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リモートワーク化が進む今だからこそオンボーディングを!その重要性に迫る

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コロナ禍により、働き方が大きく変わった昨今。多くの企業でも「入社した初日から在宅勤務」「従業員同士の会話はオンラインで、会ったことがない」「顔をまだ知らない仲間と仕事をしている」など、リモートワーク化が進んでいます。そんな現代社会において、新入社員のエンゲージメントをしっかりと高めていくことが、今後さらに重要視されるでしょう。そこで、自社プロダクトであるオンボーディングプラットフォーム「Onn(オン)」を運営する株式会社ワークサイドの秋山貫太さんに、定着率の向上にも効果的なオンボーディングについてお聞きしました。

リモート化が進む時代にオンボーディングが必要とされる理由

Qリモートワーク化が進む現代社会において、オンボーディングが必要とされる背景には、どのようなことが挙げられるのでしょうか。

オンボーディングとは、入社した従業員が職場に慣れ、定着するために手ほどきを行いながら戦力化まで伴走するプロセスのこと。現代社会において、オンボーディングが必要とされている背景には、従業員のエンゲージメントを高める方策を必要としている企業の増加が挙げられます。その要因のひとつが、早期離職です。コロナ禍によって、リモート化が進む中で通常業務におけるコミュニケーションも遠隔で行う機会が増えています。入社が決まった従業員も初日からテレワークになり、他の従業員と対面で接することができないケースも少なくありません。そのため、新入社員が早期に組織へと馴染み成果を挙げられるように、WEB会議システムやチャット、クラウドサービスなどのテクノロジーを駆使しつつ多くの会話やコミュニケーションが見えて、残るようなオンボーディングの導入が重要になります。

また、採用環境が激化しており、有効求人倍率は回復傾向にあるものの、業界や職種に偏りがあるのも事実。さらに、終身雇用が崩壊しつつある近年では転職へのハードルが下がっています。多くの企業が抱える課題は、優秀な人材を採用しても辞めてしまうこと。ここには、防げる離職もあると考えられます。例えば、上司との関係性に悩みを抱えている場合や、期待していた仕事のイメージと明らかに乖離がある場合など。その場合、モヤモヤは解消されないまま蓄積し、半年ほど経過した時点で離職に踏み切るケースは多くあります。これらは、早めに気付いて対処すれば防げる離職。つまり病気と同じで、早期発見・早期治療を施すことが大切です。

Q早期離職を防ぐことは、組織の成長はもちろん、人事にとってもメリットが大きいですよね。

オンボーディングによる早期離職の防止には様々な好影響があります。特に人事側が得られるメリットは大きいでしょう。なぜなら、離職を抑えるということは、欠員による採用を実施する必要がないからです。人事担当者にとって、採用計画を何度も立て直し、ネガティブな理由で行う採用活動は、コストもストレスも増えていく一方ですから。

従業員のキャリアと組織自体の事業成長の観点からも利点があります。個人に対しては、入社当初から半年後のキャリアプランを設計してあげることで、社員が自分自身の成長プロセスをイメージできます。組織に関しては、入社半年から1年の間に退職するケースを解消することで、事業計画が遅延する事態を防げます。

Q早期離職を防ぐ一方で、副業などによる人材の流動化がさらに進んだ場合、オンボーディングはどのような効果を発揮するのでしょうか。

複数の企業で働く機会が増えれば、新たな環境になかなか馴染めないというケースも増えて当然。もし、副業として選んだ企業側がサポートを怠り、仕事さえしてくれればいいというスタンスで受け入れてしまえば、慣れるまでに時間が掛かり、副業がなかなか上手くいかずにチャレンジを諦めてしまう方も出てきます。オンボーディングを実施することで早期にケアが行き届き、副業であってもエンゲージメントの向上が期待できます。さらに、多様化するポジティブな働き方を推進する企業としての評判も高まるでしょう。

オンラインによるオンボーディングの有効性

Qテレワークなどの働き方が定着しつつありますが、リモートでもオンボーディングは有効なのでしょうか。

オンボーディングをリモートで実施するのは非常に有効だと思います。何が良いかというと、オンラインでは難しかった相互理解を深める手法として効果が期待できるからです。リアルに対面で会っていた時よりも、リモートなどのオンラインだと認識のズレが生じるのは、阿吽の呼吸によるやり取りや五感で雰囲気を掴むことが難しいため。

