります。
廃業すると、雇用している従業員が職を失ってしまいます。法的な義務ではありませんが、経営者として従業員の生活を守る責任があります。また、仕入先は得意先を失い、得意先は仕入先を失いますし、ユーザーに喜んでもらえるものを作っているのであれば、ユーザーが使うものにも影響があると言えます。
従業員でも取引先でも、「自社の代わりは他にいくらでもいる」と言ってしまえばそれまでです。しかし、従業員も取引先もあなたの会社を頼っているのですから、「廃業」は多くの人にとってマイナスだと言えるのではないでしょうか。
さらに、「後継者不足で、廃業しなくてはならないかもしれない」と考えながらでは、中長期的な視点を持った経営ができなくなるリスクもあります。
「あと10年もすれば廃業せざるを得ないかも」と感じていれば、積極的な採用活動や設備投資をためらってしまうかもしれません。退職者が出ても補充しない、設備が古くなっても使い続けざるを得ないといったことが続けば、「後継者不足で廃業」となる以前に、人手不足や競争力低下で経営危機に陥ってしまいかねません。
※「事業承継」ではなく「事業継承」という言い方もありますが、辞書的な意味からでは、事業承継は「事業に関する抽象的なものも含めたあらゆるもの」を引き継ぐ、事業継承は「事業に関する具体的な権利・義務」を引き継ぐというイメージです。「事業承継」の方が、より広範囲の引継ぎをカバーした言葉だと言えるでしょう。
後継者が見つからない理由は?
日本政策金融公庫の調査(前述※2)では、廃業を予定している企業に「廃業を予定している理由」を聞いています。
廃業理由 | 比率 | |
---|---|---|
そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない | 43.2% | |
事業に将来性がない | 24.4% | |
後継者難 | ||
子どもがいない | 12.5% | |
子どもに継ぐ意思がない | 12.2% | |
適当な後継者が見つからない | 4.3% |
(日本政策金融公庫「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」より筆者が作成)
それによれば、「事業承継をしたいのに後継者がおらず、廃業を予定している会社(29.0%)」の多くが、「子どもがいない(12.5%)」「子どもに継ぐ意思がない(12.2%)」を理由にしていることがわかります。「できることなら、子どもや親族に引き継いでもらいたい」と考えている経営者が多いからではないでしょうか。
しかし、少子化が進み、経済の先行きに不安を感じる人が多くなったことなどから、子どもに事業を引き継いでもらえるとは限らなくなっています。
M&Aも含めた対策を考えるべき
このような環境でも廃業を避けたいと考えているのであれば、「誰に引き継いでもらうか」を広い選択肢で検討することも必要です。第一候補は子ども・親族ですだが、それが難しいのであれば、第二候補は役員・従業員による「社内承継(従業員承継)」も検討しましょう。第二候補までで後継者が見つかれば、「自社のことを理解している人材」が引き継いでくれるというメリットがあります。
親族や社内人材で後継者が見つからず、廃業も避けたいのであれば、 第三候補は外部へのM&Aで会社を売却する「社外承継」も視野に入れなければなりません。
ただ、社内承継でもM&Aでも、早めに準備を始めることも大切です。
子どもや親族以外からの社内承継でも、探したり説得したりするのに時間がかかるだけでなく、後継者としての育成期間も必要です。また、M&Aで外部への会社売却をするとしても、相手がなかなか見つからず、いくらで譲渡するかもスムーズにまとまらないケースも少なくありません。
いずれも長い時間がかかるため、「社内承継が無理だったら社外承継」というように順に検討するのではなく、「社内承継と社外承継を同時並行で検討」しましょう。
後継者問題の解決は一朝一夕にはできません。「自分が一線を退くのはまだまだ先だ」と思っていても、子どもや親族に引き継いでもらえなさそうであれば、M&Aなどの社外承継も含めて、少しでも早く検討を始めるのが良いでしょう。
※1 帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2020年)」
※2 日本政策金融公庫「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」
※3 経済産業省 「平成30年度 経済産業関係 税制改正について」(2017年12月)
- 経営・組織づくり 更新日:2022/02/08
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