オンボーディングの本質は、入社したばかりの従業員と企業側との間に相互理解がない状態を前提としたうえで、認識や期待値のズレを早期に解消することです。それは、オンライン上でも必要とされるプロセスなので、質の高いコミュニケーションが増える可能性は大いにあります。

Qオンラインで実施するオンボーディングの注意点は何でしょうか。

オンライン上でオンボーディングを実施する際の注意点としては、個々が仕事で躓いた時や業務量が多くて苦しんでいることなどに素早く気づけないことです。そのため、不定期でコミュニケーションを図るのではなく、例えば1on1のオンライン面談を週次もしくは毎日行うと効果的です。時間はかかりますが、心理的安全性や従業員体験という観点からも、意図的に対話する機会を作っておくことをおすすめします。

Q意図的に面談の機会を設ける際、オンボーディングをする側としては、どのようなポジションの人材を選出すればよいのでしょうか。

オンボーディングの内容によって、それぞれが担うべき役割も変わります。例えば、従業員の上司が担う役割の中には「評価」や「育成」などのマネジメント業務がある。しかし、それだけでは従業員の不安などを解消できない可能性は否めません。そのような時には、面接前から従業員とのやり取りを行う機会が多い人事部門の方が、カジュアルに何でも相談できる存在になることもテクニックとして有効です。

オンボーディングを受ける対象の従業員にとって、直属ではない別部署の年齢の近い先輩や社歴の近い先輩がサポートする制度も効果的。例えば、豊富な知識と経験をもつ先輩(メンター)が、新入社員(メンティー)に対して定期的な面談などの支援活動を行う「メンター制度」や、新入社員が業務に慣れるまでの期間、ひとりの先輩社員が教育担当となり、業務だけではなくビジネスマナーや社内ルールなどの指導まで面倒をみる「バディ制度」が挙げられます。海外ではポピュラーなこれらの制度も国内の企業に浸透しつつあるので、併せてチェックしておくと良いでしょう。

Qそれぞれの役割に就く人たちをはじめ、オンボーディングをする側の育成方法などがあれば教えてください。

オンボーディングする側の育成に関しては、外部のリーダー研修やマネジメント研修をはじめ、最近ニーズが高まっている1on1研修などに参加して、トレーニングする方法があります。その結果として、部下が本音で話しやすい環境や信頼関係を醸成できるようになり、コミュニケーションの質が改善されます。もちろん、これらの研修はすでに多くの企業で実施していると思いますが、今まで以上に必要性が増していることは間違いありません。

また、テクニカルなトレーニングだけではなく、組織ごとのマインドセットをしっかりと浸透させることも重要です。そのうえで、それぞれの役割を理解し、アサーティブな態度で入社した従業員と向き合うことにより、相手の目線に立ったスタンスが磨かれていきます。

オンライン上でオンボーディングを成功に導く方策と事例

Q人事の方たちによるオンボーディングのアクションとしては、どのような方法がありますか。

人事が起こすアクションの方向性は、2パターンあります。ひとつは人事が主体となってできる施策や制度を取り入れること。例えば、人事が主催するオンライン飲み会や同期会を開催することで、従業員同士の雑談が増えます。リアルな職場では、オフィス内ですれ違う時や休憩時間に雑談はできますが、リモートなどの場合はそれら“余白の時間”がないというデメリットがあります。そこを中立の立場といえる人事が担うことで、従業員同士が気兼ねなく会話を楽しむ機会をつくれるのです。

もうひとつは、現場マネージャーを経由したアプローチとして、アンケートを実施する方法があります。ここで実施するアンケートのポイントは、匿名ではなく実名であること。書いた人が誰なのか、マネージャーにも人事にも把握でき、あらゆる視点での対策が図れます。実名だと100%本音なのかという検証は難しいのは事実です。そのため、ファクトベースで記入することを促しつつ、見る側もこのアンケートで全てを解決できると思わずに、気付きをキャッチするツールとして活用してください。その後、1on1面談など別の機会から本音を聞き出すことも十分可能です。

Q確かに、従業員の悩みに気付くことが大事ですよね。実際にオンボーディングを導入した企業の事例などがあれば教えてください。

中小企業様の事例では、30名弱の中途入社と新卒入社の方にオンボーディングを実施しています。その企業様は、もともと新人研修などを行っていた企業様ですが、いわゆる急成長を遂げるタイミングで採用人数も増えており、既存の研修だけでは一人ひとりの従業員をしっかりと見ていくことが難しくなっていました。そこで、個々の状態をキャッチアップしていく仕組みが必要だと考え、オンボーディングに力を注ぐようになったのです。

具体的には、入社後の研修をただ企業側がアウトプットして従業員側にインプットするという一方通行ではなく、受ける側の理解度や何に悩んでいるのかを可視化するようにしました。その方法が、簡易的な質問を短期間に繰り返し実施するパルスサーベイというアンケート調査です。シンプルな質問なので簡単に答えることができるため回答率は100%。個々の状態を人事や上長がタイムリーに把握し、アクションを起こせます。オンボーディングを受けた従業員からは、「入社直後という、新たな環境や業務に慣れない時期に、定期的なアンケート調査があったことで、会社や上長が自分のことを見てくれているという安心感があった」というコメントもいただきました。

また、最近ではコロナ禍のテレワークにより「新しく入社した従業員の様子や状態が見えづらい」という課題を抱えるお客様も増えています。そのようなケースにおいて重要なのは、従業員一人ひとりを理解して、人事が現場と連携するサポート体制を確立すること。例えば、オンライン上で1on1や人事面談を頻繁に実施して対話を増やしたり、社長や部門長などへインタビューする機会をつくったり、組織全体で取り組む施策はオンボーディングの中でも有効といえます。入社者側も企業側もそれぞれが状況を把握しつつ想いを共有できれば、“知らないこと”や“不安・嫌悪感”などが減り、心理的安全性の向上にも繋がるでしょう。

Qただ一方的に機会を与えるだけではなく、従業員の悩みや本音を可視化したうえでアクションを起こすことが大事なのですね。

入社後のコンディションを可視化することで、固定観念に縛られないオリジナルのケアを施せるようになるでしょう。また、プレボーディングという入社前の体験を良くする期間を設けることで、従業員エンゲージメントのさらなる向上が期待できます。オンボーディングは、入社後の従業員エンゲージメントを右肩上がりに高めていくことですが、プレボーディングは、入社前からある程度の関係性を築くことで、入社時点での満足度や会社愛が高いという特徴があります。

Qプレボーディングを実施することで、オンボーディングにはどのような好影響があるのでしょうか。

中途入社の場合は、転職することを決めてから企業に応募して、書類選考や面接を経てから実際に入社するまでに約1ヶ月から1.5ヶ月かかるケースが多いとされています。特に、内定を承諾してから入社当日までの期間は、新しい職場への期待と同時に不安を感じることもあるでしょう。その際、入社前日まで何も連絡がない状態では、必要とされていないのではというマイナスの感情や企業に対する不信感にも繋がります。

プレボーディングを通じて入社前から双方の自己紹介が済んでいれば、エンゲージメントや安心感が高い状態でのスタートが可能です。また、入社前後に良い体験をした従業員が1年後には先輩として迎え入れる側にまわります。すると、後輩にも良い体験をしてもらいたいという気持ちが芽生え、良質なオンボーディングのサイクルが組織内に育まれる。このような好循環が企業の文化になれば、離職率の低下にも大きく寄与するでしょう。

オンボーディングは企業の第一印象を良くする

コロナ禍におけるリモートなどの働き方は、従業員の本心が見えにくいのが現状です。そのため、従業員一人ひとりへの手ほどきや支援を実施するオンボーディングは、これまで以上に重要視されていくでしょう。従業員体験の向上は、言い換えれば企業の第一印象が向上することでもあり早期離職を防ぎます。それだけ、ファーストインプレッションが大事だということ。リモートワークなどの多様な働き方が増える一方で労働人口が減少する未来はすぐそこまで来ています。いち早く、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高めるうえでも、入り口であるオンボーディングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

  • $タイトル$
  • 株式会社ワークサイド/代表取締役
    秋山 貫太

    2007年 株式会社リクルートキャリアに入社。法人営業、海外営業、新規事業(サンカク)の立ち上げを経験。その後、スタートアップ企業の参画やフリーランスを経て、2018年に起業。

  • 労務・制度 更新日:2022/02/01
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